内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

消費税増税の実施を支持する  (その2)

2013-09-18 | Weblog

消費税増税の実施を支持する  (その2)

 2014年4月から消費税の8%への増税実施を控え(翌15年10月より10%)、その条件となっている経済状況の好転について判断が迫られており、政府は8月下旬には各界から60人の識者から意見を聴取した。意見は賛成論が多かったようであるが、賛否両論と言ったところであり、濃淡はあるが、次の2つの意見に分かれている。

 (1)  年金、医療、介護保険といった社会福祉関係費が増加し、歳入不足は解消しないので消費増税は必要。

 (2)  経済は好転していると言われているが、家計所得や中小企業の所得が増加するに至っておらず、消費増税が実施されると生活は苦しくなる上、   景気に悪影響。

 経済専門家もおおよそ同じような意見であり、どちらに決められても不思議はない。多くの国民は、消費増税を望んではいないが、仕方ないないと思っていると見られる。しかし同時に多くの国民は、家計にしても事業経営にしても収入不足であれば、まず倹約、節約しなければ赤字は解消出来ないことを知っており、国家財政は何故それが出来ないのかという極く自然な疑問を抱いていると見られている。

 今後少子高齢化が更に進み、社会福祉関係費が増加する一方、生産人口、従って国民全体の税負担能力が低下することを考慮すると、消費税増税は仕方ないことであり、法律に従って実施することを支持する。他方、内閣や多くの消費増税支持者、そして行政当局自身が歳入不足を認識していながら、歳入増を図るのは良いが、何故行政経費、特に人件費、管理費の節減を実施しないのだろうか。また社会福祉関係費が中・長期的に増え続けるという認識であれば、何故予算配分を変えようとしないのだろうかという疑問も理解出来るところだ。家計はもとより、どの企業でも団体でも収入不足で赤字となれば取り組まねばならないことであろう。

 また税収を図る上で経済回復が不可欠であるが、そのためにはまず企業や農業、漁業を含む事業者が、外国人投資家を含め、自発的に新規投資し、或いは起業し易い環境を整えて行くことが重要なのではないだろうか。

 1、税収増努力と共に不可欠な行政管理経費の節減と簡素化  (その1で掲載)

 2、企業や起業家の活力や地方の活力を引き出す施策が必要  

 消費需要や民間投資が未だ本格的な回復を示していない中で、景気回復の下支え、或いは呼び水として政府需要、特に公共事業が期待されて来た。伝統的に公共事業による効果は認められるところである。しかし日本の場合、バブル経済の崩壊が進行し始めた1993年から基礎的財政収支は赤字に転じ、景気対策としての公共事業はそれ以降今日まで国債など国の公的債務で手当され始め、景気停滞の中で借金の幅が大きくなって来ている。

 1991年以降の財政収支の推移                     (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

収支

  7.9

  8.2

  2.9

-12.6

-19.3

-23.7

-28.1

-23.1

-30.4

-39.2

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

収支

-41.0

-30.5

-38.5

-38.8

-30.0

-24.3

-18.5

-10.7

-20.6

-49.0

 

年代

2010

2011

2012

2013

収支

-44.9

-46.8

-48.2*

-47.1*

                   *は推定   参考:IMF統計

  日本の政府総債務残高の推移(中央政府、地方政府、及び社会保障基金の債務合計) (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

総残高

301.3

316,.8

347.5

379.3

413.2

457.7

506.7

552.4

606.3

665.8

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

総残高

714.5

776.7

818.6

845.9

910.0

939.5

942.4

938.8

961.4

990.6

 

年代

2010

2011

2012

2013

総残高

1,041.7

1,083.8

1,132.2*

1,178.3*

                   *は推定   参考:IMF統計

  従って景気刺激のための公共事業は、1990年代中頃からの長期の経済停滞の下支えとして一定の効果があったとしても、景気回復の呼び水としての役割は果たしていないと言えよう。公共事業が景気を刺激するには、前年より大幅に増額しなくては効果がないが、長期に亘って借り入れを前提として公共事業を継続して来ているので、増加したとしても相対的に小幅となり景気への効果は小さい。確かに公共事業は嘗て必要な社会・経済インフラを整備するなど、貢献して来ているが、その一次効果は公共事業関係業界であり、それが長期に継続するとこれら業界は公共事業に依存し、自発的な発展を阻害する一方、景気対策の選択肢を狭め、各種産業の自発的な発展には貢献しない状況ともなる。それは公的債務を重ね、公共事業を長期に継続して来たが、建設業界自体も自発的、自立的な回復、発展の道筋を示せていない上、経済停滞から脱却できなかったことからも明らかであろう。また新規の公共事業はその維持管理のための後年度負担を増加させ続け、地方経済を圧迫することにもなる。もっとも2020年に東京オリンピックの開催が決定したことにより、短期的には効果は限定的となるが、2020年が近くなるにつれて関連産業への効果はひろがるものと期待される。

 経済回復を図るには、一定の公共事業やは必要ではあるが、経済全体や地方の自発的回復、発展を引き出す施策に重点を移すことが不可欠と言え、次のような施策が期待される。なお、補助金や助成金も対象を限定して実施する場合一定の効果があるが、経済全体を対象とする補助金等は困難である上、減免税の方が対象が広く、企業、個人の自発的な活力を引き出し易いので、ここでは減免税を中心に例示した。

 (1)  法人所得及び事業税の減税

 日本の企業関係税は主要各国に比べ割高であり、日本の企業の収益を圧迫し、企業経営のみならず、役員報酬を含め給与引き上げにも抑制要因となっている上、外国投資、特に直接投資の抑制要因になっている。従って法人所得税、及び事業税水準を引き下げると共に、事業税については事業収入の額に従って標準税率を設定し、上下5%については都道府県に委ねることとし、地方の特性を発揮しやすくすることが望ましい。

