内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

竹島問題を大所高所から解決すべき時 (総合編)(再掲)

2023-12-01 | Weblog

竹島問題を大所高所から解決すべき時 (総合編)(再掲)
 韓国の李明博大統領は、8月10日、ヘリコプターで竹島(韓国名独島)に上陸し視察した。竹島は島根県に属するが、李承晩・大韓民国(韓国)大統領が、1952年1月18日、「海洋主権」を宣言し、周辺海域に「漁船立ち入り禁止線」、通称「李承晩ライン」を設定し、同島は韓国の支配下にあると一方的に宣言して以来、日韓間の喉もとの小骨となっている。
 今回の李明博韓国大統領の竹島上陸は日韓関係にとって信頼関係を損ねる極めて深刻な行為であり、日本としても重大な決意を持って竹島問題の解決に努めるべきであろう。
 1、日韓の古くからの接点、竹島(独島)の歴史
 同島は、東西2つの岩礁島からなっており、日比谷公園と同程度の面積しかなく、また定住出来るような環境にはないが、1905年1月28日、日本政府は、閣議で「竹島」と命名し、「島根県隠岐島司」の所管とした。日本が、韓国(大韓帝国)を併合(1910年8月)した5年以上も前のことであり、日本の植民地支配や慰安婦問題などとは関係がない。
 同島を巡る日韓両国の交流は、両国の沿岸漁民を中心として江戸時代初期頃からあり、この頃より周辺海域での接触、紛争が活発になって来たとの記録が残っている。また1849年、フランスの捕鯨船Liancourt号が同島を発見し、リアンクール島と名付け、その後日本では、「りゃんこ島」とか「リアンクール岩」とも呼ばれたことがあるようで、同島(岩礁)を巡る両国の交流の歴史にも混同がありそうだ。因みに、米国国務省がホーム・ページで公表している各国別地図では、日韓双方に、Liancourt Rocks(リアンコート岩礁)の名称で記載している。
同島が両国の古来からの接触の「最外延点」であるという歴史的背景を踏まえ、同島問題の解決を真剣に模索すべき時期に来たと言えよう。
 2、「日韓新時代」は竹島(独島)問題の早期解決が鍵
 竹島の帰属問題は、日本政府としては1954年、1962年に国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案し来ているが、韓国政府が同意していないため実現していない。
 今回についても韓国政府は、国際司法裁判所への付託を拒否する姿勢が伝えられている一方、これを受けて日本政府は、経済的影響を考慮し対応を慎重に検討するとしている。しかし韓国大統領の竹島上陸は、日韓両国政府の信頼関係を著しく損なう行動であるので、この行動が日韓関係に影響を与えないはずがない。竹島は日本の領土であるのでしっかりと主張し、短期的に両国関係に影響することがあるとしても、毅然としてあらゆる措置、対策を取るべきであろう。言葉や標語だけの外交や、問題先送りにより事態の改善をもたらすことはないことが、李大統領の今回の同島訪問で明らかになった。影響を恐れて従来のような事なかれ外交を繰り返すことは、韓国側に日本は従来通り何も出来ない、何もしないとの誤ったメッセージを送り、現状を事実上容認することになる恐れが強い。従来の措置を超える明確且つ具体的な措置を検討、実施すべきであろう。
 領土の保全は、国家、国民の存立の基礎であり、安全保障、防衛の基本的な役割である。従って、韓国政府が竹島を巡る領有権問題で日本の利益を害する行動を継続するのであれば、日韓間の防衛協力については実務的な情報交換や信頼醸成措置程度に止める一方、日本自身の領土保全、安全保障に重点をシフトするなど、防衛政策の転換を真剣に検討すべきであろう。
 他方、日韓両国は近年において経済の相互依存関係を強め、また民間レベルの文化・芸能交流などが深まっているので、このような民間レベルの日韓交流に影響を与えないよう留意しつつ、国際司法裁判所への付託を含め、首脳レベルでの協議を打診し、常に本件協議への門戸を開放しておく一方、一般的な首脳レベルでの交流を停止する。また日韓経済連携協議の凍結や金融・資本、高度技術分野などでの政府レベルの交流、協力を抑制するなど、竹島問題の解決に向けて明確なメッセージを送り続けるべきであろう。
 但し2国間関係は相互の努力で発展するものであるので、日本だけではなく、韓国の官民もこの問題が民間レベルの交流に影響を与えないよう努力することを期待したい。この関連で、日韓間の議員交流を超党派での交流を含めもっと頻繁に行うことが望ましい。
この問題の解決なくして「日韓新時代」は実体が伴わない標語に過ぎない。
 3、模索すべき大所高所からの解決策
 米国国務省公開文書「1964年から68年米国の外交関係29編」に基づけば、同島の「日韓共同所有案」について、1965年5月17日、訪米した朴大統領(当時)に対し、ラスク米国務長官が、解決に向けての方策として提案したが、朴大統領は「あるまじきこと」として固辞した旨伝えられている。またその後、米国は韓国に対し同島問題を議題として韓日外相会談を提案したが、同大統領の受け入れるところにはならなかったとされている。
 共同所有案にしても、共同管理・分割領有にしても、両国国内の世論等もあり困難が伴うと予想されるが、日韓関係は当時とは異なっている。日韓両国は、1965年6月22日に日韓基本条約を締結し、国交を正常化すると共に、戦後請求権問題も経済協力等の形で処理し、基本的な友好関係の枠組みもそれなりに確立しており、市民レベルの交流も盛り上がりを見せている。今後日韓関係が健全に発展するか、阻害されるかが、竹島問題解決への両国首脳のリーダーシップと大所高所からの英断に掛かっていると言えよう。(2012.08.14.)
(Copy Right Reserved.)(不許無断転載・引用)

