内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

ロシア側に先送りされた北方領土問題

2009-07-23 | Weblog
ロシア側に先送りされた北方領土問題
 7月10日、ラクイラ・サミットに際し、麻生首相はロシアのメドベージェフ大統領と会談した。最大の懸案である北方領土問題では、ロシア側は、5月のプーチン首相訪日の際「あらゆる選択肢を検討する」としていたものの、新たな提案はなく、問題はまた先送りされた。逆に、3日、参議院において成立した改正北方領土解決促進特別措置法で北方領土を「日本固有の領土」であるとされたことや5月の首相の同様の発言に対し、ロシア議会などでの反発があるとしつつ、「環境整備」の必要性が指摘された。予想はされたところではあるが、日・露間の最大の懸案はロシア側により先送りされる結果となった。
麻生政権内のこの問題の対応も響いている。5月にプーチン首相の訪日を前にして、首相官邸の外交担当の事務方が北方4島の面積を2等分する「3.5島返還論」を特定紙のインタビューで示唆し、報道された。これに対し元ロシア大使や学者、有識者等より強い反論が表明されるなど国内議論は混乱した。発言したとされる事務方は、そのような発言はしなかったと発言自体を否定した。いずれが真実であったかについては、報道の信頼性にも係わることであるのでそれ自体深刻な問題であるが、国益を害する結果となった。
このような発言報道が、日本国内において「北方4島日本固有の領土論」や「4島一括返還論」を主張する対ロ強硬派を刺激する一方で、ロシア側の反発を買う結果となっている。7月10日の記者会見で、メドベージェフ大統領が「1956年の宣言が唯一の法的根拠がある文書」であるとの考えを明らかにし、対話は同文書に基づき行われるべき旨述べた。
ロシア側は「創造的アプローチ」、「あらゆる選択肢」などと述べていたが、「3.5島返還論」発言報道を契機に、56年宣言に逆戻りした格好だ。
その他の主要外交問題についても、東シナ海の油田開発問題、竹島問題、北朝鮮の拉致被害者問題など、既成事実が進展する中、この1年間見るべき進展はない。
領土問題などのような外交問題については、100%の解決で無い限り国内で強硬な反対が出る可能性が強い。相手方も同様だ。しかし双方が100%の解決を主張し続ければ、両国関係は前進しないばかりか、折に触れて不信感の象徴として表面化し、対立する。それだけに領土問題などの解決には、それぞれの国の首脳の強いリーダーシップと決断が必要となるが、独裁国家は別として、それは明確な国民の信託、支持に裏打ちされていなくてはならない。国民の明確な信託と支持が、時の政権に信頼性と国家としての力を与えることを忘れてはならない。(09.07.)
(All Rights Reserved.)
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ロシア側に先送りされた北方領土問題

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ロシア側に先送りされた北方領土問題
 7月10日、ラクイラ・サミットに際し、麻生首相はロシアのメドベージェフ大統領と会談した。最大の懸案である北方領土問題では、ロシア側は、5月のプーチン首相訪日の際「あらゆる選択肢を検討する」としていたものの、新たな提案はなく、問題はまた先送りされた。逆に、3日、参議院において成立した改正北方領土解決促進特別措置法で北方領土を「日本固有の領土」であるとされたことや5月の首相の同様の発言に対し、ロシア議会などでの反発があるとしつつ、「環境整備」の必要性が指摘された。予想はされたところではあるが、日・露間の最大の懸案はロシア側により先送りされる結果となった。
