内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

オリンピック・パラリンピック、アスリートファーストか国民の健康ファーストか!

2021-02-22 | Weblog

オリンピック・パラリンピック、アスリートファーストか国民の健康ファーストか!

 東京オリンピック開催まで3ヶ月ほどに迫った2021年2月17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前オリンピック・パラリンピック担当大臣(参議院議員)が就任した。

 橋本新会長はスピードスケートや自転車で3回オリンピックに参加し、オリンピックの精神、規則を理解しており、また参議院議員活動やオリンピック・パラリンピック担当大臣として東京での開催準備を手掛けており、新会長の手腕に期待したい。

 他方、実際問題としてコロナウイルスを抱えての開催準備であるので厳しい選択を迫られることも予想される。

(1)アスリートファーストか国民の健康・命ファーストか

 橋本新会長は、就任に当たり、安全・安心な大会開催を最優先課題としつつ、アスリートファーストの大会としたいと述べている。通常のオリンピック・パラリンピックであればその通りであり、練習に練習を重ねて来たアスリートの皆さんの活躍を心から期待したい。また日本のみならず、参加予定国・地域の全てのアスリートに公平な競争条件を確保することもアスリートファーストと言える。しかしコロナウイルス問題はまだ克服の見通しはまだ立っていない。

 コロナウイルスの拡大は、日本を含め世界全体でややおさまりつつあると見られ、またワクチンが開発、実施され始め、収束に向けた活動が各国で加速するものと思われる。だが日本を含め世界全体で感染者1億1千万人 、死亡245万人強にも及んでおり、収束にはまだ相当の期間を要すると見られる。ワクチンについては、生産能力に加え、接種に膨大且つ慎重な作業が必要で隅々まで実施には相当の期間を要すると予想されている。

 更に、変異種が英国、南ア、カナダ、ブラジルなどで発生し、日本にも事例が見られ始めており、伝染力が強く、抗体を弱めるなどと伝えられているものの、未知の部分も多く、国際的な拡大を抑制する必要性が新たに出てきている。

 そのような中での東京でのオリンピック・パラリンピックの開催で、2020年の時点で206の国・地域の参加が予定されており、2021年7月にこれらの国・地域が出席すると仮定すると、各国から多数の選手、関係者、更に海外よりの観客を認めるといろいろの地域から多数の人が訪日する。

 選手その他の外国人に3日以内の陰性証明またはワクチン接種証明を求めるのか、変異種発生国の入国を認めるか否かの他、空港でのチェックと検査体制、機内に感染者が出た場合には搭乗者の一定期間の隔離、陽性反応が出た場合の隔離と治療など、入国時に相当な作業と時間を要するだろう。更に国内に入ってからの行動制限などの徹底が求められる可能性が残っている。

 206の国・地域からのこれら外国人への対応を、国内でのワクチン接種という膨大な作業に加えて実施しなくてはならない。現在医療関係者(約370万~470万人)のワクチン接種が行われており、4月からは一般国民を対象に65歳以上の年長者から順次始まるようだが、市区町村や医療関係者はこれに忙殺されると予想される。

 現実問題として、そのような中で206の国・地域からのこれら外国人への対応のために要員と施設を確保出来るのだろうか。それを怠ると、変異種を含む感染拡大のリスクがあり、その影響は来年の冬以降まで残るであろう。

 国民の健康と命を守るため、アスリートファーストとは必ずしも行かなくなるかもしれないが、アスリートを含めた感染拡大のリスクを少なくする形での対応が望ましいのではなかろうか。

(2)感染拡大リスク対経済的効果

 東京オリンピック・パラリンピック開催中止の場合、その経済損失は4.5兆円、無観客の場合でも2.4兆円とも伝えられている(関西大学宮本勝浩名誉教授の試算)。中止の場合は国民総生産の1%近くになる。

 2020年度の実質経済成長率については、2020年12月段階での政府見通しは前年度比マイナス5.2%となるので、GDP1%に相当する経済損失は小さくない。一方、もし7月の東京オリンピックが従来通りの形で開催され、感染拡大となった場合の経済全体へのリスクはそれよりも遙かに大きいことは2020年の経済成長率減退から明らかな上、国民の健康と命に与えるリスクも大きい。

 2021年1月9、10日に共同通信社が全国に電話調査した結果によると、「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%と報じており、予定通りの開催に反対の意見は80%強に及ぶ。観光業、航空運輸業、飲食を含むサービス業、イベント産業を中心とする経済的打撃は大きく、大会による経済的効果を望む声は大きいし、誰しも開催に期待したいが、解雇・倒産や雇い止め等で職を失った多数の人々、そして大学、高校から小中学校まで自由な学校生活を抑制されている多くの生徒・学生の不安、更に全国的な感染への懸念や不安が強いことを物語っている。

(3)国際的なアスリートの公平な競争条件は確保出来るのか

 東京オリンピックでは、33競技が実施される予定だが、世界各国、地域で2020年2月より国境を越えた競技はほとんど抑制され、国内の競技、練習なども国によって状況が異なる。十分練習できない国、地域もあるだろう。コロナウイルス対策で参加選手に各種の条件が課される可能性もあり、選手のコンデイションが国・地域により異なる場合が出ることも予想される。

 2月中旬にメルボルンで全豪オープンテニスが開催され、オリンピック開催の1つの例となると言われており、参考にはなる。この試合に、錦織圭選手が参加したが、同じ航空機の搭乗者に陽性者がいたため濃厚接触者として2週間狭い個室に隔離され、その間練習にも外出できず、1回戦で敗退した。同選手は公には不満等を述べてはおらず、また7月までには状況はある程度改善しているものと期待したいところだが、オリンピック大会で錦織選手と同じような状況に置かれる選手が出た場合、公平でないとの批判が出ることも予想される。更にオリンピックはチーム競技を含め33競技で206の国・地域からの参加となり、毎日複数の競技が行われる。従って競技規模が圧倒的に大きく複雑になるので、世界全体としてアスリートそれぞれに公平な競争、競技条件を確保出来るのか明かではない。なお全豪女子オープンテニスでは、大坂なおみ選手が、準々決勝でセリーナ・ウイリアムズ選手、決勝でブレイデイ選手を抑え優勝した。この困難な状況での優勝は多くのアスリートに希望を与えるもので、心から祝福したい。

 國際オリンピック委員会(IOC)は、世界の何か国・地域が最終的に参加し、それぞれの競技で選手が何人参加する予定か、またそれぞれの競技で世界レベルの公平な競技条件が確保出来ているか否かを把握していなくてはならない。そのような情報が速やかに世界に提供されることが望まれる。(2021.2.21.)

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 東京オリンピック開催まで3ヶ月ほどに迫った2021年2月17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前オリンピック・パラリンピック担当大臣(参議院議員)が就任した。

 橋本新会長はスピードスケートや自転車で3回オリンピックに参加し、オリンピックの精神、規則を理解しており、また参議院議員活動やオリンピック・パラリンピック担当大臣として東京での開催準備を手掛けており、新会長の手腕に期待したい。

 他方、実際問題としてコロナウイルスを抱えての開催準備であるので厳しい選択を迫られることも予想される。

(1)アスリートファーストか国民の健康・命ファーストか

 橋本新会長は、就任に当たり、安全・安心な大会開催を最優先課題としつつ、アスリートファーストの大会としたいと述べている。通常のオリンピック・パラリンピックであればその通りであり、練習に練習を重ねて来たアスリートの皆さんの活躍を心から期待したい。また日本のみならず、参加予定国・地域の全てのアスリートに公平な競争条件を確保することもアスリートファーストと言える。しかしコロナウイルス問題はまだ克服の見通しはまだ立っていない。

 コロナウイルスの拡大は、日本を含め世界全体でややおさまりつつあると見られ、またワクチンが開発、実施され始め、収束に向けた活動が各国で加速するものと思われる。だが日本を含め世界全体で感染者1億1千万人 、死亡245万人強にも及んでおり、収束にはまだ相当の期間を要すると見られる。ワクチンについては、生産能力に加え、接種に膨大且つ慎重な作業が必要で隅々まで実施には相当の期間を要すると予想されている。

 更に、変異種が英国、南ア、カナダ、ブラジルなどで発生し、日本にも事例が見られ始めており、伝染力が強く、抗体を弱めるなどと伝えられているものの、未知の部分も多く、国際的な拡大を抑制する必要性が新たに出てきている。

 そのような中での東京でのオリンピック・パラリンピックの開催で、2020年の時点で206の国・地域の参加が予定されており、2021年7月にこれらの国・地域が出席すると仮定すると、各国から多数の選手、関係者、更に海外よりの観客を認めるといろいろの地域から多数の人が訪日する。

 選手その他の外国人に3日以内の陰性証明またはワクチン接種証明を求めるのか、変異種発生国の入国を認めるか否かの他、空港でのチェックと検査体制、機内に感染者が出た場合には搭乗者の一定期間の隔離、陽性反応が出た場合の隔離と治療など、入国時に相当な作業と時間を要するだろう。更に国内に入ってからの行動制限などの徹底が求められる可能性が残っている。

 206の国・地域からのこれら外国人への対応を、国内でのワクチン接種という膨大な作業に加えて実施しなくてはならない。現在医療関係者(約370万~470万人)のワクチン接種が行われており、4月からは一般国民を対象に65歳以上の年長者から順次始まるようだが、市区町村や医療関係者はこれに忙殺されると予想される。

 現実問題として、そのような中で206の国・地域からのこれら外国人への対応のために要員と施設を確保出来るのだろうか。それを怠ると、変異種を含む感染拡大のリスクがあり、その影響は来年の冬以降まで残るであろう。

 国民の健康と命を守るため、アスリートファーストとは必ずしも行かなくなるかもしれないが、アスリートを含めた感染拡大のリスクを少なくする形での対応が望ましいのではなかろうか。

(2)感染拡大リスク対経済的効果

 東京オリンピック・パラリンピック開催中止の場合、その経済損失は4.5兆円、無観客の場合でも2.4兆円とも伝えられている(関西大学宮本勝浩名誉教授の試算)。中止の場合は国民総生産の1%近くになる。

 2020年度の実質経済成長率については、2020年12月段階での政府見通しは前年度比マイナス5.2%となるので、GDP1%に相当する経済損失は小さくない。一方、もし7月の東京オリンピックが従来通りの形で開催され、感染拡大となった場合の経済全体へのリスクはそれよりも遙かに大きいことは2020年の経済成長率減退から明らかな上、国民の健康と命に与えるリスクも大きい。

 2021年1月9、10日に共同通信社が全国に電話調査した結果によると、「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%と報じており、予定通りの開催に反対の意見は80%強に及ぶ。観光業、航空運輸業、飲食を含むサービス業、イベント産業を中心とする経済的打撃は大きく、大会による経済的効果を望む声は大きいし、誰しも開催に期待したいが、解雇・倒産や雇い止め等で職を失った多数の人々、そして大学、高校から小中学校まで自由な学校生活を抑制されている多くの生徒・学生の不安、更に全国的な感染への懸念や不安が強いことを物語っている。

(3)国際的なアスリートの公平な競争条件は確保出来るのか

 東京オリンピックでは、33競技が実施される予定だが、世界各国、地域で2020年2月より国境を越えた競技はほとんど抑制され、国内の競技、練習なども国によって状況が異なる。十分練習できない国、地域もあるだろう。コロナウイルス対策で参加選手に各種の条件が課される可能性もあり、選手のコンデイションが国・地域により異なる場合が出ることも予想される。

 2月中旬にメルボルンで全豪オープンテニスが開催され、オリンピック開催の1つの例となると言われており、参考にはなる。この試合に、錦織圭選手が参加したが、同じ航空機の搭乗者に陽性者がいたため濃厚接触者として2週間狭い個室に隔離され、その間練習にも外出できず、1回戦で敗退した。同選手は公には不満等を述べてはおらず、また7月までには状況はある程度改善しているものと期待したいところだが、オリンピック大会で錦織選手と同じような状況に置かれる選手が出た場合、公平でないとの批判が出ることも予想される。更にオリンピックはチーム競技を含め33競技で206の国・地域からの参加となり、毎日複数の競技が行われる。従って競技規模が圧倒的に大きく複雑になるので、世界全体としてアスリートそれぞれに公平な競争、競技条件を確保出来るのか明かではない。なお全豪女子オープンテニスでは、大坂なおみ選手が、準々決勝でセリーナ・ウイリアムズ選手、決勝でブレイデイ選手を抑え優勝した。この困難な状況での優勝は多くのアスリートに希望を与えるもので、心から祝福したい。

 國際オリンピック委員会(IOC)は、世界の何か国・地域が最終的に参加し、それぞれの競技で選手が何人参加する予定か、またそれぞれの競技で世界レベルの公平な競技条件が確保出来ているか否かを把握していなくてはならない。そのような情報が速やかに世界に提供されることが望まれる。(2021.2.21.)

