きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

道具と頭は使いよう

2022年06月07日 | 教育
子供の頃、祖母によく言われた気がします。
「道具と頭は使いようだよ」

人間は進化の過程で、道具を使うことを覚えました。
チンパンジーくらいになると、小枝を使ってアリをとって食べたりしますね。

趣味で10年ほど前から帯の仕立てを習っています。
楽器の演奏もそうですが、職人技というのは、目の前で見せてもらいながらご指導いただくのが一番です。

帯に入れる木綿の三河芯は寸法を測って、ハサミではなく、専用の包丁でザクザクと切ります。
この芯切り包丁の扱いが案外難しく、膝も痛くなるので、帯芯切りは仕立ての工程の中で一番嫌いでした。

アイロンがけの際の霧吹きの上手な使い方も、帯の師匠に教わりました。
ゆっくり、深くレバーを引くと、きれいな細かい霧が出ます。
ぜひ、アルコール消毒の際に試してください。
足踏み式のスプレーも、ゆっくり深く踏むと、細かい霧が出て、不必要に手をビシャビシャにせずにすみます。

職場の病院ではPCR検査役を受け持っています。
鼻に入れたあとの綿棒を試験管に入れてハサミで切る作業は、ペアを組んでいる検査技師さんがやってくれますが、ハサミの使い方ひとつとっても、上手な人と、そうでない人がいます。
ちょっとしたコツを教えてあげると、切れが悪いと思っていたハサミが、とたんに切れの良いハサミに変わるので、びっくりされます。
道具は使いようです。

そういう意味では楽器も道具のひとつですが、なかなかハサミのように簡単にはいきません。
長年の鍛錬が必要です。

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じどり

2022年05月19日 | 教育
パソコンで「じどり」と入力したら、「地鶏」と変換されました。

でも話し言葉では「自撮り」と理解される場合のほうが断然多い気がします。

子供の頃、テープレコーダーに録音した自分の声を聞いて、いつも聞いている自分の声とは大違いなので、びっくりした記憶があります。

でも今は、スマホで誰でも簡単に動画が撮れるような時代です。
私はまだあまり慣れませんが、子供や若い人たちは、動画の中の自分の姿や声を、何の違和感もなく受け入れているのでしょうね。

先日、小学校の先生とリモートで、喫煙防止教室の打ち合わせをしました。
子供達には学校からタブレットが各自に配布されているそうで、授業で徐々に活用され始めているようです。
先生方には、ITを使いこなすという新たな課題が求められており、大変なご苦労があるとは思いますが・・・

コロナ禍で合唱ができなくなってしまっています。
先日テレビで、6年生だけによる卒業式の校歌斉唱の際、「心の中で歌いましょう」と、CD演奏が体育館に響き渡っている様子を見たときは、涙が出てきました。

授業の打ち合わせをした学校の最近の音楽の授業では、タブレット端末が有効利用されているというお話を聞きました。
歌やリコーダーのテストの際に、児童それぞれが自分の演奏動画を撮り、提出しているのだそうです。
子供達は、自分が納得できる演奏が撮れるまで繰り返しトライできるし、採点する側の先生にとっても、児童たちひとりひとりの演奏をチェックしやすいので、好評だということです。

これには、なるほど、と思いました。
昨今は、有名なコンクールでも、動画予選が行われているそうですからね。

自分を客観的に見るということは、案外難しいものです。
現実を直視することが自分にとって辛いということも、よくありますから。

でも上手にツールを使えば、自分磨きに役立てられるかもしれません。




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なぜウィルスは変異するのか?

2021年12月26日 | 教育
先日、がん予防教室を行った小学6年生たちから、追加の質問がきましたので、お返事を書きました。


①膵臓は沈黙の臓器と言われますが,膵臓ガンは見つかってからだと治せないのですか?


一般的に沈黙の臓器と言われているのは肝臓です。なぜなら、肝臓は大きい臓器なので、すぐには機能に影響が出ず、かなり悪くなるまで症状も出ないからです。
すい臓はお腹の一番奥のほう(背中に近い方)にあって、小さい臓器なので検査で見つけづらく、症状が出た時には、がんがすでにまわりに広がってしまっていることが多いです。
そうすると手術ではがんを取り除くことができないので、放射線治療や抗がん剤治療を行います。


②医師になる時に大変だったことは?嬉しかったことは?どうして医師になろうと思ったのですか?


