ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

祝箸

2014-01-02 02:29:00 | 昔の道具・暮らし

 

毎年、正月用の「祝箸」は、母が用意しましたが、けっこう凝ったものもありました。

だいたいは、それぞれの「干支」の柄の入ったもので、上等の和紙だとか、

干支の絵が金色だとか…写真は、今我が家にある「祝箸」の残りです。

左は何かの景品で10膳セットをもらったもの。

 

昨日、深夜にテレビをつけたら、あの「今でしょう」の先生が、

日本語の達者な外国の方々を生徒さんに見立てて、お話をしていました。

何の番組だかわからなかったのですが、先生が「おせち」についてのお話をしていたので

ちょっと見ていました。

私も過去記事で「おせち」について書いていますが、おせちには一つ一つに意味がある…

というお話で、たとえばね・・・といくつかあげられていました。

つまり、日本には言葉遊びの文化があるので、それをお祝い事に使った…というような。

金団は「金の団子」の意味で、その色とカタチから「富」を得られるように…とかですね。

確かに、そのアタリはそうそう…だったのですが、

ん~それはちょっと違う…と思ったことがありました。

 

先生はまず、おせちというものは、お祝いの膳であると同時に、お母さんにお休みを与えるもの、

というようなことを言われました。確かに、保存のきくようなものばかりですから、

お母さんが、三日くらいは台所で煮炊きをしなくてすむという「思いやり」の料理・・・

ともいえるのですが、元々そのために作られたものではないものが、

結果的にそういうメリットもあるよね…になったということです。

 

おせちは元々「直会(なおらい)」の変じたもの、といわれています。

「なおらい」とは、神事・祭祀に供えられたお酒やお米、食品を、終了後にさげて、

神職や氏子総代など、みなで頂くこと。これがいわゆる「共食」。

まちがっても「い」をつけて「共食い」にしないでね。「きょうしょく」です。

「神人共食」といいますが、神様がお召し上がりになったもの、あるいはそれと同じものを、

人間もいただくことで、一つには「畏敬の念」をあらわし、神の守りを祈る…ということ。

おせちは、この「なおらい」の変化したものといわれています。

つまり、まずは神様にお供えしたものを「下げ渡していただいて、自分たちもいただく」。

なので、別にお母さんがラクをするためにできた料理、ではないわけです。

もちろん、長い年月の間に「保存食を作っておけば」ということで、

台所にたたなくてもいい、という理由にはなったのだと思いますが。

 

それとこれは違う…と思ったのは「祝箸」の説明。

先生は、両方が同じように細くなっているのは、これもお母さんの負担を軽くするという

思いやりの心がある…と、例えば味の濃いものと薄いもので両方を使い分ける、

それで箸が一膳ですむ…と。

祝箸は、両方使ってはいけません。これが「神人共食」で、片方は神様が召し上がる…

つまり、こちら側で自分がいただくとき、神様も反対側で召し上がる…ということです。

なので、料理の味で使い分けるとか、ひっくり返して「取り箸」代わりにするのはマチガイです。

 

祝箸には、箸袋に自分の名前を書きます。これは本来、家長の役目。

これを大晦日のうちに済ませて、神棚に上げておき、元旦に下げて使います。

「ウチにはこれだけの家族がおります。神様と一緒にお食事をさせていただきます。

どうか一年息災ですごせますように」と言うわけですね。

なので、神様が間違えたりしないように、人のお箸は使いません。

祝箸は、みんな同じ形ですから、洗うときごっちゃになります。

なので母は、箸だけは自分で洗え、と言いました。

自分で洗って拭いて、自分の箸袋に入れる…これもけっこう長いことやっていたと思います。

いまやグダグダですが…。

 

取り箸としては別に同じ祝箸を用意し、箸袋には「海山」とか「鶴亀」とか書いてました。

関西では、えーと母から聞いたんだけど、たしか組重…だったかな。

違ってたらすみません。関西の方、教えてください。うろ覚えです。

「海山」は、まんま「海の幸・山の幸」の意味、またそれに恵まれますように。

鶴とか亀とか寿などは、要するに「おめでたいもの」ですね。

 

以前は、完全ではありませんがおせちは自宅で作っていましたので、両親と私の三人家族でも、

一応お重は三段を使っていました。それで母は一つずつに「鶴」「亀」「寿」と書いた

取り箸をのせて、お膳に並べていました。そのうち市販の「寿」になっちゃいましたけどねぇ。

まちがっても、反対側は使ってはいけません…と、私は教わったし、

これはやっぱり信心があってもなくても、しきたりとして残したいです。

 

さて、おせちも省略しちゃってる我が家では、神様はさぞかし「しょーもない家だな」と、

あきれておられることでしょう。神棚には一心に「すんません」とお詫びしています。

来年はちょこっとだけでも作ろうかな…なんぞと、思ったりするのですがねぇ。

ここへ来たころは、毎年ある程度のものは親から届けてもらっていましたから、

残りを作ればよかったのですが、何にもなくなって久しい…。

火鉢でコトコト黒豆炊いたり、フライパンに和紙のいいのを敷いてごまめを炒ったり。

確かに手間がかかりますわ。

我が家に火鉢はないし、家の新しいガス台は、ある程度熱くなると、

勝手に火力落ちちゃうし…ほんと、海苔もするめも、あぶれません。

 

