内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

ガソリン税暫定税率の廃止は今後の日本の制度設計を考える好機(その1/3) (再掲)

2023-11-25 | Weblog

ガソリン税暫定税率の廃止は今後の日本の制度設計を考える好機(その1/3)     (再掲)

2008-04-01 
ガソリン税暫定税率の廃止は今後の日本の制度設計を考える好機(その1/3)
 3月28日、08年度予算は参議院で否決されたことを受けて、衆議院の優先性により成立した。しかし、歳入の裏付けの一つとなる道路特定財源問題については、3月27日、福田総理は、09年度予算での一般財源化を提案する一方、08年度からの暫定税率廃止を「現実無視の議論」として拒否した。29日の記者会見でも、「地方の財源確保」と共に「地球環境問題」への取り組みという新たな要素に触れつつ、「少なくとも今の暫定税率の水準は維持しなければならない」としている。
 一般財源化に踏み込んだ点は評価出来るが、民主党を中心とする野党は、暫定税率の廃止を主張しており、3月末で暫定税率は廃止(ガソリン1リッター当たり25円強の減税)されることとなった。
 与野党は、道路財源を除く租税特別措置については、5月末まで2ヶ月間延長する「つなぎ法案」に合意し、同法案は31日午後採択された。また、政府は、暫定税率廃止に伴う地方自治体の税収減を見越して、4月分として相当額(地方相当分600億円)を補填する意向を表明している。
 08年度予算は既に成立しているので、少なくても5月末までは暫定税率など(約2.6兆円)を除き、国民生活の混乱は回避されることになる。しかし、これで基本的な問題が解決されたわけではなく、道路特定財源の08年度以降の取り扱いと、一般源化や財源の配分問題などについて国会の内外において与野党間で真剣に協議されなくてはならない。
 1、徴税による所得の移転か減税による納税者への還元か
 暫定税率2.6兆円分が廃止になると地方の道路事業への配分もなくなるので、多くの地方公共団体はその分地方予算に穴があくとして、暫定税率の維持を支持している。一部の地方道路事業は凍結され始めている。しかし、配分されても道路事業に特定されているので、全国のユーザー(納税者)から徴税された額は直接には道路建設業の所得として移転され、地方業者の所得となる。また、地方の財源確保の問題と道路に特定された暫定税率を維持することは別問題であり、地方の財源確保という観点からは事業を特定しない補助金や税源の地方への委譲などを制度として検討すべきなのであろう。
 他方廃止されると、地方を含め、ユーザーにその分(ガソリン1リッターにつき約25円、軽油約17円など)還元される。ユーザーは、タクシー、バス、トラック等の運送・流通業者から、自家用車その他個人消費者に亘るので、地域に関係なく、納税者に還元される。地方の長距離輸送に従事している業者にも大きなコスト減となり、輸送・流通コストの削減効果もあり、物価高を抑える効果として一般国民に良い影響が期待される。この効果は地方住民にも共有され、家計がその分楽になり、消費を助けると共に、地方の輸送・流通業も潤い、事業所得税などとして地方公共団体にもある程度プラスになると期待される。
 なお、石油価格を下げるとユーザーに自動車の使用を促進するようなものであり、「地球環境問題」への国際的な動きに反するとの指摘は、一面では正しいが、一層の原油高を容認することにもなり兼ねない。また消費者物価がじわりと上昇している中で、ユーザーが必要以上に石油消費を増やすことはないと予想される一方、暫定税率を維持し、ガソリンを喰う高速道路を造り続けることが「地球環境問題」に貢献するとも思えない。
 日本のガソリンは安いという指摘も、米国よりも高いし、欧州ではガソリンよりも安いデイーゼルに需要が移っている。更に、欧米と日本の顕著な相違は、欧米では一部の例外を除き、道路は無料であるのに対し、日本においては暫定税率を長期に課し、税金で建設した高速度道路に高額の通行料を徴収しており、2重に国民の負担を強いていることであり、単純にガソリン価格のみを比較するのはフェアーではないのであろう。
 これらの点は、国民経済の中でどのような分野、国民層に政策の重点を置くかという選択の問題だ。               (Copy Right Reserved.)
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