サブタイトルは「源氏物語異聞」。”あっち”の世と"こっち”の世に行ったり来たりで、文字で書かれているがまるで漫画を読んでいるような錯覚に捕われる。就職試験に58社も落ちた「俺」が源氏物語展のイベントのアルバイトをした。「千年の時空を超えて」というパンフレットに接し、「俺」は源氏物語の世界にトリップしてしまう。三流大学で就職もなく必要とされない”あっち”の世であったが、”こっち”の世では陰陽師として丁重に扱われる。”あっち”の世の「俺」の弟は京都大学の医学部合格の秀才、何かにつけて比較された。”こっち”の世の朱雀院と光源氏のようなもの…と物語は可笑しくて可笑しくて…。いやな現代若者語は出てくるし、ファンタジーやSFの好きでない私が面白く読めたのは著者が「源氏物語から大きく外れないように気をつけ弘徽殿女御コードで書いた」と言う…これに尽きる。