世間の男がむしろ常態にしたもの・・・・・・本能的に余所者を遠避けたい気分は、英次の場合には女性をその余所者にしたがった。要するに優れるまれ人が周囲に受け入れられない裏返しなのだろう、英次のあり方は。しかしそれは平和郷とも、競争社会の辿り行く果ての餓鬼が住む郷とも?・・・・・・とまさか考えるはずはなくて、南側にある噴水には日陰が訪れていた。それから、よく今日は三時間も水晶宮で働いた。英次は頭がすっかり疲れた。もう夏服の男女の若い女の腕には、妙子の腕を英次は思いあわせる。リュックをやおら背負いながらベンチを立つ。女の腕が夕顔のように仄白く、英次の帰巣本能を呼んだのだろうが、その後ろに従って行く。二人の肩越しに見あげると市庁のビルを夕焼けが渡っている。やがて反り橋を、<公園前>のバス停に出て行った。英次を迎えたのは、広い交差点の街頭に吐き出されてひしめく人車であり、寂しさを感じた反動に似て、
「戦争」
と英次は喜んでいった。戦争だな、ここはと加えてそう思うのだった。
(つづく)
「戦争」
と英次は喜んでいった。戦争だな、ここはと加えてそう思うのだった。
(つづく)
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