内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

ガソリン税暫定税率の廃止は今後の日本の制度設計を考える好機(その1/3)     (再掲)

2023-12-27 | Weblog

ガソリン税暫定税率の廃止は今後の日本の制度設計を考える好機(その1/3)     (再掲)

2008-04-01 
ガソリン税暫定税率の廃止は今後の日本の制度設計を考える好機(その1/3)
 3月28日、08年度予算は参議院で否決されたことを受けて、衆議院の優先性により成立した。しかし、歳入の裏付けの一つとなる道路特定財源問題については、3月27日、福田総理は、09年度予算での一般財源化を提案する一方、08年度からの暫定税率廃止を「現実無視の議論」として拒否した。29日の記者会見でも、「地方の財源確保」と共に「地球環境問題」への取り組みという新たな要素に触れつつ、「少なくとも今の暫定税率の水準は維持しなければならない」としている。
 一般財源化に踏み込んだ点は評価出来るが、民主党を中心とする野党は、暫定税率の廃止を主張しており、3月末で暫定税率は廃止(ガソリン1リッター当たり25円強の減税)されることとなった。
 与野党は、道路財源を除く租税特別措置については、5月末まで2ヶ月間延長する「つなぎ法案」に合意し、同法案は31日午後採択された。また、政府は、暫定税率廃止に伴う地方自治体の税収減を見越して、4月分として相当額(地方相当分600億円)を補填する意向を表明している。
 08年度予算は既に成立しているので、少なくても5月末までは暫定税率など(約2.6兆円)を除き、国民生活の混乱は回避されることになる。しかし、これで基本的な問題が解決されたわけではなく、道路特定財源の08年度以降の取り扱いと、一般源化や財源の配分問題などについて国会の内外において与野党間で真剣に協議されなくてはならない。
 1、徴税による所得の移転か減税による納税者への還元か
 暫定税率2.6兆円分が廃止になると地方の道路事業への配分もなくなるので、多くの地方公共団体はその分地方予算に穴があくとして、暫定税率の維持を支持している。一部の地方道路事業は凍結され始めている。しかし、配分されても道路事業に特定されているので、全国のユーザー(納税者)から徴税された額は直接には道路建設業の所得として移転され、地方業者の所得となる。また、地方の財源確保の問題と道路に特定された暫定税率を維持することは別問題であり、地方の財源確保という観点からは事業を特定しない補助金や税源の地方への委譲などを制度として検討すべきなのであろう。
 他方廃止されると、地方を含め、ユーザーにその分(ガソリン1リッターにつき約25円、軽油約17円など)還元される。ユーザーは、タクシー、バス、トラック等の運送・流通業者から、自家用車その他個人消費者に亘るので、地域に関係なく、納税者に還元される。地方の長距離輸送に従事している業者にも大きなコスト減となり、輸送・流通コストの削減効果もあり、物価高を抑える効果として一般国民に良い影響が期待される。この効果は地方住民にも共有され、家計がその分楽になり、消費を助けると共に、地方の輸送・流通業も潤い、事業所得税などとして地方公共団体にもある程度プラスになると期待される。
 なお、石油価格を下げるとユーザーに自動車の使用を促進するようなものであり、「地球環境問題」への国際的な動きに反するとの指摘は、一面では正しいが、一層の原油高を容認することにもなり兼ねない。また消費者物価がじわりと上昇している中で、ユーザーが必要以上に石油消費を増やすことはないと予想される一方、暫定税率を維持し、ガソリンを喰う高速道路を造り続けることが「地球環境問題」に貢献するとも思えない。
 日本のガソリンは安いという指摘も、米国よりも高いし、欧州ではガソリンよりも安いデイーゼルに需要が移っている。更に、欧米と日本の顕著な相違は、欧米では一部の例外を除き、道路は無料であるのに対し、日本においては暫定税率を長期に課し、税金で建設した高速度道路に高額の通行料を徴収しており、2重に国民の負担を強いていることであり、単純にガソリン価格のみを比較するのはフェアーではないのであろう。
 これらの点は、国民経済の中でどのような分野、国民層に政策の重点を置くかという選択の問題だ。               (Copy Right Reserved.)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リニアモーターカー(リニア新幹線)、越すに越されぬ大井川! ― 大井川陸上トンネル化を提案する ― (再掲)

2023-12-27 | Weblog

リニアモーターカー(リニア新幹線)、越すに越されぬ大井川!

