ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

雪…

2008-01-23 22:03:59 | 着物・古布
まずは…、恐る恐る和太を起こしてみたら、やっぱりヘンだったんですけどね、
ダメかなーと思ってしばらく見ていたら、えっらい時間がかかったけど
とりあえず起きてくれました。とにかく切ったら、
次は立ち上がるかどうか…ですから、起きてくれた今、
記事を一気に書いちゃうことにしました。


朝5時に外を見たときは、まだ降っていなかったのですが、
そのあと気がついたら、けっこう大粒の雪になっていました。
今朝は8時前に電話連絡網が回ってきまして、息子の施設はお休みです。
送迎車が走るの、無理ですわ、なんたって坂道に囲まれた地域ですから。
病院も昨日でホントによかったです。
テレビを見ていたら、都心の駅前からの実況で、
「今のところ交通機関に乱れはでておりません」といってるレポーターの
後ろに見えている電光掲示板に「……は遅れが出ております」オイオイ。

結局、お昼過ぎからは雨に変わりました。
雪遊びを楽しみにしていた子供さんたちにはかわいそうですが、
大人たちには、恵みの雨?、この時間から雨になってくれれば、
ほとんど解けてしまうことでしょう。それにしても「凍結」は別。
明日の朝、カチカチかもですね。

さて、雪にちなんで着物の雪の柄、のお話しです。
雪の柄は具象だと「雪持ち笹」のように、笹に雪が降り積もっている柄、
相性よく描かれるのは雀とか、男物だと「虎」、羽裏などに見られます。
抽象柄では「雪輪」ですね。
着物の柄の知識のないままこの柄を見ると、雪というより花のようです。
完全な丸い柄ではなくてすみませんが、私物の訪問着です。


     


花びらのような円周の柄の途中に引っ込んでいるところ、
小さな丸のところです、これが6個あるわけです。
雪の結晶といえば六角形ですが、和柄だと「雪『輪』」、円ですね。
どうしてでしょう…。いや私にもわかりませんけれどね。
実はある「文様紹介」の本に、この雪輪の柄も当然あるのですが、
その本を書いた方、作家で染織研究家でもある方なんですが、
その方が本の中で「この柄は桃山時代の小袖にも見られる、
顕微鏡もない時代に、なぜ雪が六角だとわかったのか謎だ」と書いておられます。
ドシロートの私がこんなことを言うのはたいへん僭越なんですが、
知っていても不思議はないと思うんです。

子供のころ、いえ今でもやりますが、というか今朝やったばっかりですが、
雪が降ってくると、黒いセーターとかブラウスを着て、
降る雪に向かって腕を横にすると、はらはらと雪が降りかかる…。
服に触れた瞬間に見ると、ちゃんと雪の結晶がみえることがあります。
もちろん、水気が多い雪だとか、さらさらの雪だとかこまかいとかボタン雪とか
そのときによりけりで、必ずしも見えるとは限りませんが…。
時にはいろいろな結晶が、みっつもよっつも重なって
くっついて見えることがあります。
もうひとつ、昔の人の視力の良さは、現代の比ではありません。
マサイ族の人の視力は6とか7とかいいますよね。
あれは暮らしの中で、必要だから磨かれて受け継がれた身体能力です。
日本は農耕民族でしたから、遠くの獣を探して見つける、というような
そういう視力はさほどのびなかったかもしれませんが、
変わりに暗い中でも作業をする、という眼力(メヂカラ)は、
ずっと持っていたと思います。なにしろ陽が落ちたら真っ暗な世界ですし、
せいぜい豆電球くらいあるかないかの明るさと光源で、
着物を縫ったり、文字を書いたりしていたんです。
浮世絵に夜中にトイレに立つ遊女の絵がありますが、
手にしているのは藁しべみたいな灯心一本で、先に火がついています。
しかもトイレはたいがい離れていたり、外だったり…
イマドキあんなものでトイレ行ったら、私ならたどり着くまでに
足のあっちこっち青あざだらけになりますわ。

眼のいい日本人が、空から舞い落ちる雪を袖に受けて、
それがどれをみてもきちんと六角形をしていることに気がついたとき、
どれほど自然を美しいと思ったことでしょう。
今なら「雪の結晶は六角」と、子供でも知っていることですが、
知らないからこそ、素直に最上級の感動を感じられる…これって幸せですね。
さて、おもしろいことに、西洋で雪の結晶を柄として使うときは、
そのままその直線的なひとつひとつ形の違う角(つの)の形や
正六角形の美しさを使いますが、
日本人は、その「六つのかどがある」というところだけ使いました。
そして六角形は別に亀甲として、別柄として確立させています。
雪の結晶を、昔の人は「雪の花」としてとらえたのではないでしょうか。
そしてその中に季節の花や、さまざまなものをいれることで、
冬だけの柄ではなく使えるようにしたわけです。

