久しぶりに歯医者に行ってきた。
先日、熱海旅行の時に、被せてある歯がが取れてしまったからだ。
ついでに色々診てもらうことになった。
あっちこち身体にガタがきているので、口の中もご多分に漏れず、しばらく通わなければいけなくなってしまった。
子供の時から歯医者が大っ嫌いだった。
親につれられて行った歯医者の先生は、帽子と大きなマスクの間から覗く、鋭く冷ややかな目が強烈で、マスク越しのくぐもった低い声に、出てきた涙も引っ込むくらいの恐怖を味あわせてくれた。
そして、あの機械。
まるで拷問機具のような禍々しいフォルム。
脳髄にまで達するあの忌まわしい音。
あんな道具で人を痛めつけ、しかも金をとるなんて、歯医者という稼業はつくづく因業なものだと子供心に思ったものだ。
その体験がトラウマとなって、長らく歯医者嫌いだった。
二十歳になった頃、知り合いの紹介で、渋谷にあった美人女医先生の歯科医院に通った。
ぴしっと着替えて、入念に歯を磨き、髪に櫛を入れ、ルンルン気分で“拷問”を受けに行った。
先生の白衣からほのかに香る香水の匂い、美しい瞳で覗き込まれ、恍惚として苦痛を甘受した。
そしてだんだん歯医者が好きになっていった。
数年前に地元の歯科医院で治療を受けた時、かつての生理的恐怖はまったく感じなかった。
その医院は清潔で、手術室のような冷たい雰囲気はなく、設備も新しいせいか、あの拷問機具も随分スマートに洗練されていて、恐怖を匂わすものはほとんどなかった。
そしてなによりリラックス出来たのは、治療用の椅子(というより、ソファーベッド)の快適な座り心地だった。
歯を削るキュイーン、キ、キュキュイーン、という音が子守唄のように心と身体を弛緩させていき、いつしか眠りに落ちてしまった。
医師の呼びかける声に我にかえった。
「お疲れのところ恐縮ですが、眠らないようにしてくださいね」
苦笑まじりに言われてしまった。
リラックスしすぎて、どうやら鼾までかいていたらしい。
これが、いわゆるMに目覚めるということなんだろうか ?
それ以来オヤジは、歯医者さんの“拷問機具”が好きになった。
で、思い出す映画がある。
1986年の「リトルショップ・オブ・ホラーズ」だ。
「ロジャー・コーマン」作品のリメイク(オヤジ的にはこっちのリメイク版の方が好き)で、監督は「フランク・オズ」。(SWファンの方はお分かりですね。そう、あのマスター・ヨーダ様です)
舞台でも大ヒットしたから、そちらで知っている人も多いと思うが、お薦めのホラー・ミュージカル・コメディだ。
主要な登場人物の1人、ロックンロールでサイコな歯科医を演じる「スティーブ・マーチン」が、患者を治療椅子に括り付け、笑気ガスを嗅がせ、ついでに自分もひと酸いハイになって叫ぶ。
「say ahaa~!!( アーと言え !! )」
音楽も最高。
必見です。
まだ歯医者に恐怖を感じている方は、ぜひこの映画を見て、快適な椅子で映画のナンバーを頭に描き、医者からいわれる前に「あ~っ」といって身を委ねよう。
さすれば、たちどころにMな快感に目覚めることでありませう。
いけねっ、歯医者の予約すっぽかしちゃった !
いかねば、いかねば、いかねばの娘(知ってる人は知っている伊東四朗さんのギャグ)
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