風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

短歌や俳句の鑑賞を楽しみ、歴史上のエピソード等を楽しみます。
比べて面白い 比べて響き合う 比べて新しい発見がある

没句歌集 その3

2020年05月11日 | 和歌

没句歌集 その3 

ドラマでは最後に解けるパスワード

守秘義務はないのか主婦の会話には

俺の癖なんで隣のかあちゃんが

鍵保管マトリョーシカのようになり

*2018年にセキュリティ川柳に応募した作品群です。

 


没句歌集 その2

2020年05月10日 | 和歌

没句歌集 その2

幹事はね人柄だよとおだてられ

ご苦労さん次はボーリング大会だ

不備あれば査定が下がる幹事役

準備のみ部長がマイク握りしめ

欠席が多けりゃ幹事叱られる

絶対になりたくないや幹事長

*2018年幹事川柳に応募した作品群。くすっとしていただければ嬉しいです。


あはせつる 西行(比歌句 50 左)

2018年08月15日 | 和歌

あはせつる木居(こゐ)のはし鷹すばえかし犬飼人(いぬかいびと)の声しきりなり 西行(さいぎょう)

 

この歌を現代語に訳してみました。

獲物に向かって放った止まり木のはし鷹よ、素早やく獲物を捕らえよ。

捕えた獲物を追う犬の飼育係りの声がしきりに聞こえて来る。

 

<鷹狩というと鷹匠が腕に鷹を乗せ、獲物を見つけると鷹匠が腕を前に滑らせる。

すると、鷹が獲物目掛けて飛び立つ。>というイメージを持っていたが、古い時代は、(多分)鷹は止まり木に乗せられていたのだと、この歌を読んで思いました。

 

但し、西行は鷹狩りを見てはいない。犬飼人の声が聞こえただけだ。犬飼人の声を聞こえてきて、出家前の鷹狩りの状況が鮮明に蘇ってきた。そういう歌だと思います。

 

正統な解釈は以下のブログでどうぞ。 

山家集の研究  

http://sanka11.sakura.ne.jp/sankasyu5/jitenko.html

 

源氏物語に(どの巻きだったろう)蹴鞠に打ち興じている場面が描写されている。

<久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも>

に合わせるのであれば、蹴鞠の秀句があればと思ったのですが、今のところ出逢っていません。


久方の 正岡子規(比歌句 50 右)

2018年08月13日 | 和歌

久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも 正岡子規(まさおかしき)

 

俳句や短歌を詠む人は、なかなかスポーツを貶せない。それは、子規が野球が大好きだったからだ。虚子や碧梧桐も子規の勧めで野球をやったことがあるようだ。

“久方の”天や空に掛かる枕言葉だが、アメリカに掛ける自由奔放さ。だけれども、船でしか海を渡れなかった時代、確かにアメリカは久方にある国だった。

それにしても、子規の愛した野球は将に草野球だった。

 

ベースボールの歌から

打ち揚ぐるボールは高く雲に入りて又落ち来きたる人の手の中に

いやあ、外野フライですね。しかし、のどかに楽しんでいる打者、外野手、そして歌人。

 

どの本に書いてあったのか失念していて申し訳ないのだが、「野球」という言葉も子規の考案らしい。しかも、“野”と“球(ボール”を合わせてノボール・・・升(のぼる)、つまり子規の本名だということだ。

子規は笑いが大好き。駄洒落が大好き。そうでなければ、秀吉以来最高の“ひとたらし”にはなれなかったのだろう。

 

ミットより熱砂へ突き出す指二本 風天


大いなる 高浜虚子(比歌句 49 左)

2018年08月10日 | 和歌

大いなるものが過ぎ行く野分かな 高浜虚子(たかはま きょし)

 

暴風に晒されたが、どうやら台風は過ぎ去るところだ。ひっきりなしに荒れ狂っていた風の音が、時折聞こえて来る程度になった。

そんな状況の中で、虚子は台風を巨大な生命体のように感じ、畏怖している。

<吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ>は、嵐が治まった後の挨拶だが、虚子は自分の安堵感を句にしたのだと思う。