内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

国内需要消費を中核に据えた経済経営モデルへの転換

2025-02-26 | Weblog

国内需要消費を中核に据えた経済経営モデルへの転換

 内閣府(経済社会総合研究所)は、8月15日、経済統計の速報値として2024年 4ー6月期の実質GDP(国内総生産)の成長率が0.8%、年率で3.1%となったと公表した。同期の名目成長率は1.8%で、年率7.4%と好成長率を示した。行き過ぎた円安を反映し消費者物価が平均2.8%以上と高騰を続けていた中で、2024年の大手企業の賃上げが平均5.58%増、中小企業平均賃上げ率は4.6%前後に引き上げられ、全体平均では5.17%増となった。異次元の金融緩和を長期に継続したアベニミクスを実態上12年以上の長期に亘り継続しても実質所得減少していたが、金融政策の転換が検討される中で近年にはない所得増となった。

 GDP(国内総生産)の60%前後を占める個人消費の寄与度は、実質では国内需要が0.9%、純輸出(輸出-輸入)がマイナス0.1%、名目では国内需要が1.9%、純輸出が0%で、円安、物価高の中で個人消費・内需が成長を牽引した図式となった。年率4-5%以上の所得増があれば物価高騰時でも個人消費は増加することが証明された形だ。

 7月以降の更なる円安・物価高や同月末の日銀の金利引き上げを含む金融引き締め、インフレ抑制への金融政策の転換、米国経済・金融の動向などから、国内消費が引き続き景気を牽引出来るか未知数のところはあるが、高度成長期以来続けられていた円安・賃金抑制・輸出依存の経済経営モデルから、円の適正水準維持・安定的賃金所得増・国内消費促進という経済経営モデルに転換が図れるかが課題となる。

 1、安定的賃金所得増・国内消費促進という経済経営モデルへの転換の必要性

 (1)戦後を支配した円安・低所得・輸出促進の経済経営モデル

戦後日本の高度成長を牽引したのは輸出で、輸出促進のため円安・低賃金が神話のように経済経営モデルとして定着した。米国のニクソン政権時代に繊維製品、鉄鋼、自動車に輸出制限が要求され、日本はそれを米国の輸入枠として受け入れ、ベースアップは行われたものの、円安・低賃金の経済経営モデルはいわば国是となった。レーガン大統領時代になると各種の輸入規制撤廃が要求され、経済構造改革なども検討されたが、見るべき成果はなく、1985年9月のプラザ合意により円高が容認され、一時1ドル70円台の円高となった。ここで産業界は輸出を維持するため徹底的なコスト削減を行い、賃金も抑制された。

その後円高バブル経済に転じた。多くの企業は海外投資、贅を尽くした企業施設、社宅の建設、接待等、何でもあれの経営スタイルをとったが、賃金水準はそれほど上がらなかった。そして1997年11月に山一証券等が破綻しバブル経済は崩壊した。次いで1998年7月のタイ金融危機を経て経済立て直しが思うように進まぬまま、2008年9月の米国の証券会社リーマンブラザースの破綻により世界的な金融危機に見舞われ、日本経済を直撃した。ここで戦後日本企業としては初めて大量の解雇が行われ、これを救済するために「派遣会社制度」や契約社員制度が導入され失業者を救済した。しかしこの雇用制度には、解雇を回避するために雇用期間が設定されてあり、また職場から直接給与受けるわけではないので職種が同じでも給与条件に格差が生じる。また正規社員は新卒が原則であるため、一度派遣・契約制度の枠組みに入ると一生非正規雇用となる可能性が高いので、退職金や年金にまで格差が生じる。この制度は失業者にとって一時的に福音ではあったが、長期化、固定化したために職種が同じでも所得格差が生じ易い就業制度となっている。