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求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その2)(再掲)

2023-12-01 | Weblog

 求められる「等級制」終身雇用形態の転換  (その2)(再掲)
 総務省は、2013年2月19日、2012年の労働力調査の結果を発表し、就労者(役員を除く)の内、アルバイトや派遣、契約社員などの「非正規労働者」の割合が平均で35.2%(1,813万人)と3年連続で過去最高値を更新したと発表した。景気の回復や退職年齢の引き上げなどにより男子の比率は約20%と若干回復したものの、女子の比率は55%弱とやや悪化し、女性労働者にしわ寄せされた形となっている。 
また同省は、契約社員や派遣社員など期間が定められた期間雇用は全就労者の約26%(1,410万人)としており、期間雇用が予想以上に一般化していることが明らかになっている。そして全就労者の10%程度がパートやアルバイトなどなるが、生活スタイルの多様化は良いとしても、雇用や生活の安定性からすると課題は多い。
被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 2014年には37.4%に達し、若干の上下動はあるものの、その後も37%台の高水準にある。
雇用労働者の3人に1人以上が「非正規労働者」であり、例外的な雇用形態ではなくなっている。今後若干景気が回復しても景気の不安定性を勘案するとこの状態はかなり長期に継続すると予想される。従って「非正規労働者」の問題は、かなり長期に亘って日本の雇用関係の一角を形成することになる。日本の雇用慣行においては、基本的に新卒採用を出発点とした終身雇用制がなお一般的であるため、中間的な本採用は少数であることを考慮すると、ほとんどの「非正規労働者」が生涯「非正規労働者」として過ごす可能性が高いこと、及び「正規労働者」との比較で賃金はもとより、健康保険、年金などの社会福祉などの労働条件において格差が常態化する可能性があるため、「非正規労働者」の定年年齢後の年金や医療などの社会福祉費が社会福祉予算を圧迫する可能性がある。
このように雇用労働者の3人に1人以上の人達が常態化する一方、非正規就労者は、自由な生活スタイルが可能となる一方、相対的に不安定な雇用、生活環境に置かれる可能性があるので、少子高齢化時代と低位安定成長を前提とした今後の日本社会を再構築していく上で、「非正規労働者」に区分されている就労者への諸制度の整備や基本的な雇用制度のあり方が重要な課題となっていると言えよう。
 その上、環太平洋経済連携(TPP)やEU等との経済連携により物・サービスの自由化が進み、労働力交流や対日投資も増加する中で、日本の労働生産性は先進工業国中最下位の状態が続いており、今後外国企業や外国人就業者に市場機会を奪われ、日本の産業が停滞して行くことが財界自身により危惧され始めている。日本の終身雇用制とそれに付随する新卒至上主義や定年制という雇用制度は、戦後の産業保護と円安為替レートにも支えられ、産業の安定的発展には寄与してきたものの、労働生産性は低迷しており、複雑多岐に亘る規制、規則、通達や労働慣行などによる労働生産性抑制要因と共に、「非正規就労者」が全体の平均賃金レベルを下げる結果を招いているのではないかとみられる。国際的競争がますます熾烈になると予想される今日、深刻な課題となっている。
1、望まれる職種・技能・技術を基準とした職階制雇用形態の普及 (その1 で掲載)
(1)閉鎖性の強い現在の「正規雇用」形態
(2)職種・技能を基準とした職能制雇用形態への転換、普及が不可欠
(3)定年制は各種の弊害を生んでいる
 2、国家公務員等の人事制度の改善が不可欠 
 地方公務員、準公務員を含め、公務員の新規採用は基本的に新卒者を対象とし、受験資格の年齢制限を定めており、また定年までの終身雇用を前提とする「等級制」となっている。公務員の地位は法律で守られており、解雇は原則として困難であり、懲戒免職も例外的でしかない。技術職や専門職で若干の中間採用はあるが、多くはない。
 このような公務員の地位の一定の保護は、公平性、中立性が問われる公務の性格上必要であろう。しかし公務員、準公務員を含む公務員の強い閉鎖的人事制度は、私企業や私的組織なら兎も角として、社会人となってから行政に携わることを希望する国民の参加を排除する一方、どうしても内部的な組織の論理や前例などが優先し、社会の変化や新たなニーズへの対応を遅らせる要因ともなっている。
 従って公務員こそが、一括の新卒採用や年齢制限、終身雇用を前提し、年功序列に基づく「等級制」を廃止し、職種、技能・経験を基準とする「職階制」に移行することが望ましい。現在、教育においても経済社会活動においても広く人材は育っていると共に、一旦社会人となっても行政に携わってみたい国民に対し門戸を広く開けて置く、「国民参加型」行政組織とすることが望ましい。
(1) 幻に終わった「国家公務員の職階制に関する法律」
 職階制は、職種に必要な資格要件に基づき職級を定め、同一の職位や職にある者に対し同一の幅の俸給を定める制度であり、欧米諸国や国連など国際機関で広く採用されている。