 (2)  新規の起業に際しては、2年間法人所得税の猶予

 経済回復のためには、新規の起業を増やすことが必要であるが、新規起業には初期投資(事業所、人件費、仕入れなど)が必要な上、軌道に乗るまでリスクを伴うので、2年間は法人所得税を猶予し、起業し易い環境を整えることが望ましい。

 (3)  株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税

 1990年代中頃以降のバブル崩壊による資産デフレの状況から脱するためには、適正水準の円安への為替是正を維持、安定化させ、輸出関連産業や観光産業が経済を牽引できるようにし、株価を日経平均1万5千円内外から2万円台で安定化させることが重要であろう。しかし一般投資家、特に小口投資家の証券投資への不信感は根強く、また預金金利が超低水準であり、取引手数料や物価上昇を加味すると実質マイナス金利ともなるので、たんす預金化し、資金が保蔵される傾向が強い。これらの保蔵資金を市場に循環させることが重要であるので、株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税が効果的であろう。この措置は、一見税収減となるように思えるが、そもそも保蔵されている資金を市場に還流させ、投資を促進し、一般投資家の消費等を誘引することになると予想される。

 (4)1500cc以下の自動車諸税の減税と車検の5年間への延長など

  従来、減税は税収を減少させ、また効果は期待できないとされて来たが、経済の自発的な回復を図る上では、減税や非課税かは起業家や個人投資家の自発的な投資、出費を引き出す上で最も効果的であろう。その上、税収を図る上では経済の活性化、回復を図ることが最も効果的であることは誰しもが認めるところであろう。減税により経済、社会活動を誘導、促進する手法は多くの先進工業諸国でも取られている。(2013.09.10.)

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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費税増税の実施を支持する  (その2)

2013-09-18 | Weblog

費税増税の実施を支持する  (その2)

 2014年4月から消費税の8%への増税実施を控え(翌15年10月より10%)、その条件となっている経済状況の好転について判断が迫られており、政府は8月下旬には各界から60人の識者から意見を聴取した。意見は賛成論が多かったようであるが、賛否両論と言ったところであり、濃淡はあるが、次の2つの意見に分かれている。

 (1)  年金、医療、介護保険といった社会福祉関係費が増加し、歳入不足は解消しないので消費増税は必要。

 (2)  経済は好転していると言われているが、家計所得や中小企業の所得が増加するに至っておらず、消費増税が実施されると生活は苦しくなる上、   景気に悪影響。

 経済専門家もおおよそ同じような意見であり、どちらに決められても不思議はない。多くの国民は、消費増税を望んではいないが、仕方ないないと思っていると見られる。しかし同時に多くの国民は、家計にしても事業経営にしても収入不足であれば、まず倹約、節約しなければ赤字は解消出来ないことを知っており、国家財政は何故それが出来ないのかという極く自然な疑問を抱いていると見られている。

 今後少子高齢化が更に進み、社会福祉関係費が増加する一方、生産人口、従って国民全体の税負担能力が低下することを考慮すると、消費税増税は仕方ないことであり、法律に従って実施することを支持する。他方、内閣や多くの消費増税支持者、そして行政当局自身が歳入不足を認識していながら、歳入増を図るのは良いが、何故行政経費、特に人件費、管理費の節減を実施しないのだろうか。また社会福祉関係費が中・長期的に増え続けるという認識であれば、何故予算配分を変えようとしないのだろうかという疑問も理解出来るところだ。家計はもとより、どの企業でも団体でも収入不足で赤字となれば取り組まねばならないことであろう。

 また税収を図る上で経済回復が不可欠であるが、そのためにはまず企業や農業、漁業を含む事業者が、外国人投資家を含め、自発的に新規投資し、或いは起業し易い環境を整えて行くことが重要なのではないだろうか。

 1、税収増努力と共に不可欠な行政管理経費の節減と簡素化  (その1で掲載)

 2、企業や起業家の活力や地方の活力を引き出す施策が必要  

 消費需要や民間投資が未だ本格的な回復を示していない中で、景気回復の下支え、或いは呼び水として政府需要、特に公共事業が期待されて来た。伝統的に公共事業による効果は認められるところである。しかし日本の場合、バブル経済の崩壊が進行し始めた1993年から基礎的財政収支は赤字に転じ、景気対策としての公共事業はそれ以降今日まで国債など国の公的債務で手当され始め、景気停滞の中で借金の幅が大きくなって来ている。

 1991年以降の財政収支の推移                     (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

収支

  7.9

  8.2

  2.9

-12.6

-19.3

-23.7

-28.1

-23.1

-30.4

-39.2

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

収支

-41.0

-30.5

-38.5

-38.8

-30.0

-24.3

-18.5

-10.7

-20.6

-49.0

 

年代

2010

2011

2012

2013

収支

-44.9

-46.8

-48.2*

-47.1*

                   *は推定   参考:IMF統計

  日本の政府総債務残高の推移(中央政府、地方政府、及び社会保障基金の債務合計) (単位 兆円)

年代

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

総残高

301.3

316,.8

347.5

379.3

413.2

457.7

506.7

552.4

606.3

665.8

 

年代

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

総残高

714.5

776.7

818.6

845.9

910.0

939.5

942.4

938.8

961.4

990.6

 

