内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

2020-09-23 | Weblog

アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

 2011年11月にASEAN諸国の提唱により協議が始まったアジア地域包括的経済連携(RCEP)は、2019年11月4日、バンコクで開催され首脳会議において、インドを除く15カ国が2020年中の協定署名に向けた手続きを進めることで合意した。
 アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、ASEAN10カ国に加え、日本、韓国中国、インドとオーストラリア、ニュージランドの16カ国を対象として関税の自由化、サービス分野における規制緩和や投資障壁の撤廃を目的として協議が行われて来た。しかしインドは、中国の市場アクセスへの懸念につき対応されておらず、自国の農業・酪農、消費部門が影響を受けるとして参加を見送った。インドのモディ首相は、今回のRCEP合意について、関税の違いや貿易赤字、非関税障壁など、「インド国民の利益に照らし合わせ、肯定的な答えは得られなかった」との考えと伝えられている。
 中国、インドを含むRCEPが実現すれば、世界の人口の約半分に当たる34億人、世界のGDPの約3割の20兆ドル、世界の貿易総額の約3割10兆ドルを占めるメガ地域経済圏となる。
インドを除く15カ国は、インドの参加を期待しつつも、2020年中の15カ国での発足を模索しているが、基本的に次の問題が内在しており、慎重な対応が求められる。
 1、「社会主義市場経済」を標榜する中国との差は埋められるか
 中国は「社会主義市場経済」を標榜しており、自由主義市場経済と異なり、基本的に中央統制経済を維持している。従って石油ガス、銀行その他の戦略性や公共性のある多数の基幹産業が政府(国務院)か共産党管理下の「国有企業」であり、補助金を含め政府や党からの実質的な支援を受けている。政府や党が100%株式を所有する中央企業などのように、その下に中央企業が持ち株会社として管理監督する子会社が多数存在する。従って表面上‘株式会社’となっていても国が保有或いは統制している企業体が存在する。
 このように国家や共産党に補助金や直接管理で保護されている企業や産業が存在し、国内産業は保護、規制しつつ、海外市場や海外投資については自由貿易、多国間主義を求めるのは、衡平を著しく失する。このような企業、産業からの輸出については、輸入国側、投資受け入れ国が、輸出国側の補助金等の保護の度合いにより相応の関税を課す事を含め、一定の防護措置をとることを認めるべきであろう。そうでなければフェアーな競争とは言えない。スポーツに例えれば、筋肉増強剤を使用している選手と競争しているようなものだ。
 この観点からすると、米国による中国に対する関税措置や貿易交渉姿勢は‘保護主義’などではなく、公正な要請と言えよう。
 1990年代に入り急速に経済成長した中国は、2001年12月、世界貿易機関(WTO)に加入した。当時のおおよその見方は、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、世界市場が拡大する一方、中国経済自体も国際経済秩序に組み込まれ、市場経済化を加速させるものと期待された。
その期待の一部は達成されたが、WTOへの加入により最も利益を得たのが中国であり、いわば独り勝ちの状況となっている。