 日本においても戦後検討され、人事院か職階制について立案し、国家公務員法(昭和22年10月公布)の第29条2項、4項においては、「一般職に属する官職に関する職階制」を規定し、官職の分類の原則及び職階制の実施について規定され、施行された。しかし「職階制」は、日本において旧来よりの終身雇用制に合致しないことから、職階制は凍結された(昭和27年4月人事院、規則六)。そして旧来通り等級制が実施されてきたことから、公務員人事の総理府人事局での一括管理などの改革の一環の中で、2009年4月の国家公務員法の一部改正で職階制関連規定(同法第29条から第32条)は削除されている(削除された関連条項 参考)。また地方公務員についても職階制は導入されていない。
(参考)国家公務員法から削除されていた職階制関連条項(2009年4月)
(職階制の確立) 
第29条  職階制は、法律でこれを定める。 
2  人事院は、職階制を立案し、官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、
分類整理しなければならない。 
3  職階制においては、同一の内容の雇用条件を有する同一の職級に属する官職に
ついては、同一の資格要件を必要とするとともに、且つ、当該官職に就いている者
に対しては、同一の幅の俸給が支給されるように、官職の分類整理がなされなけれ
ばならない。 
4  前3項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。 
5  一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第95号)第6条の規定
による職務の分類は、これを本条その他の条項に規定された計画であって、かつ、
この法律の要請するところに適合するものとみなし、その改正が人事院によつて勧
告され、国会によつて制定されるまで効力をもつものとする。 
(職階制の実施) 
第30条  職階制は、実施することができるものから、逐次これを実施する。 
2  職階制の実施につき必要な事項は、この法律に定のあるものを除いては、人事
院規則でこれを定める。 
(官職の格付) 
第31条  職階制を実施するに当たっては、人事院は、人事院規則の定めるところに
より、職階制の適用されるすべての官職をいずれかの職級に格付しなければならない。 
2  人事院は、人事院規則の定めるところにより、随時、前項に規定する格付を再
審査し、必要と認めるときは、これを改訂しなければならない。 
(職階制によらない官職の分類の禁止) 
第32条  一般職に属するすべての官職については、職階制によらない分類をすること
はできない。 
 昭和22年の国家公務員法に規定されていた「職階制」は、“公務の民主的且つ能率的な運営を促進する”ことを目的としていたものである。それが長期に亘り実施されることなく、旧来より実施されて来た新卒採用、定年までの終身雇用を基本とした「等級制」が既成事実化され、法律上容認されたことになる。無論「等級制」には、雇用者、被雇用者双方にとって雇用の安定性確保等のメリットはあるが、雇用形態の閉鎖性、硬直性は‘国民に開かれた公務’を遂行する上でデメリットも多い。
(2)国民に開かれた公務員制度を可能にする「職階制」
 雇用者は、民間であれば私企業であり団体であるが、公務員の雇用者は国民から選ばれて政権に就いた内閣や地方の首長となるが、民主制においては内閣や首長は国民の選択により変わる。従って選挙によって雇用者である内閣や首長が変わり、政策や方針、施策が変わるが、被雇用者である公務員の閉鎖性、硬直性が円滑な政策転換のブレーキや障害となる可能性がある。特に課長(室長等を含む)以上の管理職がそうである。
 政策レベルの問題以外でも、公務員の雇用形態の閉鎖性は、一旦社会人となった国民が行政に携わる道を実態的に閉ざすという弊害となっている。就労人口の35%強を占める「非正規労働者」にしても「正規労働者」にしても、一定年齢以上になると公務員になれる可能性はほとんどない。「職階制」とすれば、政権交代等に際し、政党間の政権交代にしても、与党内での首班交代にしても、新体制の政策や方針に共鳴できない公務員は他の分野や民間等に転職し易くなる。そのためにも、民間でも職階制が普及することが望まれる。逆に、公務員だけが「職階制」でも、民間で職階制が普及しない場合は、公務員が辞めたくても行き場がないので、「職階制」は維持できなくなる。恐らく、過去に公務員の職階制がいつの間にか排除されたのも、民間での「職階制」導入が進まなかったからではなかろうか。また米欧からの人材が日本の労働市場に参入しにくくするとの意図もあったのかもしれない。いずれにせよ、公務員を職種・技能に基づく「職階制」とすれば、配転はより容易かつ円滑に行われるであろう。国家公務員については日本国民であることが原則になっている。
 このような観点から、公務員の雇用体制も、政権交代をより円滑に行えるよ
う閉鎖的で硬直的な終身雇用の等級制から国民に開かれた職階制にすべく、政府が率先して実施努力をすべき時期なのであろう。
 また企業、団体も二流の就労者とも見られている「非正規雇用」形態をなくすため、また低迷する労働生産性を高め、世界の多国籍企業との競争力を回復するためにも、職階制に転換、普及することが望まれる。
(2020.1.7.)(不許無断転載)(All Rights Reserved)