年代

2010

2011

2012

2013

総残高

1,041.7

1,083.8

1,132.2*

1,178.3*

                   *は推定   参考:IMF統計

  従って景気刺激のための公共事業は、1990年代中頃からの長期の経済停滞の下支えとして一定の効果があったとしても、景気回復の呼び水としての役割は果たしていないと言えよう。公共事業が景気を刺激するには、前年より大幅に増額しなくては効果がないが、長期に亘って借り入れを前提として公共事業を継続して来ているので、増加したとしても相対的に小幅となり景気への効果は小さい。確かに公共事業は嘗て必要な社会・経済インフラを整備するなど、貢献して来ているが、その一次効果は公共事業関係業界であり、それが長期に継続するとこれら業界は公共事業に依存し、自発的な発展を阻害する一方、景気対策の選択肢を狭め、各種産業の自発的な発展には貢献しない状況ともなる。それは公的債務を重ね、公共事業を長期に継続して来たが、建設業界自体も自発的、自立的な回復、発展の道筋を示せていない上、経済停滞から脱却できなかったことからも明らかであろう。また新規の公共事業はその維持管理のための後年度負担を増加させ続け、地方経済を圧迫することにもなる。もっとも2020年に東京オリンピックの開催が決定したことにより、短期的には効果は限定的となるが、2020年が近くなるにつれて関連産業への効果はひろがるものと期待される。

 経済回復を図るには、一定の公共事業やは必要ではあるが、経済全体や地方の自発的回復、発展を引き出す施策に重点を移すことが不可欠と言え、次のような施策が期待される。なお、補助金や助成金も対象を限定して実施する場合一定の効果があるが、経済全体を対象とする補助金等は困難である上、減免税の方が対象が広く、企業、個人の自発的な活力を引き出し易いので、ここでは減免税を中心に例示した。

 (1)  法人所得及び事業税の減税

 日本の企業関係税は主要各国に比べ割高であり、日本の企業の収益を圧迫し、企業経営のみならず、役員報酬を含め給与引き上げにも抑制要因となっている上、外国投資、特に直接投資の抑制要因になっている。従って法人所得税、及び事業税水準を引き下げると共に、事業税については事業収入の額に従って標準税率を設定し、上下5%については都道府県に委ねることとし、地方の特性を発揮しやすくすることが望ましい。

 (2)  新規の起業に際しては、2年間法人所得税の猶予

 経済回復のためには、新規の起業を増やすことが必要であるが、新規起業には初期投資(事業所、人件費、仕入れなど)が必要な上、軌道に乗るまでリスクを伴うので、2年間は法人所得税を猶予し、起業し易い環境を整えることが望ましい。

 (3)  株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税

 1990年代中頃以降のバブル崩壊による資産デフレの状況から脱するためには、適正水準の円安への為替是正を維持、安定化させ、輸出関連産業や観光産業が経済を牽引できるようにし、株価を日経平均1万5千円内外から2万円台で安定化させることが重要であろう。しかし一般投資家、特に小口投資家の証券投資への不信感は根強く、また預金金利が超低水準であり、取引手数料や物価上昇を加味すると実質マイナス金利ともなるので、たんす預金化し、資金が保蔵される傾向が強い。これらの保蔵資金を市場に循環させることが重要であるので、株式・投信譲渡所得の年間500万円以下の非課税、1500万円以下の減税が効果的であろう。この措置は、一見税収減となるように思えるが、そもそも保蔵されている資金を市場に還流させ、投資を促進し、一般投資家の消費等を誘引することになると予想される。

 (4)1500cc以下の自動車諸税の減税と車検の5年間への延長など

  従来、減税は税収を減少させ、また効果は期待できないとされて来たが、経済の自発的な回復を図る上では、減税や非課税かは起業家や個人投資家の自発的な投資、出費を引き出す上で最も効果的であろう。その上、税収を図る上では経済の活性化、回復を図ることが最も効果的であることは誰しもが認めるところであろう。減税により経済、社会活動を誘導、促進する手法は多くの先進工業諸国でも取られている。(2013.09.10.)

(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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消費税増税の実施を支持する  (その1)

2013-09-18 | Weblog

消費税増税の実施を支持する  (その1)

 2014年4月から消費税の8%への増税実施を控え(翌15年10月より10%)、その条件となっている経済状況の好転について判断が迫られており、政府は8月下旬には各界から60人の識者から意見を聴取した。意見は賛成論が多かったようであるが、賛否両論と言ったところであり、濃淡はあるが、次の2つの意見に分かれている。

 (1)  年金、医療、介護保険といった社会福祉関係費が増加し、歳入不足は解消しないので消費増税は必要。

 (2)  経済は好転していると言われているが、家計所得や中小企業の所得が増加するに至っておらず、消費増税が実施されると生活は苦しくなる上、   景気に悪影響。

 経済専門家もおおよそ同じような意見であり、どちらに決められても不思議はない。多くの国民は、消費増税を望んではいないが、仕方ないないと思っていると見られる。しかし同時に多くの国民は、家計にしても事業経営にしても収入不足であれば、まず倹約、節約しなければ赤字は解消出来ないことを知っており、国家財政は何故それが出来ないのかという極く自然な疑問を抱いていると見られている。

 今後少子高齢化が更に進み、社会福祉関係費が増加する一方、生産人口、従って国民全体の税負担能力が低下することを考慮すると、消費税増税は仕方ないことであり、法律に従って実施することを支持する。他方、内閣や多くの消費増税支持者、そして行政当局自身が歳入不足を認識していながら、歳入増を図るのは良いが、何故行政経費、特に人件費、管理費の節減を実施しないのだろうか。また社会福祉関係費が中・長期的に増え続けるという認識であれば、何故予算配分を変えようとしないのだろうかという疑問も理解出来るところだ。家計はもとより、どの企業でも団体でも収入不足で赤字となれば取り組まねばならないことであろう。

 また税収を図る上で経済回復が不可欠であるが、そのためにはまず企業や農業、漁業を含む事業者が、外国人投資家を含め、自発的に新規投資し、或いは起業し易い環境を整えて行くことが重要なのではないだろうか。

 1、税収増努力と共に不可欠な行政管理経費の節減と簡素化

 今後少子高齢化と人口減、特に就業人口の減少を勘案すると、消費増税等による増収は国民一人当たりの負担を増加させて行くことになるので、少子長寿化、人口減に備えて人件費、管理費を段階的に節減すると共に、政策的経費の新たなニーズ、優先度に沿った組み換えを行うことが望ましい。

