ダンボールの紙に
「日本一周」と書いてありました。
すこし迷いましたが、声をかけてみることにしました。
夕暮れどきだったので、
「泊まるとこあるの?」
と聞きましたら、ないとのことでしたので、
「うちに泊まる?」と、いいましたら、「いいんですか?お願いします。」
とのことです。
一泊することになりました。
若い二十歳(はたち)くらいの男性です。
私はヒッチハイクの子とか見ると、つい車を止めてしまいます。
Ⅰ
若かりし頃(20代の頃)、あこがれの野宿をしました。
はじめ、駅の待合室で寝てましたら、60歳くらいの男の人が声をかけてきました。
「こんなところで寝てたら、危ないよ。」
「ちょっと来なさい。」
というので、素直についていきました。
タクシーにのせてくれました。
正直、泊めてもらえるのなら、少しうれしいかなと思っていました。
5分くらいタクシーにのったら、
うっそうと繁る、小さな森のようなものが目の前にありました。
Ⅱ
こんな森のようなところに、
家なんかなさそうだなぁ、
と思ったのですが、男性はタクシーを降りると、
運転手さんに、「ここで待ってて。」と言うと、
すたすたと歩いていきます。
私もあわてて、ついていきました。
もう一度「こんな森のようなところ、家屋の一軒もありそうにないのになぁ。」
と、心のなかでつぶやいていました。
少しづつ不安がましてきました。
それにしても、タクシーの代金払わなくていいの…😰
Ⅲ
そこは大きな公園でした。
適当なスペースがあって、そのなかのちょうどよい場所に、二人ほどが寝ていました。
男性は「ここで寝なさい。」
と言うと、さっさっと寝てしまいました。
やっと状況がのみこめました。
男性は、この公園で寝るほうが、快適で安全なことがわかっていたのでしょう。
とまどっていると、近くにいた若い男性が、
「このダンボール使いな。」
と、一枚の(ふとんがわりの)ダンボールを貸してくれました。
さらに、「どうしてこんなとこにきたの?」
と、聞いてきました。
「どうしたもなにも、何もわからずついて来ただけです。」
とも言えず、しどろもどろになっていたら、
「みんないろいろ(なこと)あるよなぁ。」
と、勝手に解釈してくれたようです😅…。
(申し訳ないのですが😞、特にこれといった困難はかかえていませんでした。)
Ⅳ
でも、快適でした。
私は根性がないので、あこがれのの野宿生活も、三日と続きませんでした。
もう少しがんばりたかったなぁというのが、正直な思いでした。
Ⅴ
若い、はつらつとした彼は、出発してから、1ヶ月ぐらいだそうです。
友達の家にとまったり、バイトしたりもあったそうですが、基本は野宿のようです。
まだまだ日本一周のみちのりは、半分もいっていませんが、達成してほしいなぁ。
私は(若いとき)あんなにあこがれていた野宿が、三日坊主に終わって、だいぶへこみました😩からね。
でも、
彼のこの1日1日という瞬間が、
まちがいなく、
さまざまな人の、
とくに、苦しい境遇にいる人の心を思いやることができる、
寄り添うことのできる、
彼の人間性を育てるということに、
私はなんの疑いももっておりません。