過熱する日米同盟論議と基地問題-オバマ大統領訪日の波紋― (その3)
民主党政権が発足して1ヶ月半程過ぎた。補正予算の無駄の凍結や予算編成など国内問題と共に、ゲーツ米国防長官の訪日を受けて外交、安全保障問題の議論も過熱気味になって来ている。特に、日米双方とも両国同盟関係を重視しているものの、民主党政権は沖縄の基地移転問題などで自民党政権とは異なる姿勢を示しているおり、11月13、14日に予定されているオバマ大統領の訪日に向けて日米双方で意見の調整が活発に行われている。
1、新政権に戸惑う米国 (その1として掲載掲済み)
2、実質的な政権交代には政策転換が伴う (その2として掲載掲済み)
3、見えてきた日米の課題
鳩山首相としても、この問題を早期に決定する方針であるものの、オバマ大統領の訪日までの決定を期限とは考えていないとの考え方を予算委員会などで示した。このように日本の本格的な政権交代、政策転換に不慣れな米国側と日本の官僚組織という構図の中で、日米間の相互理解を深め、真の同盟関係を構築して行くためには、首脳間、担当大臣間など政治レベルでの対話が非常に重要になっている。恐らく米国側には日本の新政権の政策や問題意識、優先度に違和感を持つ部分もあるであろう。しかし、それが国民の今回の選択であり、オバマ大統領も国民の「変化」への選択で政権に就いたところであるので、まずお互いに意見を聞くと共に、日米両国が自由、民主主義、市場経済という基本的な価値観を共有し、両国関係が外交、安全保障の重要な基礎であるという大枠を確認した上で、個別の問題に取り組んで行くことが重要なのであろう。
普天間飛行場の移設を含む米軍再編問題に関する2006年の「日米合意」は、
ブッシュ、安倍政権下での政府間合意である。基本的には相互に尊重されるべきであろうが、米国もオバマ民主党政権へ、日本も鳩山連立政権へ政権が交代しているので、当事者の一方である日本が選挙公約に照らして従来案を“見直し”、国民の支持が得られる形で決定することは、民主主義プロセスとしては自然な流れであろう。それはオバマ大統領も理解することであろう。
その他のインド洋での給油活動の中止問題、海兵隊のグアム移転費問題など米軍再編問題や東アジア共同体構想の提唱の他、アフガニスタン支援問題、北朝鮮の各開発問題、地球温暖化問題、核兵器無き世界の平和と安全問題など、日米間の懸案は正にグローバルに亘るが、新政権同士の首脳として、将来に亘る日米同盟の健全な発展を見据えて忌憚の無い意見交換が行われることを期待したい。
今回の日米首脳会談は、日米関係にとって戦後最も重要な会談の一つになると見られるが、首脳間協議に加え、日米間の相互理解の上で課題が見えて来た。日米双方での閣僚レベルはもとより、議員交流、知識人・研究者交流など、日米交流のあり方である。
米国側としては、従来自民党政権を前提として議員交流や日本研究者などの交流、育成を図って来ており、対日理解の上で顕著な発展を見せている。しかし民主党を中心とする旧野党との交流や考え方の理解は限定的であり、今後この面での改善が望まれる。
日本側も、従来政権与党の自民党を中心として議員交流や米国研究者、安全保障専門家などの育成、交流が図られて来たが、民主党はこの面で米国との新たなパイプ造りや研究者、専門家の育成を図らなくてはならない。日本の日米関係、安全保障問題の専門家や有識者・評論家なども自民党の政策を支持し、或いは誘導して来た層が多く、どうしても批判的な論調が強くなる傾向があるので、幅広い知識人や専門家、研究者の発掘、育成も課題であろう。
外交、防衛政策に限らず、新政権の政策転換は4年間で実現し、実績をあげる必要がある。半世紀に亘る既成の制度、慣行、既得権益、組織の下での政策転換であるので時間が掛かる作業となろう。それぞれの事項、施策は、採用された当時には一定のニーズがあり、役割を果たしてきたのであろうから、それを転換しようとすると、それぞれの利益グループが「生活を掛けて」反対するのは仕方がない。しかし個々の「生活」や利益の問題ではなく、限られた国民の税金を時のニーズに沿ってどのような施策に優先度を与えて配分するかである。課題も多い。だが国民が選んだ政権であるので、まず4年間政権を担ってむらうしかない。(09.11.)