人の役に立ち、やりがいのある仕事として医師を選びました。
専門的な免許(国家資格)を持っていると、社会で生きていくのに、とても頼りになります。
医学部に入るための勉強も大変でしたが、大学に入ってからも覚えることがたくさんあって、落第しないように、いつもがんばって勉強していました。
でも同級生達と一緒に勉強するのは楽しかったですし、部活動も一生懸命やりました。


③人間以外の動物が運んだり作ったりした病気で代表的なものを具体的に教えてください。


人と脊椎動物、両方がかかる感染症を「人畜共通感染症」といいます。
身近なものに「アニサキス症」があります。サバなどにいる寄生虫が原因です。お刺身を食べる時には注意が必要です。
豚肉もよく焼かずに食べると、寄生虫に感染したり、食中毒をおこしたりします。
「狂犬病」は狂犬病ウィルスが原因の人畜共通感染症です。予防接種が義務づけられています。コウモリが狂犬病ウィルスを持っていることもあるので、かまれたりしないようにしましょう。


④どうしてウイルスは変異するのですか?(変異とはなんですか?)


細胞が分裂したり増えたりするときには、遺伝子という設計図が必要です。細胞が増えるときに、この設計図も繰り返しコピーされていきます。そうしているうちに、この設計図が間違ってコピーされることがあります。これを変異といいます。
ウィルスはヒトや動物に入り込むことで、遺伝子コピーを行いながら、増殖しています。そうしてたまたま起こった遺伝子コピーの間違い、つまり変異が、ウィルスの生存に都合がいいと、その変異ウィルスが世の中に広く出回るようになるのでしょう。


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『はたらく細胞BLACK』

2021年12月14日 | 教育
自分が興味を持っていないことについても、ある程度アンテナをはっていないといけないなあ・・・と思ったことがありました。

今日、小学6年生にリモートでがん予防教室を行いました。
4年生のときに喫煙防止教室を行った子供たちです。

喫煙防止教室の授業は「タバコの本当の話」という題をつけていますが、がん予防教室のほうは「さあ、がんの話をしよう」といいます。

養護の先生にスライドで授業を行っていただいてから、リモートで子供たちの質問に答えました。


「一番致死率が高いのは、何がんですか?」

ずいぶんと難しい言葉を知っているなあと、びっくりしました。


あとで、養護の先生から聞いたのですが、「はたらく細胞」というマンガが、子供たちにとても人気があるのだそうです。

普段、マンガはまったく読まないので、ぜんぜん知りませんでしたが、検索してみましたら、すぐに色々と出てきました。

養護の先生のおすすめが「Blackシリーズ」ということでしたが、たしかに面白そうです。
さすが、マンガ大国日本ですね。
登場人物の名前がそのまま赤血球や白血球というのがいいいですね。

あ~、なるほど!

先日の喫煙防止教室で、「白血球や赤血球への影響」について質問されたのですが、きっと彼もこの漫画を読んでいるのですね!!

【漫画】飲酒、喫煙、睡眠不足…過酷な労働環境に赤血球白血球たちは何を思う…『はたらく細胞BLACK』| English sub【公式】

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トロイメライと白鳥

2021年10月22日 | 教育

T小学校で、5年生の喫煙防止教室と、6年生のがん予防教室をリモートで行いました。
10年くらい前から毎年講師として招いてくださっている学校です。


前年度は学校のIT環境も十分整っているとはいえませんでしたから、小中学校では、昨年の秋以降、感染予防をしながらの対面授業が通常のようです。

今年度、喫煙防止やがん予防教室のご依頼をいただいていている学校は、訊けば、外部講師と学校をリモートでつないで授業をするのは初めてというところばかりです。

長年、多くの学校で喫煙防止教室を行ってきたおかげで、養護の先生方とは旧知の仲で、ざっくばらんに話ができます(私の性格かもしれませんが・・・)。
なので、感染が落ち着いてきた状況ではありますが、リモート授業でやってみませんかと積極的に提案しています。

今はちょうどITの技術革新が進み、新しい時代へ移り変わっている最中です。
教育にも、どんどん新しい技術が取り入れられていくでしょう。
デジタルネイティブなZ世代の子ども達にとっては、パソコンやスマホ、タブレットの扱いは慣れたものです。
オバサン・オジサンたちも、苦手意識を払拭し、使いこなしていかないと、老後の生活に支障が生じるのでは?という心配があるのも事実です。