 行政当局は、社会福祉関係費の漸増による歳入不足を解消するため、消費増税は必要としているが、それは「その他の経費の現状維持」を大前提とした議論である。内閣府は、消費税を予定通り10%まで引き上げても、2020年までの基礎的財政収支の黒字化は困難との試算を明らかにしており、一部には15%への消費増税が示唆されているが、「その他の経費の現状維持」を前提としている。行政当局も、少子長寿化と人口減、特に就業人口の減少と社会福祉関係費の漸増を十分認識しており、その上で更なる消費増税を予想している。社会福祉関係費の漸増を趨勢として認めなくてはならない以上、「その他の経費の現状維持」を行うことは困難なことは行政当局自身も認めていることになる。

 消費税1%分の増収は2.5―2.7兆円と言われている。もし行政当局自身が2020年度の基礎的収支達成には更に5%の消費税増税が必要との試算であれば、10%までの消費増税は実施する一方、追加的に必要とされる5%の消費増税による増収分12.5兆円相当分は行政経費の節減で対応することが、少子長寿化、人口減に備えた対応としても望ましいのではないだろうか。行政当局自身による統計と試算に基づくものであるので、理解が得られると思われる。

 会計検査院は、6月26日、“官庁や政府出資法人に対して過剰な余剰積立など不適切な会計処理を指摘した結果、2012年9月までの1年間に約1.8兆円の改善効果があった“とする試算を公表している。これは、独立行政法人の過剰な余剰金の積み上げや労働保険、年金などの特別会計への一般会計からの余分な繰入などであり、過大な補助金の返還や不要財産の国庫返納などとして処理され、不適正経費等が節減されることになる。もっとも会計検査院が毎年1.8 兆円の不適切な会計処理を指摘することは困難とも見られるが、2012年にも約1.1 兆円の改善指摘を行っているので、毎年1-2兆円規模の改善指摘を行うことは不可能ではないだろう。しかしそれも「現行の組織・制度の維持」を前提としているので、「現行の組織・制度」について節減の可能性を点検する必要がある。都道府県についても交付金や各種補助金を受けているので、過剰、不適正な会計処理については国が、また市区町村については都道府県が検査し、改善指摘を実施することが望ましい。

 追加的に必要とされる消費増税5%分の節減をするとなると、会計検査院による改善指摘1-2兆円規模に加え、「現行の組織・制度」からの節減を毎年10兆円規模で行わなくてはならない計算になるが、今後の経済回復、特に2020年の東京オリンピック開催に向けての経済成長効果による税収増が期待出来るので、必要となる節減は相当程度圧縮されるものと予想されるが、今後の経済成長率にもよるが可なりの理解と努力が求められる。

 少子長寿化、人口減は1990年代初頭から行政当局(厚生省)が指摘して来たことであり、現在誰もが現実のものとして認識しているので、それに対応した持続可能な新たな行政モデルを構築することが将来世代のためにも不可欠になっていると言えよう。そのため、独立行政法人、補助金団体、及び特別会計管理を含め人件費、管理費の改善、節減を行って行くことが望まれる。これを行わない限り、今後の税収不足を解消することは困難で、消費税の追加的な引き上げが行われ、「現行の組織・制度」の下で行政各部に吸収されることになろう。

 人件費や諸管理費の節減については、行政サービスの低下や公務員への影響を十分考慮するなど、丁寧な対応が望まれる。人件費については、独法、補助金団体など政府関係機関を加え公務員、準公務員の総定員を削減するか、給与水準を下げ、総人件費を削減するかの選択になるが、総人件費を一定比率漸減することとして、定員を削減するか給与水準を下げるかなどの選択は行政当局に委ねて良いであろう。例えば、現役公務員への影響を最小限にするためには、新規採用を漸減する一方、等級制の適用を60歳までとし、その後は職種や職務内容により決める職能制(定年は設けない)の下で再契約するなどである。また地方公共団体や、民間への転職斡旋を条件として自発的な転職を募集することも検討できよう。特に岩手、宮城、福島の東北3県については人材不足が復興を遅らせている面もあるので、復興支援の一環として政府支援によりこれら地域への転職を促進することが望まれる。これら3県は、より安全で活力のある街作りやコミュニテイ、インフラ作りにより、少子長寿化を見据えた日本の将来の地方を代表する地域として発展する可能性を秘めている。しかしそれは資金だけの問題ではなく、それを適正に執行する人材が不可欠なのである。

 管理費については、独法などの下部組織を含め、事務所スペースを統廃合し、不要不急の施設や土地、その他国有施設、不動産を民間に供給することであろう。これにより人件費及び管理費が大幅に節減できると共に、売却不動産より不動産市場は活性化し、固定資産税が見込まれることになる。また地方の事務所、施設は原則地方公共団体に移譲するか統廃合することにより、地方での行政サービスは地方への一本化が促進されると共に、重複や無駄が少なくなるものと期待される。

 いずれにしても、行政当局自体が2020年度での基礎的財政収支の黒字化の目標を達成するには、10%への消費増税を実施しても達成困難であると見ているようであるので、10%への消費増税を実施する一方、現行の行政組織、予算のあり方を少子長寿化社会において持続可能な新たな行政制度を構築することが望まれる。

 2、企業や起業家の活力や地方の活力を引き出す施策が必要 (その2に掲載)

 (2013.09.10.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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消費税増税の実施を支持する  (その1)

2013-09-18 | Weblog

消費税増税の実施を支持する  (その1)

 2014年4月から消費税の8%への増税実施を控え(翌15年10月より10%)、その条件となっている経済状況の好転について判断が迫られており、政府は8月下旬には各界から60人の識者から意見を聴取した。意見は賛成論が多かったようであるが、賛否両論と言ったところであり、濃淡はあるが、次の2つの意見に分かれている。

