内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

朝鮮半島の核なき平和と繁栄へ、踏み出された歴史的な第一歩!! (その2)-米・朝首脳会談の成果―

2019-05-06 | Weblog
朝鮮半島の核なき平和と繁栄へ、踏み出された歴史的な第一歩!! (その2)
      -米・朝首脳会談の成果―
 6月12日、シンガポールにおいてトランプ米国大統領と金正恩北朝鮮国務委員長が1953年6月の朝鮮戦争停戦後首脳同士で初めて握手し、会談した。そして同日午前9時過ぎから冒頭の写真撮影を含めて50分ほどの首脳だけの会談に次いで、両国の外相など関係要人を含めた拡大会議とワーキング・ランチの後、両国首脳により‘包括的な’共同声明に署名された。
 1、両国首脳の強い決意を包括的に示した共同声明       (その1で掲載)
 2、具体性を欠く‘決意’は決意で終わるのか          (その1で掲載)
 3、米国、北朝鮮両国は相互に事実上の国家承認していた
 トラン統領と金国務委員長との今回の初めての会合は、シンガポールでの会場となったホテルでの握手から始まった。敵対関係にあり、国家承認を行っていない首脳同士の初めての出会いとは思えない光景だった。
 その通りなのだ。トランプ米国大統領は、5月24日付にて金正恩北朝鮮国務委員長宛に予定されている首脳会談を中止する旨の書簡を発出したのに対し、6月1日、ポンペオ米国務長官との協議のため訪米した金英哲(キム・ヨンチョル)北朝鮮労働党副委員長より、ホワイトハウスにおいて金正恩委員長の返書をトランプ大統領に手渡し、トランプ大統領はこれを受けとった。これは米国と北朝鮮の首脳(国家元首)が書簡を交換したということであり、事実上の国家承認の行為となる。相互に国家として承認するとは明示はしていないが、国家元首同士の書簡の交換で、相互に米国合衆国、朝鮮民主人民共和国の国家元首として認め合うということであり、外交上、国家としての‘黙示の承認’とされるものである。事実5月24日付のトランプ大統領書簡の宛先は、‘朝鮮民主人民共和国国務委員会金正恩委員長閣下’となっており、米国合衆国大統領ドナルド・J・トランプよりと正式名称で署名、発出している。金正恩国務委員長よりの返書も同様の正式名称で発出されていたと見られる。トランプ大統領は、記者団の前で書簡が入った大きな封筒を手にしていたが、それはメデイアを通じ金正恩委員長に受け取ったことを見せるためのものだったのであろう。
 今回合意された共同声明も、同様の正式名称、タイトルで行われており、事実上国家承認されていることを物語っている。従って今後の米朝間協議、交渉は、従来のように敵対国間の交渉ではなく、相互に承認した国家間の交渉となるので従来よりも円滑で迅速なものになろう。恐らく水面下では、相互に事務所開設の準備交渉が行われていると思われる。核廃棄のプロセス一つをとっても、詳細な調査、交渉、実施、検証など複雑で長期を要するので相互に活動拠点を置くことが不可欠であろう。
 4、北朝鮮にとっては今回が外交的、平和的解決の最後の機会か
 北朝鮮が、米国のみならず、韓国との非核化、戦勝終結努力などの合意を誠実に実施せず、米・韓両国や国際世論を欺けば、米国は軍事的な措置を含む強硬措置に出ざるを得なくなるであろう。
 金正恩委員長もそのことは十分承知であろう。金委員長は、米国との首脳会談に踏み切るに際し、中国の習近平主席と2度に亘り会談している。恐らく非核化に踏み切った場合の安全の保障と北朝鮮国内での金正恩体制支援と経済制裁の緩和、解除などについて協議したのであろう。中国にとっては、北朝鮮の核保有は朝鮮半島の緊張を高め、米国の迎撃ミサイル(THAAD)の配備を含む軍事力増強となり、朝鮮半島の非核化を希望しているので、北朝鮮が今回の米朝合意を実行しなければ中国の期待にも背く結果となる。そうなれば金正恩体制への支持も得られなくなることは承知しているであろう。
 金正恩委員長は、今回軍部の造反、クーデターの危険を冒しても非核化の道を選択したものと見られる。同委員長としても今後国内の守旧派を抑えつつ事を進めなくてはならないので、紆余曲折はあろうし、時間は掛かると予想されるが、基本的には米国、韓国との合意に沿ってその実施を図るものと期待される。(2018.6.14.)(All Rights Reserved.)