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 東京オリンピック開催まで3ヶ月ほどに迫った2021年2月17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前オリンピック・パラリンピック担当大臣(参議院議員)が就任した。

 橋本新会長はスピードスケートや自転車で3回オリンピックに参加し、オリンピックの精神、規則を理解しており、また参議院議員活動やオリンピック・パラリンピック担当大臣として東京での開催準備を手掛けており、新会長の手腕に期待したい。

 他方、実際問題としてコロナウイルスを抱えての開催準備であるので厳しい選択を迫られることも予想される。

(1)アスリートファーストか国民の健康・命ファーストか

 橋本新会長は、就任に当たり、安全・安心な大会開催を最優先課題としつつ、アスリートファーストの大会としたいと述べている。通常のオリンピック・パラリンピックであればその通りであり、練習に練習を重ねて来たアスリートの皆さんの活躍を心から期待したい。また日本のみならず、参加予定国・地域の全てのアスリートに公平な競争条件を確保することもアスリートファーストと言える。しかしコロナウイルス問題はまだ克服の見通しはまだ立っていない。

 コロナウイルスの拡大は、日本を含め世界全体でややおさまりつつあると見られ、またワクチンが開発、実施され始め、収束に向けた活動が各国で加速するものと思われる。だが日本を含め世界全体で感染者1億1千万人 、死亡245万人強にも及んでおり、収束にはまだ相当の期間を要すると見られる。ワクチンについては、生産能力に加え、接種に膨大且つ慎重な作業が必要で隅々まで実施には相当の期間を要すると予想されている。

 更に、変異種が英国、南ア、カナダ、ブラジルなどで発生し、日本にも事例が見られ始めており、伝染力が強く、抗体を弱めるなどと伝えられているものの、未知の部分も多く、国際的な拡大を抑制する必要性が新たに出てきている。

 そのような中での東京でのオリンピック・パラリンピックの開催で、2020年の時点で206の国・地域の参加が予定されており、2021年7月にこれらの国・地域が出席すると仮定すると、各国から多数の選手、関係者、更に海外よりの観客を認めるといろいろの地域から多数の人が訪日する。

 選手その他の外国人に3日以内の陰性証明またはワクチン接種証明を求めるのか、変異種発生国の入国を認めるか否かの他、空港でのチェックと検査体制、機内に感染者が出た場合には搭乗者の一定期間の隔離、陽性反応が出た場合の隔離と治療など、入国時に相当な作業と時間を要するだろう。更に国内に入ってからの行動制限などの徹底が求められる可能性が残っている。

 206の国・地域からのこれら外国人への対応を、国内でのワクチン接種という膨大な作業に加えて実施しなくてはならない。現在医療関係者(約370万~470万人)のワクチン接種が行われており、4月からは一般国民を対象に65歳以上の年長者から順次始まるようだが、市区町村や医療関係者はこれに忙殺されると予想される。

 現実問題として、そのような中で206の国・地域からのこれら外国人への対応のために要員と施設を確保出来るのだろうか。それを怠ると、変異種を含む感染拡大のリスクがあり、その影響は来年の冬以降まで残るであろう。

 国民の健康と命を守るため、アスリートファーストとは必ずしも行かなくなるかもしれないが、アスリートを含めた感染拡大のリスクを少なくする形での対応が望ましいのではなかろうか。

(2)感染拡大リスク対経済的効果

 東京オリンピック・パラリンピック開催中止の場合、その経済損失は4.5兆円、無観客の場合でも2.4兆円とも伝えられている(関西大学宮本勝浩名誉教授の試算)。中止の場合は国民総生産の1%近くになる。

 2020年度の実質経済成長率については、2020年12月段階での政府見通しは前年度比マイナス5.2%となるので、GDP1%に相当する経済損失は小さくない。一方、もし7月の東京オリンピックが従来通りの形で開催され、感染拡大となった場合の経済全体へのリスクはそれよりも遙かに大きいことは2020年の経済成長率減退から明らかな上、国民の健康と命に与えるリスクも大きい。

 2021年1月9、10日に共同通信社が全国に電話調査した結果によると、「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%と報じており、予定通りの開催に反対の意見は80%強に及ぶ。観光業、航空運輸業、飲食を含むサービス業、イベント産業を中心とする経済的打撃は大きく、大会による経済的効果を望む声は大きいし、誰しも開催に期待したいが、解雇・倒産や雇い止め等で職を失った多数の人々、そして大学、高校から小中学校まで自由な学校生活を抑制されている多くの生徒・学生の不安、更に全国的な感染への懸念や不安が強いことを物語っている。

(3)国際的なアスリートの公平な競争条件は確保出来るのか

 東京オリンピックでは、33競技が実施される予定だが、世界各国、地域で2020年2月より国境を越えた競技はほとんど抑制され、国内の競技、練習なども国によって状況が異なる。十分練習できない国、地域もあるだろう。コロナウイルス対策で参加選手に各種の条件が課される可能性もあり、選手のコンデイションが国・地域により異なる場合が出ることも予想される。

 2月中旬にメルボルンで全豪オープンテニスが開催され、オリンピック開催の1つの例となると言われており、参考にはなる。この試合に、錦織圭選手が参加したが、同じ航空機の搭乗者に陽性者がいたため濃厚接触者として2週間狭い個室に隔離され、その間練習にも外出できず、1回戦で敗退した。同選手は公には不満等を述べてはおらず、また7月までには状況はある程度改善しているものと期待したいところだが、オリンピック大会で錦織選手と同じような状況に置かれる選手が出た場合、公平でないとの批判が出ることも予想される。更にオリンピックはチーム競技を含め33競技で206の国・地域からの参加となり、毎日複数の競技が行われる。従って競技規模が圧倒的に大きく複雑になるので、世界全体としてアスリートそれぞれに公平な競争、競技条件を確保出来るのか明かではない。なお全豪女子オープンテニスでは、大坂なおみ選手が、準々決勝でセリーナ・ウイリアムズ選手、決勝でブレイデイ選手を抑え優勝した。この困難な状況での優勝は多くのアスリートに希望を与えるもので、心から祝福したい。

 國際オリンピック委員会(IOC)は、世界の何か国・地域が最終的に参加し、それぞれの競技で選手が何人参加する予定か、またそれぞれの競技で世界レベルの公平な競技条件が確保出来ているか否かを把握していなくてはならない。そのような情報が速やかに世界に提供されることが望まれる。(2021.2.21.)

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 東京オリンピック開催まで3ヶ月ほどに迫った2021年2月17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前オリンピック・パラリンピック担当大臣(参議院議員)が就任した。

 橋本新会長はスピードスケートや自転車で3回オリンピックに参加し、オリンピックの精神、規則を理解しており、また参議院議員活動やオリンピック・パラリンピック担当大臣として東京での開催準備を手掛けており、新会長の手腕に期待したい。

 他方、実際問題としてコロナウイルスを抱えての開催準備であるので厳しい選択を迫られることも予想される。

(1)アスリートファーストか国民の健康・命ファーストか

 橋本新会長は、就任に当たり、安全・安心な大会開催を最優先課題としつつ、アスリートファーストの大会としたいと述べている。通常のオリンピック・パラリンピックであればその通りであり、練習に練習を重ねて来たアスリートの皆さんの活躍を心から期待したい。また日本のみならず、参加予定国・地域の全てのアスリートに公平な競争条件を確保することもアスリートファーストと言える。しかしコロナウイルス問題はまだ克服の見通しはまだ立っていない。

 コロナウイルスの拡大は、日本を含め世界全体でややおさまりつつあると見られ、またワクチンが開発、実施され始め、収束に向けた活動が各国で加速するものと思われる。だが日本を含め世界全体で感染者1億1千万人 、死亡245万人強にも及んでおり、収束にはまだ相当の期間を要すると見られる。ワクチンについては、生産能力に加え、接種に膨大且つ慎重な作業が必要で隅々まで実施には相当の期間を要すると予想されている。

 更に、変異種が英国、南ア、カナダ、ブラジルなどで発生し、日本にも事例が見られ始めており、伝染力が強く、抗体を弱めるなどと伝えられているものの、未知の部分も多く、国際的な拡大を抑制する必要性が新たに出てきている。

 そのような中での東京でのオリンピック・パラリンピックの開催で、2020年の時点で206の国・地域の参加が予定されており、2021年7月にこれらの国・地域が出席すると仮定すると、各国から多数の選手、関係者、更に海外よりの観客を認めるといろいろの地域から多数の人が訪日する。

 選手その他の外国人に3日以内の陰性証明またはワクチン接種証明を求めるのか、変異種発生国の入国を認めるか否かの他、空港でのチェックと検査体制、機内に感染者が出た場合には搭乗者の一定期間の隔離、陽性反応が出た場合の隔離と治療など、入国時に相当な作業と時間を要するだろう。更に国内に入ってからの行動制限などの徹底が求められる可能性が残っている。

 206の国・地域からのこれら外国人への対応を、国内でのワクチン接種という膨大な作業に加えて実施しなくてはならない。現在医療関係者(約370万~470万人)のワクチン接種が行われており、4月からは一般国民を対象に65歳以上の年長者から順次始まるようだが、市区町村や医療関係者はこれに忙殺されると予想される。

 現実問題として、そのような中で206の国・地域からのこれら外国人への対応のために要員と施設を確保出来るのだろうか。それを怠ると、変異種を含む感染拡大のリスクがあり、その影響は来年の冬以降まで残るであろう。

 国民の健康と命を守るため、アスリートファーストとは必ずしも行かなくなるかもしれないが、アスリートを含めた感染拡大のリスクを少なくする形での対応が望ましいのではなかろうか。

(2)感染拡大リスク対経済的効果

 東京オリンピック・パラリンピック開催中止の場合、その経済損失は4.5兆円、無観客の場合でも2.4兆円とも伝えられている(関西大学宮本勝浩名誉教授の試算)。中止の場合は国民総生産の1%近くになる。

 2020年度の実質経済成長率については、2020年12月段階での政府見通しは前年度比マイナス5.2%となるので、GDP1%に相当する経済損失は小さくない。一方、もし7月の東京オリンピックが従来通りの形で開催され、感染拡大となった場合の経済全体へのリスクはそれよりも遙かに大きいことは2020年の経済成長率減退から明らかな上、国民の健康と命に与えるリスクも大きい。

 2021年1月9、10日に共同通信社が全国に電話調査した結果によると、「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%と報じており、予定通りの開催に反対の意見は80%強に及ぶ。観光業、航空運輸業、飲食を含むサービス業、イベント産業を中心とする経済的打撃は大きく、大会による経済的効果を望む声は大きいし、誰しも開催に期待したいが、解雇・倒産や雇い止め等で職を失った多数の人々、そして大学、高校から小中学校まで自由な学校生活を抑制されている多くの生徒・学生の不安、更に全国的な感染への懸念や不安が強いことを物語っている。

(3)国際的なアスリートの公平な競争条件は確保出来るのか

 東京オリンピックでは、33競技が実施される予定だが、世界各国、地域で2020年2月より国境を越えた競技はほとんど抑制され、国内の競技、練習なども国によって状況が異なる。十分練習できない国、地域もあるだろう。コロナウイルス対策で参加選手に各種の条件が課される可能性もあり、選手のコンデイションが国・地域により異なる場合が出ることも予想される。

 2月中旬にメルボルンで全豪オープンテニスが開催され、オリンピック開催の1つの例となると言われており、参考にはなる。この試合に、錦織圭選手が参加したが、同じ航空機の搭乗者に陽性者がいたため濃厚接触者として2週間狭い個室に隔離され、その間練習にも外出できず、1回戦で敗退した。同選手は公には不満等を述べてはおらず、また7月までには状況はある程度改善しているものと期待したいところだが、オリンピック大会で錦織選手と同じような状況に置かれる選手が出た場合、公平でないとの批判が出ることも予想される。更にオリンピックはチーム競技を含め33競技で206の国・地域からの参加となり、毎日複数の競技が行われる。従って競技規模が圧倒的に大きく複雑になるので、世界全体としてアスリートそれぞれに公平な競争、競技条件を確保出来るのか明かではない。なお全豪女子オープンテニスでは、大坂なおみ選手が、準々決勝でセリーナ・ウイリアムズ選手、決勝でブレイデイ選手を抑え優勝した。この困難な状況での優勝は多くのアスリートに希望を与えるもので、心から祝福したい。

 國際オリンピック委員会(IOC)は、世界の何か国・地域が最終的に参加し、それぞれの競技で選手が何人参加する予定か、またそれぞれの競技で世界レベルの公平な競技条件が確保出来ているか否かを把握していなくてはならない。そのような情報が速やかに世界に提供されることが望まれる。(2021.2.21.)

