ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

母から…

2009-11-19 21:23:29 | つれづれ
父が今日「白菜ときゅうり」と一緒に?届けてくれました。
母が時々「これをかえしておいてくれ」とか、
「これはもう渡しておかないと」とか…そんな風に言って、
なにやらこまごまと持たせるのです。
時々思い出したように「今のうちに身の始末をつけておかんと」…と、
ごそごそやっては、あれやこれや探し出すらしいのです。
別段母のところに置いといてもモンダイはないのですが、
このごろ父も私もさからいませんので
「はいはい」と届けられ、「へぇへぇ」と受け取ります。

写真のちりめん細工のケースとスリッパは、昔呉服屋で売っていた小物。
友人がそこにいましたので、もらったものだと思います。
印伝の「靴」の方は、これまたたぶん…ですが、京都のおみやげ。
このケースの中にちっちゃなメモが入っておりまして、
「とんぼから S62.10.30 靴もずーっと前にくれたもの」
ウチは両親とも、こういうところは、たーいへんマメでして、
なんでも全部、メモが入っていたり、箱に書いてあったりします。
そのものになければ「日記」…二人でそれぞれ書いてますから、
もう何十冊ですよね。
記憶力も私よりはるかによくて、ウチにあるもので何か聞いても、
「それは、それと同じようなのを、いついつどこそこで買って、
オマエがいいねぇって言ったから、そのあと行ったとき買ってきたんだから」と、
日記をパラパラ…「やっぱりそうだ、次の年にいったとき、同じのがなくて…」と
いつどこで、いくらで買ったかまで全部でてきます。便利です?!

几帳面というのでしょうか、当然昔からですが、
特に母は細かくて、何でもかんでもピッチリカッチリ…。
洗濯物の干し方、たたみ方、箪笥へのしまい方、
掃除の仕方に、ゴミの始末、そりゃもぉキチキチと仕込まれましたわ。
ムダな動きをするなというのが口ぐせで、
例えば私が居間から自分の部屋へ行こうとしてボーッとただ出て行こうとすると
「まわり見ていき」とすかさず声がかかります。
立ったついでに、何か自分の部屋に持っていくものはないか、
台所にさげるものはないか、いつもと位置をかえているものはないか
(読んだ新聞とか)ざっと見渡して、一度で用をすませろ、というわけです。
両親が終の棲家として住み始めた今の家は二階家ですが、
母が元気なころは、行くと時々階段上り口に何かしらおいてある、
誰かが二階へあがるときは必ずそれを持ってあがるわけ。
二階には本棚が並んでいましたので、誰かが読んでおいたものでも、
次にあがる人が持っていって片付ける…。
うっかりそのままあがろうものなら「カラ手で動かんとき!」と叱られました。
習慣というものはおそろしいもので、今でも私は実家に行って、
こたつから立ち上がるとき、二階に上がるとき、まわりを見回します。
もう、母自身がそんなことができなくなっているというのに…。

母の様子が少しずつおかしくなってしばらくして、いつもの京都の里帰りの折、
まだまだ一人で行けてたのですが、足元だけがちょっと、というので、
私が、一緒に行ったことがあります。
新幹線の中で朝食をとり、薬を飲む時になったら「どこにいれたかわからない」…
結局あったのですが、そのとき持っていたハンドバッグの中を見たら、
もうごっちゃごちゃで、ただモノを次々つっこんだだけの状態。
あれだけ整理整頓命!だったというのに、もうゴミ箱みたいでした。
そのときも「あぁもう、ちょっときてるんだなぁ」と思いました。

今は、マメな父が「いつも同じものが同じところにある」暮らしを
ちゃんと守ってやってくれています。
母はもう二階に上がることはできなくなり、そこに何が置いてあっても、
自分がつっかかって転ばないように、それだけしか気にしていません。
私はどこかホッとしています。もう、気楽に暮らしてくれたらいいよと。

いろいろ思い出したように小物を届けさせる母ですが、
最近よく言うのが「いいかげん長生きしてしもて…もうええのに…
なんで両親や兄さん姉さんたちは、迎えにきてくれへんねんやろ」です。
どちらかというとポジティブ思考のひとですし、86ともなれば
どうしても先に夢はもてないのでしょう。夢はなくてもいいから、
のんびりまぁ生きられるだけ生きたらいいか…と、考えてくれればいいのですが、
どうしても「迷惑かけるから」なのですねぇ…。
言ったこともすぐ忘れますから、「お迎えがこないこない」と繰り返す…。
私は毎度おんなじことを答えます。