 中国は、WTO加入に際し金融の自由化、諸法制の整備などの是正が求められ、若干の改善は見られている。しかし中国は、体制上『社会主義市場経済』を標榜しそれを堅持しているので、先進工業諸国が採用している‘自由主義経済’や‘市場経済’とは異なり、上記の通り、国営基幹産業を含め、基本的に国家統制経済であり、国家の統制や国家補助、国家管理が強い。また実体上、元の為替レートや株価への統制や管理も行われ得る体制となっている。中国は、米国の通商交渉姿勢について、国際会議や記者会見等において、‘米国は保護主義的であり、自由貿易を支持する’などとしているが、国内で中央統制経済を維持しつつ、世界では自由貿易とは身勝手と言える。ASEAN諸国も、当面は中国経済の恩恵を受けているが、RCEPが発足すると国内産業が圧迫され、不利益の方が際立つ可能性がある。現在、世界貿易機関(WTO)の改革が検討されているが、国家補助を受けている企業や産業が世界市場に参入する場合の条件、外国為替や株式市場への直接的国家介入の節度、技術や特許など知的財産の国際的保護などが課題と言えよう。
 中国は、国民総生産(GDP)において、既に米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、成長率が低下したと言っても年率6~7%の成長を維持し、2019年の世界経済成長率3.2%(OECD予測)の倍以上の成長率が予想されている。しかし中国は、国内で中央統制経済を維持する一方、世界での自由貿易を主張している。第2次世界戦争後の世界経済は、米国の経済力を軸とするものであり、70年代後半以降多極化の動きが見られるものの、基本的には米国経済が牽引力となって来た。しかしこのままでは、『社会主義市場経済』を採用している中国が、相対的に高い成長率を維持し続け、世界第1の経済大国となり、世界経済の中心となる可能性が高い。米国を中心とする国際経済秩序に、異質の経済体制を採る中国が加わり、単純化すれば、中国と米国という2つの経済圏による秩序に変容することになろう。
 トランプ政権はその変化を認識し、経済分野のみならず、‘安全保障と外交政策’上の脅威ともなるとして、目に見える短期的な利益を模索しつつも、中・長期の国際経済秩序を見据えて中国に対応し始めていると言えよう。日本を含め世界は、この流れを見逃してはならない。
 アジア地域の自由貿易地域となろうとしているRCEPを発足させるためには、本来であれば社会主義市場経済という特異な体制をとっている中国に対する参加条件を検討することが不可欠のようだ。中国を国際社会につなぎ止めて置くことは必要だが、WTOの過ちを繰り返してはならない。
 2、インド不参加のRCEPは‘閉ざされた地域グループ’を生む
インドのモディ首相は、RCEP合意について、関税の相違や貿易赤字、非関税障壁などへの対応において「肯定的な答えは得られなかった」とし、合意出来ないとの姿勢である。特に、中国の安価な製品のほか、オーストラリアやニュージランドからの安価な農産品などが国内産業を圧迫することを懸念している。
 中国への懸念は、補助金を含む産業保護という中央統制経済から発生することであるので、体制上の変化が無い限り、インドはRCEPに参加することはないであろう。RCEPがインド抜きで発足すると‘排他的な地域グループ’を生むこととなるので好ましくない。
 他方インドの参加を促すためには、中国の補助金その他の産業保護の状況に応じて関税や投資規制等と設けることを認めることとするか、それとも中国が自由主義市場経済への転換を図るかあろう。それ無くしてRCEPを発足させることは時期尚早と言えよう。(2019/12/23)