リモートであれば、職場にいながら講話ができるので、講師側にとっては、時間と経費の節約にもなります。

また、わたし個人としては、喫煙防止教育は「後進育成」の段階にあるので、学校の先生方にどんどんやってもらって、引き継ぎをしていきたいと思っているところでもあります。


以下は今回のT学校の課外授業本番当日までの流れのメモです。

1.Google Meet 接続環境確認
2.学校側とオンラインミーティング(5年)
3.授業前アンケート実施
4.学校の先生による授業実施(私が作成したスライドや資料を使用)
5.授業後アンケート実施・児童各自が感想や質問を提出
6.オンラインミーティング(児童全員で感想や質問を共有する時間を持ってもらい、本番当日に直接質問したいことをまとめておくことにした)
7.本番(オンラインでの質疑応答)

45分間授業のすべての時間を、各学年4クラスと保健室、そして私をオンラインでつなげ、質疑応答を行いました。

今回使ったのはGoogle Meet。

Google acountを持っていると、アンケート資料なども共有しやすく、音声や画像の接続具合もストレスなくスムーズで、ZOOMよりも好印象でした。

学会や講演会はオンライン配信され、ハイブリッド形式で行われたりしていますが、そもそも医療職はリモートワークができない業種ですので、おそらく他の職種の方達よりも、「リモート」には不慣れかもしれません。
学校にはIT専門補助担当の方がいらっしゃり、色々と助けてくださっていました。

学校へ直接伺って授業をする時は、最初に校長室に通され、校長先生とご挨拶を交わし、授業後も、校長室で少しお話をしてから帰るというのが通例です。

今回は、授業の開始前と二授業の終了後に、養護のA先生が保健室からタブレットを持って校長室に行ってくださり、校長先生にご挨拶することができました。

授業の締めには、チェロで1曲披露。

6年生にはシューマンの「トロイメライ」、5年生にはサン・サーンスの「白鳥」を弾きました。
宇宙ステーションから授業をする時代なんですから、医者が病院でチェロ弾きながら授業するのもアリですよね。


今後は、リモートで、児童対象の職場見学や院内ツアーとか、職場内の他の医療職との一問一答交流などもやってみたい・・・と妄想を膨らませています。




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タバコの本当の話2021(中学生版クイズ編)

2021年06月04日 | 教育
タバコの本当の話2021(中学生版クイズ編)

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禁煙に取り組もう

2021年05月31日 | 教育
本日5月31日は世界禁煙デーです。
WHOが毎年スローガンを掲げています。
https://www.who.int/campaigns/world-no-tobacco-day

今年のスローガンは、「Commit to quit」、「禁煙に取り組もう」です。

WHOのサイトを見ると、「タバコをやめるべき100以上の理由」などが書いてあり、冒頭に掲げられているのが「新型コロナに感染した場合、喫煙者は重症化しやすく、死亡リスクが高くなる」ということ。

昨年、志村けんさんが亡くなった時に受けた衝撃を、思い出してほしいです。


さて、コロナ禍で、なかなか学校へ出かけて行って喫煙防止教室ができない状況にあるため、音声付きスライドショーを作りました!
2021年中学生版としてYouTubeにアップしました。

中学校で喫煙防止講話を行うときは、体育館などに大勢の生徒を集めてやることが多く、なので、全員参加型のクイズ大会をまずやって、集中できるようにします。
毎回とても盛り上がるので、私も楽しかったです。

今回作成したスライドショーは、新たに2021年版として、がん教育やウィルス感染などの話題も盛り込んだ問題も作り、最初から最後までクイズ形式で進みます。

そしてなんと、挿入してある音楽は実際に私が演奏しています!
そのへんのところも、どうぞお聞き逃しなく!

タバコの本当の話2021(中学生版クイズ編)






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ワクチン騒動

2021年02月26日 | 教育
昨今のワクチン騒動で思い出したことがあります。
中学生のときの英語の暗唱大会のことです。

英語の教科書から好きな文章を選んで暗記し、みなの前で諳んじるのです。

私はたしか2年生の時、クラス選抜、学年選抜を経て、最終的に学校を代表する3人のうちの1人に選ばれ、市の大会に出場しました。
3人とも女子でした。

今では英語を母国語とする外国語指導助手(ALT)が小中学校にいることはめずらしくないですが、その頃は外国人が吹き込んだスピーチ練習用教材のカセットテープだけが頼りでした。

市の大会に向けては、放課後に私たち3人は、英語の先生の特別指導を受けました。

他の2人はすでに大会出場経験があり、とても上手でした。
私はというと、先生から「君の声は、とおりが悪いんだよね・・・」と半ばあきらめ顔で言われたのを覚えています。