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朝鮮半島の核なき平和と繁栄へ、踏み出された歴史的な第一歩!! (その1)-米・朝首脳会談の成果―

2019-05-06 | Weblog
朝鮮半島の核なき平和と繁栄へ、踏み出された歴史的な第一歩!! (その1)
      -米・朝首脳会談の成果―
 6月12日、シンガポールにおいてトランプ米国大統領と金正恩北朝鮮国務委員長が1953年6月の朝鮮戦争停戦後首脳同士で初めて握手し、会談した。そして同日午前9時過ぎから冒頭の写真撮影を含めて50分ほどの首脳だけの会談に次いで、両国の外相など関係要人を含めた拡大会議とワーキング・ランチの後、両国首脳により‘包括的な’共同声明に署名された。
 1、両国首脳の強い決意を包括的に示した共同声明
 共同声明において、トランプ大統領と金正恩国務委員長は、新たな米朝関係の確立と朝鮮半島における恒久的な平和体制の構築問題について、包括的かつ真摯な意見交換を行い、‘トランプ大統領は北朝鮮に安全保障を約束し、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺らぎのない決意(firm and unwavering commitment)を再確認し’、次の点を宣言した。
 1)米朝両国は、平和と繁栄の願いに従って、新たな米朝関係の確立を決意。
 2)両国は、朝鮮半島の持続的で安定した平和体制(peace regime)の構築に共に努力。
3)2018年4月27日の(南北首脳の)板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に取り組むことを決意。
 4)両国は、戦争捕虜/行方不明兵士の遺体回収を決意。既に特定された遺体の即時帰還を含む。
トランプ大統領と金委員長は、史上初の米朝首脳会談が新たな未来に道を開いた画期的な出来事だと認識し、この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを決意した。首脳会談の結果を実行に移すべく、今後はできるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うことを決意した。
両首脳は、新たな米朝関係の発展、そして朝鮮半島と世界の平和と繁栄、安全保障の促進に向け協力する決意である。
 2、具体性を欠く‘決意’は決意で終わるのか
 トランプ大統領と金委員長は、‘新たな米朝関係の確立’、‘朝鮮半島の持続的で安定した平和体制(peace regime)の構築’、及び今回最も注目された‘朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)への取り組み’に決意を表明した。これに対し一部メデイア等には、‘具体性に欠ける’、‘また騙されるのではないか’など懐疑的なコメントが見られる。
 しかしこれらの批評は、1994年以来の北朝鮮との核問題での数次の実務レベルでの交渉、積み上げが何故裏切られて来たのか、失敗の原因は何かを十分理解していないようだ。
 交渉の相手である北朝鮮は、朝鮮戦争が‘停戦’になったものの、米・韓両国との敵対関係は継続しており、それを梃子として軍事優先、先軍主義の独裁体制を維持しており、金日成国家主席、金正日北朝鮮労働党総書記(国防委員長)、この後を受けた金正恩国務委員長も絶対的な権能、発言力を持つ最高指導者である。重要決定は、ほとんどトップ・ダウンの形をとる。独裁国家を相手にする場合、最高指導者と基本合意して置くことが最も早道であり、確実である。
 1990年代のクリントン政権以降、米国等と北朝鮮との核問題での協議、交渉は、国務次官補など実務レベルでの交渉であり、合意であったが、ことごとく覆され、核兵器とミサイル開発のための時間と資金を与える結果となった。
 しかし米国が、北朝鮮と首脳レベルで会談、交渉したことは今までなかったことだ。北朝鮮の絶大な権力を握る首脳の意志や決意を直接確認したのは今回が初めてであり、その意義は従来の‘積み上げ方式(ボトム・アップ)’とは比べ物にならない程大きい。
 批判の一つとして、‘非核化’について‘完全、検証可能で不可逆的な非核化’通称‘CVID’に言及されていないことが指摘されているが、‘CVID’を含めるよう実務レベルで詰めていたら何年掛かっても合意に至っていない可能性がある。今回の共同宣言には、‛金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺らぎのない決意’を再確認したとされており、その上で、‛この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを決意し、首脳会談結果を実行に移すべく、できるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うことを決意する‘とされている。北朝鮮において金正恩委員長より下部に指示が出され、それに基づいて詳細な協議、交渉が行われることが期待される。今後の米朝交渉においては、両国首脳の今回の合意が出発点であり、最終目標となる。そのプロセスが首脳レベルの決意に沿って開始される意義は大きい。北朝鮮との首脳レベルでの会談、決意の表明は歴史上初めてのことであり、この機会を逃すべきではなかろう。
 北朝鮮の金国務委員長は、トランプ大統領との1対1の会談の冒頭、‘今回、足を引っ張って来た過去と偏見を乗り越えてここに来た’と述べ、また最終段階での共同声明に署名した後、‘ここまで準備してくれたトランプ大統領に感謝する’、‘世界は大きな変化を見ることになるだろう’と述べている。
 
 3、米国、北朝鮮両国は相互に事実上の国家承認していた       (その2に掲載)
 4、北朝鮮にとっては今回が外交的、平和的解決の最後の機会か    (その2に掲載)
(2018.6.14.)(All Rights Reserved.)
