足利市の山火事がおさまりません。
心配です。
昨年のオーストラリアやアメリカの大規模な山火事のことがまだ記憶に新しいです。
山火事というのは、極度に乾燥した暑い土地で、風にあおられて木々がこすれ、自然発火して起こるのだと思っていました。
ところが、日本の山火事の原因は、タバコや焚火の不始末など、人為的なことがほとんどだそうです。
どんな小さな藪山でも昔から「火の用心」と書かれた看板を見かけるのは、そういう理由だったのですね。
足利の山火事も、火元はハイカーの休憩所であると推測されています。
もしかすると、誰かが何気なくポイと投げ捨てたタバコが原因かもしれません。
そう考えると、長年タバコ対策に医師としてかかわってきた立場としては、非常に複雑な気持ちになります。
人間の行動は、90%以上が無意識下で行われているといいます。
呼吸や心臓の動きなどは自律神経に支配されていて、私たちがいちいち意識しなくてもちゃんとできて、生きていられます。
例えば歩くときは、私たちは自然と左右の足を交互に出します。
まばたきも、無意識で行われています。
このように考えていくと、これらの生理的反射といったこと以外にも、私たちは日々の生活で習慣化し、意識せずに行っていることがとても多いことに気づきます。
車の運転でさえ、100%意識を使っているわけではありません。
もちろん、あまりぼーっとしていては事故を起こしてしまいますから、常に安全運転を心がけねばなりません。
逆に、心がけなければいけないと思うくらい、無意識化されてしまっている部分が多いともいえるのですね。
タバコのニコチンには強い依存性があります。
タバコを吸うという行動は基本的には薬物依存が原因となっている行動です。
それが何十万回も繰り返されるので、喫煙行動はかなり無意識化されている可能性があります。
実際、喫煙者に聞くと、しっかり自分で意識して吸っているのは、1日20本吸ううちの数本だけだという人が多いです。
それに加えて喫煙というのは、煙を吸って吐く・・・つまり、呼吸とともに行われています。
呼吸は無意識下に行われている最たるもののひとつですから、喫煙という行動をやめることが非常に困難な理由のひとつに、薬物依存という要素以外に、呼吸が関わっているからではないか・・・
私はそんなふうに以前からずっと思っていました。
残念なことに、吸殻のポイ捨ても、ひょっとしたら無意識にやってしまっている人が多いのかもしれません。
今、自宅近くに火の手が迫り、不安の中、避難を余儀なくされている人たちがいます。
学校にいけない子供たちがいます。
懸命に消火活動をしてくれている人たちがいます。
コロナ禍のなか、新たに発生した困難に、立ち向かっている多くの人たちがいます。
タバコを吸っているみなさん、たとえ意識をしていなくても、自分がいつかは火のもととなり、このような惨事を引き起こすことになるかもしれないと、今一度真剣に自分のこととして考えてもらえないでしょうか?
そして1日も早く、タバコをやめてください。