      ― 大井川陸上トンネル化を提案する ― (再掲)

 超伝導リニアモーターを利用したリニア中央新幹線は当初東京―名古屋間の2027年開業を目指して建設が開始された。東京―名古屋間40分の夢の超特急だ。

 しかし大井川の地下に通すトンネルが水の流れに影響し、静岡県の下流への水資源を枯渇させ、流域の農業や生態系等の環境に大きな影響が出るのではないかと懸念され、同県知事が着工を了承していない。各種の環境影響調査、協議等が行われているものの、大井川トンネルの着工が出来ないままとなっている。2029年以降の開業についても見通せず、総事業費は約10.5兆円に増加するとされている。正に、越すに越されぬ大井川だ。

 大井川の下にトンネルを通すことにより流れ出す大量の水を川に戻すなどの案が検討されている。しかしそれには莫大な費用と時間が掛る上、それにより下流での従来の水量が確保出来るかは明らかでない。更に将来予想出来ない豪雨に見舞われた場合、水還流設備は対応出来るのか、またトンネル自体が絶え得るかが懸念される。悪化する気候変動の中で自然の力を見くびることは出来ない。

 そこで大井川の工区だけ陸上トンネル(大井川空中トンネル仮称)とすることを提案したい。恐らく景観の問題等で反対はあるだろうが、景観になじむデザインにするなどにより解決出来るだろう。例えば、トンネルの一部を硬質ガラスでリニア新幹線の通過を可視化すれば、撮り鉄ファンにとっては格好のスポットとなろう。乗客も一瞬の外の景色にほっとするだろう。トンネルの上部に遊歩道を築いて観光化することも考えられる。本件は経済社会問題として検討されるべきであろう。

 大井川工区の陸上トンネル化を行い、リニア新幹線の早期開業を期待したい。

(2023.1.9.) (Copy Rights Reserved.)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Sanctions against Russia should be lifted to facilitate a recovery of the World economy

2023-12-27 | Weblog

Sanctions against Russia should be lifted to facilitate a recovery of the World economy

The earthquake of Magnitude 7.8 level occurred in southeastern Turkey and northwestern Syria on 6th February caused over 35 thousand deaths and left so many houses and buildings crushed on both sides. While expressing deep condolences and sympathy to those dead and their families, we should concentrate on the emergency relief, recovery of the lifelines and reconstructions. Especially  in the cold winter season, people need shelter, heat and nutrition including milk for babies . However there appear many difficulties to deliver aid by private channels and NGOs as well as international organs. Among other things, shortage and soaring prices of energy & grain together with difficulties in bank transfers of money largely caused by the wide-ranging sanctions against Russia are making helping hands more difficult. And also the NATO initiated sanctions have been making the life in many developing countries more difficult.

Under the circumstances, I should like to propose a temporally lifting-up of the sanctions against Russia for about 3 months with the immediate effect. And along with it, also propose a temporally ceasefire between Russia and Ukraine to facilitate aid works in Turkey and Syria and for other humanitarian causes. To observe the ceasefire, the United Nations may be requested to send an international ceasefire observation mission.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

竹島問題を大所高所から解決すべき時 (総合編)(再掲)