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日・ロ平和条約締結への交渉加速を期待する

2019-05-06 | Weblog
日・ロ平和条約締結への交渉加速を期待する
                                       2018年11月26日
 日・ロ平和条約締結に向け、シンガポールで開催されたASEAN関連首脳会議に際し、2018年11月14日、安倍首相はロシアのプーチン大統領と会談した。この会談は2016年に持たれた両首脳の日本での会談において、「新しいアプローチで問題を解決する」との方針の下で、北方4島での共同経済活動を促進することで合意したことを受けて行われたものである。
 日本外務省が公表した会談概要では、事務当局を含めた全体会合(45分)の他、通訳のみでの両首脳の個別会談(40分)が行われた。全体会合では、平和条約問題の他、2国間経済関係の促進、国際的な安全保障分野での協力、北朝鮮非核化問題など幅広い分野で意見交換が行われている。
 日・ロ平和条約締結問題については、全体会合においては、北方4島における共同経済活動の促進につき協議されると共に、日本側より元島民の問題について提起されたが、北方4島返還問題を含む平和条約締結問題については突っ込んだ話し合いは行われず、両首脳による個別会談で行われた。
 首脳間個別会談の後、安倍首相は記者団に対し、「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる。そのことをプーチン大統領と合意した。」と述べ、これが公表された会談概要にも記載されている。1956年に調印された日・ソ共同宣言においては、外交関係を回復し、平和条約締結交渉を継続することとし,‘条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする’旨記されている。
 日本は従来、4島一括返還を主張し、領土問題解決が平和条約締結の前提条件としていた。しかし1956年の共同宣言から62年、歴代政権が交渉を重ねてきたものの見通しが立っていない今日、長年の膠着状態を打破するため平和条約締結に向け1956年の共同宣言を基礎として条約交渉を実質的且つ具体的に加速することを支持する。
 日本としては、老齢化する旧島民や地権者の精神的負担を軽減すると共に、急速に存在感を増す中国との関係においても海を隔てた隣国ロシアとの平和条約を締結することがタイムリーと言えよう。他方ロシアにとっては、強大化する中国との関係において、クリミア半島併合以来米・欧との関係が悪化し、制裁を科され、G8(主要先進8カ国)からも外され、孤立感を深めているので、政治的にも経済的にも日本との平和条約締結は望ましいものと言えよう。
 1、ロシアは北方領土返還により日本の信頼を回復出来る
 プーチン大統領は、今回の首脳会談後、‘同宣言には、ソ連が2つの島を引き渡す用意があるということだけ述べられ、それらがどのような根拠により、どちらの主権に基づくかなどは述べられていない。慎重な議論が必要だ’と述べたと伝えられている。しかしロシア側は、北方4島を奪取した経緯と旧島民のみならず日本国民にとっての北方領土返還の意味を理解すべきであろう。それは北方領土の権益等の経済的な価値などではなく、日本のロシアに対する信頼性回復の問題なのである。
 プーチン大統領は、日本の北方領土は‘戦争の結果得たものである’と述べていたところであり、日本の領土であることは認識していると思われる。従って、‘日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする’ということは、2島を日本の主権下に‘引き渡す’と言うことに他ならない。無論、ロシア、その前身であるソ連がこれらの島に投じた資金や現実にロシア人が生活をしているので、それらに対する代償については、プーチン大統領が示唆している通り‘議論が必要’であろう。
日本人にとっては、北方領土は‘経済的代償’以上の意味合いがある。
