ウクレレとSwing(スヰング)音盤

Stringed Out (1971) / Ohta-San

ハワイ・Surfside Recordsからのリリース。70年代にはいっても同レーベルでの吹き込みは続いた。「Hawaii Five-O(SFS-107)」、「Ohta-San and The Surfside Strings」名義による「Love Story(SFS-108)」に続く本作(SFS-109)が同レーベルでの7作目という勘定になるが、恐らくは同レーベルでの最後の作品。

録音はハワイ、Commercial Recording Studio。プロデューサーはここまで多くのSurfside作品と同じく、Don McDiarmid Jr。ジャケット写真はサム・カマカ氏所有のビンテージ・ウクレレ・コレクション。アルバム・タイトルの「Stringed Out」には「(人・物を)ずらっと並べる」といった意味があり、それでこの写真なのだろう。

収録曲は以下

A1 My Sweet Lord    
A2 Jesus Christ Super Star
A3 Day Tripper
A4 Summer Knows
A5 Bridge Over Troubled Water
A6 Close To You

B1 He Ain't Heavy He's My Brother
B2 Imagine
B3 Never Can Say Goodbye
B4 Casa Forte
B5 Nikki
B6 Raindrops

本作でのサウンドのテイストは、かのCTI作品を彷彿とさせるようなセンスの良いジャズ/ロックにまとまっており、全体にエレピを中心とした小編成のエレクトリック・ジャズコンボ演奏がオータサンのウクレレをサポートする。曲目を見るとロック寄りの選曲が目につくが、ジョージ・ハリソンの「マイ・スイート・ロード」、レノンのソロ「イマジン」、ビートルズの「デイ・トリッパー」を取り上げていて、どうやら気に入ったのかオータサンはずっと後の2002年になって、ビートルズと元メンバーのソロ曲を集めた「OHTA-SAN PLAYS THE BEATLES」というCDを出しており、そこでもこの3曲をすべて再演している。ただ、その時代特有の空気感が醸し出すリアルタイムな感覚は本作ならではのもの。溌剌とした60年代のオータサンとはまた趣きの違う、落ち着きを備えジャズよりに洗練されたクオリティ高い作品に仕上がっている。

あの小さく素朴なウクレレという楽器たった1本で、鑑賞に堪える音楽作品をアルバム一枚分完成するだけでも並大抵の事ではないだろうが、オータサンはアイデアに行き詰まるどころか、時代ごとの流行やサウンドをさりげなく柔軟に取り入れながら、実に多彩な作品群を次々と生み出してゆく所が驚嘆に値すると思う。

ライナーノーツによればこの時代のオータサンはライブ演奏の方面でもハワイ中のナイトクラブで引っ張りだこだったようで、イリカイ、シェラトン・ワイキキ、ハワイアン・リージェント、クイーン・カピオラニと言った一流ホテルのラウンジから、JB'sグリルやウルマウ・ビレッジのフラタウンと言ったライブスポットまで、出ずっぱりだったようだ。まだ年若いが、いっぽうでプロとして充分な経験も重ねて充実した時期だったに違いない。この勢いに乗って、のちに「Song For Anna」の世界的ヒットをものにする事となる。



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