(All Rights Reserved.)
民主党政権が発足して1ヶ月半程過ぎた。補正予算の無駄の凍結や予算編成など国内問題と共に、ゲーツ米国防長官の訪日を受けて外交、安全保障問題の議論も過熱気味になって来ている。特に、日米双方とも両国同盟関係を重視しているものの、民主党政権は沖縄の基地移転問題などで自民党政権とは異なる姿勢を示しているおり、11月13、14日に予定されているオバマ大統領の訪日に向けて日米双方で意見の調整が活発に行われている。
1、新政権に戸惑う米国 (その1として掲載掲済み)
2、実質的な政権交代には政策転換が伴う (その2として掲載掲済み)
3、見えてきた日米の課題
鳩山首相としても、この問題を早期に決定する方針であるものの、オバマ大統領の訪日までの決定を期限とは考えていないとの考え方を予算委員会などで示した。このように日本の本格的な政権交代、政策転換に不慣れな米国側と日本の官僚組織という構図の中で、日米間の相互理解を深め、真の同盟関係を構築して行くためには、首脳間、担当大臣間など政治レベルでの対話が非常に重要になっている。恐らく米国側には日本の新政権の政策や問題意識、優先度に違和感を持つ部分もあるであろう。しかし、それが国民の今回の選択であり、オバマ大統領も国民の「変化」への選択で政権に就いたところであるので、まずお互いに意見を聞くと共に、日米両国が自由、民主主義、市場経済という基本的な価値観を共有し、両国関係が外交、安全保障の重要な基礎であるという大枠を確認した上で、個別の問題に取り組んで行くことが重要なのであろう。
普天間飛行場の移設を含む米軍再編問題に関する2006年の「日米合意」は、
ブッシュ、安倍政権下での政府間合意である。基本的には相互に尊重されるべきであろうが、米国もオバマ民主党政権へ、日本も鳩山連立政権へ政権が交代しているので、当事者の一方である日本が選挙公約に照らして従来案を“見直し”、国民の支持が得られる形で決定することは、民主主義プロセスとしては自然な流れであろう。それはオバマ大統領も理解することであろう。
その他のインド洋での給油活動の中止問題、海兵隊のグアム移転費問題など米軍再編問題や東アジア共同体構想の提唱の他、アフガニスタン支援問題、北朝鮮の各開発問題、地球温暖化問題、核兵器無き世界の平和と安全問題など、日米間の懸案は正にグローバルに亘るが、新政権同士の首脳として、将来に亘る日米同盟の健全な発展を見据えて忌憚の無い意見交換が行われることを期待したい。
今回の日米首脳会談は、日米関係にとって戦後最も重要な会談の一つになると見られるが、首脳間協議に加え、日米間の相互理解の上で課題が見えて来た。日米双方での閣僚レベルはもとより、議員交流、知識人・研究者交流など、日米交流のあり方である。
米国側としては、従来自民党政権を前提として議員交流や日本研究者などの交流、育成を図って来ており、対日理解の上で顕著な発展を見せている。しかし民主党を中心とする旧野党との交流や考え方の理解は限定的であり、今後この面での改善が望まれる。
日本側も、従来政権与党の自民党を中心として議員交流や米国研究者、安全保障専門家などの育成、交流が図られて来たが、民主党はこの面で米国との新たなパイプ造りや研究者、専門家の育成を図らなくてはならない。日本の日米関係、安全保障問題の専門家や有識者・評論家なども自民党の政策を支持し、或いは誘導して来た層が多く、どうしても批判的な論調が強くなる傾向があるので、幅広い知識人や専門家、研究者の発掘、育成も課題であろう。
外交、防衛政策に限らず、新政権の政策転換は4年間で実現し、実績をあげる必要がある。半世紀に亘る既成の制度、慣行、既得権益、組織の下での政策転換であるので時間が掛かる作業となろう。それぞれの事項、施策は、採用された当時には一定のニーズがあり、役割を果たしてきたのであろうから、それを転換しようとすると、それぞれの利益グループが「生活を掛けて」反対するのは仕方がない。しかし個々の「生活」や利益の問題ではなく、限られた国民の税金を時のニーズに沿ってどのような施策に優先度を与えて配分するかである。課題も多い。だが国民が選んだ政権であるので、まず4年間政権を担ってむらうしかない。(09.11.)
(All Rights Reserved.)