 日本は、第2次世界大戦前の1941年4月、ソ連と中立条約を締結している。しかしソ連は、中立条約の破棄通告もなく(1年前の事前通告が規定)、1945年8月8日、突如日本に対し宣戦布告し、北方4島を奪取、占領した。
 ソ連は日本との重要な国際約束を破ったのである。従って、ロシアが平和条約を締結しても、北方4島をどのような形であろうと日本に返還しないということは、ソ連、従ってそれを継承しているロシアは、国際約束を遵守しない、都合により一方的に破棄することがあるということを意味し、日本人は、また世界は‘ロシアは信頼できない’という認識を持つであろう。平和条約を締結しても、‘信用できないロシア’との貿易・投資が積極的に進められるとも思えない。
 プーチン大統領は、北方領土問題は‘経済的代償’の問題以上に‘信頼性’の問題であることを十分に理解すべきであろう。他方‘経済的代償’については、日本側は可能な限り知恵を出すべきであろう。

 2、北方領土問題につき1956年の共同宣言を越えられるかが鍵
 今後平和条約交渉が実質的に加速し、条約締結の段階に至っても、北方領土に
ついては歯舞、色丹の2島返還だけに終わると、1956年の日・ソ共同宣言以来の62年間に亘る歴代政権の交渉努力は何だったのかとの批判に晒される恐れがある。
 従って今後の最大の鍵は、残る択捉、国後2諸島の取り扱いとなろう。同時に、歯舞、色丹の2島が返還されることになれば、この両島の地権者の問題は解決するが、択捉、国後2諸島において‘共同経済活動’が継続するとしても、この両島の地権者の地権回復が問題となろう。
 (1)残る択捉、国後2諸島の取り扱い
 択捉、国後2諸島については、‘1956年日・ソ共同宣言’の外になるので、今回の交渉で結論を出すことは困難と予想され、何らかの形で継続協議となる可能性がある。そのような可能性があるとしても、歯舞、色丹2島の返還を前提とした条約締結交渉を支持する。
 しかし択捉、国後について一定の方向性を出すことが望まれる。例えば次のような選択肢が考えられる。
 イ)現状のまま‘共同経済活動’を継続し、帰属につき代償を含め協議する。
 ロ)領有権は日本側に引き渡すが、ロシア側に一部を実質上無償で無期限租借する。
 ハ)択捉、国後2諸島については、‘日・ロ自由貿易地域’(仮称)として日・ロ両国の共同管理 
  する、など。
 いずれにしても両国が、両国国民の理解と信頼が得られるよう知恵を出すことが不可欠であろう。

 3、地権者の権利を認め、帰還を認めるか、補償が支払われるべき
 ソ連による北方4島占領当時、島民は3,124世帯、17,291人ほど(独法北方領土問題対策協会資料)であり、その生活や権利は回復しない。両国による領有権問題は別として、日・ロ共同経済活動と並行して、或いはその一環として、それら島民が故郷に住む権利を回復すべきであろう。また住むことを希望しないものに対し補償がなされるべきであろう。国家の領土権問題は、国家と国家の間の問題であり、シビリアンである個人の地権、所有権は個人の土地・財産所有権の問題であるので、責任ある国家としてはそれを尊重する義務がある。国家間の戦争において、戦闘に関与していない一般市民の生まれ育った故郷に平穏に住む権利を奪うことは、今日の国際通念において人道上も、人権の上でも容認されて良いものではない。
 旧島民による墓参活動が進展しているが、ロシア側、或いはロシア人在住者が日本人の墓地や鳥居などの旧跡を破壊、撤去せず、維持していることは日本人のルーツ、心情を認識、理解しているものとして評価できる。プーチン大統領も、ロシア人の生活だけでなく、日本の旧島民の気持ちは十分に分かるであろう。
 日・ロ間には‘平和条約’こそないが、事実上の平和が維持されている今日、4島に住んでいた日本の旧島民及びその家族が故郷に住む権利、そして地権の回復か代替地の提供、或いは補償が早期に行われることが強く期待される。多くの家族が土地登記をしている。(2018.11.26.)(Copy Rights Reserved.)