麻生政権内のこの問題の対応も響いている。5月にプーチン首相の訪日を前にして、首相官邸の外交担当の事務方が北方4島の面積を2等分する「3.5島返還論」を特定紙のインタビューで示唆し、報道された。これに対し元ロシア大使や学者、有識者等より強い反論が表明されるなど国内議論は混乱した。発言したとされる事務方は、そのような発言はしなかったと発言自体を否定した。いずれが真実であったかについては、報道の信頼性にも係わることであるのでそれ自体深刻な問題であるが、国益を害する結果となった。
このような発言報道が、日本国内において「北方4島日本固有の領土論」や「4島一括返還論」を主張する対ロ強硬派を刺激する一方で、ロシア側の反発を買う結果となっている。7月10日の記者会見で、メドベージェフ大統領が「1956年の宣言が唯一の法的根拠がある文書」であるとの考えを明らかにし、対話は同文書に基づき行われるべき旨述べた。
ロシア側は「創造的アプローチ」、「あらゆる選択肢」などと述べていたが、「3.5島返還論」発言報道を契機に、56年宣言に逆戻りした格好だ。
その他の主要外交問題についても、東シナ海の油田開発問題、竹島問題、北朝鮮の拉致被害者問題など、既成事実が進展する中、この1年間見るべき進展はない。
領土問題などのような外交問題については、100%の解決で無い限り国内で強硬な反対が出る可能性が強い。相手方も同様だ。しかし双方が100%の解決を主張し続ければ、両国関係は前進しないばかりか、折に触れて不信感の象徴として表面化し、対立する。それだけに領土問題などの解決には、それぞれの国の首脳の強いリーダーシップと決断が必要となるが、独裁国家は別として、それは明確な国民の信託、支持に裏打ちされていなくてはならない。国民の明確な信託と支持が、時の政権に信頼性と国家としての力を与えることを忘れてはならない。(09.07.)
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麻生政権内のこの問題の対応も響いている。5月にプーチン首相の訪日を前にして、首相官邸の外交担当の事務方が北方4島の面積を2等分する「3.5島返還論」を特定紙のインタビューで示唆し、報道された。これに対し元ロシア大使や学者、有識者等より強い反論が表明されるなど国内議論は混乱した。発言したとされる事務方は、そのような発言はしなかったと発言自体を否定した。いずれが真実であったかについては、報道の信頼性にも係わることであるのでそれ自体深刻な問題であるが、国益を害する結果となった。
このような発言報道が、日本国内において「北方4島日本固有の領土論」や「4島一括返還論」を主張する対ロ強硬派を刺激する一方で、ロシア側の反発を買う結果となっている。7月10日の記者会見で、メドベージェフ大統領が「1956年の宣言が唯一の法的根拠がある文書」であるとの考えを明らかにし、対話は同文書に基づき行われるべき旨述べた。
ロシア側は「創造的アプローチ」、「あらゆる選択肢」などと述べていたが、「3.5島返還論」発言報道を契機に、56年宣言に逆戻りした格好だ。
その他の主要外交問題についても、東シナ海の油田開発問題、竹島問題、北朝鮮の拉致被害者問題など、既成事実が進展する中、この1年間見るべき進展はない。
領土問題などのような外交問題については、100%の解決で無い限り国内で強硬な反対が出る可能性が強い。相手方も同様だ。しかし双方が100%の解決を主張し続ければ、両国関係は前進しないばかりか、折に触れて不信感の象徴として表面化し、対立する。それだけに領土問題などの解決には、それぞれの国の首脳の強いリーダーシップと決断が必要となるが、独裁国家は別として、それは明確な国民の信託、支持に裏打ちされていなくてはならない。国民の明確な信託と支持が、時の政権に信頼性と国家としての力を与えることを忘れてはならない。(09.07.)
