内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)

2011-10-27 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業 (その1で掲載)
 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
(2011.10.20.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)

2011-10-27 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業 (その1で掲載)
 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
(2011.10.20.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)

2011-10-27 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業 (その1で掲載)
 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
(2011.10.20.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)

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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業 (その1で掲載)
 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
(2011.10.20.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)

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 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
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 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その2)

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 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業 (その1で掲載)
 2、医療分野など、個別分野への懸念
 また薬品や医療サービスなどや建設を含む政府調達などへの影響を懸念する声も聞かれる。薬品については、日本独自の薬価基準や認可制度があり、薬害エイズ問題やC型肝炎問題があったことから自由化を懸念する向きもある反面、新薬認定の遅さが大きな問題になっている。患者の観点からは選択が多い方が望ましいので、薬価基準面での検討を行えば良いことであろう。また日本は健康保険制度により国民皆保険となっており、これへの影響が懸念されているが、交渉に参加しているNZも類似の制度を持っており、基本的には各国の制度が尊重される形で協議されよう。他方、現在の健康保険制度自体も予算圧迫や医師不足などの問題があり、受益者負担の原則を考慮した改善が必要となっている。海外での治療を希望する患者もおり、そのための個人保険制度も必要であろう。更に介護については、在宅介護を含め、国内で要員を確保して行くことが困難な見通しであり、海外に要員を求める必要に迫られている。患者や利用者にとっては選択肢が多い方が望ましい。
 政府調達については、外国企業に参入され、業者側のデメリットもあるが、調達費用が節約されるメリットもある。米国も3州を除き、各州が米国製品の調達(バイ・アメリカン)を原則としているので、交渉事項であり、海外での政府調達の可能性も出て来ることになり、メリットも大きい。
 このようにそれぞれの分野でデメリットもあるが、その多くは生産者側のデメリットであり、消費者、利用者側からは価格上のメリットと共に選択肢が広がることになる。また生産者側も市場が海外に広がることになるので、努力次第ではあるがメリットは大きい。
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)

2011-10-27 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)
 環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加問題が昨年来活発に議論され、11月にハワイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を前にして、交渉参加を表明するか否かで政府与党や野党内で意見が分かれている。野田首相は、基本的に交渉参加に意欲的であり、APEC首脳会議前の意見集約を指示したとされている。