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日韓間の「不都合な」事実―竹島(独島)問題―再掲

2019-05-06 | Weblog
日韓間の「不都合な」事実―竹島(独島)問題―再掲
 2012年1月24日、玄葉外相が通常国会冒頭における外交演説において、「竹島問題」に触れたのに対し、翌25日、韓国外交通商部は趙報道官名で、「玄葉外相が韓国固有の領土である独島に対し、不当に領有権を主張したことについて強く抗議し、直ちに撤回することを求める」旨の声明を出し、強く反発した。
 竹島は、韓国では「独島」(Dokdo)と呼ばれており、日本と連合国とのサンフランシスコ平和条約発効(52年4月28日)を前にして、李承晩・大韓民国(韓国)大統領が、1952年1月18日、「海洋主権」を宣言し、周辺海域に「漁船立ち入り禁止線」、通称「李承晩ライン」を設定し、同島は韓国の支配下にあると一方的に宣言して以来、日韓間の喉もとの小骨となっている。玄葉外相が「竹島」問題と述べたことから、日本側が韓国側の呼称、領有権を認めず、同島への灯台や桟橋の建設など、韓国が行っている各種の行動を認めていないと受け止められたためと見られている。しかし玄葉外相は、外交演説の中で韓国を「基本的な価値観を共有する最も重要な隣国」と位置付けた後、「竹島問題は,一朝一夕に解決する問題ではないが、韓国側に対して受け入れられないものについては受け入れられないとしっかりと伝え、粘り強く対応する」旨、しごく当たり前のことを述べたに過ぎない。韓国側の声明は、外交通商部の報道官レベルのものであり、それ程強いものではないとも受け取れるが、過敏、過剰な反応と映る。日本での韓流ブームなどで象徴される両国間の文化、観光交流や活発な経済交流などの実体からからすると違和感を受ける動きであり、両国政府間が協調の精神で知恵を出し合い、問題が解決されること期待したい。
 1、 日韓の古くからの接点、竹島(独島)の歴史
 同島は、東西2つの岩礁島からなっており、日比谷公園と同程度の面積しかなく、また定住出来るような環境にはないが、1905年1月28日、日本政府は、閣議で「竹島」と命名し、「島根県隠岐島司」の所管とした。日本が、韓国(大韓帝国)を併合(1910年8月)した5年以上も前のことである。
しかし、同島を巡る日韓両国の交流は、両国の沿岸漁民を中心として古くからあるようであり、1618年には、日本人2名が江戸幕府の許可を得て同島に渡航し、また、1692、3年頃には、これら2名が周辺島嶼から2名の朝鮮人を日本に連行したことから、日本と朝鮮の間に紛争(「竹島一件」)が発生したなどの記録があり、この頃より周辺海域での接触、紛争が活発になって来たようだ。
 もっとも、その頃は韓国側の「鬱陵島」を「竹島」と呼び、現在の竹島を「松島」と呼んでいたようである。また1849年、フランスの捕鯨船Liancourt号が同島を発見し、リアンクール島と名付け、その後日本では、「りゃんこ島」とか「リアンクール岩」とも呼ばれたことがあるようで、同島(岩礁)を巡る両国の交流の歴史にも混同がありそうだ。因みに、米国国務省がホーム・ページで公表している各国別地図では、日韓双方に、Liancourt Rocks(リアンコート岩礁)の名称で記載している。
いずれにしても竹島(独島)は人が住める状況にはない岩礁であるが、両国沿岸には大小多くの島が点在しており、恐らく古くから漁民などが同島周辺を往来していたのであろう。韓国側にもいろいろと記録があるようであるが、従来人が住んでいるわけではなく、同島周辺海域、島嶼を巡る往来のようであり、正に両国双方の接触の「最外延点」である。
 このような古くからの交流の歴史を考えると、竹島(独島)問題は、靖国神社参拝やいわゆる「(侵略の)歴史問題」とは関係がないのである。韓国側も、歴史的事実は事実として認識して欲しいものである。他方日本とは反対側の韓国からの見方もあろうから、双方の専門家で同島の歴史を客観的に研究し、相互の理解を深める努力も必要のようだ。
それはそれとして、同島が両国の古来の接触の「最外延点」であるという歴史的背景を踏まえ、同島問題の早期解決を模索できないものであろうか。

 2、両国に求められる竹島(独島)問題の早期解決
 この問題は、日本政府としては1954年以来国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案し来ているが、韓国政府が同意していないため実現していない。
 竹島は韓国により事実上占拠されており、韓国側はこれを「実効支配」と称している。しかし本来「実効支配」とは、「政府承認の重要な要件」の一つとして、特定国の政府が国内全域において実効的に支配が確立出来ているか否かを判断する概念であり、日本が領有を主張する竹島を「実力行使」で占拠しても、日本が領有を明確に表明している限り、実力行使による「占拠」でしかない。日本側とすれば、韓国が国際司法裁判所への付託に同意するまで要請を続け、領有権において譲歩する必要はないとの意見もあろう。しかしお互いに本件を巡り「消耗戦」を継続し、両国関係改善の阻害要因とすることは両国国民の健全な交流をも阻み、真の「日韓新時代」などは幕開けしないであろう。国際司法裁判所への付託が実現し難い場合には、両国がこの問題に冷静に対処し、同島の共同管理・共同統治の道を速やかに模索するなど、早期の解決が望まれる。
(2012.01.26.)(Copy Right Reserved.)