 (1)  年金、医療、介護保険といった社会福祉関係費が増加し、歳入不足は解消しないので消費増税は必要。

 (2)  経済は好転していると言われているが、家計所得や中小企業の所得が増加するに至っておらず、消費増税が実施されると生活は苦しくなる上、   景気に悪影響。

 経済専門家もおおよそ同じような意見であり、どちらに決められても不思議はない。多くの国民は、消費増税を望んではいないが、仕方ないないと思っていると見られる。しかし同時に多くの国民は、家計にしても事業経営にしても収入不足であれば、まず倹約、節約しなければ赤字は解消出来ないことを知っており、国家財政は何故それが出来ないのかという極く自然な疑問を抱いていると見られている。

 今後少子高齢化が更に進み、社会福祉関係費が増加する一方、生産人口、従って国民全体の税負担能力が低下することを考慮すると、消費税増税は仕方ないことであり、法律に従って実施することを支持する。他方、内閣や多くの消費増税支持者、そして行政当局自身が歳入不足を認識していながら、歳入増を図るのは良いが、何故行政経費、特に人件費、管理費の節減を実施しないのだろうか。また社会福祉関係費が中・長期的に増え続けるという認識であれば、何故予算配分を変えようとしないのだろうかという疑問も理解出来るところだ。家計はもとより、どの企業でも団体でも収入不足で赤字となれば取り組まねばならないことであろう。

 また税収を図る上で経済回復が不可欠であるが、そのためにはまず企業や農業、漁業を含む事業者が、外国人投資家を含め、自発的に新規投資し、或いは起業し易い環境を整えて行くことが重要なのではないだろうか。

 1、税収増努力と共に不可欠な行政管理経費の節減と簡素化

 今後少子高齢化と人口減、特に就業人口の減少を勘案すると、消費増税等による増収は国民一人当たりの負担を増加させて行くことになるので、少子長寿化、人口減に備えて人件費、管理費を段階的に節減すると共に、政策的経費の新たなニーズ、優先度に沿った組み換えを行うことが望ましい。

 行政当局は、社会福祉関係費の漸増による歳入不足を解消するため、消費増税は必要としているが、それは「その他の経費の現状維持」を大前提とした議論である。内閣府は、消費税を予定通り10%まで引き上げても、2020年までの基礎的財政収支の黒字化は困難との試算を明らかにしており、一部には15%への消費増税が示唆されているが、「その他の経費の現状維持」を前提としている。行政当局も、少子長寿化と人口減、特に就業人口の減少と社会福祉関係費の漸増を十分認識しており、その上で更なる消費増税を予想している。社会福祉関係費の漸増を趨勢として認めなくてはならない以上、「その他の経費の現状維持」を行うことは困難なことは行政当局自身も認めていることになる。

 消費税1%分の増収は2.5―2.7兆円と言われている。もし行政当局自身が2020年度の基礎的収支達成には更に5%の消費税増税が必要との試算であれば、10%までの消費増税は実施する一方、追加的に必要とされる5%の消費増税による増収分12.5兆円相当分は行政経費の節減で対応することが、少子長寿化、人口減に備えた対応としても望ましいのではないだろうか。行政当局自身による統計と試算に基づくものであるので、理解が得られると思われる。

 会計検査院は、6月26日、“官庁や政府出資法人に対して過剰な余剰積立など不適切な会計処理を指摘した結果、2012年9月までの1年間に約1.8兆円の改善効果があった“とする試算を公表している。これは、独立行政法人の過剰な余剰金の積み上げや労働保険、年金などの特別会計への一般会計からの余分な繰入などであり、過大な補助金の返還や不要財産の国庫返納などとして処理され、不適正経費等が節減されることになる。もっとも会計検査院が毎年1.8 兆円の不適切な会計処理を指摘することは困難とも見られるが、2012年にも約1.1 兆円の改善指摘を行っているので、毎年1-2兆円規模の改善指摘を行うことは不可能ではないだろう。しかしそれも「現行の組織・制度の維持」を前提としているので、「現行の組織・制度」について節減の可能性を点検する必要がある。都道府県についても交付金や各種補助金を受けているので、過剰、不適正な会計処理については国が、また市区町村については都道府県が検査し、改善指摘を実施することが望ましい。

 追加的に必要とされる消費増税5%分の節減をするとなると、会計検査院による改善指摘1-2兆円規模に加え、「現行の組織・制度」からの節減を毎年10兆円規模で行わなくてはならない計算になるが、今後の経済回復、特に2020年の東京オリンピック開催に向けての経済成長効果による税収増が期待出来るので、必要となる節減は相当程度圧縮されるものと予想されるが、今後の経済成長率にもよるが可なりの理解と努力が求められる。

 少子長寿化、人口減は1990年代初頭から行政当局(厚生省)が指摘して来たことであり、現在誰もが現実のものとして認識しているので、それに対応した持続可能な新たな行政モデルを構築することが将来世代のためにも不可欠になっていると言えよう。そのため、独立行政法人、補助金団体、及び特別会計管理を含め人件費、管理費の改善、節減を行って行くことが望まれる。これを行わない限り、今後の税収不足を解消することは困難で、消費税の追加的な引き上げが行われ、「現行の組織・制度」の下で行政各部に吸収されることになろう。