 TPPには、米国、豪州、マレイシア、ベトナム、ペルーの5カ国に加え、自由貿易協定(FTA)を締結しているシンガポール、ブルネイ、チリ、NZが交渉を開始しているが、農業を含む貿易自由化の一層の促進から、金融・電気通信、医療などのサービス、投資の自由化、労働規制の調和などを目的とするもので、加入するとなると経済・社会分野に大きな影響が出るものと予想される。
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業
 日本は、工業製品のほとんどが自由化されており、農産品を除く平均関税率も3.8%程度となっているが、農産品については平均関税率が21%強と保護されており、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加において農業が最大の争点になっている。日本の農業を代表する米は関税率778%である。
 日本の農業が、大規模農業国である米国、豪州などと自由な市場で競争して行くことは難しいことは明らかであり、また農業を持たないシンガポ-ルやブルネイと同様に自由化出来るものでもない。
TPPに加入すれば日本農業をこれまでのような形で維持して行くことは困難であり、交渉参加は慎重にならざるを得ない。しかし、この議論は生産者の側の伝統的な議論であり、理解出来るところではあるが、2つの点を考慮していない。
一つは消費者のメリットである。現在も多くの農作物が輸入され消費者の選択を多様にしているが、農産品・酪農品の自由化が進めば価格も実質的に下がり、選択の幅は広がる。
もう一つは、日本の農業をこれまでのように保護し続けられるのかということである。
戦後、大農、小作制度が解体・廃止され、農地改革により小規模自営農に移行したが、米の食管制度や農協制度、農道整備などの各種の農村支援により保護され、戦後の食糧難時代の食糧確保や失業の受け皿などとして日本の食を支えて来た。しかしそのような農業支援にも拘わらず、農業人口は減少する一方であり、農家人口は現在総人口の6%以下、農業を主としている農業就業人口は2%半ばとなっている。更に農業就業者の老齢化が進み、女性が占める割合も50%を超え、30%以上が65歳以上という状況になっている。90年代初頭より、農家に嫁が来ない状況が始まり、その後農家に後継者も残らない現象も起こっており、農家の老齢化に拍車を掛けている。農林水産政策研究所の推計では、「農家人口は,1990年に1,760万人だったのが,2020年には752万人と1990年の43.5%になる。農業就業人口は,1990年に565万人だったのが,2020年には200万人と1990年の35%に減少する。」90年代半ば頃よりのバブル経済崩壊以降の経済停滞が、米国や欧州の金融、財政危機という外部経済要因や東日本大災害等の内外の要因で更に長期化すると、若干の農業回帰は起こる可能性もあろう。だが青年層の農業離れと社会的な少子化から、農業就業人口の減少と老齢化が一層加速化すると予想される。従来の農業保護政策では農業就業人口の減少は止められなかったと言える。この状況で日本農業を支えて行けるだろうか。
 TPPへの交渉参加を行わず、従来のような農業保護策を継続しても農業離れを食い止めることは困難であろう。その場合、消費者はTPP加入によるメリットを受けられない上、農業保護のための税負担と割高な食料価格に甘んじなくてはならない。200万人内外の農業就業者保護のため、日本の将来、針路を左右して良いのであろうか。恐らく、多くの農業就業者はそれを望んではいないであろう。日本の市場は、少子化と消費マインドの萎縮、低成長傾向などにより、今後拡大は望めない。従って、日本としては世界市場の拡大を図って行くことが課題だ。
 TPPに参加しても、直ちに全ての農産品が完全自由化されるということではない。参加国それぞれが関心品目を持っており、関係国間で交渉して相互に取引することになる。日本の農業は、いずれにしても小規模自営農から大規模農営、企業化を容認する方向に転換を図って行かなくてはならない時期にある。TPPへの交渉に参加し、その過程で日本の優位性を発揮できる形で転換を図って行くべきであろう。その場合、関係農家への所得補償などが必要であろう。北海道と岩手、宮城両県などに農業特区を設け、大規模農営、企業化のモデルとすることも検討に値しよう。
 一方TPPへの交渉不参加を主張する側は、農業離れの中で老齢化する日本農業をどのように建て直し、青年層を引き付けられるような将来性のある農業を再構築するための対案を示すべきであろう。後ろ向きの保護主義の継続は日本農業を更に縮小させることになろう。TPPへ参加すれば、確かに安い農作物が流入し、一部の農家を圧迫するであろうが、価格が全てを決定するものではなく、消費者の選択は多様化している。選択は消費者が行うものであり、品質や安全性などで差別化し消費者を引き付ける工夫も出来るであろうし、その努力を惜しむべきではない。また海外に市場が開けるので、そのメリットを生かし、希望の持てる農業生産のあり方も検討出来るであろう。決して容易なことではないが、何事も取り組まなければ始まらない。