日本人は季節の移ろいに敏感で、その美的感覚は季節をとても大切にしてます。
但し、それだからこそその別々の季節をあらわすものの組み合わせで、
逆に通年使える、という合理的な技も生み出しました。
実は上の訪問着、地模様は「露芝」、つまり夏によく使われる柄です。
一見めちゃくちゃな柄あわせのように見えて、柄としてはまとまっています。
この着物は夏でもなくかといって冬でもなく…、つまり、
自己主張しているのは「露芝」でも「雪輪」でもなく、
中に描かれた花たちでもない。それはあくまでみな「華やかさ」の演出です。
では何が一番のなのか、というと、雪輪が重なって描き出している
「少し不規則な『青海波』」です。これは慶事に着る訪問着ですから。
おめでたいこと、に着るということがメインなんですね。

ひとひらの雪から、雪輪という柄を作り出し、
それを別のものと組み合わせることで季節を問わず着られるようにし、
更には雪輪の並べ方で格をあげる…。
こんな柄の妙味を、日本人は1000年かけて磨き上げてきたんです。
ただきれいな花柄、かわいい蝶柄、だけでなく、
そのまわりに描かれているもの、染められている色、
そういう物語を読み解く楽しさが、着物にはあると思っています。

雪は幸いにも雨に変わりました。でもすんごく寒いです。
今年はまだ雪輪さんの原型にあえるのかもしれません。


追記、パソコンはなんとか動いてくれています。
   今日は、とりあえず先輩の和吉を出してきたのですが、
   すっかりまっさらに生まれ変わってしまって、
   中味はきれーさっぱりなくなってまして…。
   アップデートからウィルス対策やらあれこれ最初っからです。
   もっとも先生が、今日じかんがあいたからって、
   着てくださったおかけで進んだんですが…。
   和太はどことなくヘンなものの、今日は昨日より
   マシな立ち上がりでしたし、あさってまではなんとか持ってくれそうです。

   





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4 コメント

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Unknown (伊藤)
2008-01-23 22:56:28
>ドシロートの私がこんなことを言うのはたいへん僭越なんですが、
知っていても不思議はないと思うんです

そうですよネ、ボクなんかも子供の頃、黒いセルロイドの下敷きをランドセルから取り出し、舞い落ちる雪を受け取った覚えがあります、すると大体の輪郭は確認出来ますよね。
返信する
雪輪青海波 (うまこ)
2008-01-23 23:09:57
上の写真を見ていて思ったのですが、雪輪は6個のくぼみで雪の結晶を暗示するとともに、降り積もった雪のふんわりした感じまで表現しているようですね。しかも青海波のような配置で、おめでたいことを表現しているということは、つまり絵文字もかねているんですね♪~

さて、前の日本髪の項でとんぼさんが主張されている、日本古来の伝統がとぎれているという嘆きは、思うに時の政権の政策でもあったのかも。つまり江戸幕府に対する新政府の決別の意志ですね。だから皇室の外交上の正式な服装も和装ではなく洋装だし、暦も強引に新暦にして伝統のお祭りもすべて新暦に移行したので内容と日時がひどくずれている。マゲの禁止ですべて洋髪。もちろん戦争のため決定的に伝統がとぎれたこともあるのですが、政府の方針であれば、責められても何とも言い訳のしようもない・・・・伝統模様の謎解きが忘れ去られそうなのも同じでしょうか。着物が草の根の復活を成してきたように少しずつ啓蒙してその他の伝統も復活すると良いですね。ただ昔に戻るのではなく、昔とつながる、という程度ではないとむつかしいかも。
返信する
Unknown (陽花)
2008-01-23 23:56:15
今度は本当に降りましたね~。

とんぼ様の訪問着は、雪の結晶、青海波、
露芝、お花と上手く考えてある柄ですね~。
着物の柄の見方、なるほどと思いながら
読ませていただきました。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-01-24 18:08:02
伊藤様
子供のころって、好奇心に満ちていましたね。
ホンモノの結晶を見たときには、
へんなんですが「ウソじやなかったんだー」と
カンゲキしたものです。


うまこ様
ふんわり降り積もった…ほんとにそうですね。
ステキです!実際の雪国の方はご苦労なんですが、
やっぱり雪景色を見るのは好きですー。

お雛様の並び方まで変わってしまったのですから、
仕方ないことですが、追いつき追い越せではなく
迎合になってしまった部分もあったかと思います。
いずれにしてもおっしゃるとおり、
私も昔どおりに、とは思いません。
いいことばかりではありませんものね。
それこそ「いいとこ取り」で、残して、
それから育てていかれたらなぁと思います。
うまこ様の数々のアイデアなんか、
その先端でしょう!ほんと、すごいですー。


陽花様
降りましたよぉ、積もり始めたときには
ええーっと思ったのですが、雨に変わってくれて
ほんとに助かりました。
この訪問着、嫁に来るとき持ってきたんです。
けっこう赤が入っているのですが、
八掛替えれば、と欲をだしてます。

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