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トランプ流通商強硬策の真の狙いは何か?! (再掲)

2019-05-06 | Weblog
 トランプ流通商強硬策の真の狙いは何か?! (再掲)
 トランプ米大統領は、3月22日、‘中国が米国の知的財産権を侵害している’として、最大で600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領覚書に署名した。またこの覚書中で、中国で米国を含め外国企業が合弁事業を行う際、現地企業への技術ライセンス供与が求められていることについて、世界貿易機関(WTO)に提訴するようUSTRに指示した。
 同大統領は、これに先立つ3月8日、鉄鋼、アルミニウム製品の米国への輸入増加が‘国家安全保障上の脅威になる’として輸入制限措置を決定したが、3月23日から鉄鋼に25%、アルミに10%の関税が課されることになった。この関税引き上げ措置は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉中であるカナダとメキシコを除き全ての国・地域には適用される。トランプ大統領はこの措置を発表するに当たって記者団に対し、日本については首相とも仲が良いが、対日貿易赤字は続いておりやむを得ないとの趣旨を述べている。
 1、中国等の報復措置の連鎖により貿易戦争は勃発するか
 米国の知的財産権侵害に対する対中措置は、通商法301条に基づくものであり、米通商代表部(USTR)が関税対象となる中国製品の品目リストを作成することになるが、ハイテク製品を中心に約1,300品目にも及ぶとも見られている。これにより最大で年間600億ドル(約6.3兆円)相当の中国製品に25%の関税が課されることになり、中国への打撃は大きいが、対象リスト作成後30日の審査期間が設けられ、関係業界等から意見を求められるので、最終的な関税措置の実施にはなお一定の期間が必要となる。
 この措置を前にして、3月17日、中国の貿易救済調査担当局長は談話を発表し、‘米国の調査結果に根拠はない’とすると共に、‘米国の最終決定が中国の利益に影響を与える場合、必要な措置を講じる’旨述べ、対抗措置の可能性を示唆した。中国外交部報道官も3月23日の記者会見において、‘中国側の立場はすでにはっきりと示しており、伝えた情報も非常に明確だ。贈り物をもらって返さないのは失礼であり、中国はこれに対応する。米国側が真剣に中国側の立場に向き合い、合理的で慎重な政策決定をすることを希望する’旨表明している。米国の措置を批判する一方、ある種の余裕を示しているように映る。
 そして中国は、4月2日から、豚肉やワインなど米国産品128品目、総額約30億ドル相当の対米輸入品に最大25%の関税上乗せを実施する旨明らかにした。中国政府はこの措置を‘米国が設定した新関税による損失から中国の利益と取引残高を保護する’ためとする一方、‘貿易戦争’を望むものではないとしている。
 これに対しトランプ大統領は、4月5日、対中輸入品に対し更に1,000億ドル(約10.7兆円)規模の追加関税を検討する旨表明した。中国はこれを‘国際貿易ルール違反’などとして米国の対応を批判した。
これを受けトランプ大統領は声明の中で、‘中国は自らの違法行為を正すことなく、米国の農家や製造業に被害を与えることを選んだ’として中国の報復措置を非難する一方、米国は‘貿易戦争はしてない’としてその正当性を表明し、強硬策を貫く姿勢を示した。
 トランプ大統領は、2017年1月に就任後も大統領選挙期間中の‘アメリカ・ファースト、雇用の回復’の主張を繰り返し、中国等との膨大且つ一方的な貿易赤字を解消するため、‘フェアーな貿易、相互の利益’の実現を事ある毎に訴えて来た。同大統領は就任後早々に、北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、2国間自由貿易交渉の優先を鮮明にし、カナダ、メキシコ両国との再交渉を進めるなど、首脳レベルやペンス副大統領レベルを含め様々なレベルで水面下の打診、協議が行われていたと見られる。