また食品の安全基準や農薬基準などの面を危惧する者もいるが、それは派生する問題として検討されることになるとしても、国際基準が出来ること自体は望ましいことであるので、わが国の基準の適切性を主張し、国際基準に反映されるよう貢献することが望まれる。
(2011.10.26.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)

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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)
 環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加問題が昨年来活発に議論され、11月にハワイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を前にして、交渉参加を表明するか否かで政府与党や野党内で意見が分かれている。野田首相は、基本的に交渉参加に意欲的であり、APEC首脳会議前の意見集約を指示したとされている。
 TPPには、米国、豪州、マレイシア、ベトナム、ペルーの5カ国に加え、自由貿易協定(FTA)を締結しているシンガポール、ブルネイ、チリ、NZが交渉を開始しているが、農業を含む貿易自由化の一層の促進から、金融・電気通信、医療などのサービス、投資の自由化、労働規制の調和などを目的とするもので、加入するとなると経済・社会分野に大きな影響が出るものと予想される。
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業
 日本は、工業製品のほとんどが自由化されており、農産品を除く平均関税率も3.8%程度となっているが、農産品については平均関税率が21%強と保護されており、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加において農業が最大の争点になっている。日本の農業を代表する米は関税率778%である。
 日本の農業が、大規模農業国である米国、豪州などと自由な市場で競争して行くことは難しいことは明らかであり、また農業を持たないシンガポ-ルやブルネイと同様に自由化出来るものでもない。
TPPに加入すれば日本農業をこれまでのような形で維持して行くことは困難であり、交渉参加は慎重にならざるを得ない。しかし、この議論は生産者の側の伝統的な議論であり、理解出来るところではあるが、2つの点を考慮していない。
一つは消費者のメリットである。現在も多くの農作物が輸入され消費者の選択を多様にしているが、農産品・酪農品の自由化が進めば価格も実質的に下がり、選択の幅は広がる。
もう一つは、日本の農業をこれまでのように保護し続けられるのかということである。
戦後、大農、小作制度が解体・廃止され、農地改革により小規模自営農に移行したが、米の食管制度や農協制度、農道整備などの各種の農村支援により保護され、戦後の食糧難時代の食糧確保や失業の受け皿などとして日本の食を支えて来た。しかしそのような農業支援にも拘わらず、農業人口は減少する一方であり、農家人口は現在総人口の6%以下、農業を主としている農業就業人口は2%半ばとなっている。更に農業就業者の老齢化が進み、女性が占める割合も50%を超え、30%以上が65歳以上という状況になっている。90年代初頭より、農家に嫁が来ない状況が始まり、その後農家に後継者も残らない現象も起こっており、農家の老齢化に拍車を掛けている。農林水産政策研究所の推計では、「農家人口は,1990年に1,760万人だったのが,2020年には752万人と1990年の43.5%になる。農業就業人口は,1990年に565万人だったのが,2020年には200万人と1990年の35%に減少する。」90年代半ば頃よりのバブル経済崩壊以降の経済停滞が、米国や欧州の金融、財政危機という外部経済要因や東日本大災害等の内外の要因で更に長期化すると、若干の農業回帰は起こる可能性もあろう。だが青年層の農業離れと社会的な少子化から、農業就業人口の減少と老齢化が一層加速化すると予想される。従来の農業保護政策では農業就業人口の減少は止められなかったと言える。この状況で日本農業を支えて行けるだろうか。
 TPPへの交渉参加を行わず、従来のような農業保護策を継続しても農業離れを食い止めることは困難であろう。その場合、消費者はTPP加入によるメリットを受けられない上、農業保護のための税負担と割高な食料価格に甘んじなくてはならない。200万人内外の農業就業者保護のため、日本の将来、針路を左右して良いのであろうか。恐らく、多くの農業就業者はそれを望んではいないであろう。日本の市場は、少子化と消費マインドの萎縮、低成長傾向などにより、今後拡大は望めない。従って、日本としては世界市場の拡大を図って行くことが課題だ。
