ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

父の昔話からタバコのお話…

2013-04-20 15:08:27 | 昔の道具・暮らし

 

写真は、祖母の形見の櫛。祖母は存命なら110歳を超える明治の生まれですから、

若いころはまだ日本髪を、実際に結っていたわけです。それで戦火を逃れた櫛簪などをもらいました。

鼈甲のように見えますが、そんな高価なものは買えるわけないよぉ…と言ってまして

譲り受けたものはみな「ベークライト」 「セルロイド」「木製」です。

 

父は昭和の初期の生まれです。

終戦後のヨコハマの焼け野原もしっかり覚えている年代。

古いもののことは、当然知っていますので、時々話しを聞きます。

先日の「ツェッペリン羽裏」を見せたところ「昔、ウチに『ツェツペリン焼き』の型があった」と言い出しました。

探してといったのですが、父が子供のころの話で、すでにもうないと…がっかりです。

なんでも、昔はタイ焼きだけでなく、何か珍しいこととか、ニュースになるようなことがあると、

「○○焼き」として、縁日などで売られたのだそうです。

もうないだろうと思いましたが、検索してみましたら入間市の縁日でありました。2年前の情報ですが。

ほんとに飛行船の形をしていまして、細長くて魚なら「タイ焼き」ならぬ「アユ焼き」の感じ。

 

さてさて、私は骨董についての知識はほぼありませんので、

「庄屋さんの蔵にあった茶碗でしてね、江戸末期のモノ」…なぁんて、昭和のうつしなんか買わされても、

まーったく気がつかないタイプです。したがって、私の好きなのは「ただの古道具」であり、

金額ではなく「私が好き!」なもの。あっお高いものはダメです、せいぜい10000円どまりくらい。

趣味としてそうなったというよりも、昔見てたから、家にあるから…ですかねぇ。

 

父とはなしをしていて「煙草」の話になったのですが、父方の祖父は、明治24生まれでした。

存命なら日本一のご長寿様…です。その祖父は、昔刻み煙草をキセルで吸っていたというのですが、

私の記憶の中の祖父は、すでに「朝日」という紙巻煙草を吸っていました。 

あまり画像がよくありませんがこちら。「朝日」の段の下、一番右です。

その祖父が「キセル」ですっていたころ使っていた「タバコ入れ」。

これも以前アップしていますが、底に細かいタバコがちょっちとだけついています。

 

       

 

根付は「鷹が殻を割ってでてくるところ」

 

       

 

父は、母と骨董市によくいきましたので、そこでみつけたものをいくつか私にくれました。

これも過去に出していますが、キセルの出し入れがめんどくさいタバコ入れ。

 

       

 

キセルのはいった筒部分は、自然のもの、まぁ太く育ってる蔦とかそういうものだと思います。

キセルの雁首が大きいので、ただまっすぐ引っ張ってもスンナリ出ません。

これはわざわざ、キセルの雁首を溝に合わせてくるくる回して取り出します。

 

       

 

煙草入れの方には中身が残っています。

 

       

 

先日の「アール・ヌーボー羽裏」でパイプから、キセル、タバコについてのコメントをいただきました。

タバコが日本に入ってきたのは室町のころですが、最初は当然富裕層、そして庶民へと広がりました。

需要が広がってくると、生産するものが増える…のは世の常で、米作りからタバコ作りにかわる農家も増え、

幕府としては「米が減るのはいかん」とか、風俗上云々とか…で、例によって何度も禁止令をだしましたが、

いっこう減る様子もなく…で、結局「まぁいいか」…に、なっていったと。

 

さて、タバコは大航海時代に世界中に広まったわけですが、タバコは「噛む、嗅ぐ、吸う」の三種。

「噛む」はガムのように噛むわけですが、当然ニコチンが溶け出すので「唾液」がキケンなものになります。

なので、常にペッペッとツバを吐くことになり、これは文化的な暮らしになってくると、実情に合わない…。

嗅ぎタバコは、まんま鼻先にくっつけて吸い込むのですが、シゲキが薄い。

結局「燃やした煙を吸引する」というのが、手間もかからず効果も得られる…で、流行ったわけです。

刻みタバコは、日本だけではありませんが、上の写真のような細かい刻みは日本独特の技術だそうです。

 