おせち、という文化がどんどん変わっていくのは、そりゃ暮らし方も変わったのですから、

ある程度は仕方ないと思いますが、せめて「意味」だけでも、伝えられたらいいと思います。

外国の人相手に、先生が教えたこと…今はそれでいいのかなぁ、やっぱり違う!といいたいなぁ。

そんなこんなで、元旦の世はふけていきました。

これからひと寝入り、そして今日は「箱根駅伝」です。

 

おまけ画像は、母がテレビで見て覚えた「箸袋の作り方」で作ったもの。

上の方の向きが変わるように折ると「仏事用」だそうです。糊は使わず折り紙です。

これ確かおせんべい屋さんの包装紙ですね。ちと大きいですわ。

 

         

 

 

 


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10 コメント

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なおらい (穴熊の女房)
2014-01-02 08:37:02
私の住む 田舎 今でも「なおらい」 の言葉生きています。
結婚式 お葬式 など儀式の後 格式張らずに飲み会をすることを 通称「なおらい」 と言っています。
深ーい意味があったのです。
普段使いの 塗箸 亭主のものは 片方がすぐ洗い桶の中で すぐ沈みます。 安物ですから 材質の木材が 違うのでしょうね。
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Unknown (ヨッシー)
2014-01-02 09:17:22
あけまして、おめでとうございます。
昨年末から、ブログ拝見しています。
先日、帯揚げの件でお騒がせした者です、帯揚げ手元に無事届きました。

博学ですね、、私も同じ日本人のはずなんですが、、目からうろこの世界です。
これからも、楽しみにしています。更新してくださいね。
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Unknown (陽花)
2014-01-02 09:17:35
祝い箸の反対側は神様の・・・すっかり忘れて
いましたが、一度聞いた事がありました。
祝い箸を使った後は最後に湯呑茶碗のお茶で
すすいで箸袋に・・・何十年も続けています。
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Unknown (古布遊び)
2014-01-02 10:12:01
明けまして おめでとうございます。
どうぞ今年もよろしくお願い致します。

祝箸のお話初めて知りました。
そういう意味があったのでね~
今年もお正月から一つ勉強させて頂きました。
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Unknown (とんぼ)
2014-01-03 02:01:08
穴熊の女房様

農耕に関わるところでは、まだ残っている地域も
あるのですね。
元々日本の信仰の基礎は「農耕」に関することですから、
みんなで集い、神に感謝し、互いに感謝する…
ということが、暮らしの基盤だったのですね。
今の時代を見ると、過去の話にはしたくないと
そう思うのですが…。

実は私のお箸も、片方だけ沈むんですよ。
それも全部じゃなくて、細い先の方は、
いくらか浮くんです。
私、カナヅチだしなぁ・・・なんて、ちと息苦しく思いながら、
チャッチャと洗ってます。
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Unknown (とんぼ)
2014-01-03 02:03:08
ヨッシー様

あけましておめでとうございます。

帯揚げ、よかったです。
オシャレして出かけてください。

博学というより浅い雑学なんです。
拙いブログですが、今年もよろしくお願いします。
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Unknown (とんぼ)
2014-01-03 02:05:39
陽花様

そうそう、祖母なんかはお茶でシャバシャバっとして、
箸袋に戻してましたね。

こういうことって、改めて教えてもらわなくても、
親がやっていたように、続けるものですよね。
全部はムリでも、日本のお正月ってこんなだよ、と
それは伝わっていくといいと思っています。
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Unknown (とんぼ)
2014-01-03 02:07:37
古布遊び様

あけましておめでとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いします。

えらそうなこと書いてて、お正月が終わると、
手の小さい私には、菜ばし代わりに使いやすいので、
「神さん、お箸のお下がりもいただきまーす」って、
モロ、使ってます。
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Unknown (天鼓)
2014-01-05 23:45:26
うちの母の田舎もなおらい、いいます。
高齢化が進んだ土地ですから、なおらい、というのはほぼ精進落としと同義語となっておりますが、お祭りの後もそういえば使いましたね。子供の頃聞いた記憶が…。
お節の語源は、節句のお祝い膳だから、だったように思います。
聞いたか、読んだか。
今はお正月のお節料理しかありませんが、昔は三月、五月、七月、九月のお節句にもお節料理を作っていた…と。
お料理の内容は、なおらいとかのお祝い事の時のお料理だったんでしょうね。
昔の農村でそんなにお祝い膳にバリエーションがあったとも思えませんし。

お節の取り箸は、うちでも別に用意してましたね。
それぞれのは袋に名前を書きますが、それは白いままでした。
大皿の方からお重に詰め直すときとかもそのお箸を使ってました。
祝い箸の裏側の端は使わない、というのも同じです。
多分母の出身の岡山の山の方のやり方ですが。

箸袋の折り方、あるんですね。やってみたいです、検索したら出てくるかな?
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Unknown (とんぼ)
2014-01-06 19:20:42
天鼓様

元々節句は1月7日の人日、桃、端午、七夕、重陽の
5回で、それぞれ神様にお供え膳を作りました。
節句は「節供(せつく)」で、節の日の供物の意味。
おせちの「御節」も「せつく」からといわれています。
本来節句の日のものだっのたが、だんだん「年の変わり目」が
重要視されて、三が日の料理になった…といわれています。
まあ要するに、そんなに古くからのことではないのでしょうね。
そうやってだんだん変化していくものなのだと思いますが、
中華や洋食になり、買うもの、になり、やがてはなくなる…のは、
やっぱり寂しいですねぇ。

箸袋、今日作り方載せました。検索で出ていたらすみません。
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