2023-12-27 | Weblog

竹島問題を大所高所から解決すべき時 (総合編)(再掲)
 韓国の李明博大統領は、8月10日、ヘリコプターで竹島(韓国名独島)に上陸し視察した。竹島は島根県に属するが、李承晩・大韓民国(韓国)大統領が、1952年1月18日、「海洋主権」を宣言し、周辺海域に「漁船立ち入り禁止線」、通称「李承晩ライン」を設定し、同島は韓国の支配下にあると一方的に宣言して以来、日韓間の喉もとの小骨となっている。
 今回の李明博韓国大統領の竹島上陸は日韓関係にとって信頼関係を損ねる極めて深刻な行為であり、日本としても重大な決意を持って竹島問題の解決に努めるべきであろう。
 1、日韓の古くからの接点、竹島(独島)の歴史
 同島は、東西2つの岩礁島からなっており、日比谷公園と同程度の面積しかなく、また定住出来るような環境にはないが、1905年1月28日、日本政府は、閣議で「竹島」と命名し、「島根県隠岐島司」の所管とした。日本が、韓国(大韓帝国)を併合(1910年8月)した5年以上も前のことであり、日本の植民地支配や慰安婦問題などとは関係がない。
 同島を巡る日韓両国の交流は、両国の沿岸漁民を中心として江戸時代初期頃からあり、この頃より周辺海域での接触、紛争が活発になって来たとの記録が残っている。また1849年、フランスの捕鯨船Liancourt号が同島を発見し、リアンクール島と名付け、その後日本では、「りゃんこ島」とか「リアンクール岩」とも呼ばれたことがあるようで、同島(岩礁)を巡る両国の交流の歴史にも混同がありそうだ。因みに、米国国務省がホーム・ページで公表している各国別地図では、日韓双方に、Liancourt Rocks(リアンコート岩礁)の名称で記載している。
同島が両国の古来からの接触の「最外延点」であるという歴史的背景を踏まえ、同島問題の解決を真剣に模索すべき時期に来たと言えよう。
 2、「日韓新時代」は竹島(独島)問題の早期解決が鍵
 竹島の帰属問題は、日本政府としては1954年、1962年に国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案し来ているが、韓国政府が同意していないため実現していない。
 今回についても韓国政府は、国際司法裁判所への付託を拒否する姿勢が伝えられている一方、これを受けて日本政府は、経済的影響を考慮し対応を慎重に検討するとしている。しかし韓国大統領の竹島上陸は、日韓両国政府の信頼関係を著しく損なう行動であるので、この行動が日韓関係に影響を与えないはずがない。竹島は日本の領土であるのでしっかりと主張し、短期的に両国関係に影響することがあるとしても、毅然としてあらゆる措置、対策を取るべきであろう。言葉や標語だけの外交や、問題先送りにより事態の改善をもたらすことはないことが、李大統領の今回の同島訪問で明らかになった。影響を恐れて従来のような事なかれ外交を繰り返すことは、韓国側に日本は従来通り何も出来ない、何もしないとの誤ったメッセージを送り、現状を事実上容認することになる恐れが強い。従来の措置を超える明確且つ具体的な措置を検討、実施すべきであろう。
 領土の保全は、国家、国民の存立の基礎であり、安全保障、防衛の基本的な役割である。従って、韓国政府が竹島を巡る領有権問題で日本の利益を害する行動を継続するのであれば、日韓間の防衛協力については実務的な情報交換や信頼醸成措置程度に止める一方、日本自身の領土保全、安全保障に重点をシフトするなど、防衛政策の転換を真剣に検討すべきであろう。
 他方、日韓両国は近年において経済の相互依存関係を強め、また民間レベルの文化・芸能交流などが深まっているので、このような民間レベルの日韓交流に影響を与えないよう留意しつつ、国際司法裁判所への付託を含め、首脳レベルでの協議を打診し、常に本件協議への門戸を開放しておく一方、一般的な首脳レベルでの交流を停止する。また日韓経済連携協議の凍結や金融・資本、高度技術分野などでの政府レベルの交流、協力を抑制するなど、竹島問題の解決に向けて明確なメッセージを送り続けるべきであろう。
 但し2国間関係は相互の努力で発展するものであるので、日本だけではなく、韓国の官民もこの問題が民間レベルの交流に影響を与えないよう努力することを期待したい。この関連で、日韓間の議員交流を超党派での交流を含めもっと頻繁に行うことが望ましい。
この問題の解決なくして「日韓新時代」は実体が伴わない標語に過ぎない。
 3、模索すべき大所高所からの解決策
 米国国務省公開文書「1964年から68年米国の外交関係29編」に基づけば、同島の「日韓共同所有案」について、1965年5月17日、訪米した朴大統領(当時)に対し、ラスク米国務長官が、解決に向けての方策として提案したが、朴大統領は「あるまじきこと」として固辞した旨伝えられている。またその後、米国は韓国に対し同島問題を議題として韓日外相会談を提案したが、同大統領の受け入れるところにはならなかったとされている。
 共同所有案にしても、共同管理・分割領有にしても、両国国内の世論等もあり困難が伴うと予想されるが、日韓関係は当時とは異なっている。日韓両国は、1965年6月22日に日韓基本条約を締結し、国交を正常化すると共に、戦後請求権問題も経済協力等の形で処理し、基本的な友好関係の枠組みもそれなりに確立しており、市民レベルの交流も盛り上がりを見せている。今後日韓関係が健全に発展するか、阻害されるかが、竹島問題解決への両国首脳のリーダーシップと大所高所からの英断に掛かっていると言えよう。(2012.08.14.)
(Copy Right Reserved.)(不許無断転載・引用)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