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トランプ米大統領の対中通商交渉の基本姿勢を支持すべし! (再掲))

2020-09-23 | Weblog

トランプ米大統領の対中通商交渉の基本姿勢を支持すべし! (再掲))
 トランプ米大統領は、2018年3月、‘中国が米国の知的財産権を侵害している’として、最大で600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領覚書に署名した。またこの覚書中で、中国で米国を含め外国企業が合弁事業を行う際、現地企業への技術ライセンス供与が求められていることなどについて、世界貿易機関(WTO)に提訴するようUSTRに指示して以降、米・中間の通商交渉が継続している。
 なお、トランプ大統領(夫妻)の国賓としての訪日(5月25日ー28日)を心より歓迎し、有意義な滞在であることを期待する。
 両国間交渉において貿易分野では、2018年12月までに一定の進展があったと見られているが、中国の国営企業の中央管理や実質的補助、中国への企業進出に際する中国企業への技術ライセンス供与などについては中国側が原則の問題として反発し、膠着状態となっている。これに対し米国は、更なる協議の進展を促すため、25%の関税引き上げの対象を漸次広げほぼすべての中国製品にすることを表明し、6月1日出荷分より適用される見通しだ。更に米国は安全保障上の理由から、中国政府の影響が及ぶと見られるフアーウエイなどの電子機器を政府機関が使用しない方針を明らかにした。
これに対し中国側も、‘貿易戦争は希望しない’としつつも、‘攻められれば対抗する’として米国製品への報復関税を拡大する姿勢を示している。
 1、中国は対米貿易収支の大巾黒字を是正すべし
 米国の2018年の貿易赤字は全世界で8787億(約98兆円)と過去最大を更新したが、各国別ではその約48%が対中赤字となっている。中国は近年米国の最大の貿易相手国となっている上、米国の対中国貿易赤字が2000年に日本を抜いて以来、最大の赤字国の状態が継続しているので、米国が膨大な対中貿易赤字を是正したいとすることは当然と言えば当然であろう。
 トランプ大統領は、‘アメリカ・ファースト’を標榜し、国内の労働市場の確保を重視し、各国との通商関係において‘フェアーで相互の利益’の確保を主張している。これが行き過ぎると保護主義的な傾向に陥ることから批判の対象となっているが、‘フェアーで相互の利益’は通商関係だけでなく国家関係一般に通じる原則、基準であり、米国が膨大な貿易赤字の是正を求めるのも当然の姿勢と言えるところであるので、中国側として誠意ある対応が望まれる。
 米・中貿易交渉の動向は、中国ほどではないが対米貿易黒字国であるカナダ、メキシコ、EU、ドイツなどと共に日本への影響が直接、間接に予想されるが、中国が国内において実質的に中央統制経済を維持しつつ、世界の自由市場の利益を享受し続けることは公正でも公平でもなく、長期的に国際経済秩序を歪めることになるので、中国による是正を求める米国の姿勢を支持すべきであろう。
 しかしトランプ大統領も次の諸点は理解すべきであろう。
 1)米国のように成熟した市場経済では、物の貿易に加え、蓄積された膨大な資本を背景としてより多くの利潤が期待出来る海外に投資することが多くなり、貿易収支が赤字でも資本収支が黒字となりこれを補てんするので、貿易収支を切り離して見るのではなく、国際収支全体で考えるべきである。
 2)米国からの海外への資本投資や資本逃避は米国人ビジネスマン自身が行っているので、米国内への再投資を促すことは米国自身の問題である。
 3)米国の中国、アジア等への直接投資は、多くの場合本社機能やハイテク技術を備える生産工程全体で行われる形が多くみられ、いわば根こそぎ投資となり米国内にほとんど何も残らず、米国の企業家自身が米国労働者の雇用機会を奪っていると言える。それらの海外製品が米国にも輸出されると、米国の貿易収支の悪化要因となる一方、米国の投資家に多額の利益がもたらされていることを理解すべきであろう。