 2、周到な計算づくのトランプ大統領の対中強硬措置
 今回の通商強硬措置は、大統領就任後1年間で様々なレベルで関係各国と水面下の接触を行うと共に、中国を含め関係各国との首脳レベルでの関係を構築した上で、周到な計算に基づき打ち出された強硬措置と見ることが出来るだろう。
 一部でこれにより関税引き上げ競争による世界経済の縮小や貿易戦争の恐れとの懸念が表明され、このような懸念を背景として米国の株式市場は大幅に下げ、相互に対抗措置が発表されるごとに下落を繰り返している。
 これはこれまでの常識的な反応であり、当面神経質な動きが続くであろう。しかし中国はもとより米国も‘貿易戦争’となることを否定している。トランプ大統領が表明している通り、関税引き上げ競争でより多くの被害を受けるのは中国であろう。中国は13億の国民に十分な食料等を確保しなくてはならないし、それが出来なければ社会的な反発や不安定化を引き起こす可能性がある。またそもそも知的財産については、中国政府の一定の努力にもかかわらず、中国側に多くの問題があることは明らかであり、米国がその改善を求めるのは当然であろうし、日本を含む他の技術先進国にとっても必要なことであろう。
 遅かれ早かれ米・中両国は貿易問題について交渉の席に着くであろう。トランプ大統領は、各国との通商関係において‘フェアーで相互の利益’の確保を主張しているが、これは通商関係だけでなく国家関係一般に通じる原則、基準であり、
 今回の米国の関税措置は2国間の通商交渉を求めるノロシと見るべきであり、相手国を交渉の席につかせる強い意志の表われと見るべきであろう。不動産業で成功したビジネスマン的交渉スタイルと言えようが、安易な妥協を図ることはなく、決裂すれば‘ユーアー ファイアード(お前は首だ)!’とばかりに強硬策をとることを躊躇はしないであろう。
 しかしトランプ大統領も次の諸点は理解すべきであろう。
 1)米国のように成熟した市場経済では、物の貿易に加え、蓄積された膨大な資本を背景としてより多くの利潤が期待出来る海外に投資することが多くなり、貿易収支が赤字でも資本収支が黒字となりこれを補てんするので、貿易収支を切り離して見るのではなく、国際収支全体で考えるべきである。
 2)米国からの海外への資本投資や資本逃避は米国人ビジネスマン自身が行っているので、米国内への再投資を促すことは米国自身の問題である。
 3)米国の中国、アジア等への直接投資は、多くの場合本社機能やハイテク技術を備える生産工程全体で行われる形が多くみられ、いわば根こそぎ投資となり米国内にほとんど何も残らず、米国の企業家自身が雇用機会を奪っていると言える。それらの海外製品が米国にも輸出されると、米国の貿易収支の悪化要因となる一方、米国の投資家に多額の利益がもたらされていることを理解すべきであろう。
トランプ大統領は、米国内での製造活動を増進させたいというのであれば、輸出国を批判するだけではなく、米国自身の問題として企業家の投資態度の改善、転換も図るべきであろう。

 3、トランプ大統領の北朝鮮問題をめぐる中国への隠れたメッセージ
 今回の米国の関税引き上げ措置、特に知的財産権侵害に対する対中経済措置は、第一義的には選挙公約である米国への雇用機会回復を狙ったものであるが、制裁措置というよりは‘公正で相互利益性’を基礎とした通商交渉を促すことが目的と見られる。しかし同時に、それは通商措置にとどまらず、トランプ大統領は北朝鮮問題においても中国の動きに満足しておらず、中国が北朝鮮に対し核兵器とミサイルを放棄するよう経済制裁措置を誠実に実施し、更に圧力を掛けるよう促すと共に、もし北朝鮮が核、ミサイルの放棄に応じない場合には強硬手段も辞さないというメッセージが込められていると思われる。
 関税引き上げという強硬措置は、自由貿易の流れに反し、貿易戦争を引き起こし、世界貿易を縮小させる恐れがあり、従来の概念では批判の多い政策であることはトランプ大統領も承知の上で敢えて打ち出したものであろう。それは長期に亘る膨大な貿易不均衡問題、特に対中貿易不均衡問題はこれ以上容認できず、批判があっても敢えてそれを解決するという強い意志を示したものであろう。