給与増で国内消費増を図る経済モデルへの転換が急務

2023-12-27 | Weblog

 給与増で国内消費増を図る経済モデルへの転換が急務

 1、賃金上昇は歓迎も物価高騰で減殺

 2023年7月に時給ベースの最低賃金が41円引き挙げられ、平均1002円となったことを歓迎する。反面、31年振りの4.2%レベルの引上げであり、31年もの長期に亘り最低賃金が抑えられて来たことを意味する。その上消費者物価が2020年比で総合5.2%増の高騰を示し、2013年以来の日銀のインフ目標2%を大きく上回る形となるので、実質賃金はマイナスとなる。

 春闘による正規社員を中心とする賃上げ率も平均3.58%で、30年振りで歓迎されるが、反面賃金は30年以上低迷していたことを示すものである。その上政府・日銀が2013年以来容認して来た物価高騰で帳消しとなり、実質所得は2023年もマイナスとなることが予想される。

 2、給与増で個人消費・需要増を図る経済モデルへの転換が必要

 これは経済界が、高度経済成長期以来一貫して国民総生産(GDP)の6割前後を占める個人消費とそれを裏付ける給与増を二の次とし、外需(輸出)と政府支出の増加を優先して来たためと言えよう。外国為替も円安誘導が基調となって来たが、円安も輸出やインバウンドの海外観光客の増加にはプラスとなる一方、輸入価格の上昇により国内消費を抑制し、またドル・ベースの所得を引き下げ、所得の国際比較において順位を更に引き下げる結果となっている。

 外需(輸出)と政府支出の増加に重点を置いて経済成長を図るという従来型の経済モデルは高度成長期以来経済を牽引して来たが、賃金の抑制と1,220兆円という国内総生産の2倍を上回る公的債務の増加を招き、政府支出も伸びきった状態になっている。

給与増は言うまでも無く企業、特に中小企業の利益を圧迫し経営側にとって悩ましい問題であるが、国内需要を支える給与増は今後の安定的経営に必要であるので、経済界全体として給与増(役員報酬を含む)により個人消費の増加を図ることの重要性を理解し、経済モデルの転換を図って行くことが不可欠となっている。

 中小、零細企業の中には大手企業等の下請けとなっているものも少なくないが、大手企業は国内需要の底上げを図るため、中小、零細企業の賃上げの相当分を価格に反映することを容認することが望まれる。また政府は、中小、零細企業の賃上げを促進するため賃金改善調整金(仮称)を給付するなど、賃金増を促進する予算措置を講じることも不可欠であろう。

 世界経済も不透明性を増すと共に、成長を牽引する国も多くを期待出来ない時期にあるので、給与増により個人消費・需要増を図る経済モデルへの転換が急務である。(2023.8.8.Copy Rights Reserved.)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする