2011年6月22日 八重山毎日新聞 「社説」から
あす「慰霊の日」、沖縄戦の悲劇どう伝えるか
■海星小の平和学習
表題の「継続と積み重ね」は市内の私立海星小学校(石垣陽一郎校長、児童91人)が、毎年6月23日の「慰霊の日」を前に5月から行っている「平和月間」のスローガンともいうべきものだ。その通り同校は1964年の創立以来、40年以上も全校挙げての平和学習を行ってきている。
今年も5月26、27日に5年生が西表で一泊の平和学習を行ったのを手始めに各学年がそれぞれテーマを定め、戦争の怖さと平和の尊さを学んだ。1年生は読み聞かせや校内写真展を通して昔戦争があったことを知る。2年生は戦争体験者から話を聞き、戦争の大変さを知る。3年生は平和祈念館等の施設を見学して平和について学ぶ。
4年生は石垣島内の戦跡めぐりで平和の大切さ。5年生は前述の西表一泊で南風見田の忘忽石で戦争マラリアを学ぶ。そして6年生は沖縄本島で沖縄戦の傷跡や基地の現状を学んでいる。
22日は平和月間のまとめとして集会を開く。石垣校長によると、まさに「継続と積み重ね」で一人ひとりの子どもが6年間系統的に積み上げてきた平和学習の成果は、毎年の集会での発表に表れているという。
子どもたちはそれぞれ感想文をまとめているが、6年生はひめゆりの塔、韓国人慰霊の塔、平和の礎、宮森小630記念館、辺野古などを見学。「最初は修学旅行気分だったが、旅行の日程が進むにつれてガイドさんから話を聞いて戦争の恐ろしさ、悲しさがわかり、もう2度と戦争をしてはいけないと思った」と感想をつづっている。
特に宮森小の米軍ジェット機墜落事故は同じ小学生11人が犠牲になったこともあって、操縦士は脱出して生き残り、罪にも問われていないと怒りを見せ、防空壕(ごう)では赤ちゃんが泣いたら母親は赤ちゃんを殺さなければならなかったと日本兵への憤りも書いている。
■戦争をしてはいけない
一方4年生は、マラリア有病地帯の白水や石垣島事件などの戦跡めぐりをしているが、その中で3人の米兵が日本兵50人余に殺されたことが衝撃的だったようで「日本兵は悪い」などと戦争の怖さをつづっている。
子どもたちに戦争の悲惨さ、愚かさをどう伝えるかは確かに難しい。しかし、それでも伝えなければと学校の先生方や戦争マラリアを語り継ぐ会などが頑張り、「慰霊の日」を前にあちこちの学校で平和学習が開かれている。
海星小の子どもたちは「沖縄本島の人は基地に囲まれ、いつ墜落するかという命の危険と騒音でかわいそう」と普天間基地の移転も書いていたが、移転どころか、新たに事故が続発し危険といわれる垂直離着陸輸送機オスプレイが来年10月に12機配備される計画が示され、沖縄の願いとは逆行、ますます危険な飛行場に突き進んでいる。
■沖縄の願いと逆行
さらに宮古、八重山にも新たに自衛隊の配備が具体化、わたしたちの地域にまで軍事基地化が広がりつつある。
政府は普天間の国外移設に関し「国際社会に誤ったメッセージを送りかねない」と釈明しているが、自衛隊の先島配備は中台に誤ったメッセージにならないか。反対派が懸念していた原発の安全神話はもろくも崩れ去った。自衛隊配備の懸念はどうなるだろうか。
平和学習の教えがうまく伝わらず、この沖縄でさえ「軍備増強」を主張する人がいる。それだけに沖縄戦の教えを絶えず伝え続けなければこのような人たちがどんどん増え続け、この国の行方は果たしてどうなるだろうか。