ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物の防寒コート

2014-02-01 22:11:12 | 着物・古布

 

このところ、急に春の陽気になったり寒くなったり、ややこしいことです。

立春寒波がくるのだそうで、またまた灯油が減りますがな。

 

さて、着物のコートにもいろいろありますが、和装の中では、歴史の浅いものです。

元々女性は羽織を着るようになったのも、幕末から明治にかけてですし、

それ以前は、一般の女性は上に着るものは半天とか、着物の重ね着とか…。

今のように行動半径も広くないし、身分差もありましたし、

女性で着物に贅沢ができるような立場の人は、元々あまり外に出ない…という時代でしたから。

武家の女性の外出用コートは「被布」、今の子供用と違って袖つきのものです。

あとは、掻取を壺折のようにたくし上げて…ですね。

 

近代に入っても、今のように、何々コート、というはっきりした形はなく、余裕のある人は、

着物を作り直して黒繻子の襟をかけたりして、今の雨コートのようにしていたのではと思います。

トップ写真は先日の「スタイル」の本、こちらの新しく入手したものの中にありました「雨コート」。

有馬稲子さんです。こちらの表紙はちょっとわかりづらいですが「岸恵子さん」。

         

 

時代がさがって大正ごろに道行ができたようですが、あのスクエアネックは、

被布からきた形ではないんでしょうかねぇ。

この「スタイル」の、以前ご紹介したほうの本には、興味深いことが書いてありまして、

まず「長いコート」ありき、で、そのうえで道行のことを「半コート」と言っています。

そういう時代だったのでしょうね。

当然ですが、洋装でもコートは服を全部隠す長いもので、お尻が隠れるくらいのものが半コートです。

それから行けば、和装だって当然そうなるわけですが、

和装の場合、雨コートは長いコートとしてそのまま残りましたが、

全身隠す「防寒コート」は廃れたのですね。

だから今は「道行」のことを「゜半コート」と言わず、単に「和装コート」と言います。

また、その記事には「着物に帯付きで歩くということは、昔ならたいへんおかしいことでした」と

そんなことが書いてありました。外を歩くにはちゃんと羽織なりコートを着るものでした、と。

それが半コートがはやりだし…みたいな記事で、当時は特別にコート用の反物というものはなく、

着尺などを使っていたとも書かれていました。60年前はそうだったんですね。

これも時代の流れですね。いまは春先暖かくなって、帯付きで歩けるようになると嬉しいものです。

 

着物での裾まであるコートは、最近は見ませんが、実際には雨コートと同じで、

けっこう動きにくいでしょうし、素材によっては重いでしょうね。

最近は化学繊維や、いいものではカシミアなど、軽い素材もできていますが、

それでも長いコートは、見た目メリハリがないので、私も着たいとは思いません。

今は「道行」は道行として独立したもので、コートというと、衿の形がかわったものをいいますが、

これも「道行」が一般的に「みんながそれ」になったので、そうなったわけですね。

実際には道行も「道行衿、という衿の形の和装コートです」というわけ。

 

私はスクエアネックが好きではないので、道中着を多用していますが、

そうなると今度は、道行よりカジュアル、ということになります。

ちょっと格付けされるような小紋や礼装では「道行を」と、呉服屋さんでも言われます。

なんだか、勝手にややこしくなっていますね。

私は、母の持っていた雨コートの「千代田衿」というのが好きだったのですが、

リクエストしても「お前には粋すぎ」と、作ってもらえませんでした。

母が「道行大好きニンゲン」でしたので、私も街着用の紬地の道行や、

染の大柄のものなど、道行ばかり…(キライだって言ってんのに…?!)持たされました。

ちょっと写真撮ってみました。まず譲られて今は私の手元にあるものです。

これは母が40代後半まで着ていたもの。

 

             

 

近くで見ると「竹」がランダムに交差した柄です。

 

     

 

こちらはほしいといっても、私が50をすぎるまで譲ってくれなかったもの。たいへんお気に入りでした。

 

              

 

家並み柄はよくありますが、これは珍しい「洋館の家並みと石畳の道」です。

 

           

             

たまたま、時代がそう流れ、母の好みがそうであったために、私の嫁入り用も全部道行で

こちらは「いい着物の時に着なさい。訪問着でもいける」と持たされたもの。

 

              

 

柄は織りで「分銅つなぎ」。

 

           

 

実は、嫁入りに持ってきたときは、こんなカンジのオレンジでした。

カラー調整で変えたので渋めですが、実際にはもっと明るくて「鮮やか」というような色。

こちらへきてすぐのころに、母が「あれはもう派手だから染め替える」と持って帰り、

もどってきたら、上の濃いローズというか、くすんだワインというか…になってました。

でも、けっこう気に入ってます。

 

