ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

真綿・ワタ・・・わたわたしてます。

2005-11-30 00:01:36 | 昔の道具・暮らし

これは「真綿」です。大きさの比較においたのはボールペンです。
少し斜めにおいてあるうっす~い1枚が、真綿一枚です。
ただし相当の年代モノなので、すでに重さでペッタンコになってます。
ここから先は「綿」と書くと「めん」と「わた」とがごっちゃになりそうなので、
綿・木綿は「綿(めん)」、わたの方は「ワタ」と書きます。

さて、最初からややこしいですが「ワタ」というのは、
昔は「絹」のワタをさしました。それしかなかったからです。
「木綿」は、かなり昔に日本に入りましたが、栽培には成功しなかったので
結局は「輸入もの」の木綿を高価なものとして扱うところまででした。
戦国時代以降「日常に使う繊維」として、木綿の栽培が盛んになったため、
やがてワタもとれるようになり、布団の中にも入れられるようになったんですね。
木綿からとれるあのフワフワも「ワタ」といわれるようになったので、
区別するため「本当のワタはこっちよ」と「真綿」といわれるようになりました。

では真綿とはどうやって作られたのでしょうか。
真綿とは絹のワタですから、絹糸と同じ「蚕の繭」から作ります。
真綿のお話しをするには、まず絹糸のお話しをしなければなりません。
もともと、古い時代に選別に引っかかった「汚れた繭」「穴のある繭」など、
くず繭といわれるものを自家用に使ったものが「紬」の始まりです。
ごくカンタンに言いますと、繭から糸をとる場合、
上質の繭は湯につけて糸口を引き出し、糸繰をして巻き取ります。
繭をほどいていくわけですね。良質のものだと1000mとか1500mとか
とれるそうです。あんな小さな繭なのにすごいものですね。
で、質の落ちるものは糸を引かず、繭を割ってしまいます。
割りますから長い糸をひきだすことはできません。
この割った繭を水のなかで少しずつひろげ、ワクにつけた4本の棒に
ひっかけるようにして決まった枚数を重ねていき、これを干します。
乾いたものが「真綿」です。
これは本当にカンタンな説明で、質の悪い繭にもいろいろあるわけで、
たとえば色の悪いもの、汚れたもの、全体的・部分的に薄いもの、
穴のあいたもの、2匹の蚕で1個の繭をつくったもの・・・。
それぞれに使い方を考えて使ったわけです。
「紬」はさまざまなくず繭から作った真綿から、手で糸をつむぎだし、
それを染めて機織にかけたものです。手でつむぐので「ふし」ができます。
つむぎの特徴ですね。これを先に糸を染めて織るので「先染め」と言われます。
自家用で普段着・仕事着ですから、木綿と同じように更に堅牢にし、
汚れが目立たないように濃い色(藍など)で染めました。
それがいろいろと装飾を考えて、さまざまな色で染めたり、
縞だけでなく「絣」などが考え出されていったわけです。
上質な繭は、精錬して白いままで織り上げ、これに染めや刺繍などで
色柄をつけましたので「後染め」です。「染めの着物」といわれるゆえんです。
ちなみに繭から糸を引き出してとることを「績む(うむ)」といい、
真綿から手で糸を引き出すことを「紡ぐ(つむぐ)」といいます。
両方で「紡績」、ですね。「つむぎ」という名詞は「つむいだ糸から作った」
というところから出たわけですね。

で、真綿ですが、こうしてくず繭である2級品もいろいろ使われたわけですが、
その中の「2匹で1個の繭を作っちゃったもの」は「玉繭」と呼ばれました。
2匹分ですから当然ちょっと大きいです。別に汚れたりきずがあったり、
というわけでなくても、玉繭は「規格外」、という扱いになるわけです。
この玉繭から作ったのがワタとして使われる「真綿」です。
もちろん、真綿であればワタとして使えますから、
ほかの繭からも真綿は作りましたが、質のよさでは「玉繭」モノが一番、
ということになります。現在ふとんやさんで「真綿」といえばこの「玉繭」もの。
牛首紬などは、この玉繭をよく使いますので、玉繭も「2級品」とは
いえなくなっているような・・・。

真綿と木綿ワタを比べるといろいろな違いがあります。
木綿ワタは細かい繊維のフカフカですから伸ばしてちぎったり丸めたり、と
加工できますが、真綿はもともと繭一個をビロ~ンとひっぱって30cm位に
伸ばしたものです。長い繊維を伸ばしただけですから薄くなってしまいます。
これを重ねてあるだけですから、木綿ワタのようにモコモコはしません。
したがって真綿のふとんは「打ち直し」もしません。
昔は着物や半てんの中に、この30cm四方の真綿を並べてはさんだのです。
また、もこもこケバケバがありませんから、そのまま背中に広げて
上から羽織を着たりとか、そんな風に「防寒用具」として使っていました。
お嫁さんの被る「綿帽子」というのがありますね。
これは「櫛」のところでちょこっとお話ししましたが、
昔は髪がよごれやすかったので、いろいろ被り物をしたわけで、
お嫁さんに限らず、女性が遠出をするときはほこりよけを使いました。
最初のころはこの「真綿をひろげたもの」を前髪のあたりにひろげて
被っていたわけです。まんま「綿帽子」ですね。
ちょっと聞くと「髪油ベッタリの髪にワタなんて」と思いますが、
真綿はケバケバがありません。簪などがひっかからないようにすれば
モンダイなかったのです。

さて、こうなると昨日の「ふとん」でワタがなかった・・のはウソ?
ということになりますが、そうではありません。
もともと絹そのものが非常に高価なものであったため、
奈良・平安時代はワタとして豊富に使うなどということはなかったわけです。
お話しした「畳」ですが、贅沢なものは「ワタ」を入れるのではなく、
たたみに絹の敷布のようなものを敷く・・というぐあいでどこまでいっても
「敷物」であり、上に掛けるのは時代がさがっても「布を縫い合わせたもの」が
布団代わりだったということです。
寝具が劇的な変化をとげたのは「木綿ワタ」が手に入るようになってからです。

養蚕が盛んになって「自家用紬」を作るようになっても、
家中の布団を作るほどはないわけで、やっぱり貴重品でした。
反物一反を織るのには、6000個くらいの繭が必要だと聞いたことがあります。
蚕を育てて、繭をとる・・一軒の家でどれだけの蚕が飼えたか・・
と考えれば、くず繭といえども何千個もでるわけではないわけで、
そういう繭や蚕以外の山繭などをためておいて着物やワタとして使ったわけです。
ですから、途中で木綿ワタが登場して、布団はほとんどが木綿ワタ・・に
なったわけですね。

正直なところ、ワタについては私もまだまだ勉強不足です。
これからも「真綿」に関して知りたいことがたくさんでてきました。





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