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 東京オリンピック開催まで3ヶ月ほどに迫った2021年2月17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子前オリンピック・パラリンピック担当大臣(参議院議員)が就任した。

 橋本新会長はスピードスケートや自転車で3回オリンピックに参加し、オリンピックの精神、規則を理解しており、また参議院議員活動やオリンピック・パラリンピック担当大臣として東京での開催準備を手掛けており、新会長の手腕に期待したい。

 他方、実際問題としてコロナウイルスを抱えての開催準備であるので厳しい選択を迫られることも予想される。

(1)アスリートファーストか国民の健康・命ファーストか

 橋本新会長は、就任に当たり、安全・安心な大会開催を最優先課題としつつ、アスリートファーストの大会としたいと述べている。通常のオリンピック・パラリンピックであればその通りであり、練習に練習を重ねて来たアスリートの皆さんの活躍を心から期待したい。また日本のみならず、参加予定国・地域の全てのアスリートに公平な競争条件を確保することもアスリートファーストと言える。しかしコロナウイルス問題はまだ克服の見通しはまだ立っていない。

 コロナウイルスの拡大は、日本を含め世界全体でややおさまりつつあると見られ、またワクチンが開発、実施され始め、収束に向けた活動が各国で加速するものと思われる。だが日本を含め世界全体で感染者1億1千万人 、死亡245万人強にも及んでおり、収束にはまだ相当の期間を要すると見られる。ワクチンについては、生産能力に加え、接種に膨大且つ慎重な作業が必要で隅々まで実施には相当の期間を要すると予想されている。

 更に、変異種が英国、南ア、カナダ、ブラジルなどで発生し、日本にも事例が見られ始めており、伝染力が強く、抗体を弱めるなどと伝えられているものの、未知の部分も多く、国際的な拡大を抑制する必要性が新たに出てきている。

 そのような中での東京でのオリンピック・パラリンピックの開催で、2020年の時点で206の国・地域の参加が予定されており、2021年7月にこれらの国・地域が出席すると仮定すると、各国から多数の選手、関係者、更に海外よりの観客を認めるといろいろの地域から多数の人が訪日する。

 選手その他の外国人に3日以内の陰性証明またはワクチン接種証明を求めるのか、変異種発生国の入国を認めるか否かの他、空港でのチェックと検査体制、機内に感染者が出た場合には搭乗者の一定期間の隔離、陽性反応が出た場合の隔離と治療など、入国時に相当な作業と時間を要するだろう。更に国内に入ってからの行動制限などの徹底が求められる可能性が残っている。

 206の国・地域からのこれら外国人への対応を、国内でのワクチン接種という膨大な作業に加えて実施しなくてはならない。現在医療関係者(約370万~470万人)のワクチン接種が行われており、4月からは一般国民を対象に65歳以上の年長者から順次始まるようだが、市区町村や医療関係者はこれに忙殺されると予想される。

 現実問題として、そのような中で206の国・地域からのこれら外国人への対応のために要員と施設を確保出来るのだろうか。それを怠ると、変異種を含む感染拡大のリスクがあり、その影響は来年の冬以降まで残るであろう。

 国民の健康と命を守るため、アスリートファーストとは必ずしも行かなくなるかもしれないが、アスリートを含めた感染拡大のリスクを少なくする形での対応が望ましいのではなかろうか。

(2)感染拡大リスク対経済的効果

 東京オリンピック・パラリンピック開催中止の場合、その経済損失は4.5兆円、無観客の場合でも2.4兆円とも伝えられている(関西大学宮本勝浩名誉教授の試算)。中止の場合は国民総生産の1%近くになる。

 2020年度の実質経済成長率については、2020年12月段階での政府見通しは前年度比マイナス5.2%となるので、GDP1%に相当する経済損失は小さくない。一方、もし7月の東京オリンピックが従来通りの形で開催され、感染拡大となった場合の経済全体へのリスクはそれよりも遙かに大きいことは2020年の経済成長率減退から明らかな上、国民の健康と命に与えるリスクも大きい。

 2021年1月9、10日に共同通信社が全国に電話調査した結果によると、「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%と報じており、予定通りの開催に反対の意見は80%強に及ぶ。観光業、航空運輸業、飲食を含むサービス業、イベント産業を中心とする経済的打撃は大きく、大会による経済的効果を望む声は大きいし、誰しも開催に期待したいが、解雇・倒産や雇い止め等で職を失った多数の人々、そして大学、高校から小中学校まで自由な学校生活を抑制されている多くの生徒・学生の不安、更に全国的な感染への懸念や不安が強いことを物語っている。

(3)国際的なアスリートの公平な競争条件は確保出来るのか

 東京オリンピックでは、33競技が実施される予定だが、世界各国、地域で2020年2月より国境を越えた競技はほとんど抑制され、国内の競技、練習なども国によって状況が異なる。十分練習できない国、地域もあるだろう。コロナウイルス対策で参加選手に各種の条件が課される可能性もあり、選手のコンデイションが国・地域により異なる場合が出ることも予想される。

 2月中旬にメルボルンで全豪オープンテニスが開催され、オリンピック開催の1つの例となると言われており、参考にはなる。この試合に、錦織圭選手が参加したが、同じ航空機の搭乗者に陽性者がいたため濃厚接触者として2週間狭い個室に隔離され、その間練習にも外出できず、1回戦で敗退した。同選手は公には不満等を述べてはおらず、また7月までには状況はある程度改善しているものと期待したいところだが、オリンピック大会で錦織選手と同じような状況に置かれる選手が出た場合、公平でないとの批判が出ることも予想される。更にオリンピックはチーム競技を含め33競技で206の国・地域からの参加となり、毎日複数の競技が行われる。従って競技規模が圧倒的に大きく複雑になるので、世界全体としてアスリートそれぞれに公平な競争、競技条件を確保出来るのか明かではない。なお全豪女子オープンテニスでは、大坂なおみ選手が、準々決勝でセリーナ・ウイリアムズ選手、決勝でブレイデイ選手を抑え優勝した。この困難な状況での優勝は多くのアスリートに希望を与えるもので、心から祝福したい。

 國際オリンピック委員会(IOC)は、世界の何か国・地域が最終的に参加し、それぞれの競技で選手が何人参加する予定か、またそれぞれの競技で世界レベルの公平な競技条件が確保出来ているか否かを把握していなくてはならない。そのような情報が速やかに世界に提供されることが望まれる。(2021.2.21.)

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アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

2021-02-22 | Weblog

アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

 2011年11月にASEAN諸国の提唱により協議が始まったアジア地域包括的経済連携(RCEP)は、2019年11月4日、バンコクで開催され首脳会議において、インドを除く15カ国が2020年中の協定署名に向けた手続きを進めることで合意した。
 アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、ASEAN10カ国に加え、日本、韓国中国、インドとオーストラリア、ニュージランドの16カ国を対象として関税の自由化、サービス分野における規制緩和や投資障壁の撤廃を目的として協議が行われて来た。しかしインドは、中国の市場アクセスへの懸念につき対応されておらず、自国の農業・酪農、消費部門が影響を受けるとして参加を見送った。インドのモディ首相は、今回のRCEP合意について、関税の違いや貿易赤字、非関税障壁など、「インド国民の利益に照らし合わせ、肯定的な答えは得られなかった」との考えと伝えられている。
 中国、インドを含むRCEPが実現すれば、世界の人口の約半分に当たる34億人、世界のGDPの約3割の20兆ドル、世界の貿易総額の約3割10兆ドルを占めるメガ地域経済圏となる。
インドを除く15カ国は、インドの参加を期待しつつも、2020年中の15カ国での発足を模索しているが、基本的に次の問題が内在しており、慎重な対応が求められる。
 1、「社会主義市場経済」を標榜する中国との差は埋められるか
 中国は「社会主義市場経済」を標榜しており、自由主義市場経済と異なり、基本的に中央統制経済を維持している。従って石油ガス、銀行その他の戦略性や公共性のある多数の基幹産業が政府(国務院)か共産党管理下の「国有企業」であり、補助金を含め政府や党からの実質的な支援を受けている。政府や党が100%株式を所有する中央企業などのように、その下に中央企業が持ち株会社として管理監督する子会社が多数存在する。従って表面上‘株式会社’となっていても国が保有或いは統制している企業体が存在する。
 このように国家や共産党に補助金や直接管理で保護されている企業や産業が存在し、国内産業は保護、規制しつつ、海外市場や海外投資については自由貿易、多国間主義を求めるのは、衡平を著しく失する。このような企業、産業からの輸出については、輸入国側、投資受け入れ国が、輸出国側の補助金等の保護の度合いにより相応の関税を課す事を含め、一定の防護措置をとることを認めるべきであろう。そうでなければフェアーな競争とは言えない。スポーツに例えれば、筋肉増強剤を使用している選手と競争しているようなものだ。
 この観点からすると、米国による中国に対する関税措置や貿易交渉姿勢は‘保護主義’などではなく、公正な要請と言えよう。
 1990年代に入り急速に経済成長した中国は、2001年12月、世界貿易機関(WTO)に加入した。当時のおおよその見方は、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、世界市場が拡大する一方、中国経済自体も国際経済秩序に組み込まれ、市場経済化を加速させるものと期待された。
その期待の一部は達成されたが、WTOへの加入により最も利益を得たのが中国であり、いわば独り勝ちの状況となっている。
 中国は、WTO加入に際し金融の自由化、諸法制の整備などの是正が求められ、若干の改善は見られている。しかし中国は、体制上『社会主義市場経済』を標榜しそれを堅持しているので、先進工業諸国が採用している‘自由主義経済’や‘市場経済’とは異なり、上記の通り、国営基幹産業を含め、基本的に国家統制経済であり、国家の統制や国家補助、国家管理が強い。また実体上、元の為替レートや株価への統制や管理も行われ得る体制となっている。中国は、米国の通商交渉姿勢について、国際会議や記者会見等において、‘米国は保護主義的であり、自由貿易を支持する’などとしているが、国内で中央統制経済を維持しつつ、世界では自由貿易とは身勝手と言える。ASEAN諸国も、当面は中国経済の恩恵を受けているが、RCEPが発足すると国内産業が圧迫され、不利益の方が際立つ可能性がある。現在、世界貿易機関(WTO)の改革が検討されているが、国家補助を受けている企業や産業が世界市場に参入する場合の条件、外国為替や株式市場への直接的国家介入の節度、技術や特許など知的財産の国際的保護などが課題と言えよう。
 中国は、国民総生産(GDP)において、既に米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、成長率が低下したと言っても年率6~7%の成長を維持し、2019年の世界経済成長率3.2%(OECD予測)の倍以上の成長率が予想されている。しかし中国は、国内で中央統制経済を維持する一方、世界での自由貿易を主張している。第2次世界戦争後の世界経済は、米国の経済力を軸とするものであり、70年代後半以降多極化の動きが見られるものの、基本的には米国経済が牽引力となって来た。しかしこのままでは、『社会主義市場経済』を採用している中国が、相対的に高い成長率を維持し続け、世界第1の経済大国となり、世界経済の中心となる可能性が高い。米国を中心とする国際経済秩序に、異質の経済体制を採る中国が加わり、単純化すれば、中国と米国という2つの経済圏による秩序に変容することになろう。
 トランプ政権はその変化を認識し、経済分野のみならず、‘安全保障と外交政策’上の脅威ともなるとして、目に見える短期的な利益を模索しつつも、中・長期の国際経済秩序を見据えて中国に対応し始めていると言えよう。日本を含め世界は、この流れを見逃してはならない。
 アジア地域の自由貿易地域となろうとしているRCEPを発足させるためには、本来であれば社会主義市場経済という特異な体制をとっている中国に対する参加条件を検討することが不可欠のようだ。中国を国際社会につなぎ止めて置くことは必要だが、WTOの過ちを繰り返してはならない。
 2、インド不参加のRCEPは‘閉ざされた地域グループ’を生む
インドのモディ首相は、RCEP合意について、関税の相違や貿易赤字、非関税障壁などへの対応において「肯定的な答えは得られなかった」とし、合意出来ないとの姿勢である。特に、中国の安価な製品のほか、オーストラリアやニュージランドからの安価な農産品などが国内産業を圧迫することを懸念している。
 中国への懸念は、補助金を含む産業保護という中央統制経済から発生することであるので、体制上の変化が無い限り、インドはRCEPに参加することはないであろう。RCEPがインド抜きで発足すると‘排他的な地域グループ’を生むこととなるので好ましくない。
 他方インドの参加を促すためには、中国の補助金その他の産業保護の状況に応じて関税や投資規制等と設けることを認めることとするか、それとも中国が自由主義市場経済への転換を図るかあろう。それ無くしてRCEPを発足させることは時期尚早と言えよう。(2019/12/23)