              

 

そして私の好きな道中着、これは50代の初めころに、自分で買ったものですが、

京都の北山杉をイメージしたもの。

 

              

 

実は木が描いてあるのではなく、ただの直線の組み合わせ…です。

 

      

 

これは、いつも私が選ぶものをほめない母が「いいね」と言ってくれたのですが、

そのあとに「アンタには似合わへん。カオがボケるでぇ」と言いました。ホントでした…。

 

昨日、遠方の友人が「寒い時期は羽織は前が空いてて寒いから、道行にする、という人がいて、

寒かったら羽織の上から道行着ればいいのに、と思ったのよ」と。そうなんですよね。

羽織は言ってみればスーツの上着やジャケット、道行はダスターコートやオーバー。

だから重ねて着たっておかしくもないわけです。

ただ、下から出るとねぇ…です。昔いましたよ、道行の下から羽織が出ていて、

更に道行の前をはだけたら、羽織の下に羽織下が見えるモコモコの着ぶくれおばさん。

あくまで、コートの下からは羽織が見えない丈あわせを…。

 

というわけで、私自身は現在外出そのものも少ないし、道行か道中着です。

寒ければそれにショール…ですが、何度かアップしているこの和様兼用コートを着てからは、

よほど寒かったらこれ…ですね。羽織をそのままひっくり返したリメイク(購入したものです)ですが、

ワタたっぷりで軽くて暖かいです。この形の変形でいずれ作ってみたいと思っています。

 

     

 

でも、こんなのにも、すごーくあこがれるのですよねぇ。岸恵子さんです。

ただし、こういうものは細かい作業、たとえばバッグの中から何か出すとか、

そういう時は不便です。

 

                

 

結局、防寒は洋装でいえば「オーバー、コート、半コート、ダウンジャケット」…

それぞれに当てはまるようなものを、自由に着ればいいわけです。

一番自由にできるアイテムですねぇ。

さて、立春寒波…おうちにこもってやり過ごしたいと思っています。 


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6 コメント

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Unknown (あみーな)
2014-02-02 12:51:19
花粉対策を兼ねて、雨コートを新調しようか迷っていたのですが。
防寒タイプも惹かれます。
素材の重さも考慮しないと、ですね。なるほど!
返信する
Unknown (とんぼ)
2014-02-02 17:39:51
あみーな様

最近の素材は、いろいろ考えられていますけれど、
下まであるコートはそれだけでも動きにくいですからねぇ。
私は、雨コートを作るまでの急場しのぎに買った
「化繊の雨コート」、軽さが気に入ってます。
細かいところのサイズの問題はありますが、
肩こり症としては「アリガタイ」…でして。
返信する
Unknown (古布遊び)
2014-02-02 23:10:31
着物のコートはどうもピンとこない。

道行はなんとなく好きじゃあなく道中着が欲しいと思っていたのですが、なんだか着る機会のことを考えると誂えるのももったいないかなあと思って実は持っていないのです!
羽織とショールでいいやなんて思ってそのままになっています。

岸 恵子さんー素敵ですね~
こんな羽織物もあるのですね。
返信する
Unknown ()
2014-02-04 21:59:35
私も とんぼさんと同じ様な無地の色の道行きを
持たされましたが
解かずに 染め直しが出来るのでしょうか?

そして ここ数年 ケープというか マントというか
呉服屋さんや洋品店で探し求めていたのですが
形は気に入っても 材質が気に入らず・・・
材質が気に入っても 形が気に入らず・・・
値段が気に入らず・・・
なんて 思いながら 冬を越しておりました。

この際 型紙でもあれば 頑張れるかなぁ
とまで 思う様になっているのですが
最後の写真のコートの型紙は載っているのですか?
返信する
Unknown ()
2014-02-04 22:01:35
男物のトンビを手に入れたので
一度 着て出掛けたのですが
やはり 人の目が気になり
男の子にあげてしまいました。

型紙を取っておけば良かったと
少々 後悔しています
返信する
Unknown (とんぼ)
2014-02-05 18:00:23
惠様

解かずに染める方法は、あるにはありますが、
もう最後の手段で、ダメ元、みたいなものでなければ
お勧めしません。
やはり染め替えは、解いてから、ですね。

この本は作り方の本ではないので、
型紙は載っていません。
マントなら、洋裁の本にはあると思いますよ。
ネットでも「マント 型紙」で検索すると、
いろいろ出てきます。

人目なんてきにしなくていいのに。
おしゃれは目立ってなんぼだと、私は思っていますよ。
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