 TPPに参加しても、直ちに全ての農産品が完全自由化されるということではない。参加国それぞれが関心品目を持っており、関係国間で交渉して相互に取引することになる。日本の農業は、いずれにしても小規模自営農から大規模農営、企業化を容認する方向に転換を図って行かなくてはならない時期にある。TPPへの交渉に参加し、その過程で日本の優位性を発揮できる形で転換を図って行くべきであろう。その場合、関係農家への所得補償などが必要であろう。北海道と岩手、宮城両県などに農業特区を設け、大規模農営、企業化のモデルとすることも検討に値しよう。
 一方TPPへの交渉不参加を主張する側は、農業離れの中で老齢化する日本農業をどのように建て直し、青年層を引き付けられるような将来性のある農業を再構築するための対案を示すべきであろう。後ろ向きの保護主義の継続は日本農業を更に縮小させることになろう。TPPへ参加すれば、確かに安い農作物が流入し、一部の農家を圧迫するであろうが、価格が全てを決定するものではなく、消費者の選択は多様化している。選択は消費者が行うものであり、品質や安全性などで差別化し消費者を引き付ける工夫も出来るであろうし、その努力を惜しむべきではない。また海外に市場が開けるので、そのメリットを生かし、希望の持てる農業生産のあり方も検討出来るであろう。決して容易なことではないが、何事も取り組まなければ始まらない。
また食品の安全基準や農薬基準などの面を危惧する者もいるが、それは派生する問題として検討されることになるとしても、国際基準が出来ること自体は望ましいことであるので、わが国の基準の適切性を主張し、国際基準に反映されるよう貢献することが望まれる。
(2011.10.26.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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 環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加問題が昨年来活発に議論され、11月にハワイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を前にして、交渉参加を表明するか否かで政府与党や野党内で意見が分かれている。野田首相は、基本的に交渉参加に意欲的であり、APEC首脳会議前の意見集約を指示したとされている。
 TPPには、米国、豪州、マレイシア、ベトナム、ペルーの5カ国に加え、自由貿易協定(FTA)を締結しているシンガポール、ブルネイ、チリ、NZが交渉を開始しているが、農業を含む貿易自由化の一層の促進から、金融・電気通信、医療などのサービス、投資の自由化、労働規制の調和などを目的とするもので、加入するとなると経済・社会分野に大きな影響が出るものと予想される。
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業
 日本は、工業製品のほとんどが自由化されており、農産品を除く平均関税率も3.8%程度となっているが、農産品については平均関税率が21%強と保護されており、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加において農業が最大の争点になっている。日本の農業を代表する米は関税率778%である。
 日本の農業が、大規模農業国である米国、豪州などと自由な市場で競争して行くことは難しいことは明らかであり、また農業を持たないシンガポ-ルやブルネイと同様に自由化出来るものでもない。
TPPに加入すれば日本農業をこれまでのような形で維持して行くことは困難であり、交渉参加は慎重にならざるを得ない。しかし、この議論は生産者の側の伝統的な議論であり、理解出来るところではあるが、2つの点を考慮していない。
一つは消費者のメリットである。現在も多くの農作物が輸入され消費者の選択を多様にしているが、農産品・酪農品の自由化が進めば価格も実質的に下がり、選択の幅は広がる。
もう一つは、日本の農業をこれまでのように保護し続けられるのかということである。
戦後、大農、小作制度が解体・廃止され、農地改革により小規模自営農に移行したが、米の食管制度や農協制度、農道整備などの各種の農村支援により保護され、戦後の食糧難時代の食糧確保や失業の受け皿などとして日本の食を支えて来た。しかしそのような農業支援にも拘わらず、農業人口は減少する一方であり、農家人口は現在総人口の6%以下、農業を主としている農業就業人口は2%半ばとなっている。更に農業就業者の老齢化が進み、女性が占める割合も50%を超え、30%以上が65歳以上という状況になっている。90年代初頭より、農家に嫁が来ない状況が始まり、その後農家に後継者も残らない現象も起こっており、農家の老齢化に拍車を掛けている。農林水産政策研究所の推計では、「農家人口は,1990年に1,760万人だったのが,2020年には752万人と1990年の43.5%になる。農業就業人口は,1990年に565万人だったのが,2020年には200万人と1990年の35%に減少する。」90年代半ば頃よりのバブル経済崩壊以降の経済停滞が、米国や欧州の金融、財政危機という外部経済要因や東日本大災害等の内外の要因で更に長期化すると、若干の農業回帰は起こる可能性もあろう。だが青年層の農業離れと社会的な少子化から、農業就業人口の減少と老齢化が一層加速化すると予想される。従来の農業保護政策では農業就業人口の減少は止められなかったと言える。この状況で日本農業を支えて行けるだろうか。