 人件費や諸管理費の節減については、行政サービスの低下や公務員への影響を十分考慮するなど、丁寧な対応が望まれる。人件費については、独法、補助金団体など政府関係機関を加え公務員、準公務員の総定員を削減するか、給与水準を下げ、総人件費を削減するかの選択になるが、総人件費を一定比率漸減することとして、定員を削減するか給与水準を下げるかなどの選択は行政当局に委ねて良いであろう。例えば、現役公務員への影響を最小限にするためには、新規採用を漸減する一方、等級制の適用を60歳までとし、その後は職種や職務内容により決める職能制(定年は設けない)の下で再契約するなどである。また地方公共団体や、民間への転職斡旋を条件として自発的な転職を募集することも検討できよう。特に岩手、宮城、福島の東北3県については人材不足が復興を遅らせている面もあるので、復興支援の一環として政府支援によりこれら地域への転職を促進することが望まれる。これら3県は、より安全で活力のある街作りやコミュニテイ、インフラ作りにより、少子長寿化を見据えた日本の将来の地方を代表する地域として発展する可能性を秘めている。しかしそれは資金だけの問題ではなく、それを適正に執行する人材が不可欠なのである。

 管理費については、独法などの下部組織を含め、事務所スペースを統廃合し、不要不急の施設や土地、その他国有施設、不動産を民間に供給することであろう。これにより人件費及び管理費が大幅に節減できると共に、売却不動産より不動産市場は活性化し、固定資産税が見込まれることになる。また地方の事務所、施設は原則地方公共団体に移譲するか統廃合することにより、地方での行政サービスは地方への一本化が促進されると共に、重複や無駄が少なくなるものと期待される。

 いずれにしても、行政当局自体が2020年度での基礎的財政収支の黒字化の目標を達成するには、10%への消費増税を実施しても達成困難であると見ているようであるので、10%への消費増税を実施する一方、現行の行政組織、予算のあり方を少子長寿化社会において持続可能な新たな行政制度を構築することが望まれる。

 2、企業や起業家の活力や地方の活力を引き出す施策が必要 (その2に掲載)

 (2013.09.10.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)

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地球温暖化、荒れる気候変動は止められるかー融ける氷海と氷河

2013-09-18 | Weblog

地球温暖化、荒れる気候変動は止められるかー融ける氷海と氷河

 温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。スイスを本拠とする民間団体「世界自然保護基金」(WWF)は、2013年から40年までに、北極圏の氷は夏期には全て消えるとの報告を出している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が出した07年の第4次評価報告書でも、“ヒマラヤの氷河は2035年までに解けてなくなる可能性が強い”と指摘している。同グループはゴア米元副大統領と共にノーベル賞を受賞したが、氷河学者より300mもの厚さの氷河がそんなに早くは融けないとの疑問が呈され、同グループがそれを認めるなど、信憑性が疑われている。地球がミニ氷河期に入っているとの説もある。

 どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。衛星写真でも、08年においては6月末頃までは陸地まで氷海で覆われていたが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能となる。その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。6、7年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。

 これは今起きている現実である。短期的には夏の一定期間航行が可能になり、商業航路や観光、北極圏開発のビジネスチャンスが広がる。

 他方それは温暖化への警告でもある。北極の氷海縮小は、気流や海流による冷却効果を失わせ、地球温暖化を早め、海流や気流が激変し気候変動を激化させる恐れがある。氷海が融ければ白熊や微生物などの希少生物も死滅して行く。取り戻すことは出来ない。北極圏の環境悪化は、米、露など沿岸5か国のみの問題では無く、この地球の運命にも影響を与えている。

 現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。それが世界各地で今起こっている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 同時に忘れてはならないのは、反対側の南極大陸でも氷河、氷原が急速に融けているという事実だ。またヒマラヤやアルプス、キリマンジェロ等の氷河も融け、後退しているので、これらの相乗効果を考慮しなくてはならない。

 北極圏も南極同様、人類の共通の資産と位置付け、大陸棚の領有権や「線引き」の凍結や北極圏の一定の範囲を世界遺産に指定するなど、国際的な保護が必要だ。

 それ以上に、地球温暖化の進行や気候変動の激化を食い止め、地球環境を保護、改善する必要性に今一度目を向けることが緊要ではないだろうか。それはこの地球自体を人類共通の遺産として保全することを意味する。(2013.07.31)(All Rights Reserved.)

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地球温暖化、荒れる気候変動は止められるかー融ける氷海と氷河

2013-09-18 | Weblog

地球温暖化、荒れる気候変動は止められるかー融ける氷海と氷河

 温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。スイスを本拠とする民間団体「世界自然保護基金」(WWF)は、2013年から40年までに、北極圏の氷は夏期には全て消えるとの報告を出している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が出した07年の第4次評価報告書でも、“ヒマラヤの氷河は2035年までに解けてなくなる可能性が強い”と指摘している。同グループはゴア米元副大統領と共にノーベル賞を受賞したが、氷河学者より300mもの厚さの氷河がそんなに早くは融けないとの疑問が呈され、同グループがそれを認めるなど、信憑性が疑われている。地球がミニ氷河期に入っているとの説もある。

 どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。衛星写真でも、08年においては6月末頃までは陸地まで氷海で覆われていたが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能となる。その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。6、7年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。

 これは今起きている現実である。短期的には夏の一定期間航行が可能になり、商業航路や観光、北極圏開発のビジネスチャンスが広がる。

 他方それは温暖化への警告でもある。北極の氷海縮小は、気流や海流による冷却効果を失わせ、地球温暖化を早め、海流や気流が激変し気候変動を激化させる恐れがある。氷海が融ければ白熊や微生物などの希少生物も死滅して行く。取り戻すことは出来ない。北極圏の環境悪化は、米、露など沿岸5か国のみの問題では無く、この地球の運命にも影響を与えている。

 現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。それが世界各地で今起こっている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。

 同時に忘れてはならないのは、反対側の南極大陸でも氷河、氷原が急速に融けているという事実だ。またヒマラヤやアルプス、キリマンジェロ等の氷河も融け、後退しているので、これらの相乗効果を考慮しなくてはならない。

 北極圏も南極同様、人類の共通の資産と位置付け、大陸棚の領有権や「線引き」の凍結や北極圏の一定の範囲を世界遺産に指定するなど、国際的な保護が必要だ。

 それ以上に、地球温暖化の進行や気候変動の激化を食い止め、地球環境を保護、改善する必要性に今一度目を向けることが緊要ではないだろうか。それはこの地球自体を人類共通の遺産として保全することを意味する。(2013.07.31)(All Rights Reserved.)