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給与増で国内消費増を図る経済モデルへの転換が急務

2023-12-01 | Weblog

 給与増で国内消費増を図る経済モデルへの転換が急務

 1、賃金上昇は歓迎も物価高騰で減殺

 2023年7月に時給ベースの最低賃金が41円引き挙げられ、平均1002円となったことを歓迎する。反面、31年振りの4.2%レベルの引上げであり、31年もの長期に亘り最低賃金が抑えられて来たことを意味する。その上消費者物価が2020年比で総合5.2%増の高騰を示し、2013年以来の日銀のインフ目標2%を大きく上回る形となるので、実質賃金はマイナスとなる。

 春闘による正規社員を中心とする賃上げ率も平均3.58%で、30年振りで歓迎されるが、反面賃金は30年以上低迷していたことを示すものである。その上政府・日銀が2013年以来容認して来た物価高騰で帳消しとなり、実質所得は2023年もマイナスとなることが予想される。

 2、給与増で個人消費・需要増を図る経済モデルへの転換が必要

 これは経済界が、高度経済成長期以来一貫して国民総生産(GDP)の6割前後を占める個人消費とそれを裏付ける給与増を二の次とし、外需(輸出)と政府支出の増加を優先して来たためと言えよう。外国為替も円安誘導が基調となって来たが、円安も輸出やインバウンドの海外観光客の増加にはプラスとなる一方、輸入価格の上昇により国内消費を抑制し、またドル・ベースの所得を引き下げ、所得の国際比較において順位を更に引き下げる結果となっている。

 外需(輸出)と政府支出の増加に重点を置いて経済成長を図るという従来型の経済モデルは高度成長期以来経済を牽引して来たが、賃金の抑制と1,220兆円という国内総生産の2倍を上回る公的債務の増加を招き、政府支出も伸びきった状態になっている。

給与増は言うまでも無く企業、特に中小企業の利益を圧迫し経営側にとって悩ましい問題であるが、国内需要を支える給与増は今後の安定的経営に必要であるので、経済界全体として給与増(役員報酬を含む)により個人消費の増加を図ることの重要性を理解し、経済モデルの転換を図って行くことが不可欠となっている。

 中小、零細企業の中には大手企業等の下請けとなっているものも少なくないが、大手企業は国内需要の底上げを図るため、中小、零細企業の賃上げの相当分を価格に反映することを容認することが望まれる。また政府は、中小、零細企業の賃上げを促進するため賃金改善調整金(仮称)を給付するなど、賃金増を促進する予算措置を講じることも不可欠であろう。

 世界経済も不透明性を増すと共に、成長を牽引する国も多くを期待出来ない時期にあるので、給与増により個人消費・需要増を図る経済モデルへの転換が急務である。(2023.8.8.Copy Rights Reserved.)

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