 TPPへの交渉参加を行わず、従来のような農業保護策を継続しても農業離れを食い止めることは困難であろう。その場合、消費者はTPP加入によるメリットを受けられない上、農業保護のための税負担と割高な食料価格に甘んじなくてはならない。200万人内外の農業就業者保護のため、日本の将来、針路を左右して良いのであろうか。恐らく、多くの農業就業者はそれを望んではいないであろう。日本の市場は、少子化と消費マインドの萎縮、低成長傾向などにより、今後拡大は望めない。従って、日本としては世界市場の拡大を図って行くことが課題だ。
 TPPに参加しても、直ちに全ての農産品が完全自由化されるということではない。参加国それぞれが関心品目を持っており、関係国間で交渉して相互に取引することになる。日本の農業は、いずれにしても小規模自営農から大規模農営、企業化を容認する方向に転換を図って行かなくてはならない時期にある。TPPへの交渉に参加し、その過程で日本の優位性を発揮できる形で転換を図って行くべきであろう。その場合、関係農家への所得補償などが必要であろう。北海道と岩手、宮城両県などに農業特区を設け、大規模農営、企業化のモデルとすることも検討に値しよう。
 一方TPPへの交渉不参加を主張する側は、農業離れの中で老齢化する日本農業をどのように建て直し、青年層を引き付けられるような将来性のある農業を再構築するための対案を示すべきであろう。後ろ向きの保護主義の継続は日本農業を更に縮小させることになろう。TPPへ参加すれば、確かに安い農作物が流入し、一部の農家を圧迫するであろうが、価格が全てを決定するものではなく、消費者の選択は多様化している。選択は消費者が行うものであり、品質や安全性などで差別化し消費者を引き付ける工夫も出来るであろうし、その努力を惜しむべきではない。また海外に市場が開けるので、そのメリットを生かし、希望の持てる農業生産のあり方も検討出来るであろう。決して容易なことではないが、何事も取り組まなければ始まらない。
また食品の安全基準や農薬基準などの面を危惧する者もいるが、それは派生する問題として検討されることになるとしても、国際基準が出来ること自体は望ましいことであるので、わが国の基準の適切性を主張し、国際基準に反映されるよう貢献することが望まれる。
(2011.10.26.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)

2011-10-27 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)
 環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加問題が昨年来活発に議論され、11月にハワイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を前にして、交渉参加を表明するか否かで政府与党や野党内で意見が分かれている。野田首相は、基本的に交渉参加に意欲的であり、APEC首脳会議前の意見集約を指示したとされている。
 TPPには、米国、豪州、マレイシア、ベトナム、ペルーの5カ国に加え、自由貿易協定(FTA)を締結しているシンガポール、ブルネイ、チリ、NZが交渉を開始しているが、農業を含む貿易自由化の一層の促進から、金融・電気通信、医療などのサービス、投資の自由化、労働規制の調和などを目的とするもので、加入するとなると経済・社会分野に大きな影響が出るものと予想される。
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業
 日本は、工業製品のほとんどが自由化されており、農産品を除く平均関税率も3.8%程度となっているが、農産品については平均関税率が21%強と保護されており、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加において農業が最大の争点になっている。日本の農業を代表する米は関税率778%である。
 日本の農業が、大規模農業国である米国、豪州などと自由な市場で競争して行くことは難しいことは明らかであり、また農業を持たないシンガポ-ルやブルネイと同様に自由化出来るものでもない。
TPPに加入すれば日本農業をこれまでのような形で維持して行くことは困難であり、交渉参加は慎重にならざるを得ない。しかし、この議論は生産者の側の伝統的な議論であり、理解出来るところではあるが、2つの点を考慮していない。
一つは消費者のメリットである。現在も多くの農作物が輸入され消費者の選択を多様にしているが、農産品・酪農品の自由化が進めば価格も実質的に下がり、選択の幅は広がる。