トランプ大統領は、米国内での製造活動を増進させたいというのであれば、輸出国を批判するだけではなく、米国自身の問題として企業家の投資態度の改善、転換も図るべきであろう。
 2、早すぎた中国の世界貿易機関(WTO)加入
 1990年代に入り急速に経済成長した中国は、2001年12月、WTOに加入した。当時のおおよその見方は、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、世界市場が拡大する一方、中国経済自体も国際経済秩序に組み込まれ、市場経済化を加速させるものと期待された。
その期待の一部は達成されたが、WTOへの加入により最も利益を得たのが中国であり、いわば独り勝ちの状況となっている。
 中国は、WTO加入に際し金融の自由化、諸法制の整備などの是正が求められ、若干の改善は見られている。しかし中国は、体制上『社会主義市場経済』を標榜しそれを堅持しているので、先進工業諸国が採用している‘自由主義経済’や‘市場経済’とは異なり、国営基幹産業を含め、基本的に国家統制経済であり、国家の統制や国家補助、国家管理が強い。また実体上、元の為替レートや株価への統制や管理も行われ得る体制となっている。中国は、米国の通商交渉姿勢について、国際会議や記者会見等において、‘米国は保護主義的であり、自由市場を支持する’などとしているが、国内で中央統制経済を維持しつつ、世界では自由市場とは身勝手であり、中国はまだ国際市場における自由を論じる資格はなさそうだ。
 中国は、既に米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、成長率が低下したと言っても年率6~7%の成長を維持し、2019年の世界経済成長率3.2%(OECD予測)の倍以上の成長率が予想されている。しかし中国の経済体制は、2019年3月の全人代でも確認された通り、中国の特色ある『社会主義市場経済』であり、中央統制経済の実態は維持される。中国は、国内で中央統制経済を維持する一方、世界での自由市場を主張している。第2次世界戦争後の世界経済は、米国の経済力を軸とするものであり、70年代後半以降多極化の動きが見られるものの、基本的には米国経済が牽引力となって来た。しかしこのままでは、『社会主義市場経済』を採用している中国が、相対的に高い成長率を維持し続け、世界第1の経済大国となり、世界経済の中心となる可能性が高い。米国を中心とする国際経済秩序に、異質の経済体制を採る中国が加わり、単純化すれば、中国と米国という2つの経済圏による秩序に変容することになろう。
 トランプ政権はその変化を認識し、経済の分野のみならず、‘安全保障と外交政策’上の脅威ともなるとして、短期的な利益を犠牲にして中・長期の国際経済秩序を見据えて中国に対応し始めていると言えよう。
 米国が中国に対し、単に2国間貿易赤字の問題だけではなく、知的財産権保護や技術移転の強制問題、或いは為替管理の問題などを重要視し、中国側に是正を求めているのはそのためであろう。次世代通信5Gのトップを走る中国のファーウエイ社の通信機器の政府関係機関による購入や子会社を含め同社系列企業に電子機器部品の提供を禁止する措置も、米・中通商交渉における‘対中牽制’などという戦術的な対応ではなく、中・長期の影響を考慮しての対応であろう。
 2001年の中国のWTO加盟に際し、経済・金融改革、是正につき10年程度の期限を付すべきであった。国際社会の期待は裏切られた今日、加盟時に求められた是正・改革、諸条件につき、早急に厳密な審査を行うべきであろう。その上で、達成されていないか、不十分なものについては、5年から10年ほどの期限を付し、是正を求めるべきであろう。
(2019.5.20.All Rights Reserved)