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Remarks by U.N.S.G. Guterres on the online Conference with Chinese President Xi are  questionable!

2021-02-22 | Weblog

Remarks by U.N.S.G. Guterres on the online Conference with Chinese President Xi are                                             questionable!

                                                                                                            October 7th, 2020

 Celebrating the 75th Anniversary of the United Nations, United Nations Secretary-General Antonio Guterres had an online conference with Chinese President Xi Jinping on September 23, 2020.

The remarks by Chinese President Xi show marked differences between its external posture and the actual domestic reality in China
  President Xi Jinping of People's Republic of China (PRC) expressed the following points during the on-line meeting with UNSG, based on the report by Chinese News Xinhua:

He reaffirms to the international community to uphold multilateralism and abide by the commitments to the UN Charter.
Noting that COVID-19 is still rampant in the world, China firmly supports the key initiatives of the UN system, especially the World Health Organization.  China also firmly supports the UN system in strengthening international           cooperation in COVID-19 prevention and containment. It will make COVID-19     vaccines a global public good after putting them into use, and also contribute  to the vaccine accessibility and affordability in developing countries.
 (3)Noting the emergence of many new problems amid the pandemic, these problems are related to peace and development in one way or another.

 In this regard, the UN Security Council should play the role of a collective security mechanism, and the Security Council permanent members should play an exemplary role.

 Pursuing unilateralism and seeking hegemony are unpopular and will surely be rejected.

 The COVID-19 pandemic has magnified the problems of maladaptation and mismatch in the global governance system.

 There is only one system in the world, namely the UN-centered international system, and only one set of rules — the basic norms of international relations based on the UN Charter.

 China never pursues ideological confrontation, advocates 'decoupling' or seeks hegemony.

China will not sit idly by and allow its national sovereignty, dignity and development space to be undermined. Instead, China will firmly safeguard its legitimate rights and interests and uphold international equity and justice.
 All countries are called on to rise above differences between countries, nationalities, cultures and ideologies so as to promote efforts in building a community with a shared future for humanity.

 

  Although his remarks may be well received basically by the international community including the United Nations, most of them sound to be quite different from the actual situation inside China, which adopts One-Party Democracy and a Socialism Market Economy among other things.

 

 2、Courteous yet accommodating response by UN Secretary-General Guterres

 United Nations Secretary-General Antonio Guterres, while listening cheerfully to Chinese President Xi, stressed the importance of multilateralism, international cooperation, and a powerful United Nations as the world faces challenges, including the COVID-19 pandemic and climate change.

 He expressed his gratitude to China's consistent and firm support for multilateralism. And he welcomed a series of important initiatives and measures President Xi announced at the UN General Assembly in September, 2020, in such spheres as the  practice of multilateralism, coping with climate change and promoting sustainable development.

 He also expressed his support for China's efforts to promote jointly in building ‘a Silk Road of Green Development’.

 He highly appreciated China's role in safeguarding the world peace.

 UN Secretary-General Guterres said that the United Nations would support China in deepening cooperation with Africa and other developing countries, and expressed the UN’s willingness to strengthen cooperation with China and he expected that China would play a leading role.

 

 It is quite natural for the UN Secretary-General to appreciate China’s role and his willingness to strengthen relations and cooperate with China, especially when the United Nations celebrates the 75th anniversary. But if we realize the clear differences between what Chinese President Xi was telling to the World and what the Chinese Government is actually doing inside China, including Tibet and Xinjiang Uygur, some of the remarks made by UN Secretary General Guterres are questionable and inappropriate. Or a lack of knowledge about actual China.

 3、China’s external posture differs from its reality inside China

 Although most of the remarks above made by Chinese President Xi are appreciated from the widely-shared international standard based on democracy, freedom, human rights, and free market economy, what he is saying to the World  is different from what China has been doing inside China, including Tibet and Xinjiang Uygur, and, in part, Hong Kong.

Delay of China’s detailed notice to the World, in particular, WHO on the Buhan-originated Corona Virus
 While Chinese President Xi said that China would support the UN system in strengthening international cooperation in COVID-19 prevention and containment, it failed to provide to WHO accurate information immediately after the detection of Corona Virus in Buhan in January, 2020. Also it failed to stop the outgoing of foreign nationals and Chinese people from China, while it quickly restricted the movement of Chinese people from Buhan. Such delayed measures on the part of China let the Corona Virus spread outside China, and prevented WHO to recommend the World to take preventive measures as quick as possible, especially the closure of airports and others, and declare it as COVID-19 Pandemic.

 The very swift and world-wide spread outside China of the Buhan-originated Corona Virus itself proves that there was certainly such a delay. In fact, President Xi apologized to the people in Buhan for the delay of prompt measures after the Chinese Government imposed the lockdown there. It seems, to a greater degree, that he owes an apology to the rest of the World for causing the worldwide spread of Buhan-originated corona virus, instead of denying it and criticizing other country. 

 The World community wants to know the fact first so that we could take measures as quick as possible. Denying it only magnifies doubt and distrust over the Chinese sincerity.

 China’s governing system is based on One-Party (Communist Party) Democracy and the Socialism Market Economy
  Although we welcome China’s external posture to uphold multilateralism and abide by the commitments to the UN Charter, it firmly adopts One-Party-  Democracy and the Socialism Market Economy internally.  We don’t call One-Party -Democracy based on Communist Party a Democracy. Because it denies plural political parties and freedom of belief and speech, We don’t call the Socialism Market Economy, which is centrally managed and restricted, a Free Market Economy.

 Therefore, the movement and activities inside China by not only Chinese people themselves but also foreign nationals are restricted in one way or another, while Chinese people are permitted free access to the international market and  free movements within any countries in the world.

  If China wants to keep such freedom of activities and movement externally, it should allow foreign people similar freedom in the spirit of reciprocity. If not, it is fair to say that all countries have the right to take similar restrictive measures to Chinese activities there to the extent their nationals’ activities are restricted in China.

 While we certainly welcome China to be a member of the international community in principle, UN Secretary-General Guterres should also have invited China to accord to foreign nationals inside Chine similar freedom of activities and movement in the spirit of reciprocity and fairness.

China’s massive military buildup and accelerated military activities especially in the East China Sea
 Chinese President Xi claimed that “the UN Security Council should play the role of a collective security mechanism, and the Security Council permanent members should play an exemplary role.”

 We are puzzled. Isn’t it China who made difficult for the Security Council to take prompt security measures by vetoing on many cases?

 Isn’t it China who occupies the Spratly and Paracel Islands by force, whose territorial rights are claimed by as many as 6 neighboring countries, and were building militarily usable facilities on those islands? Isn’t it China who rejected the ruling of the Permanent Court of Arbitration (PCA) in 2016 that “there was no evidence that China had historically exercised exclusive control over the waters or resources, hence there was no legal basis for China to claim historic rights over the nine-dash line (the Spratly Islands area),” advocating unanimously the claim made by the Philippines. The tribunal also criticized China's land reclamation projects and construction of artificial islands in the Spratly Islands, destroying the vast coral reef. We don’t call such acts “exemplary.” On the contrary.

  President Xi also urged that “pursuing unilateralism and seeking hegemony are unpopular and will surely be rejected.” If he really thinks so, he is invited to show a good example by accepting the ruling and settling other disputes with the countries concerned. 

  In this regard, I should like to propose a negotiation on Disarmament and Confidence Building in East Asia.

 

  UN Secretary General should have asked Chinese President to settle those issues as quick as possible, while appreciating China’s positive role to be played on other issues as well. And he should not have expressed his support for China's efforts to build ‘a Silk Road of Green Development,’ which is in line with China’s  recent strategy of “One Belt One Road,” stretching from China to Europe on the Eurasian Continent and the Sea, because it appears to be somewhat expansionistic and hegemonistic.

  (4) China’s bothering human rights records and oppression of self-determination

  Chinese President Xi called on all countries “to overcome differences between countries, nationalities, cultures and ideologies so as to promote efforts in building a community with a shared future for humanity”. We agree what he was saying in principle, but we are largely puzzled. We are largely puzzled because China has notorious records contrary to human rights and self-determination in Tibet and Xinjiang Uygur, and, in part, Hong Kong. There is a clear disparity in words and deeds.

 Secretary General Guterres of the United Nations should have drawn President Xi’s attention that the United Nations was worried about the human rights situation in those areas. Without saying any of these, he must have given a wrong message to Chinese President Xi. (2020/10/07  M.K.)

Global Policy Group

                                                                                                            October 7th, 2020

 Celebrating the 75th Anniversary of the United Nations, United Nations Secretary-General Antonio Guterres had an online conference with Chinese President Xi Jinping on September 23, 2020.

The remarks by Chinese President Xi show marked differences between its external posture and the actual domestic reality in China
  President Xi Jinping of People's Republic of China (PRC) expressed the following points during the on-line meeting with UNSG, based on the report by Chinese News Xinhua:

He reaffirms to the international community to uphold multilateralism and abide by the commitments to the UN Charter.
Noting that COVID-19 is still rampant in the world, China firmly supports the key initiatives of the UN system, especially the World Health Organization.  China also firmly supports the UN system in strengthening international           cooperation in COVID-19 prevention and containment. It will make COVID-19     vaccines a global public good after putting them into use, and also contribute  to the vaccine accessibility and affordability in developing countries.
 (3)Noting the emergence of many new problems amid the pandemic, these problems are related to peace and development in one way or another.

 In this regard, the UN Security Council should play the role of a collective security mechanism, and the Security Council permanent members should play an exemplary role.

 Pursuing unilateralism and seeking hegemony are unpopular and will surely be rejected.

 The COVID-19 pandemic has magnified the problems of maladaptation and mismatch in the global governance system.

 There is only one system in the world, namely the UN-centered international system, and only one set of rules — the basic norms of international relations based on the UN Charter.

 China never pursues ideological confrontation, advocates 'decoupling' or seeks hegemony.