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 7月10日、ラクイラ・サミットに際し、麻生首相はロシアのメドベージェフ大統領と会談した。最大の懸案である北方領土問題では、ロシア側は、5月のプーチン首相訪日の際「あらゆる選択肢を検討する」としていたものの、新たな提案はなく、問題はまた先送りされた。逆に、3日、参議院において成立した改正北方領土解決促進特別措置法で北方領土を「日本固有の領土」であるとされたことや5月の首相の同様の発言に対し、ロシア議会などでの反発があるとしつつ、「環境整備」の必要性が指摘された。予想はされたところではあるが、日・露間の最大の懸案はロシア側により先送りされる結果となった。
麻生政権内のこの問題の対応も響いている。5月にプーチン首相の訪日を前にして、首相官邸の外交担当の事務方が北方4島の面積を2等分する「3.5島返還論」を特定紙のインタビューで示唆し、報道された。これに対し元ロシア大使や学者、有識者等より強い反論が表明されるなど国内議論は混乱した。発言したとされる事務方は、そのような発言はしなかったと発言自体を否定した。いずれが真実であったかについては、報道の信頼性にも係わることであるのでそれ自体深刻な問題であるが、国益を害する結果となった。
このような発言報道が、日本国内において「北方4島日本固有の領土論」や「4島一括返還論」を主張する対ロ強硬派を刺激する一方で、ロシア側の反発を買う結果となっている。7月10日の記者会見で、メドベージェフ大統領が「1956年の宣言が唯一の法的根拠がある文書」であるとの考えを明らかにし、対話は同文書に基づき行われるべき旨述べた。
ロシア側は「創造的アプローチ」、「あらゆる選択肢」などと述べていたが、「3.5島返還論」発言報道を契機に、56年宣言に逆戻りした格好だ。
その他の主要外交問題についても、東シナ海の油田開発問題、竹島問題、北朝鮮の拉致被害者問題など、既成事実が進展する中、この1年間見るべき進展はない。
領土問題などのような外交問題については、100%の解決で無い限り国内で強硬な反対が出る可能性が強い。相手方も同様だ。しかし双方が100%の解決を主張し続ければ、両国関係は前進しないばかりか、折に触れて不信感の象徴として表面化し、対立する。それだけに領土問題などの解決には、それぞれの国の首脳の強いリーダーシップと決断が必要となるが、独裁国家は別として、それは明確な国民の信託、支持に裏打ちされていなくてはならない。国民の明確な信託と支持が、時の政権に信頼性と国家としての力を与えることを忘れてはならない。(09.07.)
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麻生政権内のこの問題の対応も響いている。5月にプーチン首相の訪日を前にして、首相官邸の外交担当の事務方が北方4島の面積を2等分する「3.5島返還論」を特定紙のインタビューで示唆し、報道された。これに対し元ロシア大使や学者、有識者等より強い反論が表明されるなど国内議論は混乱した。発言したとされる事務方は、そのような発言はしなかったと発言自体を否定した。いずれが真実であったかについては、報道の信頼性にも係わることであるのでそれ自体深刻な問題であるが、国益を害する結果となった。
このような発言報道が、日本国内において「北方4島日本固有の領土論」や「4島一括返還論」を主張する対ロ強硬派を刺激する一方で、ロシア側の反発を買う結果となっている。7月10日の記者会見で、メドベージェフ大統領が「1956年の宣言が唯一の法的根拠がある文書」であるとの考えを明らかにし、対話は同文書に基づき行われるべき旨述べた。
ロシア側は「創造的アプローチ」、「あらゆる選択肢」などと述べていたが、「3.5島返還論」発言報道を契機に、56年宣言に逆戻りした格好だ。
その他の主要外交問題についても、東シナ海の油田開発問題、竹島問題、北朝鮮の拉致被害者問題など、既成事実が進展する中、この1年間見るべき進展はない。
領土問題などのような外交問題については、100%の解決で無い限り国内で強硬な反対が出る可能性が強い。相手方も同様だ。しかし双方が100%の解決を主張し続ければ、両国関係は前進しないばかりか、折に触れて不信感の象徴として表面化し、対立する。それだけに領土問題などの解決には、それぞれの国の首脳の強いリーダーシップと決断が必要となるが、独裁国家は別として、それは明確な国民の信託、支持に裏打ちされていなくてはならない。国民の明確な信託と支持が、時の政権に信頼性と国家としての力を与えることを忘れてはならない。(09.07.)
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