 日本の伝統的な雇用・経営形態は、新卒採用・終身(定年)雇用であり、これが正社員を構成するため、一旦派遣・契約雇用サイクルに入るとほぼ一生正社員とはなれないのが現実だ。無論これを好む就業者もいるが、雇用の2極化、格差の固定化につながり、全体として平均所得を引き下げる要因となっている。副次的に、このような日本の雇用慣習が大卒以上への進学・研究への誘因を減じている。日本の大学院進学率が11%前後で、米国の1/2、英国の1/4程度である上、専門性の高い医学や理工系は別として就職には有利とはならない場合が多く、高度の研究、技術習得等が進みにくい教育社会構造になっている。ITや医療、宇宙開発等を中心とする今後の高度な社会経済発展を考慮すると、一段高い大学院教育の普及を図る高度教育制度の確立が必要のようだ。日本の場合、企業内教育が一般的になっているが、教職員を含め一旦就職後、管理職や高等学校の校長等へのステップアップの条件として、大学院で幅広い知識・技術の習得を行わせることを検討する時期にあるのではないだろうか。

 いずれにせよ、これまでの伝統的な就労経営形態により今日の日本が築かれて来たことは率直に評価すべきである一方、円安・賃金抑制・輸出促進の経済経営モデルが賃金所得の抑制を恒常化して来たところであるので、アベノミクスの終焉をもって、経済経営モデルを転換することが望まれる。

 

 2、消費を阻んだ将来不安―年金不信

 (1)消費を躊躇させた大きな要因が年金不安であった。1990年代のバブル経済崩壊と並行して、1998年から2007年にかけて社会保険庁によって年金手帳の基礎年金番号への統合が行われたが、その課程で年金記録約5,000万件(厚生年金番号4,000万件、国民年金番号1,000万件ほど)で該当者が特定されず、消えた年金として表面化した。一定の救済策は採られたものの未だに2,000万件余りの年金が宙に浮いた状況であり、実質所得低迷と相まって年金不信が将来不安に繋がっており、消費抑制の大きな要因となっている。

 このような中で社会保障経費が予算を圧迫していることから、2012年8月、民主党政権(野田首相)の下で税と社会保障一体改革を目的として消費税増税法(2014年4月に8%、15年10月10%実施)が成立した。国民は年金を中心として社会保障の信頼性の改善を期待した。しかし増税への国民の抵抗感から、2012年12月の総選挙で民主党政権は敗北し、自民・公明の連立政権(安倍首相)に交代し、インフレ率2%を目標とする異次元の金融緩和が行われ、消費増税は暫時実施された。自・公両党は政権と共に長年先送りして来た消費増税の果実を労せずして享受した形だ。

 社会保険制度改革については、負担者であり受益者である国民は、消費増税の上での改革であるので、負担軽減、サービス・給付の向上を期待していたが、ほとんどが保険料率・窓口負担の引き上げ、給付年齢の引き上げ、給付額引下げとなり、国民の期待からほど遠いものとなった。改革の方向が政府・行政側の立場からのものが多く、国民・受益者側に向いていなかったからであろう。従って、年金不信、将来不安は解消せず、消費増には繋がらなかった。政府組織が肥大化、巨大化し政権が長期化することにより、行政のあり方が、ともすると行政側の都合に左右され勝ちとなるのは自然の流れであるので、4、5年毎に行政の管理・事務コストを一律15~20%前後削減し、国民の新たなニーズや期待に応えて行くような行政手法の確立が必要になっている。この点は産業側にも言えることで、企業が肥大化、寡占化しているため、企業側の論理が優先され勝ちで、消費者のニーズが重視されなくなる傾向がある。もしそうであれば、民主主義の原点に立ち返り、また市場経済の原点に立ち返り、国民のニーズに沿う行政、消費者のニーズに沿う財・サービスの提供が重視される体制に改善して行くことが望ましい。嘗て、経営学の基礎で“消費者は王様だ”と言われたことがある。しかし大手企業が巨大化、寡占化した現在、消費者は顧客でしかなく、製品が物を言う時代になっているようだ。