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台湾の独立実現に転換すべき時

2020-09-23 | Weblog

台湾の独立実現に転換すべき時
 1月末以来、中国武漢から世界に拡大したコロナウイルスは、既に680万人以上の感染者、40万人近くの死者を出し、世界レベルでの感染は未だに収まっていない。
 このような中、5月18日、世界保健機関(WHO)の年次総会を開かれ、焦点に1つであった非加盟の台湾のオブザーバー参加について、中国が「1つに中国」を主張して反対したため、見送りとなり、年内にも開かれる次回総会で協議されることになった。
 米国は、台湾のオブザーバー参加を支持する一方、WHOは中国寄りであり、改革を求めると共に、改革されなければ脱退も辞さないとした。
1、コロナウイルス問題は世界77億人の健康、存続に関する問題
コロナウイルス問題は、単に2,700万人の台湾の人々の健康、安全の問題ではなく、世界の77億人の健康、安全の問題であると共に、世界の健全な経済・社会・文化活動の回復、維持に影響する問題であり、いわば人類全体の健全な存続に関する問題である。
 武漢型コロナウイルスは、その発生源については別として、武漢から世界に拡散し、40万人を超える死者を出す拡散源となったことは確かである。習近平中国主席は、武漢を中心とする中国国内で感染が拡大したことを詫びたが、世界に対してはそのようなお詫びをしていない。確かに中国も新型コロナウイルスの被害者であるが、世界に拡散させた責任の一端はあり、世界に何らかの言葉があっても良いのではなかろうか。それどころか、世界が密接に協力してコロナウイルスを克服していかなくてはならない時期にWHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を阻み、コロナウイルス克服へ向けての世界的努力から除外し、空白地帯を造っているに等しい。世界のどこかに空白地帯があれば、この問題の中・長期的な解決は難しい。
 2、台湾の独立を推進する時
 次のWHO総会でも、中国はかたくなに台湾が中国に帰属するとの原則を主張し、台湾の参加に反対するか、厳しい条件を課すであろう。台湾について中国が何かできるわけでもなく、台湾は国際的なコロナウイルス撲滅努力の外に置かれる。
 領土問題については、香港の問題がある。1997年6月に英国の99年間香港租借が終了し、50年間は香港の「高度の自治」が認められる1国2制度に移った。領土としては中国であり、香港での民主化運動の激化に対し、中国は香港に「国家安全法」を適用することを2020年5月の全人代で決めた。
米国等は香港の自由と民主主義を抑圧するものとして強く反発している。しかし中国は、香港は中国の一部であり、内政干渉として取り合う姿勢を示していない。中国は「領土」という原則は曲げないであろう。現在の国境を前提とする国家関係ではやむを得ないことだろう。そのことは香港を去った英国が一番よく知っている。
台湾については、戦後中華民国として中国共産党下の中華人民共和国とそれぞれが中国を代表するものとして対峙していたが、東西冷戦下の1971年に、アメリカ合衆国をはじめとする西側諸国と、ソビエト連邦(当時)をはじめとする東側諸国との間で政治的妥協が計られた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国(台湾)は国連とその関連機関から脱退を余儀なくされ、「地域」として扱われてきた。
 台湾と外交関係を有する国も現在中南米、カリブ諸国を中心として15カ国に減少している。日本も外交関係を持っていない。
 台湾が国連を脱退して50年ほどになるが、中国は「1つの中国」を主張し、台湾をその1地域としている。台湾においては、台湾独立派と中国大陸派とが存在するが、自由と民主主義は根付いており、同じ中華系も多いが、高雄系などの台湾独自の人口も多いので、中国共産党とは相容れない社会経済体制となっている。双方とも、それぞれが中心となって中国統一を願っているようであり、それが双方国民の選択であれば良いが、差が縮まるどころか広がっている。
 これ以上待っても物事は動かないし、武漢型コロナウイルス問題など地球規模の問題への対応、健全な人類の存続を考えると、台湾を国連の外に置いておくことは望ましくない。今や東西冷戦はなくなっており、その時の東西両陣営の妥協の産物である中国の代表権問題はその役割を終えたと考えられるので、今や台湾の独立を推進すべき時代になっていると言えよう。台湾独立後、双方の国民が統一中国を希望するのであれば、それは双方の国民の選択に委ねれば良いことであろう。
(2020.6.8.All Rights Reserved.)

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新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本

2020-09-23 | Weblog

新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本
 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。
 このような伝染病を克服するためには、2つの対応が必要だ。
 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。
 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。
1、新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か
(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有
 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。
 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。
 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。
 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本
 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。少なくてもそのように学んだ。
 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。
 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。
 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。
 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。
 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか
 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。
 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。
(2020.4.17.)

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施策に活かされるべき統計数値ー再掲

2020-09-23 | Weblog

施策に活かされるべき統計数値ー再掲

 5年に1度実施される国全体の人口動態(毎回10月1日現在)に関する「国勢調査」が実施される。本年は西暦年の末尾が0の年の年であり「大規模調査」とされる。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査であり、円滑な実施が望まれるが、それが国政や地方行政を含む行政に適正に反映されなくては意味が無い。特に国のあり方や国民の重要な権利義務を決める国会の議員定数に公正、平等に反映するなど、統計が実質的に活用されることが期待されるところであり、本稿を再掲する。


