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支流からの眺め

武漢コロナ感染症を巡る夏の議論(2)―なぜ日本で患者数が少ないのか

 日本では、総じてWARSによる感染者や死者数が少ない。欧米や南米などと比べると、1桁から2桁も少ない。残念ながら日本では7月から流行が再度強まっているが、まだまだ少ない。

この理由・要因はいくつか考えられる。
①検査適応の違い:PCR検査の適応を抑制的に運用したので、患者数が小さい。
②衛生習慣の違い:マスクや手洗いが習慣化しており、街も総じて清潔で、発語も余り飛沫を飛ばさず、接触して挨拶する習慣がないなど。
③行動抑制の違い:政府の呼びかけに従い国民が一斉に行動を自粛したように、質の高い行動抑制ができた。特に高齢者の行動抑制が有効に作用した。
④医療制度の違い:国民皆保険により病院受診は日常行為であったところに、公費による費用負担も図られたので、医療提供が円滑に行われた。
⑤抵抗性の違い:多くの日本国民が、このウイルスに対する免疫能や重症化しにくい体質的特徴を有していた。
⑥病原性の違い:流行したウイルスが日本と欧米とで異なり、日本のウイルスは病原性が低かった。

 ①(PCR検査数)は、第2波で重症者が増えないことから、死者数の差には関与していないだろう。②(衛生習慣)と③(行動変容)の社会的要因は、それなりに意味があると思われる。ロックダウンした海外と比べれば繁華街などは緩んで見えるが、それ以外の日常生活ではかなり自粛が徹底している。特に高齢者施設での予防的対応や高齢者自身の防衛意識が、重症者の発生を抑えるという点で貢献が大きい可能性がある。④(医療制度)の医療的要因は、日本の誇る保険制度の賜物かもしれない。治療費を恐れて受診しないというような事態は、日本では少なかっただろう。

 一方、流行が比較的軽いのは日本だけでなく東南アジア・オセアニア地域(A/O地域)全体に及ぶ。その地域全体に共通する理由が重要だろう。その点、日本として誇りたい②(衛生習慣)、③(行動変容)、④(医療制度)などは、残念ながら説得力が弱い。これらが不十分な国でも流行が抑えられ、逆に日本と同様でも流行が強い国もある。となると、1桁・2桁もの違いを説明できるのは、⑤(抵抗性)と⑥(ウイルスの変異)の生物的要因以外に考えにくくなってくる。⑤⑥いずれの要因も、もし存在したならば、それだけの差を説明できるだろう。

 機序は不明であるが、何らかの生物的要因が日本での弱い流行に関与している可能性がある。その解明がWARS流行の制御に重要であることは間違いない。

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