バタバタと家事に追われつつ、テレビのスイッチを入れた。
なにやらドラマ…桃井かおりが…あぁ古いなあこのドラマ、あ「検事 霞夕子シリーズ」か…。
婿養子で僧侶の役は「新克利」、文机に向かっているその背中に
仕事での悩みを持つ桃井かおりがよりかかる。
そのシーンを見てふと、大きくて少し丸まってたおとサンの背中を思い出した。
そっと寄り添って…なんて甘いシーンはなかったけど、
「何読んでんの」と大きな背中越しに話しかけたり、「ちかれたびー」なんて古いギャグを言いながら
どーんと寄かかったり、そんなことは何度もあったっけ。
今頃になって、急に、大きくて、あったかい、背中を思い出した。
もうだれーっと寄りかかることはない。
バーンとたたきながら「早くお風呂入っちゃって」ということもない。
「この背中の肉のせいで、幅とって不経済なのよねぇ」なんて文句言いつつ、
ワンサイズ大きなシャツを注文することもない。
熱帯魚の水槽を、背中丸めてゴシゴシ洗っているのを見ては、
「年取ったなぁ」なんて思うこともない。
もうあの、ほんのりあったかい背中に触れることは、二度と、ない。
今頃になって、なぜか急に思い出した「おとサンの背中」。
雪の予報が外れて、窓越しの日差しは暖かい。
そうだ…おとサンが、誰も知らないうちに一人で旅立ってしまったあの日の前日、
雪が降ったんだったねぇ。大雪じゃなかったけどちょっと積もった。
長くあったかいとこで暮らしたおとサンは、24年ぶりの「日本の雪景色」を
子供みたいにニコニコしてみていたっけ。
「雪が嬉しいのは子供のうちだけよ。もぉぉまた雪かきだわ」と、しかめっ面の私に、
返事の代わりに言ったのが「雪の中に果物入れておくと、甘さが増すんだよ」…。
ひょっとしてパソコンで見た「ナントカの知恵?」。
わざわざ小さなクーラーボックス出してきて、リンゴとみかんと、藁のかわりに新聞紙細かくちぎって…。
「そんなことしなくたって甘いじゃないの」と思ってた。
それでも「古新聞、これくらいで足りる?」と、運んだのは、久しぶりの冬と雪を楽しんでるおとサンの、
笑顔を消したくなかったから。冷てぇぇーと言いながら雪を詰めてたっけね。
結局一つも食べないまま、次の日に何も言わずに逝っちゃって…。それが心残りでね。
今、いくらリンゴやミカンをお供えしても。なんだか物足りないのは「雪漬け」の甘さじゃないからかな。
葬儀のあと、斎場に向かうときも、突然雪が舞い始めて、霊柩車を追いかけるみたいに
どこまでもまとわりついてきた。積もったら困ると思ったけど、
あぁおとサンよっぽど久しぶりの雪が楽しかったんだろうなぁと、そんなことも思った。
あれだけ舞い散っていたのに、結局斎場への往復も精進落としのあとも、積もらず無事帰宅できた。
クーラーボックスの果物、そのあとの忙しさに紛れてすっかり忘れほぅけ、
あーっと思い出して開けて見たときには、雪はすっかり解け、傷み始めたリンゴやミカンが、
新聞紙にまみれてプカプカ浮いていたっけ。ごめんねぇ、雪、足せなかったよぉ…と、
しかたなく食べられないものは捨てたけど、
きっとおとサンは、おいしいうちに、甘い香りは持って行ったに違いない。
今年も雪が降って、あぁ積もったらいやだなぁ雪かきだもん…とため息ついたけど、
心のどこかで、おとサンに最後の笑顔をくれた「雪」に、感謝する私がいる。
わずかにベランダの手すりに積もった雪を見て、
あの時の「クーラーボックス」の光景が、ふわぁ~んと、思い浮かんだ。
きっとこれから先、雪を見るたびに、あの光景を思い出すのだろう。
背中丸めて新聞紙を細々ちぎって、クーラーボックスに念入りに詰めていた、
ちょっと楽しくて、せつなくて、雪だけどほんのりあったかかい…
これも「甘い思い出」というのだろうか。
今週はもう一周忌。
おとサン、雪が楽しくて好きなのはわかっているけど、
お願い、その日は降らさんといてな。
切なすぎて掛ける言葉も見つかりません。
…私もとても切ない思いで読ませていただきました。
私は循環器病院の看護師をしておりますが、とんぼさんの「おとさん」への想い。
たいへん心に響いてまいります。
とんぼさんの今日の言葉を看護師としての自分の心にしっかりととどめておこうと思います。
ほんの少しでも人の心に寄り添える自分となれるようにと…
一周忌。お天気となりますように。
少し心配していましたが、
もう一年になるのですね。
とんぼさんとご主人さまにしか
わからないご夫婦の温もりを
感じています。
これからも雪と思い出が繋がっていきますね、寒さには充分気をつけて
お暮らしくださいますように。
気丈にふるまわれているとんぼさん
お体をお大事になさってください。そしてゆったりとここを続けられて時にはこんな独り言も書かれて下さい。
昨年の暮れ、主人が胃がんの告知を受け、先週に手術を受けました。
主人は単身赴任先の東京の病院で1人で入院、手術を受けました。
私ははるか遠い雪国で、小学生の娘と二人の日常を送っています。
手術中のトラブルで大量に出血し、急きょの輸血や再開腹があったそうで、手術終了の連絡があったのは12時間後でした。
普段は何とも思わず「亭主元気で留守が良い」と思っていた私ですが、大切な人だったんだな・・・と改めて認識しました。
とんぼさんにとっての「おとさん」もきっと大切な大切な人だったのでしょう。
おとサンの背中・・・私、主人の背中が思い出せません。
今度帰省した時は、もう少しだけ優しくしてあげましょう。
一周忌には青空が良いですね。
ありがとうございます。
直後より、しばらくたってから何か思うのだろうなぁと、
そんなことを考えていましたが、
思わぬところでふと思い出します。
もっと年を取ったら、昔話のできる相手が
いないことを、さみしく思うのでしょうね。
看護師さんをなさっておられるのですね。
循環器系なら、なおのこと、命に直結する現場ですね。
元気な時はさして感じなかったことを、
いなくなってから思い出しては、
つい「あぁしておけば、こう言っていれば」などと思ったりします。
命の大切さを身を持って教わったと思っています。
あっというまに1年です。
何でもないものが、思い出につながることを、
いろいろ感じています。
無事法事も終えてむ、ほっとしています。
ありがとうございます。
生きているものは、明日に進まねばと、
そんな気持ちでいます。
ぼちぼちと遅いのですが、いろいろやることがあるのが、
いいのかもしれません。
時々はゆったり…書かせていただきますね。
一周忌は上天気でした。
この1年を褒めてもらった気分です。
ご主人様、大変でしたね。
生還なによりです。元気でいるとあまり気にも留めないことが
なにかあると、しみじみと感じるものです。
ご主人様、くれぐれもお大事に。
今度御帰宅の時は、いっぱい優しくしてさしあげて!