あなたのコメントが勝手にゆがめて雑誌に掲載され、コメントした相手から多額の請求をされたら、どうしますか。元朝日新聞記者でフリージャーナリストの烏賀陽さんの事件を担当し、個人に対する巨額の損害賠償請求がいかに重大な圧力となりうるかを改めて感じた。この事件は、【音楽市場調査会社「オリコン」が同社の音楽ヒットチャートの信用を損なうコメントを月刊誌「サイゾー」に寄せたとして、ジャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道さんに5000万円の損害賠償を求めた訴訟】で、一審は烏賀陽さんが敗訴したが、【控訴審は3日、東京高裁で和解が成立した。烏賀陽さん側によると、オリコン側が請求を放棄した】(iza)。
整理すると、
●サイゾーがオリコンのチャートについて烏賀陽さんからコメントをとった
↓
●烏賀陽さんがゲラを確認したところ、コメントの内容と記事の趣旨が違っていたため、担当者に掲載を断った
↓
●しかし、サイゾーの担当者はコメントを含む記事をそのまま掲載
↓
●オリコンが烏賀陽さんのみに対し、5000万円の損害賠償を求め提訴(サイゾーには提訴せず)
↓
●烏賀陽さんが、オリコンに対し、不当提訴だとして逆に損害賠償を求め反訴提起
↓
●一審は、烏賀陽さんに100万円を支払うよう判決を言い渡す
↓
●烏賀陽さん、控訴
↓
●高裁が、オリコンが請求放棄、烏賀陽さんも請求放棄、サイゾーが烏賀陽さんに500万円支払うという和解を勧告し、3者はこれを受諾
という流れだ。
オリコンは、烏賀陽さんのコメントとして掲載されたサイゾーの記事について、提訴当時、次のように指摘していた。
【本日、一部報道にありました「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について弊社の見解を述べさせていただきます。直接的な原因は、烏賀陽氏の(株)インフォバーン発行の「サイゾー」4月号における明らかな事実誤認に基づく以下の2つの発言にあります。また、烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります。
①「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)
弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。
②「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)
昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。
以上2つの発言につきまして、明らかな事実誤認に基づき弊社の名誉を毀損していることに対して提訴しています。】
結局、オリコンがこの請求を放棄する形で決着した。
しかし、私たち弁護団は控訴審になってから受任したが、烏賀陽さんは、かなり憔悴していた。オリコンの意図は不明だが、個人攻撃のために、サイゾーを訴えないで烏賀陽さんのみを訴えたのだとしたら、それはそれで功を奏したといえるだろう。
ペンで食べる覚悟を決めた烏賀陽さんをしても、これだけのプレッシャーを感じざるを得ないのだから、いわゆる内部告発的なコメントを狙い撃ちされて訴えられた方などはいかに怖い思いをしているだろうか。
そういう意味で、社会に有意義な情報を提供する者に対する恫喝的な訴訟について、市民、ジャーナリストが真剣に考えざるを得ないときが来ているように思う。
烏賀陽さんが、恫喝訴訟に対する米国の制度を紹介しているので、関心のある方はどうぞ→http://ugaya.com/column/090308SLAPP.html
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。なお、多忙につき、試行的に、コメントの反映はしないようにします。コメント内容の名誉毀損性、プライバシー侵害性についての確認をすることが難しいためです。情報提供、提案、誤りの指摘などは、コメント欄を通じて、今後ともよろしくお願いします。転載、引用はこれまでどおり大歓迎です。
整理すると、
●サイゾーがオリコンのチャートについて烏賀陽さんからコメントをとった
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●烏賀陽さんがゲラを確認したところ、コメントの内容と記事の趣旨が違っていたため、担当者に掲載を断った
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●しかし、サイゾーの担当者はコメントを含む記事をそのまま掲載
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●オリコンが烏賀陽さんのみに対し、5000万円の損害賠償を求め提訴(サイゾーには提訴せず)
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●烏賀陽さんが、オリコンに対し、不当提訴だとして逆に損害賠償を求め反訴提起
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●一審は、烏賀陽さんに100万円を支払うよう判決を言い渡す
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●烏賀陽さん、控訴
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●高裁が、オリコンが請求放棄、烏賀陽さんも請求放棄、サイゾーが烏賀陽さんに500万円支払うという和解を勧告し、3者はこれを受諾
という流れだ。
オリコンは、烏賀陽さんのコメントとして掲載されたサイゾーの記事について、提訴当時、次のように指摘していた。
【本日、一部報道にありました「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について弊社の見解を述べさせていただきます。直接的な原因は、烏賀陽氏の(株)インフォバーン発行の「サイゾー」4月号における明らかな事実誤認に基づく以下の2つの発言にあります。また、烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります。
①「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)
弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。
②「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)
昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。
以上2つの発言につきまして、明らかな事実誤認に基づき弊社の名誉を毀損していることに対して提訴しています。】
結局、オリコンがこの請求を放棄する形で決着した。
しかし、私たち弁護団は控訴審になってから受任したが、烏賀陽さんは、かなり憔悴していた。オリコンの意図は不明だが、個人攻撃のために、サイゾーを訴えないで烏賀陽さんのみを訴えたのだとしたら、それはそれで功を奏したといえるだろう。
ペンで食べる覚悟を決めた烏賀陽さんをしても、これだけのプレッシャーを感じざるを得ないのだから、いわゆる内部告発的なコメントを狙い撃ちされて訴えられた方などはいかに怖い思いをしているだろうか。
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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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