 国土交通省は、2014年3月28日、日本の人口は2050年に約9,700 万人に減少すると共に、全国の60%以上の地域で人口が2010年と比較して半分以下になるという試算を発表した。また、居住地域の約60%について人口が半減し、無人地域は全土の約60%に広がるとしている。このような予測から、地方については「コンパクトシテイ」として集約する等としている。
 人口減に関連しては、民間有識者で構成する日本創成会議の人口減少問題検討分科会が、全国1,800市区町村の50%弱の896自治体で「20歳から39歳の女性人口」が2010年以降の30年間で50%以上減少するとの検討結果を公表した。そして2040年の人口が1万人を割る自治体が523、全体の30%弱は「消滅の可能性が高い都市」になるとしている。
 総務省統計局も、6月25日、2014年1月1日時点での人口調査を公表したが、全国1,748の市区町村の82%強の1,440の市区町村で前年より人口が減少したとしている。東京、名古屋、関西の3大都市圏が全体の約51%の人口を抱えており、都市圏への集中が明らかにされている。年齢別では2014年4月、65才以上の“高齢者”或いは‘老年人口’が歴史上始めて総人口の25%を越えた旨公表している。65才以上が3000万人超えとなる一方、生産労働人口(15~64才)は総人口の62%弱の7,836万人と過去最低を更新しており、今後この傾向が継続するものと予想される。
 1、 活かされて来なかった官民の統計数値
 少子高齢化は、1990年代初期から政府統計で明らかにされ、人口構成が欧州
型のつりがね型となることが指摘されていた。それが年金政策や医療福祉政策ばかりでなく、地方を含む日本の行政組織・制度や国会、地方議会のあり方や都市政策、地域社会政策等に十分に活かされなかったため、今日の問題となっている。年金など社会福祉予算の不足と共に、地方におけるシャッター街や限界集落の増加など、現象面での問題が先行している。農村部において、嫁の来ない村どころか、後継者がいない農家が出始めたのも90年代からである。
 何故日本で折角の統計数値が活かされないのだろうか。
 一つは、行政が縦割りで、省庁間だけでなく、各省庁内においても局部による縦割りで、統計数値が発表されるとそれで基本的には業務が完結してしまい易い体制になっているからであろう。
統計数値を施策との関係で総合的にチェックする統計ウオッチャー的部局が行政や議会に必要のようだし、民間の研究機関でも統計数値にもっと留意が必要のようだ。
 もう一つは、統計数値が尊重されず、政治的な配慮や裁量が重視される側面があることであろう。その顕著な例が国政選挙における1票の格差問題だ。本来、国勢調査は5年に1回であるが、西暦年の末尾が0の時は大規模調査行われるので、5年に1度か、少なくても大規模国勢調査後に、選挙区の区割りが調整されるべきであろう。