もう一つは、日本の農業をこれまでのように保護し続けられるのかということである。
戦後、大農、小作制度が解体・廃止され、農地改革により小規模自営農に移行したが、米の食管制度や農協制度、農道整備などの各種の農村支援により保護され、戦後の食糧難時代の食糧確保や失業の受け皿などとして日本の食を支えて来た。しかしそのような農業支援にも拘わらず、農業人口は減少する一方であり、農家人口は現在総人口の6%以下、農業を主としている農業就業人口は2%半ばとなっている。更に農業就業者の老齢化が進み、女性が占める割合も50%を超え、30%以上が65歳以上という状況になっている。90年代初頭より、農家に嫁が来ない状況が始まり、その後農家に後継者も残らない現象も起こっており、農家の老齢化に拍車を掛けている。農林水産政策研究所の推計では、「農家人口は,1990年に1,760万人だったのが,2020年には752万人と1990年の43.5%になる。農業就業人口は,1990年に565万人だったのが,2020年には200万人と1990年の35%に減少する。」90年代半ば頃よりのバブル経済崩壊以降の経済停滞が、米国や欧州の金融、財政危機という外部経済要因や東日本大災害等の内外の要因で更に長期化すると、若干の農業回帰は起こる可能性もあろう。だが青年層の農業離れと社会的な少子化から、農業就業人口の減少と老齢化が一層加速化すると予想される。従来の農業保護政策では農業就業人口の減少は止められなかったと言える。この状況で日本農業を支えて行けるだろうか。
 TPPへの交渉参加を行わず、従来のような農業保護策を継続しても農業離れを食い止めることは困難であろう。その場合、消費者はTPP加入によるメリットを受けられない上、農業保護のための税負担と割高な食料価格に甘んじなくてはならない。200万人内外の農業就業者保護のため、日本の将来、針路を左右して良いのであろうか。恐らく、多くの農業就業者はそれを望んではいないであろう。日本の市場は、少子化と消費マインドの萎縮、低成長傾向などにより、今後拡大は望めない。従って、日本としては世界市場の拡大を図って行くことが課題だ。
 TPPに参加しても、直ちに全ての農産品が完全自由化されるということではない。参加国それぞれが関心品目を持っており、関係国間で交渉して相互に取引することになる。日本の農業は、いずれにしても小規模自営農から大規模農営、企業化を容認する方向に転換を図って行かなくてはならない時期にある。TPPへの交渉に参加し、その過程で日本の優位性を発揮できる形で転換を図って行くべきであろう。その場合、関係農家への所得補償などが必要であろう。北海道と岩手、宮城両県などに農業特区を設け、大規模農営、企業化のモデルとすることも検討に値しよう。
 一方TPPへの交渉不参加を主張する側は、農業離れの中で老齢化する日本農業をどのように建て直し、青年層を引き付けられるような将来性のある農業を再構築するための対案を示すべきであろう。後ろ向きの保護主義の継続は日本農業を更に縮小させることになろう。TPPへ参加すれば、確かに安い農作物が流入し、一部の農家を圧迫するであろうが、価格が全てを決定するものではなく、消費者の選択は多様化している。選択は消費者が行うものであり、品質や安全性などで差別化し消費者を引き付ける工夫も出来るであろうし、その努力を惜しむべきではない。また海外に市場が開けるので、そのメリットを生かし、希望の持てる農業生産のあり方も検討出来るであろう。決して容易なことではないが、何事も取り組まなければ始まらない。
また食品の安全基準や農薬基準などの面を危惧する者もいるが、それは派生する問題として検討されることになるとしても、国際基準が出来ること自体は望ましいことであるので、わが国の基準の適切性を主張し、国際基準に反映されるよう貢献することが望まれる。
(2011.10.26.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)

2011-10-27 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を支持する (その1)
 環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加問題が昨年来活発に議論され、11月にハワイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を前にして、交渉参加を表明するか否かで政府与党や野党内で意見が分かれている。野田首相は、基本的に交渉参加に意欲的であり、APEC首脳会議前の意見集約を指示したとされている。
 TPPには、米国、豪州、マレイシア、ベトナム、ペルーの5カ国に加え、自由貿易協定(FTA)を締結しているシンガポール、ブルネイ、チリ、NZが交渉を開始しているが、農業を含む貿易自由化の一層の促進から、金融・電気通信、医療などのサービス、投資の自由化、労働規制の調和などを目的とするもので、加入するとなると経済・社会分野に大きな影響が出るものと予想される。
 1、いずれにしても転換が迫られている日本農業