実は、学校の先生から自分の声のことを悪く言われたのはそれが初めてではありませんでした。
小学校の音楽の時間に、楽しくて一生懸命歌っていたら、音楽の先生から「ひどい声だ」と言われたこともありました。
親にそのことを伝えたら、母親のおなかのなかでへその緒が首の周りにまきついていたせいだと、ダメだしをされました。
まあ、だからといって特に落ち込んだりはしませんでした。
今考えれば、あの頃はメンタルが強かったんですね。

市の大会までどのくらいの期間があったのかは覚えていませんが、教科書に載っていた発音記号の解説まで深く読み込んで、鏡を見ながら口の開け方、舌の使い方までも練習したりして、自分なりに練習を工夫して、市の大会に臨みました。

会場となったのは市役所の会議室でした。
他校から出場している生徒たちは、みな強敵に見えました。
あのときの緊張した空気感は、何十年たった今でも忘れられません。

そして結果はなんと優勝。
「The first prize is・・・」のあとに自分の名前が呼ばれたときは、本当に信じられませんでした。

審査委員長はイギリス人で、表彰式で彼と握手したときの手の感触や、賞状に書かれたWilliam Wallaceという彼のサインの字面まで思い出せます。

このことはその後の自分にとって、とても大きな自信となりました。
ですから、チャンスをもらえたことには、とても感謝していますが、大人たちは子供たちが持っている可能性を潰すようなことを言ってはいけない・・・と大人になった今は強く思います。

さて、この話のどこがワクチンに関係しているのか?(笑)

実は、この暗唱大会で私が選んだ文章というのが、生化学者パスツールが狂犬病ワクチンを開発したときの逸話だったのです。


新型コロナワクチンについて、医療従事者から優先的に接種が始まっています。
私は医療従事者としての責任から、毎年インフルエンザのワクチンを受けていますし、コロナワクチンについても、順番が来れば迷わず接種を受けます。

ですが、先に接種を受けた(男性)医師達が「ちょっと怖かったけど、だいじょうぶだった」とか、「ぜんぜん痛くなかった」みたいな感想を言っているという報道をみると、幼稚園児じゃあるまいし、もっとましなことを言えないのか?!と思ってしまいます。

報道する側の切り取り方にも問題はあるでしょう。

こんなふうに、最近はこの国の成熟度の低さを実感することがあまりにも多く、そのたびに心がざわついてしまいます・・・

200年以上前、最初に狂犬病ワクチンを受けた少年たちが今の状況を見たら、どんな感想をもらすでしょうかね?




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死んでしまっているわけではない

2020年10月05日 | 教育

TEDですばらしい講演に出会いました。
感動で泣けてきました。

お時間のあるときに、ゆっくり、何度でも、ご覧ください。
最後の3分間くらいに、彼のメッセージが凝縮されています。

死の谷は、死んでしまっているわけではない。

花開くには、良い環境が必要・・・

教育分野に限らず、多くの人に受け取って欲しいメッセージです。

創造性豊かな人々がのびのびと生きられる社会となれば、未来は明るいはずです。

大変残念なことに、ロビンソン氏はすでに亡くなっています。
けれども、彼の素晴らしい理念は、これからもきっと引き継がれていくに違いありません。


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仲間は必要

2020年07月14日 | 教育
禁煙治療やタバコ対策への取り組みは情熱と忍耐が必要です。
ですから、長くやればやるほど、孤立感に苛まれやすい。
それは、がん治療の最前線の医療現場にいても(残念ながら)感じていることです。

私が対峙しているなかで最も悩ましい相手は、依存に苦しむ喫煙者たちではなく、今や必死に生き残ろうとしているタバコ販売組織ですらもなく、「たかがタバコ」「タバコは個人の嗜好・思考問題」「自分は吸わないから関係ない」「医者による喫煙防止教育は趣味・副業」といった考えの人たちなのではないか・・・最近はふと、そんなふうに思うようになりました。
そのせいか、少々心が疲れ気味です。

そんな状況で、同じ方向を見ている仲間がいる、そういう人たちと繋がっていると感じられることは、自らの存在価値を確認でき、とても心強く、励みになります。

医療者のみならず、さまざまな職業のかたがオンラインで繋がり、社会の禁煙化推進のための建設実行的な勉強会が開かれている場があり、参加しています。
ご興味のあるかたは、どうぞ下記サイトをご覧下さい。


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