 有権者の1票の格差問題について、最高裁は衆議院について1972年の選挙から、また参議院については1992年の選挙から、違憲又は違憲状態との判決を出していた。しかし1票の格差が、衆議院で2倍以上、参議院では5倍以上で違憲又は違憲状態と判断されて来たため、国会での区割り調整は衆議院で2倍以下、参議院では5倍以下で微調整が繰り返されて来た。裁判所が、‘政治的な混乱’を避けるため選挙自体を無効としたことはこれまでなかったが、法の番人である裁判所が「平等」の概念を政治的な判断から非常にゆるい形で解釈して来ていることが数値に対する信頼性や判断を曖昧なものにして来ているのではなかろうか。地方から都市部への人口流出が続いている今日でも、衆院で2倍以下、参院では5倍以下で容認されている形だ。
 しかし「平等」の概念は本来1対1の関係を確保することであり、裁判所が
1票の格差が2倍以下、或いは5倍以下であれば「平等」と判断することは余りにも恣意的と言えよう。‘政治的な混乱’を避けるためということは戦後の混乱期から一定期間は必要であり、理解出来ないことではないが、3権が分立している中にあって司法が‘政治性’を配慮し、民主主義の根幹である有権者の「平等」を軽視する結果となっているように映る。その上憲法を含む法の番人である裁判所の平等性や数値に対するゆるさは、国民の数値に対する信頼性に大きな影響を与えていると言えよう。
 そして2012年12月に行われた衆議院選挙については、全国で16件の裁判が行われ、14件は格差が是正されないままで行われた選挙は違憲とされ、他2件も違憲状態とされた。特に広島高裁では選挙自体を無効とし、一定期間後に効力が発生するとし、立法府に是正の猶予を与えたが、岡山支部は猶予を与えることなく無効とした。
 だが裁判所の格差の目安は、未だに衆院で2倍以下、参院では5倍以下が踏襲されている。有権者の一票の格差が1対2でも、1対5でも「平等」と言いたいのだろうか。無論、区割り技術上、厳密に1対1にすることは困難であろうが、司法が立法府に勧告等するのであれば、1票の重みがなるべく1対1の関係に近くなるよう促すべきなのであろう。その目安は、例えば最大格差1.2倍程度であろう。そして司法の判断を尊重し、それに適正に対応することが政治の責任ではないのだろうか。また選挙管理委員会も選挙における平等性を確保する責任があるのであろう。一部に地方の声が届き難くなるなどの意見はあるが、これまで優遇されて来たために人口減への危機感や対応が遅れたとも言える。また都市人口と言っても、筆者を含め半数以上は地方出身であり、地方のことは都市でも大いに関心があるし、過度な大都市への人口集中は望ましくないと考えられるので、地方の活力が発揮され、地方の人口が増加すれば議席も増えるという好循環を作って行くことが望まれる。
 このような調整が国勢調査毎に行われていれば、急激な変化による不安定化を招くことなく対応出来たのであろう。一方、このような調整が一定期間毎に行われると、人口減少に直面する地方自治体は人口減に歯止めを掛け、人口増に繋がるよう、有効な対応策を真剣に検討せざるを得なくなるであろう。また地方自治体の統廃合についても時間を掛けて調整されるであろう。