China will not sit idly by and allow its national sovereignty, dignity and development space to be undermined. Instead, China will firmly safeguard its legitimate rights and interests and uphold international equity and justice.
 All countries are called on to rise above differences between countries, nationalities, cultures and ideologies so as to promote efforts in building a community with a shared future for humanity.

 

  Although his remarks may be well received basically by the international community including the United Nations, most of them sound to be quite different from the actual situation inside China, which adopts One-Party Democracy and a Socialism Market Economy among other things.

 

 2、Courteous yet accommodating response by UN Secretary-General Guterres

 United Nations Secretary-General Antonio Guterres, while listening cheerfully to Chinese President Xi, stressed the importance of multilateralism, international cooperation, and a powerful United Nations as the world faces challenges, including the COVID-19 pandemic and climate change.

 He expressed his gratitude to China's consistent and firm support for multilateralism. And he welcomed a series of important initiatives and measures President Xi announced at the UN General Assembly in September, 2020, in such spheres as the  practice of multilateralism, coping with climate change and promoting sustainable development.

 He also expressed his support for China's efforts to promote jointly in building ‘a Silk Road of Green Development’.

 He highly appreciated China's role in safeguarding the world peace.

 UN Secretary-General Guterres said that the United Nations would support China in deepening cooperation with Africa and other developing countries, and expressed the UN’s willingness to strengthen cooperation with China and he expected that China would play a leading role.

 

 It is quite natural for the UN Secretary-General to appreciate China’s role and his willingness to strengthen relations and cooperate with China, especially when the United Nations celebrates the 75th anniversary. But if we realize the clear differences between what Chinese President Xi was telling to the World and what the Chinese Government is actually doing inside China, including Tibet and Xinjiang Uygur, some of the remarks made by UN Secretary General Guterres are questionable and inappropriate. Or a lack of knowledge about actual China.

 3、China’s external posture differs from its reality inside China

 Although most of the remarks above made by Chinese President Xi are appreciated from the widely-shared international standard based on democracy, freedom, human rights, and free market economy, what he is saying to the World  is different from what China has been doing inside China, including Tibet and Xinjiang Uygur, and, in part, Hong Kong.

Delay of China’s detailed notice to the World, in particular, WHO on the Buhan-originated Corona Virus
 While Chinese President Xi said that China would support the UN system in strengthening international cooperation in COVID-19 prevention and containment, it failed to provide to WHO accurate information immediately after the detection of Corona Virus in Buhan in January, 2020. Also it failed to stop the outgoing of foreign nationals and Chinese people from China, while it quickly restricted the movement of Chinese people from Buhan. Such delayed measures on the part of China let the Corona Virus spread outside China, and prevented WHO to recommend the World to take preventive measures as quick as possible, especially the closure of airports and others, and declare it as COVID-19 Pandemic.

 The very swift and world-wide spread outside China of the Buhan-originated Corona Virus itself proves that there was certainly such a delay. In fact, President Xi apologized to the people in Buhan for the delay of prompt measures after the Chinese Government imposed the lockdown there. It seems, to a greater degree, that he owes an apology to the rest of the World for causing the worldwide spread of Buhan-originated corona virus, instead of denying it and criticizing other country. 

 The World community wants to know the fact first so that we could take measures as quick as possible. Denying it only magnifies doubt and distrust over the Chinese sincerity.

 China’s governing system is based on One-Party (Communist Party) Democracy and the Socialism Market Economy
  Although we welcome China’s external posture to uphold multilateralism and abide by the commitments to the UN Charter, it firmly adopts One-Party-  Democracy and the Socialism Market Economy internally.  We don’t call One-Party -Democracy based on Communist Party a Democracy. Because it denies plural political parties and freedom of belief and speech, We don’t call the Socialism Market Economy, which is centrally managed and restricted, a Free Market Economy.

 Therefore, the movement and activities inside China by not only Chinese people themselves but also foreign nationals are restricted in one way or another, while Chinese people are permitted free access to the international market and  free movements within any countries in the world.

  If China wants to keep such freedom of activities and movement externally, it should allow foreign people similar freedom in the spirit of reciprocity. If not, it is fair to say that all countries have the right to take similar restrictive measures to Chinese activities there to the extent their nationals’ activities are restricted in China.

 While we certainly welcome China to be a member of the international community in principle, UN Secretary-General Guterres should also have invited China to accord to foreign nationals inside Chine similar freedom of activities and movement in the spirit of reciprocity and fairness.

China’s massive military buildup and accelerated military activities especially in the East China Sea
 Chinese President Xi claimed that “the UN Security Council should play the role of a collective security mechanism, and the Security Council permanent members should play an exemplary role.”

 We are puzzled. Isn’t it China who made difficult for the Security Council to take prompt security measures by vetoing on many cases?

 Isn’t it China who occupies the Spratly and Paracel Islands by force, whose territorial rights are claimed by as many as 6 neighboring countries, and were building militarily usable facilities on those islands? Isn’t it China who rejected the ruling of the Permanent Court of Arbitration (PCA) in 2016 that “there was no evidence that China had historically exercised exclusive control over the waters or resources, hence there was no legal basis for China to claim historic rights over the nine-dash line (the Spratly Islands area),” advocating unanimously the claim made by the Philippines. The tribunal also criticized China's land reclamation projects and construction of artificial islands in the Spratly Islands, destroying the vast coral reef. We don’t call such acts “exemplary.” On the contrary.

  President Xi also urged that “pursuing unilateralism and seeking hegemony are unpopular and will surely be rejected.” If he really thinks so, he is invited to show a good example by accepting the ruling and settling other disputes with the countries concerned. 

  In this regard, I should like to propose a negotiation on Disarmament and Confidence Building in East Asia.

 

  UN Secretary General should have asked Chinese President to settle those issues as quick as possible, while appreciating China’s positive role to be played on other issues as well. And he should not have expressed his support for China's efforts to build ‘a Silk Road of Green Development,’ which is in line with China’s  recent strategy of “One Belt One Road,” stretching from China to Europe on the Eurasian Continent and the Sea, because it appears to be somewhat expansionistic and hegemonistic.

  (4) China’s bothering human rights records and oppression of self-determination

  Chinese President Xi called on all countries “to overcome differences between countries, nationalities, cultures and ideologies so as to promote efforts in building a community with a shared future for humanity”. We agree what he was saying in principle, but we are largely puzzled. We are largely puzzled because China has notorious records contrary to human rights and self-determination in Tibet and Xinjiang Uygur, and, in part, Hong Kong. There is a clear disparity in words and deeds.

 Secretary General Guterres of the United Nations should have drawn President Xi’s attention that the United Nations was worried about the human rights situation in those areas. Without saying any of these, he must have given a wrong message to Chinese President Xi. (2020/10/07  M.K.)

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国際司法裁判所のロヒンギャ虐待への対応を評価 (その2 )―国際難民問題に一石を投じる―

2021-02-22 | Weblog

  国際司法裁判所のロヒンギャ虐待への対応を評価 (その2 )
     ―国際難民問題に一石を投じる―
 ミャンマーのバングラデシュ国境付近に居住するイスラム系少数民族ロヒンギャの抑圧問題について、国際司法裁判所(ICJ、本部オランダ)は1月23日、少数民族ロヒンギャに対するミャンマー軍による集団虐殺(ジェノサイド)が存在したとして、ミャンマー政府に対し、「迫害を防ぐあらゆる手段を講じる」よう指示する仮保全措置命令を出した。
この問題は、ガンビア政府がイスラム諸国で構成されるイスラム協力機構を代表してICJに提訴したものだ。国際司法裁判所は「ロヒンギャは依然として危険にさらされている状況にある」と認定し、ミャンマー政府に対し、「対策」の実施状況を4ヶ月以内に報告するよう命じた。

 1、難民排出国・源泉国の責任が問われ、改善措置が求められた意義は大きい (その1で掲載)

 2、今後難民問題解決には排出国・源泉国の責任と負担の明確化が不可欠 
 国連傘下の専門機関である難民高等弁務官事務所が対象としている内戦や迫害、地域紛争から逃れた難民や避難民は、2018年、世界中で約7,080万人に達している。このうち、国内避難民が4,130万人であるが、国外に避難した難民が2,590万人、庇護申請者が350万人となっている。戦後、内戦や武力紛争、政治的迫害、地域紛争などが世界各地で発生している一方、難民排出の根源となっているこれら紛争等が長期化し、解決のめどが立たないケースが多いことから、避難民・難民の数はこの20年間で2倍を超え、激増している。難民キャンプが長期に維持されるとキャンプ内で自然増が起こり、規模の問題だけではなく、子供の教育やキャンプ内での閉鎖された将来という人権上の問題も生ずる。
 因みに難民全体の3分の2以上の67%が、シリア(670万人)、アフガニスタン(270万人)、南スーダン(230万人)、ミャンマー(110万人)、ソマリア(90万人)などの発展途上国で発生しており、その内難民申請で許可され第3国定住となったのは902,400人に過ぎない。難民排出国が途上国に集中しているため、世界の難民の84%が途上国で受け入れているが、先進国も全体16%を受け入れている。
 多くの場合、難民等は難民キャンプに収容され不自由な生活を強いられるため、シェルターや食料、衣料、薬品などの必需品は主に難民高等弁務官事務所が支援しており、年間予算額は約80億ドル(2018年、8,800億円規模)にも及び、これらは日本を含む国連加盟国による拠出金(各国の税金)や寄付金等で賄われている。更に、長期に亘る中東紛争の根源となっているパレスチナ難民を含めると、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) の年間予算7.5億ドル(2018年、825億円規模)、その他世界食糧計画(WFO)による食糧支援などの国連機関によるによる支援を加えると、年間1兆円内外の支援を続けていることになる。
 難民の根源である武力紛争や内戦、地域紛争を解決して行かなければ、難民問題は解決せず、コストは増加し、これを各国の税金で支えて行かなくてはならない。人道上仕方がない面があるが、このようなことを何時までも長期間続ければ、難民総数は膨らみ、世界の負担が増え続ける一方であり、また難民の環境に置かれている人々にとっても自由な生活は奪われ、長期化は不幸であろう。
 難民の根源である内戦や紛争を解決する努力を優先すべきだ。その上でも、難民の源泉国、排出国に費用分担や国連の保護下に置く区域の提供などを義務付けると共に、国内抗争や地域紛争の平和的解決を強く求めるべきであろう。それを怠る場合は、人道援助を除く、国連や2国間の援助の削減を行うと共に、大量虐殺(ジェノサイド)や迫害等については近隣国や域内組織、或いは国連が国際司法裁判所に提訴し、関係国に公正な措置を求めるなどすべきであろう。
 現在の状況は、難民の源泉国、排出国のフリーライドとなっており、これがまた抗争や紛争の早期解決へのインセンテイブを失わせているのではないか。(2020.2.17.)
 ミャンマーのバングラデシュ国境付近に居住するイスラム系少数民族ロヒンギャの抑圧問題について、国際司法裁判所(ICJ、本部オランダ)は1月23日、少数民族ロヒンギャに対するミャンマー軍による集団虐殺(ジェノサイド)が存在したとして、ミャンマー政府に対し、「迫害を防ぐあらゆる手段を講じる」よう指示する仮保全措置命令を出した。
この問題は、ガンビア政府がイスラム諸国で構成されるイスラム協力機構を代表してICJに提訴したものだ。国際司法裁判所は「ロヒンギャは依然として危険にさらされている状況にある」と認定し、ミャンマー政府に対し、「対策」の実施状況を4ヶ月以内に報告するよう命じた。

 1、難民排出国・源泉国の責任が問われ、改善措置が求められた意義は大きい (その1で掲載)