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容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切 (その2―2) 再掲

2013-09-18 | Weblog

容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切 (その2―2) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる (その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 

 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象としており、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。

 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わってみたい一定年齢以上の国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。

 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提とする「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置くことが望ましい。

(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」 (その2-1で掲載)

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」

 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうであり、政権が交代し日本銀行総裁の交代人事が注目されていることなどでも明らかであろう。

 政策レベルの問題以外でも公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。

 2009年9月の戦後初とも言える政党交代による政権交代は、政権運営を経験した人材の不足や未熟さから3年3ヶ月で下野することとなった。しかしそこから多くのことを学んだとも言えよう。当たり前のことではあるが、政権政党が代われば政策や方針、施策が変わるということだ。

 現に民主党政権で政策や重点施策の優先度が可なり変わり、それを国民が期待していたのであるが、行政組織は戸惑った。当然であろう。戦後半世紀以上に亘り政権政党の交代はほとんどなく、行政組織は政権政党の交代に全く慣れていなかった。その上雇用体制は新卒から定年までの終身雇用形態であり、安定的な人事体制であるので、特定政党の下で一貫した政策、手法に慣れており、政策、手法等の変化に戸惑うのは極く自然である。人としての信頼関係を築く暇もなかったし、その余裕もなかった。2012年12月の総選挙で自民、公明連立政権に戻ったが、政策や手法等が変わっていることは明らかだ。それが民意を反映した政府を樹立するという民主主義の目的であろう。

 そして基本的に国民が信任した議員任期の4年後にその成果が問われることになる。国会等での議論、質疑を聞いていると、政権政党の交代により、与党側も与党側も、単に政権政党が一方的に提案、発議し、野党側が唯々反対をするという従来の対決政治ではなく、議論や手法等が丁寧になっており、また世論に一層注意を払い各種の協議、議論を通じ一致点を模索するという協議政治に向かい始めていることは大変喜ばしいことである。与党も野党も等しく国民から選ばれ、4年間の政治を信託された代議員であり、共に国家、国民の利益に奉仕することが期待されている。日本は内外の難局に直面しており、政局志向の対決政治から、国家、国民のために解決策を模索する協議政治に進化すべきであろうし、政権交代のある政治プロセスが多様なニーズを抱える国民の利益、関心を少しずつ実現して行くことになるのであろう。

 そのような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよう閉鎖的、硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべきであろう。また企業、団体も「非正規雇用」形態をなくすためにも職階制を更に採用、普及することが望まれる。

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その2―1) 再掲

2013-09-18 | Weblog

変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その2―1) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる (その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 

 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象としており、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。

 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わってみたい一定年齢以上の国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。

 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提とする「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置くことが望ましい。

(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。

 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、感触の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。日本においては旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正において職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。

 

(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)

(職階制の確立)

29  職階制は、法律でこれを定める。

 人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、

分類整理しなければならない。

 職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に

ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者

に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ

ばならない。

 前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。

 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定

による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であて、かつ、

この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧

告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。

(職階制の実施)

30  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。

 職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事

院規則でこれを定める。

(官職の格付)

31  職階制を実施するにあたつては、人事院は、人事院規則の定めるところに

より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。

 人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再

審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。

(職階制によらない官職の分類の禁止)

32  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること

はできない。

 

 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は国民に開かれた公務を遂行する上でデメリットも多い。

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」 (その2ー2に掲載)

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その2―1) 再掲

2013-09-18 | Weblog

変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その2―1) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる (その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 

 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象としており、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。

 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わってみたい一定年齢以上の国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。

 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提とする「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置くことが望ましい。

(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。

 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、感触の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。日本においては旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正において職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。

 

(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)

(職階制の確立)

29  職階制は、法律でこれを定める。

 人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、

分類整理しなければならない。

 職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に

ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者

に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ

ばならない。

 前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。

 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定

による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であて、かつ、

この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧

告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。

(職階制の実施)

30  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。

 職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事

院規則でこれを定める。

(官職の格付)

31  職階制を実施するにあたつては、人事院は、人事院規則の定めるところに

より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。

 人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再

審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。

(職階制によらない官職の分類の禁止)

32  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること

はできない。

 

 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は国民に開かれた公務を遂行する上でデメリットも多い。

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」 (その2ー2に掲載)

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―3) 再掲

2013-09-18 | Weblog

変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―3) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠 (その1―2で掲載)

(3) 定年制は各種の弊害を生んでいる

正規雇用形態は、多くの場合、入口の新卒者採用と共に出口である定年制とセットになっており、その上で年功序列の体系となっているので、年齢が決定的な要因になっている。しかし長寿化により、退職後余命が顕著に長くなっており、退職後の過ごし方が大きな問題になっていると共に、年金財源を圧迫する主要因になっている。

平均寿命は、日本の戦後復興が本格化し始め、諸制度が整備し始めた1960年で男性65.3歳、女性で70.2 歳であったが、2010年には男性79.6 歳、女性86.4歳と顕著に伸びている。1960年代の定年年齢を55歳とすると、定年後余命は10年程度となる。2010年には定年が60歳として、定年後余命は19.6年と2倍に伸びており、女性についてはもっと長くなっている。従って現在、定年後の過ごし方と年金財源の不足が社会問題となるのは当然と言えよう。最大の問題は、経験や技能・技術を持ち、働く意欲がある者を、寿命が延びているにも拘らず、年齢により一律に労働市場から排除してしまう上、年金への依存を高めることであろう。