 (2)社会保険制度改革については、事業内容自体を再検討し制度への信頼を取り戻すことが緊要であるが、予算を圧迫しているのは事業制度だけではない。制度を運用実施する事務体制の肥大化の問題があるが、2012年以降、意味のある事務体制や管理事務経費の改革が行われたことは一度もない。民主党政権時代に「事業仕分け」が行われたが、個別に一件一件政権政治家が主導して行い、その議論を公開したことにより、既得権益グループの反対論が大きく報道され、政権政治家が矢面に立たされ失敗した。しかしこの作業は常に行われなくてはならない。全ての施策は、一度認められるとそこから関係団体や利益グループが生まれ、予算は恒常的に増加することが知られている。予算査定を迅速にするために設けられた「標準予算」も予算の恒常化に繋がっている。各事業は一度認められるとその後は「標準予算」となり、利益グループが生まれ、継続される。しかし時代のニーズや優先度は変化するので、上述の如く、4-5年毎の精査と10年毎の制度評価や存廃(必要な事業は民営とする)を含む定期的な精査が必要である。しかし、省庁の巨大省庁への統合化と内閣府機能の強化に伴い、これらの機能が内閣府に集中し過ぎているため機能していないようだ。また現実論からすると、事業毎に検討すれば賛否両論が出され、既得権益グループは抵抗し結論を出すことは困難なことから、例えば4-5年毎に全ての省庁に対し事務経費(人件費を含む)実質的な一律カットを課し、優先度や削減内容などを各省庁に委ねるなどの手法も検討すべきであろう。

 今後少子化人口減が予想されているので、人件費を含む行政経費も削減して行くことを真剣に検討すべき時期である。同時に国、地方双方での議員数も削減して行く必要がある。

 

 3、国内消費、内需促進を見据えた経済経営モデルの構築

 国内消費、内需の増加は、総国民所得を押し上げ、消費税増収によりで歳入は増加する。戦後、金融投資資金が十分でなかった時代には貯蓄は美徳とされたが、過剰な貯蓄は消費を必要以上に抑制する上、貯蓄された資金は保蔵され投資にも経済成長にも結びつかない。適度な消費が経済を活性化させるとの意識が必要になっている。いずれにしても過度な貯蓄はもはや美徳ではない。

 今後賃金所得が4~5%前後増加していけば、消費は増加するものと期待される。しかし産業企業の魅力ある新規製品・サービスの開発・提供が不可欠であると共に、外国為替が円高になる場合は輸入関連製品の価格引き下げや増量など、きめの細かい対応により消費を引きつける努力が望まれる。

また政府は、国民、消費者の将来不安を解消するため年金を含む社会保障制度への信頼性を回復し、また正規、不正規雇用形態の是正や同一職種同一賃金の普及などを行うことにより労働市場を活性化して行くことが必要であろう。 (2024.9.1.All Rights Reserves.)

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首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓! (再掲)

2025-02-26 | Weblog

首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓! (再掲)

 2021年3月11日、東日本大地震・津波災害から10年を迎えた。東京電力福島原発事故への対応を含め、政府関連予算は2020年度までの10年間で約38兆円にのぼり、また日本各地からの応援や寄付等を受け、地元の人々により懸命に復興活動がなされた結果、地区差があるものの、復興はかなりの進展を見せている。地元の方々や支援活動をされた各方面の方々のご苦労に心から感謝し、称えたい。またこの災害により、命を失った方15,899人、行方不明者2,528人となっており、心からのご冥福と行方不明者が1日も早く家族の元に返ることをお祈りしたい。

 復興は進んでいるものの、10年経っても42,685人が避難者にのぼり、当時の巨大地震と津波、そして福島原発の炉心メルトダウンなどの状況を振り返ると、改めてその被害の甚大さを痛感する。

 政府の関連行事やメデイアの報道は、どうしても追悼と被災地の復興活動の継続に焦点が当てられる。しかし大震災は、東日本だけでなく、関東でも首都直下地震や東海、近畿、四国地方では南海トラフ地震による被害が今後30年前後に発生する可能性が高いと伝えられている。日本列島を巻き込む大災害は、その他火山の噴火や異常気象による大洪水などの恐れがあるので、東日本の復興継続と共に、その他の地域、特に諸機能が集中し、人口密度の高い首都東京の震災への備えがこれで良いのかに注目しなくてはならない。