 2、今後難民問題解決には排出国・源泉国の責任と負担の明確化が不可欠 
 国連傘下の専門機関である難民高等弁務官事務所が対象としている内戦や迫害、地域紛争から逃れた難民や避難民は、2018年、世界中で約7,080万人に達している。このうち、国内避難民が4,130万人であるが、国外に避難した難民が2,590万人、庇護申請者が350万人となっている。戦後、内戦や武力紛争、政治的迫害、地域紛争などが世界各地で発生している一方、難民排出の根源となっているこれら紛争等が長期化し、解決のめどが立たないケースが多いことから、避難民・難民の数はこの20年間で2倍を超え、激増している。難民キャンプが長期に維持されるとキャンプ内で自然増が起こり、規模の問題だけではなく、子供の教育やキャンプ内での閉鎖された将来という人権上の問題も生ずる。
 因みに難民全体の3分の2以上の67%が、シリア(670万人)、アフガニスタン(270万人)、南スーダン(230万人)、ミャンマー(110万人)、ソマリア(90万人)などの発展途上国で発生しており、その内難民申請で許可され第3国定住となったのは902,400人に過ぎない。難民排出国が途上国に集中しているため、世界の難民の84%が途上国で受け入れているが、先進国も全体16%を受け入れている。
 多くの場合、難民等は難民キャンプに収容され不自由な生活を強いられるため、シェルターや食料、衣料、薬品などの必需品は主に難民高等弁務官事務所が支援しており、年間予算額は約80億ドル(2018年、8,800億円規模)にも及び、これらは日本を含む国連加盟国による拠出金(各国の税金)や寄付金等で賄われている。更に、長期に亘る中東紛争の根源となっているパレスチナ難民を含めると、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) の年間予算7.5億ドル(2018年、825億円規模)、その他世界食糧計画(WFO)による食糧支援などの国連機関によるによる支援を加えると、年間1兆円内外の支援を続けていることになる。
 難民の根源である武力紛争や内戦、地域紛争を解決して行かなければ、難民問題は解決せず、コストは増加し、これを各国の税金で支えて行かなくてはならない。人道上仕方がない面があるが、このようなことを何時までも長期間続ければ、難民総数は膨らみ、世界の負担が増え続ける一方であり、また難民の環境に置かれている人々にとっても自由な生活は奪われ、長期化は不幸であろう。
 難民の根源である内戦や紛争を解決する努力を優先すべきだ。その上でも、難民の源泉国、排出国に費用分担や国連の保護下に置く区域の提供などを義務付けると共に、国内抗争や地域紛争の平和的解決を強く求めるべきであろう。それを怠る場合は、人道援助を除く、国連や2国間の援助の削減を行うと共に、大量虐殺(ジェノサイド)や迫害等については近隣国や域内組織、或いは国連が国際司法裁判所に提訴し、関係国に公正な措置を求めるなどすべきであろう。
 現在の状況は、難民の源泉国、排出国のフリーライドとなっており、これがまた抗争や紛争の早期解決へのインセンテイブを失わせているのではないか。(2020.2.17.)

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国際司法裁判所のロヒンギャ虐待への対応を評価 (その1) ―国際難民問題に一石を投じる―

2021-02-22 | Weblog

国際司法裁判所のロヒンギャ虐待への対応を評価 (その1)
―国際難民問題に一石を投じる―
 ミャンマーのバングラデシュ国境付近に居住するイスラム系少数民族ロヒンギャの抑圧問題について、国際司法裁判所(ICJ、本部オランダ)は1月23日、少数民族ロヒンギャに対するミャンマー軍による集団虐殺(ジェノサイド)が存在したとして、ミャンマー政府に対し、「迫害を防ぐあらゆる手段を講じる」よう指示する仮保全措置命令を出した。
この問題は、ガンビア政府がイスラム諸国で構成されるイスラム協力機構を代表してICJに提訴したものだ。国際司法裁判所は「ロヒンギャは依然として危険にさらされている状況にある」と認定し、ミャンマー政府に対し、「対策」の実施状況を4ヶ月以内に報告するよう命じた。
 1、難民排出国・源泉国の責任が問われ、改善措置が求められた意義は大きい
 ミャンマー政府はこの決定を不服としており、また「ジェノサイド条約」に基づき禁止されている特定集団の抹殺行為、ジェノサイドの有無をめぐるICJの最終的な判決までには数年掛かるとも見られており、今後も紆余曲折が予想される。しかし国際司法裁判所が、仮保全措置命令としても、ロヒンギャ迫害、難民流出の源泉であるミャンマー政府の責任を認め、状況改善のためあらゆる措置をとることを命じた意義は大きく、難民問題解決に向けて一石を投じたと言えよう。
 なおロヒンギャは、もともとバングラデシュ地域等にいたイスラム系少数民族で、ブッダ教徒が支配的なミャンマーの国境付近に住みついたもので、国籍も認めたれず、厳しい生活を強いられていた。特に2016、17年にロヒンギャ系武装集団がミャンマー治安施設を襲撃したのを契機に、ミャンマーの治安部隊が村落への掃討作戦が活発化し、70万人以上が隣国バングラデシュに逃げるなど、難民が増加した。2019年9月、国連人権理事会の調査団は多数の住民が殺害されたり村が焼かれたりした旨報告している。

 2、今後難民問題解決には排出国・源泉国の責任と負担の明確化が不可欠 (その2に掲載)
(2020.2.17.)

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求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その2)(再掲))

2021-02-19 | Weblog

  求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その2)(再掲))
 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及 (その1 で掲載)
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 
 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象とし、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。
 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わることを希望する国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。
 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提し、年功序列に基づく「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置く、「国民参加型」行政組織とすることが望ましい。
(1) 幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。
 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、官職の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。しかし「職階制」は、日本において旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正で職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。
(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)
(職階制の確立) 
第29条  職階制は、法律でこれを定める。 
2  人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、
分類整理しなければならない。 
3  職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に
ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者
に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ
ばならない。 
4  前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。 
5  一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定
による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であって、かつ、
この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧
告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。 
(職階制の実施) 
第30条  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。 
2  職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事
院規則でこれを定める。 
(官職の格付) 
第31条  職階制を実施するに当たっては、人事院は、人事院規則の定めるところに
より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。 
2  人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再
審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。 
(職階制によらない官職の分類の禁止) 
第32条  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること
はできない。 
 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は‘国民に開かれた公務’を遂行する上でデメリットも多い。
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうである。
 政策レベルの問題以外でも、公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、政党間の政権交代にしても、与党内での首班交代にしても、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。逆に、公務員だけが「職階制」でも、民間で職階制が普及しない場合は、公務員が辞めたくても行き場がないので、「職階制」は維持できなくなる。恐らく、過去に公務員の職階制がいつの間にか排除されたのも、民間での「職階制」導入が進まなかったからではなかろうか。また米欧からの人材が日本の労働市場に参入しにくくするとの意図もあったのかもしれない。いずれにせよ、公務員を職種・技能に基づく「職階制」とすれば、配転はより容易かつ円滑に行われるであろう。国家公務員については日本国民であることが原則になっている。
 このような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよ
う閉鎖的で硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべき時期なのであろう。
 また企業、団体も二流の就労者とも見られている「非正規雇用」形態をなくすため、また低迷する労働生産性を高め、世界の多国籍企業との競争力を回復するためにも、職階制に転換、普及することが望まれる。
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved)
 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及 (その1 で掲載)
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 
 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象とし、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。
 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わることを希望する国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。
 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提し、年功序列に基づく「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置く、「国民参加型」行政組織とすることが望ましい。
(1) 幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。
 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、官職の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。しかし「職階制」は、日本において旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正で職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。
(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)
(職階制の確立) 
第29条  職階制は、法律でこれを定める。 
2  人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、
分類整理しなければならない。 
3  職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に
ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者
に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ
ばならない。 
4  前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。 
5  一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定
による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であって、かつ、
この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧
告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。 
(職階制の実施) 
第30条  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。 
2  職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事
院規則でこれを定める。 
(官職の格付) 
第31条  職階制を実施するに当たっては、人事院は、人事院規則の定めるところに
より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。 
2  人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再
審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。 
(職階制によらない官職の分類の禁止) 
第32条  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること
はできない。 
 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は‘国民に開かれた公務’を遂行する上でデメリットも多い。
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうである。
 政策レベルの問題以外でも、公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、政党間の政権交代にしても、与党内での首班交代にしても、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。逆に、公務員だけが「職階制」でも、民間で職階制が普及しない場合は、公務員が辞めたくても行き場がないので、「職階制」は維持できなくなる。恐らく、過去に公務員の職階制がいつの間にか排除されたのも、民間での「職階制」導入が進まなかったからではなかろうか。また米欧からの人材が日本の労働市場に参入しにくくするとの意図もあったのかもしれない。いずれにせよ、公務員を職種・技能に基づく「職階制」とすれば、配転はより容易かつ円滑に行われるであろう。国家公務員については日本国民であることが原則になっている。
 このような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよ
う閉鎖的で硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべき時期なのであろう。
 また企業、団体も二流の就労者とも見られている「非正規雇用」形態をなくすため、また低迷する労働生産性を高め、世界の多国籍企業との競争力を回復するためにも、職階制に転換、普及することが望まれる。
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved)

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求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その1)<再掲>

2021-02-19 | Weblog

 求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その1)<再掲>

 2020年1月下旬より武漢発のコロナウイルス禍の拡大、継続により、解雇者や雇い止め、新規卒業者の就職難や内定取り消しなど、就労市場はまさに冬の時代となっている。2008年のリーマン・ショックにより解雇された正規就労者も、新卒優先の定年制に基づく「正規社員」としての再就職の機会はなく、多くは契約社員やアルバイトなどの「非正規社員」の地位を強いられている。今日、コロナウイルス禍の影響はリーマン・ショックを上回る状況となっており、これらの失職者を受け入れる就労市場の転換が迫られている。他方、65歳以上の年長者は人口の28.7%を占め、100歳以上が8万人を超えており、もはや新卒優先の終身雇用制、これに基づく等級・職階制は過去のものとなっており、これらの就労者を公正に受け入れることは困難になっている。

