ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

羽裏動物園?の新顔です。

2007-10-18 02:40:43 | 着物・古布
三年目突入、第一回目の記事は「象」さんです。
つやがあるので光っていてすみません。
これも「ドンパ」、つまり「緞子の羽裏」です。
緞子(どんす)は、つまり「♪きんらんどんすの帯締めながら~」のどんす。
といいましても、正確に言いますと「緞子」の糸に金糸をいれたものが
「金襴緞子」で、入っていないものはただの緞子、です。
じゃ「緞子」って何よといわれますと、これがまたややこしいことで、
元々は中国から伝わった「綾錦」、では綾錦は?…と、こう突き詰めていきますと
まずは織り方のお話しからしなきゃなりませんので、
カンタンに(出た!とんぼの手抜きうんちく…)申しますと、
要するに縦糸と緯に質の違う糸を使って、繻子織り(光沢のある織り・サテン)で
模様を織り出した、美しい光沢と柔らかさのある布、
という程度でいかがでしょうか。
金襴緞子は、絹糸のほかに本物の金糸(和紙の芯に金箔を貼り付けたもの)を
使った重厚な綾錦のことです。聞いただけで重たそうですね。
天平時代からある、といわれていますが、
実際にはそういうものって素材も技術も変化してきていますから、
昔の織り方や名称が、時代と共に変化してきているのではないかと思いますが…。
最近の木目込み用など手芸用の安いものは、レーヨンなどが使われています。

ともあれ、ズシリと重く柔らかくつやがあって重厚な感じがする、
という特徴は、今でも変わらないようです。
以前ちりめんのお話しで一越ちりめん二越ちりめん、なんていう
お話をしましたが、あれは緯の数やかけ方の違いなどでした。
この緞子も、詳細は私にはわかりませんが「一重・二重」という種類があり、
厚手のものは帯や羽裏に、薄手のものは着物などに使われます。


というわけで、この羽裏も「鶴」に続いて「どんす」、つまり柄は「織り」です。
「象」に唐子がまとわりついて遊んでいます。
「唐子」は服装や髪型からいって、そのまま「唐」、つまり中国の子供、
でも「象」は中国」にはおりません。かつて日本に象がやってきたように、
シルクロードを伝って運ばれたのでしょう。
元々仏教の発祥はインドですから、仏教の「教え」とか「お話し」には、
よく「象」が出てきます。例えば仏陀の前世は「象の王で…」とか
「恩を忘れた猟師が象を倒して」とか、いろいろなお話があるんですね。
また「普賢菩薩」は「六牙(りくぎ・ろくげ)の象」に乗ったお姿の、
絵や像がよくあります。六本牙…すごいです。
象はアジア圏でもインドに近いほど、身近な動物だったんですね。
この象さんの絵は、動物園の「ふれあい広場」といった感じ、
ちょっと大きさの誇張のために、子供がちいさすぎますけれど、
とても楽しそうですし、象さんの眼もやさしそうですね。


     


元々象とか馬の眼は「優しい」と評されますね。
あの体にあのちっこい眼ですからよけいです。
今でも子供たちに人気のある動物として、必ず名前があがりますから、
穏やかでやさしい動物と思われていますが、野生の象は凶暴だそうです。
こちらは以前アップした、「染め」の羽裏、ちょっとボケた写真ですみません。
記事は2006年の6月4日です。


   


ちょっと象っぽくない描き方ですね。
さてさて、日本に象が来たのはいつかと申しますと「室町時代」です。
その後秀吉・家康の時代に渡来していますが、まぁ今のように
「獣医学」も発達していませんし、元はといえば「南国」の動物、
おまけに何ヶ月もの船旅の末に、たんと歩かされて都にくるわけですから、
長生きしたとは思えません。連れ歩くのもたいへんだったでしょうねぇ。
吉宗の代には、京都で帝にも「謁見」し、「位」までもらったんです。
象にしてみりゃ「位」よりもバナナたーくさん、のほうがよかったでしょうにね。
ともあれ、日本は仏教国でもあり、また象はそれ関係の深い動物でしたから、
珍獣というより「霊獣」というような感覚、扱いだったようですね。
つまり「珍しがる」より「ありがたがる」ほうです。
ですから、仏教画にもでてくるわけですね。

戦争中は象(だけではありませんが)が空襲に備えて殺され、
その悲劇は映画にもなりました。もう二度とそんなことのないように。
遠い国からやってくるたくさんの動物たち、それでなくとも環境が違うところ、
自由のない暮らしになるのですから、大切に…と、そう思います。
ちなみに「オカピ」で有名な「ズーラシア」は(有名じゃないか?)
我が家から車で30分圏内です。







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6 コメント

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Unknown (陽花)
2007-10-18 09:58:25
象さんらしい象さんですね。
それにしても、とんぼさまの頭の中は
色んな知識がい~っぱい詰まっていると
感心しています。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-10-18 15:32:04
陽花様
これを着ていた人って、象さんみたいな
ゆったりしたひとだったのかしら…なんて。
仏教は父と一緒に「絵」を見ていたもんで、
ふしぎだなぁと、小さい頃から思ってましてね。
なんで牙が六本もあるの?とか。
雑学の寄せ集めなんですよ。
返信する
Unknown (ゆん)
2007-10-18 22:07:12
こんばんは~。
 象さんって、無条件で尊敬してしまう生き物です。仏教徒だから・・?
 6本の牙、って言うと、東南アジアでは、指が6本ある人を仏さんというけど、そのつながりなんでしょうね~。違うかな。 
 こんな羽裏が背中に当たってたら、「あ、怒るのや~めたっ!」て気持ちになるかも・・。すてきです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-10-18 22:40:10
ゆん様
六牙の象については、ほんとにいろんなお話しが
あるんですよね。
仏教には諭しのためのお話がたくさんありますから、
ゆん様のおっしゃること、きっとそうだと思います。
この羽裏の女性はほんとに優しくて美人、
象さんもすんごくやさしいです。
これ着て怒ったら、バチあたるかも、ですね。
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判じ物? (maymayman)
2007-10-21 20:05:45
是!インテリヤクザノ羽裏!?
娑婆で罰当たりな渡世なので?
自分を無知蒙昧な人間に見立てて・・・
仏さん背負って勘弁してもらってるの!
『群盲象をなでる』…考え過ぎです確かに、
でもあったら楽しいかな???
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-10-21 21:25:48
maymayman様
ヤクザですか?それほどの迫力は感じませんが…。
もっと「らしい」にがありますしぃ?
唐子を「群盲の僧たち」に見立てて、
ヒトは大局はなかなか見えないものだと、
自らへの戒めの思いがあったのかもしれませんね。
単純に象と遊ぶ子供、と見れば、
なかなか楽しそうな柄ですよ。
どっちにしても、今はありませんね、なかなか。
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