元々日本人は、美しいものに対する感性が豊かな民族です。

外国からはいってきたものを、日本人好みに進化させる…それで、キセルなどの「喫煙具」は、

最初はそのへんにあるもので…だったのものが、専用具として作り出されるようになりました。

写真のようなタバコ入れは携帯用、いつでもどこでもタバコを楽しめるようにと、考え出されたものですね。

キセル、刻みタバコ、それをそれぞれ入れる容器、火のないところでにそなえて火打石の道具、

そういうものを腰にぶら下げるための根付…そういうものが、それぞれに趣向を凝らして作られたわけです。

 

こちらのタバコ入れセット、コレも何度かアップしていますが、見た目はジミ、

 

       

 

止め具は「せみの抜け殻」、

 

       

 

そしてせみはここにいます。

       

            

 

このセットのキセルはただの銀ギセル、いや銀かどうかは疑問なんですが、とにかくおもしろみのない、

ただの金属キセルです。写真を撮り忘れたのですが、六角レンチを伸ばして曲げました…みたいな。

今でも、無賃乗車を「キセル乗車」といいますが、それはキセルは雁首と吸い口だけが金属で、

真ん中は竹だったり木だったり…なので、乗るところと降りるところだけ「金(属)」で、

真ん中は「金ではなくタダ乗り」と言う意味ですね。

キセル乗車にならない?こういう金属の銀ギセルというものも、イロイロ細工の凝ったものが出ました。

また花魁の使うようなものは、大きくて見事な金蒔絵だったり…一服も、普通の3回分くらいはいりそうです。

さて、こういう道具が「おしゃれなもの」として発達するのに合わせて、

日本の刻みタバコは、どんどん細かくなっていきました。

それには日本人の器用さや、繊細さが大きく影響していると思いますし、また「刀」の文化がありましたから、

刻むための刃物、と言う点でも群を抜いていたと言われます。

専売でなかったころは、タバコは量り売り、タバコの葉をまず選び(コレがブレンド)、

葉脈や傷んだところを取りのそぎ、重ねてきっちり丸め、これに圧をかけたものを、

小口から細かく刻んでゆく…太巻きとそば切りの要領???髪の毛ほどの細さになったといわれています。

一服しか入らないような小さなキセルの雁首にも、きっちり詰め込むことが出来たわけですね。

この技術は、その後機械化されて…と言っても原始的なものですが、葉を圧縮するものと、

それを切る…というより、これはカンナを当てて削る…なので、細かくはなりましたが、

葉を丸めるのに余分な油などを使ったり、金属なので匂いがうつったり…。

結局は「安物」というレベルになったそうです。

上の写真のものが、手刻みか機械かはわかりませんが、いずれにしても糸のように細いタバコ、

今のタバコにはありませんね。

 

私の持っている「タバコ入れ」関係は、父からもらったものだけですが、

根付はおもしろいので、時々骨董市や、ヤフオクで買っています。

もちろんせいぜい2000円くらいのもの、つげ細工の根付などには、当然名人と言われる人がいて、

名前も入っていたりします。そういうものはゼロひとつところか二つ違う場合もあります。

私はそういう「価値」で買うわけではないので、帯留めになりそーとか、見た目がおもしろーいとかで、

写しだの模造だのを買っているわけです。

 

こちらも再出、自分で骨董市でみつけた「楊枝入れ」、真ん中のつまむところは、

三味線の撥を立てた形になっています。今どきは、食事のあと爪楊枝も使いませんねぇ。

銜えて歩いている男性は「オヤジ」と言われてます。

ハブラシに歯間ブラシ?それもまた文化、でも「取り出しにくいハブラシ入れ」なんてのは、はやりませんね。

 

      

 

別に骨董趣味と言うわけではないので、いろんなものをちょっとずつ、

あ、お雛様道具と「おままごと」は、ちょっと熱入りますが…。

そんな中で、昔はこういうものをつかっていたんだよね…ということから、

先人の知恵とか、向上心とか、シャレ心とか、そういうものが見え隠れしてきます。

今、お金を出せばなんでも買える時代であり、その道具はボタンひとつで何でもやってくれる…。

それがシアワセなのかなあと、ふと思うのです。

 

おしゃべりする掃除機、が出て、テレビのスイッチもいれてくれるそうです。

そのくらい自分でやれよ…と思ってしまうのです。

そういうものは、高齢者や障害者が使う「福祉用具」にとどめておいたほうが、いいのではないかと。

そばに家族がいるのに、、ちょっと立ち上がればそこにリモコンがあるのに、

掃除機に向かってテレビつけて…という家庭を想像すると、

なんだか「豊か」というのが、大きな薄っぺらい立て看板かポスターのように思えて、

ちょっとした強風で倒れてしまったり、はじっこの紙がはがれだしたらペランとめくれて、飛んでいきそうで。

 