 1、教訓が未だ活かされていない首都東京

 東京を中心とする首都圏については、東日本大地震の教訓を受けて、道路・歩道の渋滞、帰宅難民などへの対策として、一時避難所や備蓄、耐震補強のほか、緊急対応のための道路規制、ハザード・マップの作成など、一定の対応が行われている。しかしこれらの措置は、多くの努力を要しているものの、東日本大地震規模の巨大災害にはほとんど無力とも予想される。

 東京には、1,300万の人々が生活し、近隣から数百万の人々が東京に往来している。また日本経済の中枢部門をはじめ、学校、文化・スポーツなど多くの民間機能が集中している。更に、国会、裁判所の中枢機能に加え、緊急時には東京都などと共にその対応に当たるべき全ての中央官庁が集中している。また国民統合の象徴として皇居があり、その安全を確保しなくてはならない。

 大災害が発生した際には、行政はこれら全ての安全を確保するために膨大な救援、救出活動を集中的、同時並行的にしなくてはならない。シュミレーションなどするまでもなく、とても手が回らないと予想される。何かを守り、何かを座視するしかない。相手は、「経験したことがない大災害」であるので、旧来の常識や既成概念では対応し切れないことを、福島原発事故を含む東日本大災害から学ぶべきであろう。

 政府による『東京一極集中解消』2020年目標は断念された。ある意味で東日本大地震の教訓の風化の象徴とも言えないだろうか。

 2、政府委員会が大規模災害に警鐘

 2014年、政府の地震調査委員会は首都直下地震が「今後30年で70%」との予測を公表している。その後この予測は繰り返し述べられる毎に発生確率は高くなっており、首都直下地震はもはや過去のものや遠い将来のものではなく、今生活している国民の生涯において起こりうる現実となっていることを示している。

 首都圏を中心としたマグニチュード7相当以上の過去の地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.28)と1923年の「関東大震災(大正関東地震)」(M7.9)を挟んで次のように発生している。

1703年12月   「元禄関東地震」(M8.28)

1855年11月 安政江戸地震         (M6.9)

1894年 6月 明治東京地震         (M7.0)

同年10月   東京湾付近の地震   (M6.7)

1895年 1 月茨城県南部の地震  (M7.2)

1921年12月茨城県南部の地震  (M7.0)

1922年4月浦賀水道付近の地震(M6.8)

1923年9月  「関東大震災」   (M7.9)

  関東地方は、東西に太平洋プレートとユーラシア・プレート、これを挟んで南北に北米大陸プレートとフィリピン海プレートがあり、元禄関東地震と関東大震災はフィリピン海プレートの境目の相模トラフで発生した大地震とされている。首都圏に関係する地震、津波の誘因としては、この他に東日本大震災に関係する日本海溝や東海地方から四国沖に伸びる南海トラフなどがある。

 関東、東海地方については火山爆発も注意を要する。

 3、政府組織・制度においてシンボリックな抜本的措置が必要

 民間組織・団体や東京都及び市区町村において、それぞれ対策を検討し備えることは不可欠であろう。それは誰のためでも無い、自分達や家族、関係者の安全、安寧のためだ。

 しかし東日本大震災レベルの直下地震等が首都圏で発生し、大型津波が発生すると、1995年1月の阪神・淡路地震を上回る被害、混乱が起こるものと予想されている。2011年3月の東日本大地震の際にも首都圏で震度6を超える揺れを経験したが、道路は車道、歩道共に渋滞し、公共交通は止まり、電話・携帯による通信は繋がらず、多数の帰宅難民が発生し、その状況は翌朝まで続いた。電気、ガス、水道などのライフラインが被害を受けていれば被害は更に拡大し、回復には更に時間を要することになる。