 本稿は、このような新たな状況に鑑み、再掲するものである。


 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及
3人に1人以上もの就労者が「非正規雇用」になっている現在、「正規雇用」
に対し「非正規」と呼称することは多くの就労者を差別化することになり、労働市場を「正規」と「非正規」に2分することは好ましくない。これらの就労者はいずれも日本経済にとって不可欠な人材であるので、安定した労働形態として制度を整え、「正規」「不正規」の区別を無くし、労働市場に適正に位置付けて行く必要があろう。
 その解決策の1つが職種・技能・技術を基準とした職能制雇用形態への転換、普及である。
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
現在日本の「正規雇用」は、多くの場合新卒者採用を原則として定年まで同じ企業、組織で就労する終身雇用の形態となっており中間採用は多くはない。
 終身雇用は、企業経営側にとっては、組織、従って経営陣への忠誠心を維持し易く、組織の安定性を確保し易いと言えよう。また中小企業など、創業家を中心とする家族経営においては家族主義的な組織管理を行い易いメリットがある。雇用されている側も定年まで定職に就けるという安定性を享受できる。しかし家族主義的な雇用形態は、新規の人材を外部から導入することを阻み、内外の経済環境やグローバルに拡大、激化する競争関係に迅速、的確に対応できず、競争力を失うなどのデメリットも多い。雇用されている側も、組織内で希望の職種や仕事に就けるのはわずかである。その上景気の後退期には人員整理が困難であるため、迅速な対応が出来ず、企業の存続を脅かすことにもなる。
 職種によっては新卒採用に拘泥する必要はなく、必要な職種、技能を補充するために中間採用を機動的に活用する方が急速に変化する内外市場へのダイナミックな対応が可能となろう。
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
 職種・技能を基準とした職階制雇用においては、新卒か否かや年齢にとらわれず、職種ごとの技能や経験年数により採用することになるので、採用した人材が即戦力となる。新卒採用者を除き、研修費やリードタイムでの諸経費の節約にもなる。一方就労者側も一定期間の就労の後、より良い労働環境を求めて企業や地域を変更することが出来るので、双方にとって弾力的な雇用形態となる。「正規」「非正規」の区別も不要となる。欧米諸国で広く採用されている。
 現在就労者の35%以上を占める「非正規就労者」にとっては、たまたま学校卒業時期に不況であったため「非正規雇用」となり、日本の終身雇用制の下では今後長期にその状態が続くことになると予想される。これらの人達にチャンスを与え、より多くの人が安定した職が得られるように雇用形態を多様化、弾力化すると共に、正規の雇用形態とすることが望ましい。これは、ほとんどの就労者が健康保険や年金などの社会保険の恩恵を受けられる体制にする上でも重要である。呼称も「正規雇用」「非正規雇用」とすることは適当でなく、「一般職」「職能技術職」とすれば足りることであろう。
 無論、どのような雇用形態とするかは企業の経営管理方針、選択によるが、職種・技能を基準とした職能制雇用形態の普及により、「正規」「非正規」の区別をなくし、「一般職」と「職能技術職」に移行させることが望ましい。
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
正規雇用形態は、多くの場合、入口の新卒者採用と共に出口である定年制とセットになっており、その上で年功序列の体系となっているので、年齢が決定的な要因になっている。しかし長寿化により、退職後余命が顕著に長くなっており、退職後の過ごし方が大きな問題になると共に、年金財源を圧迫する主要因にもなっている。
平均寿命は、日本の戦後復興が本格化し始め、諸制度が整備し始めた1960年で男性65.3歳、女性で70.2 歳であったが、2010年には男性79.6 歳、女性86.4歳と顕著に伸びている。1960年代の定年年齢を55歳とすると、定年後余命は10年程度となる。2010年には定年が60歳として、定年後余命は19.6年と2倍に伸びており、女性についてはもっと長くなっている。従って現在、定年後の過ごし方と年金財源の不足が社会問題となるのは当然と言えよう。最大の問題は、経験や技能・技術を持ち、働く意欲がある者を、寿命が延びているにも拘らず、年齢により一律に労働市場から排除してしまう上、年金への依存を高めることであろう。長寿化を前提とすると、定年後の期間が従来よりも著しく長くなっているので、現在では「定年制度」は事実上の‘年限解雇’の制度となっているとも言える。
このような状況に対応し、現在年金支給年齢を65歳とし、その穴埋めとして60歳定年の延長や再雇用、或いは定年の撤廃が選択肢として検討されており、当面の対策としてはして良いのであるが、寿命はさらに伸びる可能性があり、定年制を維持する限りイタチごっことなり、抜本的な対策とはならない。顕著な寿命の伸長に対し、雇用制度や諸慣行、社会保障制度などへの対応が追いついていないと言えよう。基本的に年齢に過度に執着しない雇用モデルが必要になっていると言えよう。
「正規就労者」もいずれは定年となるが、職能職階制を導入すれば、一定年齢以降についても、働く意欲があり健康であれば、自らが選択する職種、技能で組織に留まることが出来るようにすることが可能となろう。定年制を維持すれば、寿命が延びたことにより定年年齢となっても働けるが職のない人口が多くなる一方、年金支給年齢を65歳に引き上げても年金給付期間は以前よりも長期間となるため、年金の財源を圧迫し続けることになる。恣意的に定められている定年が各種の社会的な障害となっていると言えよう。
女性の社会進出の促進にしても、いろいろな問題が議論されているが、終身雇用の下での年功序列的な等級制度が続く限り、現実問題としてはなかなか進まないと見られている。多くの場合、出産や子育などで、一定期間年功序列のエスカレーターから外れてしまうからだ。女性の社会進出の促進のためにも、職種・技能に基づく職階制への転換が望まれる。
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 (その2に掲載)
(1)幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved.)

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地球環境保護、日本の真価が問われる

2021-02-19 | Weblog

 地球環境保護、日本の真価が問われる

‎ 10月26日開催された臨時国会において、菅義偉首相は就任後初めての所信表明を行い、「温室効果ガスの排出量を2050年までに全体としてゼロにする」との目標を表明した。 そして「グリーン社会の実現」を成長戦略の柱と位置付けた。‎

 「温室効果ガス排出量の2050年までの実質ゼロ」目標は、前政権当時の「50年までに80%削減」を一歩進めたもので、管政権の温室効果ガス削減の促進を期待したい。

 しかし、その目標は30年も先のものである上、EUな主要各国が2030年までの目標を設定しており、これに比して削減速度が遅い。

 1、温室効果ガス実質ゼロ目標に向け2030年、2040年の中間目標設定が必要

(1)不可欠な温室効果ガス削減と激甚化する気候変動への対応

‎ 地球温暖化により、北極圏の氷海や南極を覆う氷原・氷河、ヒマラヤやアルプスなどの氷河が融け、海温と共に大気温が上がり、大量の水蒸気を空中に巻き上げ、地球温暖化が進み、世界各地で今までにはないような荒々しい気候変動に見舞われている。 更にこのまま温暖化が進み臨界点に達すれば、止めることの出来ない極限的な激しい気候に見舞われる恐れがある。 これは理論でも学説でもなく、現実に体験している現実なのである。‎

 それを止めるためには、産業革命以来増え続けている温室効果ガスを削減し、地球温暖化を止めなくてはならない。

‎ 30年先は長すぎる。 加速努力が必要のようだ。 地球が壊れてからでは遅い。‎

 (2)具体的な中間目標設定とそれぞれの指針が不可欠

‎ 温暖化効果ガスについては、世界の主要国が2030年までの削減目標を設定している。 EUは40%削減(1990年比)、インド33~35%削減(GDP当たりのCo2排出、2005年比)、中国60~65%削減(同、2005年比)と具体的な目標を設定している。 特にEUは1990年比での削減目標であり、今日に比べて炭酸ガスなどの排出量の少ない時代との比較であり、問題意識の高さを示している。 中国についても目標達成を期待したい。‎

‎ これに対し日本は、これまで2030年までの削減目標を26%としており、その上2013年比と問題が深刻化し始めてからの基準で、基準年自体を甘くしており、2005年比では25.4%削減となる。 この目標も断念されている。 因みに、米国はオバマ政権時代に2025年までに26~28%削減(2005年比)として行政府の目標を設定しており、バイデン候補が新大統領となり民主党政権となれば、このラインで推進されるであろう。 またロシアは同年までに70~75%抑制(25~30%削減、1990年比)としている。‎

 日本は2050年までの実質ゼロが表明され、その実現に期待したいが、2030年、2040年の中間目標が具体的に示されると共に、どの分野でどのように進めるかの指針が示されることが期待される。

 2、福島原発解体処理による放射能汚染水の海洋放流は望ましくない

‎ 2011年3月に発生した東北大地震の津波により炉心融解を含む爆発事故を起こした福島原発の解体処理が長期化する中、放射能汚染水が貯水槽に大量に貯蔵され、限界を迎えていることから、その放出が検討されている。 放射能はほぼ取り除かれ、濃度の薄いトリウム残っているものの放射線レベルは低いので、海洋への放水が検討されている。 放射能は「飲んでも健康に影響はない」とされているが、福島の漁業関係者は風評被害などを懸念し、海洋投棄反対を表明している。‎

‎ これに対し行政当局は、賠償等を検討するなどとしているが、この問題は賠償や風評被害だけの問題ではない。 国際的信頼、国家としての信用の問題となろう。‎

‎ 日本は、国際環境グループに毎年のように「化石賞」を受けている。 発電等に石炭、石油などの化石燃料が使われているからだ。 失礼な話ではあるが、不名誉なことだ。 韓国が、福島産の野菜や魚類を放射能汚染の恐れありとの風評を流し続けたが、今回は国全体に関わることになる。‎

 もしこの放射線汚染水が処理をされ「飲んでも大丈夫」なレベルとなっているのであれば、日本国内で処理できるし、そうすべきであろう。

‎ 確かに海洋は広い。 だから海洋投棄も良いということにはならない。 領海内でも海は続いており外洋に広がる。 現在、海洋のプラステイックごみの問題が深刻化している。 世界中で投棄されてきたプラステイックごみは、毎年増えると共に、風化し微粒子化し世界の海洋を漂い、海底に蓄積し続けており、それを魚類が食べ、人間の口にも入るようになる。 十分希釈されたとしても放射線汚染水が放流され、これが世界で常態化する恐れもあり、その悪影響は計り知れない。‎

‎ 放射線汚染水の処分は、日本国内で行うことを前提として真剣に検討されるべきであろう。 例えば、国立公園内の人里離れた場所や硫黄島などの離島に貯水池を作り、適正に管理するなどを検討してはどうだろうか。 それが国家としての責任ではなかろうか。 (2020. 11. 4. )‎

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新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる

2021-02-19 | Weblog

新型コロナウイルス、中国の国際社会での姿勢が問われる

                                                                       2021年1月15日

 中国武漢を発生源とするコロナウイルス伝染病が世界に拡大する中、国連保健機関(WHO)は、発生源である武漢への調査団を中国政府に再三に亘り求めていたところ、1月11日になってやっと中国国家衛生健康委員会が、「WHOのコロナウイルス発生源専門家チームが同月14日に訪中して調査を行う」旨公表した。調査団は同日武漢に到着し、やっと武漢での調査が中国側と協力して進められるようだ。

 WHO調査団は、その前の週にも武漢入りする予定だったが、中国側がメンバーへのビザを交付しなかったため延期された。調査団にはオーストラリアの専門家など各国専門家が入っている。オーストラリアと中国の関係は、アフガニスタンにおいて多国籍軍に参加している豪州兵がアフガニスタンの少年をナイフで威嚇している写真を中国側がツイッターに載せたことから、豪州側が激怒し、相互の貿易制限にも発展し、悪化しているなど、政治外交的理由とみられている。

 1、国際協力を阻む中国

 新型コロナウイルスは、2019年12月に武漢で発生し、翌1月に武漢市で感染拡大が始まった。中国政府が市民への情報公表が遅れたことが対応の遅れとなった。新華社通信によると、同年2月3日、習主席は、感染拡大への対応について共産党政治局常務委員会を開き、患者やその家族に対しお見舞の言葉を述べる一方、政府の対応の欠陥や至らなかった点を教訓として、党、政府ともに国を挙げて予防対策に取り組む考えを示した。

 中国の国内的対応の遅れが、世界への情報提供、公表の遅れとなった。世界が無防備の中で、武漢に滞在していて外国人や中国人が同地を去りそれぞれ本国に戻ることを黙認したことが、コロナウイルスの世界的拡大の要因となった。1月15日現在、世界全体の感染者数 9,243万人、 死者198万人以上となっている。更に増え続けており、世界経済への影響も甚大で、職を失い、困窮する者も多い。中国はこの現実を他人事のように発言しているが、中国は情報の遅れを世界に謝罪すべきであろう。

 しかも中国は、WHO調査団による発生地武漢での調査を1年以上遅らせ、コロナウイルス対策の上で重要な発生源や伝染経路などの調査を遅らせた。感染源は、コウモリ又はこれから伝染した動物とされており、武漢の生鮮市場が媒体とされている。また武漢にはウイルスを研究する中国科学院武漢病毒研究所があり、ここで長年に亘りコウモリを研究している専門家がおり、コウモリを媒体とするウイルス等については可なりの研究がなされているとみられている。従って、生鮮市場や武漢病毒研究所の研究状況、及び現在の伝染状況や変異種の存在と中国側の対応などを調査し、その結果を速やかに世界が共有することが、コロナウイルスへの効果的な対応には不可欠だ。

 その調査を1年以上引き延ばし、更に調査団の武漢入りを遅らせることは、パンデミックに取り組む世界への協力の意志の欠如としか言いようがない。これは単に中国だけの問題では無く、世界の人々の健康の問題であるので、中国の真摯な協力と情報の速やかな公開を望みたい。

 中国政府は、コロナウイルスが世界的に拡大し始めた際、一方で途上国に対しマスクの供給など支援するとし、また最近では中国でワクチン開発を行い、ワクチン供給などにより‘健康のシルクロード’を作るとしているが、他方でコロナウイルス撲滅への鍵となる発生源の国際調査を1年以上も遅らせ、国際協力を阻んでいる。