 環太平洋経済連携協定(TPP)は、米国抜きの11カ国で発足する運びとなったが(3月8日11カ国署名)、トランプ大統領は、4月12日、通商代表部(USTR)に対し復帰のための条件を検討するよう指示しており、強硬措置一辺倒ではなく、交渉による現実的な解決にも取り組む意向を示している。北米自由貿易協定(NAFTA)については既にカナダ、メキシコと再交渉を開始している。
 同大統領は、4月13日付の自らのツイッターで、“(米国は)オバマ大統領に提示された取引より実質的に良い取引でのみ参加する。米国はTPP加盟の6カ国と既に折衝している。その中で最も大きい日本は、長年にわたり米国をたたいているが、取引をすべく作業している。”と述べている。過去1年間、関係国と水面下で周到な準備、協議を行っていることを物語っている。

4、ホワイトハウス、主要閣僚ポストをトランプ好みに固めた大統領
 トランプ大統領は、2017年1月20日の就任式以来、大統領補佐官を含む主要な補佐官、長官の辞任、解任が頻繁に行っており、2018年に入っても3月にゲーリー・コーン大統領補佐官兼国家経済会議議長(後任は保守派経済評論家ラリー・クドロー氏)、続いてレックス・ティラーソンが国務長官が解任(後任にマイク・ポンペオCIA長官)、4月にマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)(後任はジョン・ボルトン元国連大使)が交代している。この時期に関税引き上げ措置など貿易強硬策がとられ、また北朝鮮の金正恩書記長との5月までの首脳会談などが打ち出されたことから、これらの対外経済、安全保障・外交問題での意見の対立が原因であったと見られる。
 その他、2017年中に次のように主要な補佐官がホワイト・ハウスを去っており、トランプ政権の不安定性を懸念する向きが多い。
・マイケル・フリン大統領補佐官 辞任(ロシア疑惑で)(2017年2月) 
⇒後任マクマスター元陸軍中将(上記の通り2018年4月に辞任)
=>後任ジョン・ボルトン元国連大使
・スパイサー大統領報道官(兼広報部長代行)辞任(2017年7月)
・プリーバス首席補佐官 辞任(政権の内部情報をリークか)(同月)
⇒後任ケリー国土安全保障長官
・アンソニー・スカラムチ広報部長 辞任 (同月)
⇒後任サラ・ハッカビー・サンダース
・スティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問 辞任 (2017年8月)
(大統領選挙期間中からトランプの有力な側)
 しかしトランプ大統領の政権運営にとっては、そのような一般的な懸念、批判に反し、政権運営の安定性、迅速性が増したとする見方も出来る。確かに政権発足1年強で主要な補佐官、長官等が政権を去ることは好ましいことではないが、トランプ大統領が政治の経験のない財界出身である上、大統領選挙(2016年11月)の3か月前の共和党大会まで共和党候補が決まらず、政権を担う人材を固める時間的余裕がなかったこと、更に同大統領は‘既成の政治’の打破を政治信条に据えていることからも人材確保に従来の政権以上に時間を要することなどを勘案すると、主要ポストを固めるのに1年強を要したことはやむを得なかったとも言える。いずれにしてもトランプ大統領自身の感覚からすると、同大統領と政策を共有し、一緒に仕事が出来る人材を確保するためであるので、不安定性などは感じておらず、安定性は増し、より迅速に決断出来ると認識しているであろう。それは同時に性急な結論を出す可能性を秘めており、同大統領が米国内の異なる意見にも耳を傾ける共に、主要国とも十分協議しつつ事を進めることが望まれる。日本としても、トランプ政権の政策を、自ら情勢分析の上慎重に見極め、判断することが必要なのであろう。(2018.4.16.)(Copy Rights Reserved.)
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