 最大の問題はライフラインの確保であるが、大災害に対応し、司令塔となるべき中央官庁の機能をどの程度確保出来るかである。物理的被害は予想もつかないが、災害が深夜や早朝、祝祭日に発生した場合、必要な人的資源の確保は困難で時間を要することになっても仕方が無いであろう。‘経験したことがない大災害’に遭遇し、‘経験したことがない混乱等’が起こったとしても、自然のなせること、誰も責めることは出来ない。それぞれの立場で被害に備え、耐え、命を守る努力が求められるであろう。それも相当期間に及ぶ可能性がある。

 (1)そうなると危険の分散を図ることが最も効果的となる。政府はこれまで幾度となく、東京一極集中を避けるため、中央省庁や大学の地方移転を試みてきたが、部分的な専門部局の分散に留まり、一極集中解消にはほど遠い。

 米国の他、ブラジルや豪州などのように、政治・行政機能を密集地域から切り離し、新たに政治・行政都市を造ることも考えられるが、日本にはそれにふさわしい安全な地域を確保することは難しそうだ。しかし1つの有効な選択肢ではある。

 それは、日本独特の国民統合の象徴機能である皇居を宮内庁と共に京都など近畿地方に戻すことであろうか。天皇の象徴機能については憲法に明記され定着しており、皇居を移転しても機能自体に何ら影響しない一方、ご公務については憲法上国会の召集など10項目に限定されているので、移転は相対的に容易と見られる。更に、京都等に戻ることは歴史的に理解されやすく、また地方に新たな息吹をもたらし、地方活性化にも繋がる可能性がある。

 憲法上公務とされる10の業務については、現在では交通・運輸、通信が飛躍的に便利になっており、国会召集時など限られた折りに東京に行幸されることは可能であろう。宿泊が必要な場合には、年数回しか使用されていない迎賓館(赤坂離宮)に所要の宿泊施設をご用意するなど、対応は可能のようだ。また外国使節(各国大使等)の接受等については、京都の御所にて行うこととすれば、京都や近畿地方の歴史や文化等を外国使節に紹介する機会ともなろう。

 また考えたくはないが、もし将来首都圏がミサイル等で攻撃されると、政治・行政機能と象徴機能が同時に被害を受ける恐れがあるので、これを分離しておくことが安全保障上も意味があろう。

 無論どの選択肢にしても、現状を変更することには困難があろう。しかし、政府地震調査委員会が東京直下地震など経験したことがない大災害が現実に起こりうると考えているのであれば、これまでのような対応では不十分と見られるので、これまで実施されたこともないような措置を本気で検討、実施する必要があるのではないだろうか。

 (2)江戸城趾の活用方法については、城趾内の「江戸の自然」の保護を図りつつ、可能な範囲で復元を行い、歴史観光施設として整備し、また一部を国民の憩いの場として開放すると共に、大災害時や緊急時の避難場所となるよう整備するなどが考えられよう。特に江戸城趾には四方に門があるので、災害時、緊急時には門を開放し、四方から城趾内に避難が出来る。また緊急車両が災害時、緊急時に通行できるよう、城趾内の通路等を整備しておけば、渋滞が予想される一般道を通らずに迅速に移動できるなど、災害時、緊急時への活用も期待できる。(2021.3.31. All Rights Reserved.)

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トランプ大統領の野望―米国経済世界一の地位

2025-02-26 | Weblog

トランプ大統領の野望―米国経済世界一の地位

 トランプ米大統領は、1期目の2018年3月、‘中国が米国の知的財産権を侵害している’として、最大で600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に対し関税を課す大統領覚書に署名し、その後米中両国間交渉において、中国の国営企業の中央管理や実質的補助、中国への企業進出に際する中国企業への技術ライセンス供与などについては中国側が原則の問題として譲らず膠着状態となったことから、米国は協議の進展を促すため25%の関税引き上げの対象をすべての中国製品にすることを表明し、漸次実施された。バイデン政権もこれを引き継いだ形となった。

