両院協議会の真の役割を発揮すべし
08年度の第2次補正予算は、自民・公明両党の多数で衆議院で採択されたが、民主党を中心とする野党が多数を占める参議院では2兆円を越える定額給付金部分を切り離した形で修正案が採択された。
この修正案は衆議院で採択される見通しは無いので、両院協議会で取り扱いが協議されるが、意見の調整が行われない場合、衆議院の3分の2の多数を握っている自・公両党の再可決で原案通り採択される可能性が高いと伝えられている。
第2次補正予算については、7.2兆円の国債発行による公的債務の累積も問題であるが、定額給付金については、国民に還付されるにも拘わらず、国民世論の7割から8割がもっと効果的な使い方が望ましいとしている。そうであれば、民意をそれぞれ代表する衆・参両院が何故両院協議会を通じて民意に沿う形で意見の調整が出来ないのであろうか。
最近両院協議会でそのような意見の調整が行われたケースは皆無であり、多くのメデイアは今回も同様との前提で報じている。しかし、そもそも両院協議会は、国民生活に関係する重要な事項につき衆・参で意見が異なる場合に協議、調整するために憲法上(60条)で設けられた制度ではないのか。
戦後のほとんどの期間、自民党が特定期間の連立の時期を含め衆・参両院で多数を占めているので、そのような状態であれば、衆・参で意見が異なっても与党内の問題であり、参議院軽視の問題は残るが、両院協議会の役割は実質上はないと言えよう。
しかし、05年9月の衆院総選挙で自・公両党が3分の2の多数を占める一方、06年7月の参院選挙の結果、参院では民主党を中心とする野党が多数を占めているので、衆・参で意見が異なる場合の両院協議会の役割は国民生活にとって重要になっていると言えよう。
無論、憲法上、予算などについては両院協議会で調整がつかない場合には、衆院の3分の2の多数で再可決出来ることになっており、法律上は可能である。
だが、実質的に国民世論の7割から8割が評価していない定額給付金を含む2次補正を強行採決する意義はあるのだろうか。誰のための補正予算と言えるのだろうか。
また国会制度においても、両院協議会が形だけのものになってしまえば憲法が予想している機能が果たせないことになるばかりか、参議院の意義、或いは参議院に示されている民意が否定されることになる。
「衆・参ねじれ現象」の中で与・野党の「大連立」の可能性が話題になることがあるが、憲法上想定されている両院協議会でさえ機能しないのであれば「大連立」などは機能しないことは目に見えており、現実性を失うことにもなろう。
国民生活に広く影響する景気対策を主眼とする補正予算であり、衆・参両院、与野党が実質的、現実的に協議を通じて解決策を見出すことが重要であると共に、現在日本政治に求められている政治プロセスでもあるので、両院協議会が本来の役割を発揮、回復することが強く望まれる。(09.01.26.)
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08年度の第2次補正予算は、自民・公明両党の多数で衆議院で採択されたが、民主党を中心とする野党が多数を占める参議院では2兆円を越える定額給付金部分を切り離した形で修正案が採択された。
この修正案は衆議院で採択される見通しは無いので、両院協議会で取り扱いが協議されるが、意見の調整が行われない場合、衆議院の3分の2の多数を握っている自・公両党の再可決で原案通り採択される可能性が高いと伝えられている。
第2次補正予算については、7.2兆円の国債発行による公的債務の累積も問題であるが、定額給付金については、国民に還付されるにも拘わらず、国民世論の7割から8割がもっと効果的な使い方が望ましいとしている。そうであれば、民意をそれぞれ代表する衆・参両院が何故両院協議会を通じて民意に沿う形で意見の調整が出来ないのであろうか。
最近両院協議会でそのような意見の調整が行われたケースは皆無であり、多くのメデイアは今回も同様との前提で報じている。しかし、そもそも両院協議会は、国民生活に関係する重要な事項につき衆・参で意見が異なる場合に協議、調整するために憲法上(60条)で設けられた制度ではないのか。
戦後のほとんどの期間、自民党が特定期間の連立の時期を含め衆・参両院で多数を占めているので、そのような状態であれば、衆・参で意見が異なっても与党内の問題であり、参議院軽視の問題は残るが、両院協議会の役割は実質上はないと言えよう。
しかし、05年9月の衆院総選挙で自・公両党が3分の2の多数を占める一方、06年7月の参院選挙の結果、参院では民主党を中心とする野党が多数を占めているので、衆・参で意見が異なる場合の両院協議会の役割は国民生活にとって重要になっていると言えよう。
無論、憲法上、予算などについては両院協議会で調整がつかない場合には、衆院の3分の2の多数で再可決出来ることになっており、法律上は可能である。
だが、実質的に国民世論の7割から8割が評価していない定額給付金を含む2次補正を強行採決する意義はあるのだろうか。誰のための補正予算と言えるのだろうか。
また国会制度においても、両院協議会が形だけのものになってしまえば憲法が予想している機能が果たせないことになるばかりか、参議院の意義、或いは参議院に示されている民意が否定されることになる。
「衆・参ねじれ現象」の中で与・野党の「大連立」の可能性が話題になることがあるが、憲法上想定されている両院協議会でさえ機能しないのであれば「大連立」などは機能しないことは目に見えており、現実性を失うことにもなろう。
国民生活に広く影響する景気対策を主眼とする補正予算であり、衆・参両院、与野党が実質的、現実的に協議を通じて解決策を見出すことが重要であると共に、現在日本政治に求められている政治プロセスでもあるので、両院協議会が本来の役割を発揮、回復することが強く望まれる。(09.01.26.)
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