 2、人口減を見据えた行財政モデルと統治機構の簡素化が必要
 少子化、人口の減少傾向により、現在の‘定年制’を前提とすると、将来的に労働力人口は減少し、国民の税負担能力は低下する一方、長寿化により年金受給者や受給期間が増える等、福祉関連の歳出は増加する。
 またこのような人口減は、全国一律に起こるのではなく、地方から人口が流出し、地方の人口減が起こる一方、首都圏等の大都市に人口が集中する傾向が民間の研究でも指摘されている。
 他方、経済については、グローバル化が進み、国内市場ではなく世界市場を目標として企業の大規模化、多国籍企業化が進む一方、裾野産業がそれを支えると共に、特異な技術や製品が世界市場に向かうなど、中小企業についても国際競争力が問われるものと見られる。
 このような変化の中で、2040年を一つの目標年として、中央及び地方の体制を次のように誘導して行くことが望まれる。なお、人口増について、出生率の増加や外国人労働力の受け入れなどが検討されているおり、それにより若干の効果はあろうが、日本人の人口減と長寿化は趨勢としては継続すると見られるので、それを前提とするべきであろう。
(1) 中央、地方行政組織、議会それぞれにおける適正な定員管理
人口減、労働力人口減が予測されている以上、行政組織を適正規模に調整し
て行くことが不可欠であろう。それを行っておけば、経済停滞期に行政組織で景気対策としての雇用増を行う余裕が出来ることになろう。そのためまず新規採用を着実に削減して行くことが望ましい。新卒者も減少していくのでその影響が緩和されよう。この場合、特殊法人や独立行政法人などの関連組織を含む。また、規制の原則撤廃や簡素化を進めることが望まれる。
 特に相対的に急速な人口減が予想されている市区町村については、新規採用の削減などの定員管理と共に、市区町村の統廃合を進め、持続可能な自治体規模としていく必要があろう。同様に選挙区についても定期的な整理・統合が必要となる。これを怠ると将来財政破綻となり住民は大きな被害を受けることになろう。
 なお全体の定員管理については、雇用機会の確保(ワークシェアリング)に重点を置き給与・報酬を抑える方法と、優先分野を明確にし、優先度の低い部局や効率の悪い部局やムダを削減すると共に、規制の撤廃を促進して定員を縮小する一方、給与・報酬など労働環境を改善する方法がある。将来的にはより豊かな家計、生活、即ち高所得、高消費の社会に導くことが望まれるので、後者の方法が望ましいが、中央は中央として、またそれぞれの自治体の規模や特性を踏まえ各自治体の選択に委ねられるものであろう。
 その上で、魅力あるコミュニテイ作りを進めることが望まれる。
(2) 公共施設、社会インフラの適正な管理と魅力あるコミュニテイ作り
 これまでの経済成長期、人口増を前提とした経済社会インフラ作りのための公共事業モデルは今後困難となるので、低位成長、人口減を前提とし、コミュニテイの生活インフラに重点を置いた公共事業モデルに転換して行く必要があろう。新たな公共施設や道路等は、当面の利便性を高めようが、その維持管理と修復等の後年度負担が掛かるので、人口減となる自治体にとっては将来住民への大きな負担となる可能性がある。従って、人口動態予測や適正な需要予測を実施し検討されなくてはならない。
 他方、自治体生活圏のコンパクト化については、居住の自由との関係や一部地域が原野化する一方、生活圏が縮小する恐れがある上、不動産価格が局部的に高騰し、移転費の問題等が生じるので、新たなコミュニテイ作りについて住民との協議を通じ理解と協力が不可欠であろう。同時に、折角スペースが空くことになるのに、生き苦しい狭隘なコミュニテイ作りは望ましくない。駅や公共施設はもとより、道路沿線のビルや商店などには駐車・駐輪場の設置を義務付けることなども検討することが望ましく、また移動ショップの普及なども考えられよう。
 機能的ではあるが、地域の特性を活かし、人を惹きつける魅力が有り、豊かさを感じられる特色あるコミュニテイとなるよう、グランド・デザインを作ることが望まれる。
 (3)65才以上の年長者への対応
 寿命が延び、総人口の25%以上となった65才以上の年長者を、従来通りの統計基準を当てはめて、15~64才を‘生産労働人口’とし、65才以上を労働市場から除外し、年金受給者として区分することが適当なのであろうか。
 2つ問題がある。長寿化により、年金給付総額が増加の一途を辿ることは明らかであり、そのままでは年金財源が不足するのは明らかだ。
 もう一つは、少数ではあるが65才以上でも、相当な報酬を受けて何らかの形で仕事を継続している者がいる。他方仕事、従って組織から離れて年金生活に入ると1年程度は良いが、多くの人は物足りなさや疎外感を持ち、時間の潰し方を探すことになる。平均的な寿命でも、14、5年そのような生活を強いられる。
無論それを望む者はそれで良いのだが、健康で仕事が出来る経験を持ちながら無為に過ごすことになり、また年金だけでは将来不安を感じている人も少なくないようだ。
 65才以上でも働くことを希望する者に雇用機会を開放することが望ましい。そのため画一的な定年制は廃止することが望ましい。但し、給与が年功序列的に上昇すれば賃金コストが高まるので、最も生活費が掛かる中間層の賃金を上げるために、基本給(役職手当は除く)については例えば、60才以上については直前給与の80%、65才以上では70%、70才以上で60%、75才以上で50%以下(いずれも健康保険付与)とするなどして、雇用機会を与えることが望まれる。同時に、年齢に応じた勤務形態とする。また年齢区分については、長期に固定化することは現状を反映しなくなる可能性があるので、可能であれば3年毎、少なくても5年毎に調整することが望ましい。
なお、年金については65才以上で例えば年額800万円以上の報酬を得ている者については年金給付を部分給付とし、1,200万円以上については凍結するなどの方策を検討して良いのではなかろうか。
(2014.12.9.2020.9.18.冒頭追加)(All Rights Reserved.)

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