 中国はまた、2020年5月に開催された国連保健機関(WHO)の年次総会に際し、台湾のオブザーバー参加を「1つの中国」政策に反するとして反対し、更に同年11月の総会においても台湾の参加を阻止した。コロナウイルスは台湾だけで無く、国境を越えて世界70億人の健康に関するものであり、台湾のオブザーバー参加に反対することは世界の健康、国際協力を軽視する姿勢と言えよう。中国はコロナウイルスの発生源であり、国、地域を問わず世界70億人の健康に責任がある。

 

 2、問われる国際社会での中国の姿勢と情報公開

 中国は、香港において民主化運動が活発になっている情勢を受けて、反政府活動や香港独立活動などの取り締まりを強化するため、香港に対し香港国家安全維持法を導入することを決定し、2020年6月30日、交付された。

 同法に基づき、2020年7月以降30人程度が逮捕され、その他多数が拘束などされたが、2021年1月6日には、国家や政権転覆をねらった同法違反の疑いがあるとして、香港立法会の民主派の前議員や区議会議員など53人が警察に逮捕された。

 香港は、1997年6月30日に99年間の英国の租借期限を迎え、翌7月1日より中国の領土、主権となった。その際香港住民の要請を背景として、英国と中国との交渉の結果、同年より50年間、香港特別行政区として「高度の自治」を許され、1国2制度となった。その後香港はある程度の自治を許され、一定の政治的自由、民主的制度を得ていたが、徐々に中国化が進み、中国本土より多数の中国人が流入し、また香港人の自由や民主主義に制約が課されるようになった。多くの富裕層等は、事業は香港に残し、自らは英国、豪州、米国などに移住する一方、若い世代を中心として民主活動が活発に行われるようになった。

 自由で民主的だった香港が中国の主権下に戻り、中国化が進み、中国的な制約や仕組みが課され、自由が失われて行くことは非常に残念なことだ。しかし、現在の国家制度においては、香港は中国の領土、主権の下に服せざるを得ない。

 中国に対し香港の自治権、自由と民主主義を維持せよと言っても、中国にとってそれは「内政問題」であり、応じることはないであろう。中国は、将来の国家転覆、反政府活動を防ぐために「香港国家安全維持法」を施行したのだ。香港の返還時に高度の自治を認める英国との国際約束についても、中国としては、安全維持法は香港行政府も承認したものであり、いずれにしても内政干渉などと反論するであろう。

 中国自体が変わらない限り香港の状況を改善することは困難と思われるが、香港は中国の本質を世界の前に映し出しており、正に中国本土内では香港で行われているような政治的抑圧・強制が行われていることを示している。新疆ウイグルやチベットでも同じようなことが行われているのだろう。それは世界の誰の目でも分かることである。

 中国はまた、南シナ海にある南沙諸島などについて領有権を主張しているが、ベトナムやフィリピンなど6か国が領有権を主張しているにも拘わらず、軍事転用できる施設などを構築している。ベトナムなどの訴えに対し、2016年7月、ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が南シナ海のほぼ全域で領有権を主張し独自に設定した境界線(いわゆる「九段線」)には、国際法上「歴史的権利を主張する法的根拠はない」と認定した。しかし中国はこれに応じず、逆に南沙諸島に人工島や滑走路など、軍事使用出来る施設等を増設し、南シナ海及びその周辺海域での軍事活動を強化している。

 中国は、香港の自由は認めない、台湾の国際活動は認めない、国際仲裁裁判には従わない。それで多国間主義や国際協力などと言えるのだろうか。中国至上主義、拡張主義としか映らない。

 

 3、中国が真に国際社会の良き構成員となることを期待

 しかし中国を外部から変えようとしても無理があろう。今日の国際秩序は、領土、領海で区切られた国家群、地域群で構成され、各国家には主権が付与されており、内政への干渉は行わないこととされ、それで秩序が保たれている。

  それを破れば戦争に発展する恐れがあるが、戦争は避けなくてはならない。

 中国が自ら変わることを期待したいが、それまでは各国は、中国の各種の規制・制約、国営企業等への優遇措置、国際協調拒否などに応じ、中国の国外の活動を規制・制限等する権利を留保すると共に、国際場裏の場で粘り強く訴えることが必要であろう。中国が国際社会の良き構成員となることが望ましい。

 また軍事面では、北東アジア地域における軍備拡充競争のこれ以上の激化を抑えるため、軍備縮小交渉と信頼醸成措置の協議を早急に開始することが望ましい。対象国は、中国、南・北朝鮮及び米国、ロシアが中心となろう。

(2021.1.15. All Rights Reserved.)

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新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本 (再掲)

2021-02-19 | Weblog

新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本 (再掲)
 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。
 このような伝染病を克服するためには、2つの対応が必要だ。
 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。
 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。
1、新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か
(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有
 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。
 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。
 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。
 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本
 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。少なくてもそのように学んだ。
 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。
 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。
 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。
 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。
 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか
 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。
 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。
(2020.4.17.)
 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。
 このような伝染病を克服するためには、2つの対応が必要だ。
 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。
 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。
1、新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か
(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有
 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。
 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。
 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。
 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本
 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。
 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。
 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。特に、現在無症状者や軽症者は自覚のないまま活動し、また1人暮らしや片親だけで幼児のいる家庭は別として、複数家族での陽性者の家庭内隔離は非常に困難であるので、陽性者は症状に応じ原則として隔離施設で療養させることが感染防止の鍵となろう。企業や団体等で不安無く活動を継続したいのであれば、原則として全員を検査し、陽性者は速やかに隔離施設で療養させることが出来れば、感染を防止と組織活動の継続が両立出来る。ワクチンと併行して検査の民間への拡大と第1次隔離施設の拡充が不可欠と言える。

 また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。
 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。
 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。
 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか
 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。
 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。
(2020.4.17.2021.2.5.一部加筆)

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バイデン米民主党新政権で円高ドル安再燃か!?

2021-02-17 | Weblog

バイデン米民主党新政権で円高ドル安再燃か!?

 米国の大統領選2020は2期目を目指すトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領との間で州毎の熾烈な選挙人争奪戦を展開し、ペンシルベニア、ジョージアなど残された4州の郵便投票数の票読みに絞られた。郵便投票の開票が進むにつれ、バイデン候補が2016年にトランプ側に制されたウイスコンシンとミシガン両州を制し、更に残る4州でも僅差ではあるが優勢が伝えられ、ペンシルベニア州を制し、過半数を超える279の選挙人を獲得したことから、2020年11月7日夜、地元デラウエア州において勝利宣言を行った。

  トランプ大統領は、落胆の色は隠せず、共和党支持者からの支援も受け、投票、特に約6,500万票に及ぶ郵便投票に不正があったとして裁判で争うことを表明している。この点は今後法廷で争われることになろうが、2021年1月20日にはバイデン新大統領のもとで民主党政権が発足する見通しとなった。

  1、オバマ民主党政権時代の政策への回帰

  バイデン新大統領が就任すれば、29歳から上院議員として活動し、オバマ大統領の下で8年間副大統領を務め、国際的にも各国要人に幅広い知己を持つベテラン政治家として、安定した政策運営を行うものと予想される。国内的には、当面コロナウイルス対策と経済の維持が最大の課題となり、国内融和と共和党との協調を念頭に置きつつ、オバマケアーや環境重視の‘グリーン経済’政策などオバマ政権時代の政策が進められると共に、経済活力維持の軸として、脱温暖化効果ガス削減を目指すグリーン経の済推進(グリーン・ニューデイール)と1929年の世界大恐慌対策として進められたニューデイールで建設された米国全土のインフラ施設の更新などが進められ、経済の牽引を推し進めるものと予想される。しかしこれらに必要な予算措置は、米国議会、特に共和党勢力が強い上院の承認を必要とするため、調整が必要となろう。

  また外交面では、対立から国際協調路線に回帰することが予想され、既に新政権発足後に世界保健機構(WHO)に復帰する方針が示唆されており、気候変動に関するパリ条約やイランとの核合意への復帰などが検討されることになろう。しかし一旦国家、行政府として脱退等したものであり、また上院との関係もあるので、復帰に当たり何らかの注文を付ける場合もあろう。

  主要国・地域との関係においては、特に中国、ロシア、そして中東、北朝鮮などとの関係、特に中国とロシアとの関係修復が当面の外交上の最大の課題となろうが、国際協調路線が事なかれ主義に陥れば、問題解決にはならず、米国のリーダーシップを発揮することにはならない可能性がある。

 

  2、日米関係は経済分野では利害調整の必要性

 日米2国間関係において、外交・安保分野での同盟関係は基本的に良好に維持されよう。民主党は自由、民主主義、人権においてリベラルな立場であり、多くのアフリカ系、ヒスパニック、アジア系の支持を得ており、日本人にとってはなじみやすい政党であるが、台湾問題、対中、対ロ関係のほか、特に貿易分野や温暖化ガス削減等の経済関係では利害の調整が必要になる可能性が高い。

 オバマ前民主党政権のもとでは、次の通り1ドル80円を割る大幅で急激な円高となり、日本経済を圧迫した。

 オバマ政権時代(2008年―2016年)の円/ドル為替相場の推移

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

103.36

            

単位円

93.57

87.78

79.81

79.79

97.60

105.94

121.04

108.79

112.17

                         (各年中央値 出典:IMF)

同時期の人民元/ドル為替相場の推移

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

0.1440

単位元

0.1464

0.1477

0.1548

0.1584

0.1614

0.1628

0.1606

0.1506

0.1480

                         (各年中央値 出典:IMF)

 円/ドル レートは、当時やや円高傾向にあったが、208年1月にオバマ大統領が就任後、急速に円高が進み、2011年及び2012年秋には1ドル80円を割る大幅な円高となった。日本は、2011年3月11日に東日本大地震とそれに伴う巨大津波により東北地方に甚大な被害があり、加えて福島原発の爆発、炉心融解によって大きな被害が出て、この地方からの部品、物資供給が途絶えるなど、日本経済に大きな影響を与えていた時期であっただけに、この時期の急激な円高は輸出に大きく影響し、日本経済の停滞に拍車を掛けた。この円高は翌2012年秋頃まで2年間続いた。因みに、中国の人民元はこの間、対ドルでやや元安になっており、円の独歩高の様相を呈していたと言えそうだ。

 そしてこの間、中国の対米輸出、米国の対中直接投資は増加し、中国経済の成長を加速させる一方、米国市場には中国製品が溢れ、難民や移民の受け入れ増と相まって、米国労働者層の職の機会を縮小させ、このような背景がトランプ共和党政権を生み、対中貿易抑制策や国境管理強化等を推進した要因となった。しかし大統領選挙の年、2020年1月、中国武漢発のコロナウイルスが米国を含む世界各国に伝染し、米国で3千万人を超える罹患者を出し、経済活動を大幅に阻害し、トランプ大統領敗退の大きな要因となったことは皮肉とは言える。もっともトランプ大統領は、約7,100万票(バイデン候補約7,400万票、郵便票集計中にて暫定値)を得ており、拮抗した根強い支持を得ていると言えよう。バイデン新大統領の下で厳しい政策運営が予想される。

 東日本大地震後、バイデン副大統領(当時)や米軍が東北地方を訪問し、復旧支援活動を行い、‘トモダチ作戦’として称えられ、心温まる日米友好の表明として記憶に残っている。しかしそれは軍事的政治的判断からであり、経済が疲弊した日本にとっては急速な円高は望ましくなかった。2012年10月に筆者は急激な円高は日本の経済には望ましく無く、早急に是正すべきことを指摘した。同年11月よりやや円安傾向とはなったが、目に見える円安は2012年1月から日銀が「異次元の金融緩和」策を実施して後であり、2013年には1ドル97.6円に回復した。

 その後トランプ政権の下では、ほぼ1ドル100円から115円の間で推移しているが、米大統領選でバイデン候補優勢との情報が流れると1ドル104円台の円高に振れる場面もあり、104、5円台で推移している。

 2021年1月にバイデン民主党政権が発足すると、コロナウイルス対策と併行して経済活動の維持・回復、雇用の確保が最大の課題となろうが、日本も程度の差こそあれ同様であり、経済問題で調整を要する局面があることを認識しつつ対応することが必要となろう。(2020.11.12.All Rights Reserved.)

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