空手を若いときやっていて、堂々たる体格と、自衛隊でレンジャー部隊に所属したりと、その分野ではエリートといってよいでしょう。
ただ、けがで自衛隊をやめ、警備会社もある事情からやめてから、生活が一変しました。
若い人によくあることなのですが、国民健康保険料が払えなくて、滞納したあとに事故にあう、けがをするということがあります。
自業自得だよ、と言ってしまえばそれまでなのですが、なかなかそう割りきることはできません。
母親のいる実家に身を寄せていましたが、母親が亡くなり、足をけがし、松葉杖をついた状態で生活が困窮しました。
私の長年の知り合いの婦人のところに、助けを求めました。
まったくの他人なのですが、ある縁があって、最後に頼ってきました。
婦人はとても、親身になって世話取りをしたのは確かです。
住む場所、食事の世話を何の見返りもなしにしたのですから。
私も少し関わっていましたので、よくわかります。
そんなこんなで、5~6年ぐらいの年月がたっていました。
ギリギリのバイト生活。
そして、ほとんど無償の婦人のお世話でなんとか、生活が成り立っていました。
ただ、体調をくずして、ギリギリの生活を維持していたバイトができなくなりました。
そこで、生活保護を申請してみてはどうか、ということになって彼を説得し、生活保護をいただくことになりました。
それが彼の運命を決めてしまいました。
その時、生活保護がもらえるのであればと、少し家賃を上げることにしたのです。
確か、家賃を二万円にすることにしました。
そのことに、彼が激怒したのです。
それまで、彼に払っていただいていた家賃は5千円でした。
それも、払えないときのほうが多くて、その5~6年のあいだに払っていただいたのは、10回にも満たないものでした。
激怒した彼は、夕食を持ってきた婦人にその食事を投げつけました。
とうとう、無償で運んでいた夕食も、運ぶことを止めたそうです。
結局、生活保護も自ら取り下げ、体調もすぐれないまま、一年以上がたっていました。
私も婦人も、彼の態度に少し腹がたっていましたので、彼が助けをもとめない以上は、仕方のないこととあきらめていました。
彼は 最後に、偶然訪れた友人にみつけられ、救急車で運ばれ息を引き取りました。