 日本は、工業製品のほとんどが自由化されており、農産品を除く平均関税率も3.8%程度となっているが、農産品については平均関税率が21%強と保護されており、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加において農業が最大の争点になっている。日本の農業を代表する米は関税率778%である。
 日本の農業が、大規模農業国である米国、豪州などと自由な市場で競争して行くことは難しいことは明らかであり、また農業を持たないシンガポ-ルやブルネイと同様に自由化出来るものでもない。
TPPに加入すれば日本農業をこれまでのような形で維持して行くことは困難であり、交渉参加は慎重にならざるを得ない。しかし、この議論は生産者の側の伝統的な議論であり、理解出来るところではあるが、2つの点を考慮していない。
一つは消費者のメリットである。現在も多くの農作物が輸入され消費者の選択を多様にしているが、農産品・酪農品の自由化が進めば価格も実質的に下がり、選択の幅は広がる。
もう一つは、日本の農業をこれまでのように保護し続けられるのかということである。
戦後、大農、小作制度が解体・廃止され、農地改革により小規模自営農に移行したが、米の食管制度や農協制度、農道整備などの各種の農村支援により保護され、戦後の食糧難時代の食糧確保や失業の受け皿などとして日本の食を支えて来た。しかしそのような農業支援にも拘わらず、農業人口は減少する一方であり、農家人口は現在総人口の6%以下、農業を主としている農業就業人口は2%半ばとなっている。更に農業就業者の老齢化が進み、女性が占める割合も50%を超え、30%以上が65歳以上という状況になっている。90年代初頭より、農家に嫁が来ない状況が始まり、その後農家に後継者も残らない現象も起こっており、農家の老齢化に拍車を掛けている。農林水産政策研究所の推計では、「農家人口は,1990年に1,760万人だったのが,2020年には752万人と1990年の43.5%になる。農業就業人口は,1990年に565万人だったのが,2020年には200万人と1990年の35%に減少する。」90年代半ば頃よりのバブル経済崩壊以降の経済停滞が、米国や欧州の金融、財政危機という外部経済要因や東日本大災害等の内外の要因で更に長期化すると、若干の農業回帰は起こる可能性もあろう。だが青年層の農業離れと社会的な少子化から、農業就業人口の減少と老齢化が一層加速化すると予想される。従来の農業保護政策では農業就業人口の減少は止められなかったと言える。この状況で日本農業を支えて行けるだろうか。
 TPPへの交渉参加を行わず、従来のような農業保護策を継続しても農業離れを食い止めることは困難であろう。その場合、消費者はTPP加入によるメリットを受けられない上、農業保護のための税負担と割高な食料価格に甘んじなくてはならない。200万人内外の農業就業者保護のため、日本の将来、針路を左右して良いのであろうか。恐らく、多くの農業就業者はそれを望んではいないであろう。日本の市場は、少子化と消費マインドの萎縮、低成長傾向などにより、今後拡大は望めない。従って、日本としては世界市場の拡大を図って行くことが課題だ。
 TPPに参加しても、直ちに全ての農産品が完全自由化されるということではない。参加国それぞれが関心品目を持っており、関係国間で交渉して相互に取引することになる。日本の農業は、いずれにしても小規模自営農から大規模農営、企業化を容認する方向に転換を図って行かなくてはならない時期にある。TPPへの交渉に参加し、その過程で日本の優位性を発揮できる形で転換を図って行くべきであろう。その場合、関係農家への所得補償などが必要であろう。北海道と岩手、宮城両県などに農業特区を設け、大規模農営、企業化のモデルとすることも検討に値しよう。
 一方TPPへの交渉不参加を主張する側は、農業離れの中で老齢化する日本農業をどのように建て直し、青年層を引き付けられるような将来性のある農業を再構築するための対案を示すべきであろう。後ろ向きの保護主義の継続は日本農業を更に縮小させることになろう。TPPへ参加すれば、確かに安い農作物が流入し、一部の農家を圧迫するであろうが、価格が全てを決定するものではなく、消費者の選択は多様化している。選択は消費者が行うものであり、品質や安全性などで差別化し消費者を引き付ける工夫も出来るであろうし、その努力を惜しむべきではない。また海外に市場が開けるので、そのメリットを生かし、希望の持てる農業生産のあり方も検討出来るであろう。決して容易なことではないが、何事も取り組まなければ始まらない。
また食品の安全基準や農薬基準などの面を危惧する者もいるが、それは派生する問題として検討されることになるとしても、国際基準が出来ること自体は望ましいことであるので、わが国の基準の適切性を主張し、国際基準に反映されるよう貢献することが望まれる。
(2011.10.26.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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