ネジネジとめんどくさいキセルいれを使っていた人は、面倒だという手間よりも、

珍しいカタチを好んで、人にも「いいだろ!?」と、見せたかったり…。

また見た人は「ふんっ、そんなめんどくせぇもん、よく使うわ」と言いつつ、

「もっとめんどくさくてかっこいいもの、探さなくちゃ」…なんてね。

そういう人間のあほさかげんや、無駄のなかに、楽しさってあるものじゃないかと、

そんなことを思ったりするのです。

 

今日は雨が降っています。明日にかけて、また季節が逆戻りするとか。

寒さもこれでおしまいであることを祈りつつ、またストーブのお世話になって過ごしましょう。

そういえばアナタもしゃべるんだったわねぇ「灯油がなくなります」…ん~ありがとね、教えてくれて。


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6 コメント

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素敵なコレクションですね。知識も、 (まあや)
2013-04-20 21:58:11
江戸時代は、私たちにとって楽しいことをたくさん遺してくれたようです。
この頃そう感じています。
武器としてより、武士の魂として、日本刀の外見(こしらえというのでしょうか?)が、趣味豊かに発達し、帯締めはそれの技術がいかされているものの一つでしょうか?
器用で几帳面で、日本人って素晴らしいわ~
身の回りが片付かない私、ナニジンでしょうか!?恥ずかしいわ~~~
まさか、さらに便利な時代になって、私以上にダメ人間が増えては困ります!!
でも、不自由な日常生活を緩和出来るのは、新技術に大賛成です。

頑張ると、身体中ガタガタになってしまうので、毎日、お座布団一枚分ほど、片付けをしております。
返信する
Unknown (とんぼ)
2013-04-20 22:16:42
まあや様

帯締めの元は「鎧兜」に使われた紐です。
日本の鎧は小さな金属片や皮を硬くしたものに、
穴をあけてそれを一つずつつなげたものです。
まず皮ひもでつないで、それを縦に組紐でつなぎます。
やがて太平の世になって、鎧などが頻繁に使われなくなって、
今度は刀の下げ緒などになり、
その刀もなくなって、帯締めや羽織の紐などに
活路を見出したと言うわけです。
真田紐も、同じような経緯ですが、
こちらはどちらかというと、お茶道具の箱の紐などから、
道具類になって行きましたね。

私も年齢を感じるようになってきて、便利なもの、
楽な道具はありがたいと思っていますが、
そこまでしてくれんでも…のものには、手がでません。
お座布団一枚分…それくらいがいいのだと思います。
返信する
Unknown (陽花)
2013-04-20 22:25:34
祖母は1歳ぐらいの時に亡くなっていますが、
木の火鉢の所でキセルで煙草を吸ってコンコンと
落す音で飛び起きたと母がよく言っていました。

煙草の葉も近くの農家で栽培していて、畑へ
入ったり葉っぱ1枚採ってもダメとよく言われ
ました。

遠い記憶を思い出させて頂きました。

どちらも素敵な根付けですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2013-04-20 22:31:17
陽花様

長火鉢にきせる…かっこいいですねぇ。
タバコの葉の実物は見たことないのですが、
大きなものですよね。

実父と母は喫煙者でしたが、記憶にあるのは、
父のジッポーライターだけです。
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Unknown (古布遊び)
2013-04-21 07:38:34
素敵な根付けですね! 
日本人の目の付け所に本当に感心してしまいます。
確か京都に根付けの美術館があると聞いたことがあるのですが、訪ねてみたいと思いながらナカナカ叶わず残念です。

私も古いものが大好きで(私の場合ガラクタと呼ぶべきか)ついつい妙なものが増えていきます。
主人との唯一の共通点なのでお互い、それはいいとか、わるいとかけなしあっております(笑)。
返信する
Unknown (とんぼ)
2013-04-21 19:26:06
古布遊び様

根付のあれこれを見ていると、ほんとに目の付け所に
驚かされます。
男物ですから、女物のような華やかさには用はないけれど
かわりにちょっと目を引くおもしろさ…。
京都は壬生の「清宗根付館」ですね。
私も何度も京都に行っているのに、ちと半端なところなので
いつも「この次は」なので次回は行くぞ…です。
壬生郷士の家なので、建物も楽しみなんですよね。

私のものも、専門家から見ればほとんど「ガラクタ」ばかりなのでしょう。
それでも古いものって、なんかいいんですよね。
人の手のぬくもり、なんていう陳腐な言い方しかできませんけれど、
作った人、持っていた人のことを思ったりしています。
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