 1、2回目のトランプ政権による製品別、国別関税戦略

 トランプ大統領は2025年2回目の就任後、多くの大統領令に署名したが、関税引上げは直ちには発動せず、外国歳入庁を設立し、2月4日から不法薬物の輸出や2国間の貿易赤字等を理由としてメキシコ、カナダに25%の関税を(実施は1ヶ月延期)、また中国に対し10%の追加関税を課した。また2月12日より、原則全ての国を対象に鉄鋼・アルミ製品に対し25%の関税を掛け(対米赤字の豪州は除外か)、米国の製造業の育成を図るとしている。今後、これら諸国からの輸入状況等を確認しつつ、自動車、半導体などへの関税を検討するとしており、これら各国ともいろいろな形で接触しながら判断するものと見られる。

 主な目的は、米国の製造業の再興、促進と経済安全保障とされる。しかし製造業については、1990年代後半より中国の改革開放政策に乗って急速に中国に製造拠点を移したのは米国企業自体である。しかも米国企業は、製造の本社機能も中国に移したことにより、多くの場合、米国には資本・投資管理と輸入販売を中心とした部門しか残らなかった。それでも米国経済は潤い、消費者は低廉な製品が購入出来るようになった。しかし中国企業の成長に伴い、技術ライセンスも中国に移転する一方、米国の製造産業は空洞化し、米国の対中国貿易赤字が拡大したのである。従って、米国の製造産業の再興・促進は米国自体の産業界の理解と協力がなければ実現できない。その間の限定的な関税と言えようが、関税を速やかに引き下げ・撤廃できるよう米国自体の努力が望まれる。

 2,早過ぎた中国の世界貿易機関(WTO)への加盟

 2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した。当時、中国からの輸出は外資系企業の製品が中心であったため、WTO加盟への抵抗が少なかったと見られるが、それを契機に世界レベルの自由化、多国間主義が進み、中国が世界の自由市場のメリットを享受し飛躍的な経済成長を遂げ、またその他途上諸国が経済発展を遂げた。その中で米国は世界最大の経済国の地位を維持しているが、中国が世界2位の地位を占め、またBRICSやグローバル・サウスと呼ばれる諸国が顕著な発展を遂げた。それ自体は歓迎すべきことであるものの、2000年代初期に比し世界経済構造が変化し、米国の地位が相対的に低下し、加えて米国の製造部門が衰退し米国内の雇用機会が奪われていることへの懸念があるとしても不思議はない。

 中国については、‘社会主義市場経済’の下で、国内では国営企業など基幹産業に補助金を出し、経済活動のみならず人の移動等をも厳しく制限し中央統制する一方、国外に向かっては多国間主義を主張し世界の隅々まで自由市場の恩恵を享受している状態はフェアーでも衡平でもない。2001年の中国のWTO加盟に際し、経済・金融改革・是正につき10年程度の期限を付すべきであった。国際社会の期待は裏切られた今日、加盟時に求められた是正・改革、諸条件につき、早急に厳密な審査を行うべきであろう。その上で、市場の内外格差が是正されない場合は、速やかな是正を求めると共に、それまでの間限定的に関税を課すことはやむを得ないであろう。

 3、米国は関税政策によって米国経済世界一の地位を守り切れるか

 2023年の米国の国内総生産(GDP)は27.3兆米ドルで世界1位であるが、中国のGDPはその約70%の17.8兆ドルと迫っている上、3位のドイツ4.4兆ドル、4位の日本 4.2兆ドルと中国に大幅に水をあけられており、この流れを放置しておけば世界の経済構造は激変し、世界経済秩序も不安定化する恐れがある。

 世界経済は岐路にあり、米国だけの問題ではない。このような世界経済の構造変化に対し経済主要国が早急に対応を検討しなくてはならない時期にあるのではなかろうか。

 今後トランプ政権の2国間の限定的・局部的関税の動向を注視しつつ、相互主義に基づく多国間主義へ転換を図るべく、貿易収支のみに限定せず、資本収支、貿易外収支を含めた総合収支に基づく経済秩序を検討すべき時期ではなかろうか。(M.K.)

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