このような状況に対応し、現在年金支給年齢を65歳とし、その穴埋めとして60歳定年の延長や再雇用、或いは定年の撤廃が選択肢として検討されており、当面の対策としてはして良いのであるが、寿命はさらに伸びる可能性があり、定年制を維持する限りイタチごっことなり、抜本的な対策とはならない。顕著な寿命の伸長に対し、雇用制度や諸慣行、社会保障制度などへの対応が追いついていないと言えよう。基本的に年齢に過度に執着しない雇用モデルが必要になっていると言えよう。

「正規就労者」もいずれは定年となるが、職階制を導入すれば、定年以降についても、働く意欲があり健康であれば、自らが選択する職種、技能で組織に留まることが出来るようにすることが可能となろう。定年制を維持すれば、寿命が延びたことにより定年年齢となっても働けるが職のない人口が多くなる一方、年金支給年齢を65歳に引き上げても年金給付期間は以前よりも長期間となっているため、年金の財源を圧迫し続けることになる。恣意的に定められている定年が各種の社会的な障害となっており、顕著な寿命の伸長に対し、雇用制度や諸慣行、社会保障制度などの対応が追いついていないことが明らかになって来ている。

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 (その2で掲載)

 (1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―2) 再掲

2013-09-18 | Weblog

変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―2) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態 (その1-1に掲載)

現在日本の「正規雇用」は、多くの場合新卒者採用を原則として定年まで同じ企業、組織で就労する終身雇用の形態となっており中間採用は多くはない。終身雇用は、企業経営側にとっては、組織、従って経営陣への忠誠心を維持し易く、組織の安定性を確保し易いと言えよう。また中小企業など、創業家を中心とする家族経営においては家族主義的な組織管理を行い易いメリットがある。雇用されている側も定年まで定職に就けるという安定性を享受できる。しかし家族主義的な雇用形態は、新規の人材を外部から導入することを阻み、内外の経済環境やグローバルに拡大、激化する競争関係に迅速、的確に対応できず、競争力を失うなどのデメリットも多い。雇用されている側も、組織内で希望の職種や仕事に就けるのはわずかである。その上景気の後退期には人員整理が困難であるため、迅速な対応が出来ず、企業の存続を脅かすことにもなる。

 職種によっては新卒採用に拘泥する必要はなく、必要な職種、技能を補充するために中間採用を機動的に活用する方が急速に変化する内外市場へのダイナミックな対応が可能となろう。

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠

 職種・技能を基準とした職階制雇用においては、新卒か否かや年齢にとらわれず、職種ごとの技能や経験年数により採用することになるので、採用した人材が即戦力となる。新卒採用者を除き、研修費やリードタイムでの諸経費の節約にもなる。一方就労者側も一定期間の就労の後、より良い労働環境を求めて企業や地域を変更することが出来るので、双方にとって弾力的な雇用形態となる。「正規」「非正規」の区別も不要となる。

 現在就労者の35%強を占める「非正規就労者」にとっては、たまたま学校卒業時期に不況であったため「非正規雇用」となり、日本の終身雇用制の下では今後長期にその状態が続くことになると予想される。これらの人達にチャンスを与え、より多くの人が安定した職が得られるように雇用形態を多様化、弾力化すると共に、正規の雇用形態とすることが望ましい。これは、ほとんどの就労者が健康保険や年金などの社会保険の恩恵を受けられる体制にする上でも重要である。呼称も「正規雇用」「非正規雇用」とすることは適当でなく、「一般雇用」「職階雇用」とすれば足りることであろう。

 無論、どのような雇用形態とするかは企業の経営管理方針、選択によるが、職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及により、「正規」「非正規」の区別をなくし、「一般雇用」と「職階雇用」に移行させることが望ましい。

 (3) 定年制は各種の弊害を生んでいる(その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 (その2で掲載)

 (1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―1) 再掲

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変容する労働市場―「非正規就労者」の呼称は不適切(その1―1) 再掲

 総務省は、2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。 

昨年11月中旬頃より、日本の貿易赤字の常態化を反映して過度な円高が是正され、現在1ドル94円前後に是正されたため、輸出産業や関連する中小の裾野産業を中心として若干景気が回復する兆しが見え始めており、当面円高是正が定着すれば景気回復の原動力になろう。しかし景気の振れが予想されるため、「非正規労働者」の割合は今後とも平均30%台で推移するものと予想される。

雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになるが、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制の下では中間的な本採用は困難であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があり、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。

このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。

1、 望まれる職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及

3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、好ましくない。これらの就労者も日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。

 その解決策の1つが職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及である。

(1) 閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態

現在日本の「正規雇用」は、多くの場合新卒者採用を原則として定年まで同じ企業、組織で就労する終身雇用の形態となっており中間採用は多くはない。終身雇用は、企業経営側にとっては、組織、従って経営陣への忠誠心を維持し易く、組織の安定性を確保し易いと言えよう。また中小企業など、創業家を中心とする家族経営においては家族主義的な組織管理を行い易いメリットがある。雇用されている側も定年まで定職に就けるという安定性を享受できる。しかし家族主義的な雇用形態は、新規の人材を外部から導入することを阻み、内外の経済環境やグローバルに拡大、激化する競争関係に迅速、的確に対応できず、競争力を失うなどのデメリットも多い。雇用されている側も、組織内で希望の職種や仕事に就けるのはわずかである。その上景気の後退期には人員整理が困難であるため、迅速な対応が出来ず、企業の存続を脅かすことにもなる。

 職種によっては新卒採用に拘泥する必要はなく、必要な職種、技能を補充するために中間採用を機動的に活用する方が急速に変化する内外市場へのダイナミックな対応が可能となろう。

(2)職種・技能を基準とした職階制雇用形態の普及が不可欠(その1―2で掲載)

 (3) 定年制は各種の弊害を生んでいる(その1―3で掲載)

2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 (その2で掲載)

 (1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」

(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」

(2013.3.3.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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