雄吉は目の鱗が落ちたという比喩に適う両眼を、英次が妙に恐ろしい気がしたのでその風にばかり当てて行ったのだ。望んだ時がき、初めに喜び過ぎて面くらってしまったようである。が英次は何の頓着もせず、肩を接していて、親の緩慢な歩みを気づかうくらいだった。さらに英次は確かにこうも加えた。暗い舗道を街灯の必要を、それから今日の記憶を、物質性よりも精神性の大事さを。唖然と行く雄吉の尻目にしていうことは、妙子が知ればどうなることだろうかと雄吉の心配を、無論嬉々として舞わせながら、雄吉に要らぬ心使いをさせたくないと目の色に染めていて、何にもこだわらずに、
「話せる親子で、いつまでもいましょうよ」
「そうだな。車の話を楽しみにしている」
雄吉は涙が滲むと、妙子のことだ・・・・・・「今日の英次に、おかあさんは動転してしまうから」
「どうしてでしょう」
「あんまり仲のいいところを見るから」
「嫉妬して?」
「まさか」
と雄吉はそっくりの笑顔を見せあった。
(つづく)
「話せる親子で、いつまでもいましょうよ」
「そうだな。車の話を楽しみにしている」
雄吉は涙が滲むと、妙子のことだ・・・・・・「今日の英次に、おかあさんは動転してしまうから」
「どうしてでしょう」
「あんまり仲のいいところを見るから」
「嫉妬して?」
「まさか」
と雄吉はそっくりの笑顔を見せあった。
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