そういう女が、蜘蛛を打つよくしなう腕や華奢な胸の、その残影を男の頭の中に誘う。マンションの街の家路を見渡せば、ぽつぽつ帰る女やでかける女が増えてきている。男は目の端に家路を待ちながら、たどる気分がまだしない。小公園の若い母親らに魅せられたわけでもないが・・・・・・クモとなって家庭をふりかえるのもいいではないか。と目を再び殺し、耳はしばらく生かせていようと男は思った。ベンチに一層、身を屈めてみる。『おじさま、クモみたい』などとあの姪ならいいかねないだろう。あの若者にも、さらに妻子にもいわれかねないだろう。とにかく時間を遊ばせてやっていよう・・・・・・。
(つづく)
(つづく)
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