ウクレレとSwing(スヰング)音盤

I Want A Girl...(1976) / Cliff Edwards "Ukulele Ike"

カナダ・Totem Recordsから1976年リリースされたウクレレ・アイクことクリフ・エドワーズの戦前吹き込み音源の復刻コンピレーションLP。同レーベルは恐らく1971年のウクレレ・アイクが亡くなった後に数枚(確認できるだけで少なくとも3枚)同趣向のLPレコードをリリースしている。

原盤はすべて戦前の78回転SPレコード盤で、ウクレレ・アイクが初期のジャズソングを歌い、スヰング・スタイルのコンボ楽団がバックをつけるといったもの。こうした戦前アーチストの音源を辿れば、ジャズソングなるもの(一部はのちにジャズ・スタンダード化)が本来はアメリカの歌謡曲だった事が容易に理解でき、演者さん達の起源はボードビルとよばれる大衆芸能まで遡る。そこにはミンストレル・ショウという白人が顔を黒く靴墨で塗って黒人役を滑稽に演じた差別的な演目が含まれるため、今日のアメリカ芸能史ではタブー史される面もあるが、同国の豊潤なるポピュラー音楽の歴史をたどれば常に人種間の鬩ぎあいと異なる文化の化学反応こそがなくてはならない要素であり、その化学反応のマジックは今もなお続いていると言って良い。(こんにち多くの白人ポピュラー音楽の歌手は黒人のソウルシンガーのような節回しで歌唱する事がすっかり一般化した/ヒスパニック系など近年急増したエスニックの要素/等など)

ウクレレという楽器もまた、ハワイから持ち込まれたが何故かスヰングのリズムを誰でも容易に奏でる事が出来るという不思議な特性から、アメリカ本土ではハワイとは異なる独自の普及と音楽的発展を見せ、のちに本国であるハワイのミュージシャンにも逆輸入で多大な影響を及ぼした。

A1 I Want A Girl Just Like The Girl That Married Dear Old Dad
A2 Who
A3 For Me And My Gal
A4 Toot, Toot, Tootsie!
A5 When My Sugar Walks Down The Street
A6 I Want To Call You Sweet Mama
A7 Yaaka Hula Hickey Dula
A8 Good Little, Bad Little, You
A9 Somebody Stole My Gal

B1 Mandy
B2 Margie
B3 If You Knew Susie
B4 K-K-K-Katy
B5 My Little Girl
B6 Mary Ann
B7 Padelin' Madelin' Home
B8 Walkin' My Baby Back Home
B9 Sleepy Time Gal

ウクレレ・アイクに代表される大衆芸能出身のスターたちの活躍により、ウクレレは戦前ジャズソングのひとつのアイコンと化し、戦後に至ってもイアン・ウイットコムやジャネット・クラインに至るまで多くのアメリカ本土のアーチストに影響を及ぼし続けた結果、アメリカ本土のウクレレ愛好家の間では今日でもウクレレを抱えて戦前などの古い歌を歌う形がひとつの定番スタイルとして定着している観がある。


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