「おかーちゃんは、兄弟とはトシの離れた末っ子で、甘ったれでわがままで、
 年中『この甘えた(甘えん坊のこと)が、ホンマに』って叱られてたんやろ」
「そうや、オナゴのクセに家のこともなんもせぇへんわがままやって」
「そんな甘えんぼがきたら迷惑やて、あっちはそう思てんのとちゃうか?
 今静かやし、おまえまだ当分こっちへ来んかてええでぇって」
「あぁそやなぁ、そう言われても、しゃあないな、そやけど親は違うやろ」
「親?かーちゃん、じぃじとばぁばは、あの世でもう100歳こえとるで、
 末っ子の年なんかボケて覚えてへんで、そのうちくるやろ…と違うか?」
「そうか…そやなぁ、もうずいぶんトシやなぁそういえば」
「迎えになんぞ来てくれへんでも、いやでもいつか行くねんから、
 文句言わんと、待っといたらええやん」
「それもそやな、あせったかてしゃーないもんな」
「そやそや」

あとで父が「おまえはほんと、言いくるめるのうまいなぁ」
(あたしゃ詐欺師かい…)
老いて尚盛ん…という人もおります。
体もピンシャンで仕事してたり、趣味に生きたり、
人と交わり、まだまだいけますっ!という人もいます。
本当は最後のひとときを、母のようにポジティブに暮らすのは、
いいことではないのかもしれません。
でも、キッチリぴったり、きゅうきゅうパリパリと生きてきた母は、
何もできなくなって、やっと「何も気にならなくなった」のです。
お茶入れたる…といいながら、途中で手が止まり、そのまま忘れ、
いつまでたってもお茶がでてこない…。
そのゆるさが、私も気楽でいいです。
ひそかに「じぃじばぁば、おじさんおばさん、気長に待ったってくださいねぇ」と
念じている私です。



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Unknown (とんぼ)
2009-11-23 22:08:55
akkomam様
このごろ、自分のあまりの物忘れに、
時々ほんとにだいじょうぶかしらん…と
思っています。秘書がほしいですー。

母は大正12年生まれです。
むずかしいことを説教するのでなく、
大人になって余計な苦労をしないようにと
しつけてくれました。
今ならそれがよくわかります。
最近、お嫁に行くまで台所に立たない…
なんていうのを聞きますが、
私は、母親がなにもかもやってやることが
かわいがることだとは思いません。
料理教室に行くとか本があるとか言っても、
早く始めておけば、応用編がとてつもなく
ラクなのですよね。
家事で困ったり、つらいと思ったりが全くないのは
母のおかげと思っています。
本当は…伝えたらみんなラクできるのになと
思っています。
返信する
歳なのでしょうか? (akkomam)
2009-11-23 16:54:29
  私の歳になりますと、<メモ>は外出の必需品で、
  持ってでましても、他の買い物を先にしてしまい、
  メモの品は今度にしよう!なんていつものことです。

  郵便物など出かけるときに持って出るものは、
  玄関に前日からでもまとめておきますし、
  携帯を忘れないように、持って出るバッグは携帯充電器の
  横においておきます。

  私の母は大正5年生まれでしたので、階段にそれぞれが
  持ってあがるように、本、衣類、などをよく置いて
  ありました。  懐かしい思い出で、そう躾けられた
  ことは、今はとても幸せなことだったと思っています。

  とんぼさんのお母様の仰っていらっしゃることは
  今でも貴重ですし、昔の教えはずっと続けて語られて
  ほしいと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-20 23:45:19
みつわ様
ほかにも鶴のマークってのもあるんですが、
結局はブランドとしてちいさいんでしょうね。
ほんとに証紙のイミとかブランドとかって、
ヘンに深すぎて、ややこしいです。

着物、たくさんおありになるとのこと。
ほんとにお宝ですね。
洗い張りもなれですが、実際今の時代、
着物着るのはお金がかかります。
これもモンダイですねぇ。
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Unknown (とんぼ)
2009-11-20 23:43:02
陽花様
いえいえ、あんまりキチキチとやられたので、
結婚して自由になってからは正反対です。
日記も家計簿も大のニガテ…。
結婚直後には、両親が来るなんていったら、
三日くらい前から大掃除してましたよ。
子供ができてからは、それを理由に!
何にもしなくなりました。
両親もあきらめてますよー。
でも、メモはほんとに大事だし、
今更遅いけど「これ、どこで買ったんだっけ」とか
いくらだったかなーとか…考えるたびに
書いときゃよかったと思っています。
返信する
Unknown (みつわ)
2009-11-20 13:48:24
そうです都喜ェ門です!解るんですねぇ…とんぼ先生ありがとうございます。大正9年生まれの母は着物好きでした。9年前に急死しましたが亡くなる2年位前実家に帰った時、持って帰りなさいと着物の山を渡されました。義母も60歳で急死したので、それなりに着物の山があり、これから少しずつ整理して行きたいと思っています。洗い張りは結構な金額しますのでご自分でできるなんて羨ましいです
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Unknown (陽花)
2009-11-19 22:23:20
今日お友達と色んな話の中でそそっかしいのは
代々親譲りやわ。と言っていたのを聞いて、
とんぼ様のところのピッチリ、カッチリも
遺伝子なのでしょうか。
細かくメモ書きに日記ですか・・・
ハァー・・三日坊主の私には到底真似が出来ない事ですが、絶対便利ですよね。
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