晩年、キュブラー⋅ロスは脳卒中を発症し、病に倒れます。
ロスを取材していたアナウンサーに対し、こう言います。
「私は神に、あなたはヒトラーだといった。」
「40年間神につかえてきて、引退したら脳卒中の発作がおきた。
何もできなくなり、歩くことさえできなくなった。」
アナウンサーは、ロスにこう問いかけます。
でも、「あなたは自分を愛すべきといっていますよね。」と。
ロスは答えます。
「いや、それには触れないで。」
と。
死にゆく人たちに寄り添い、愛を説くキューブラー⋅ロスに、人びとが聖女のイメージを抱いてしまうのはむりもないことだと思います。
そして、そんな人びとは、ロスから離れていったといいます。
ロスは番組の最後にこう言います。
「私は自分を偽ったことは一度もなかった。」
ロスが神に奉仕してきたといったのは、事実でしょう。
自分を偽ったことは一度もない、と言いきったロスにとって、晩年の病は、「それが私の奉仕に対する答えなの?」
と、あまりにも理不尽に思えたのでしょう。
神の仕事をやりきった彼女には、神への恐れもなかったのですから…。
番組の表題のように、完璧に神の使命をやりとげたはずのキューブラー⋅ロスにとっては、それは最後のレッスン、最後の試練なのでしょうか?
人に何かを与えるのでなく、与えられるということ。
すべてを自分で切り開いてきた彼女が、家族に守られるというレッスンを…。
キューブラー⋅ロスは2004年8月24日、二人の子供と孫たちに囲まれ、安らかに息をひきとります。
神をののしったことは事実ですが、それほど(神をののしれるほど)、自分が神の使命を果たしたこと、神と共に歩んだという自信があったからにほかなりません。
証拠があろうがなかろうが、彼女のなかに、死後の世界があったことも、まちがいありません。
「母はある意味、死を楽しみにしていました。」
「母はおかしなTシャツを着ていました。
私は大丈夫じゃない。
あなたも大丈夫じゃない。
だから、だいじょうぶ。
とかかれたTシャツを。」
ここに書いたことは、だいぶ昔のものですが、
NHKのETV特集「最後のレッスン~キューブラー⋅ロス死のまぎわの真実~」という番組で放映されました。