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お好み夜話-Ver2

オヤジ生活安全課の取調室に入れられる

何年かに一度くらいの割合で登記簿謄本を取ることがあったが、自分の本籍をさほど気にすることはなかった。

 
住所はいろいろ移ったりしたが、本籍はかあちゃんと一緒になって以来変わっていない。
 
しかし現在、その本籍地に誰も住んでいないどころか家すら無くなったのに、相変わらず本籍をその場所にしているというのはどうかと思った。
 
まあ引き続き東京に住んで同じ区内を移動しただけなのでなんの不都合もなかったが、両親はとっくに亡く家も無いのなら、別にその土地にこだわらず現住所に本籍を変更しても良いんじゃないかと思ってしまったのだ。
 
 
調べてみたら同一地区・区内で変更する分には書類1枚書いて役所に出せばハンコすら押さずに手続きができるとわかり、転籍届をもらって記入した。
区役所の窓口で15分くらい待って手続きができたが、実際に新しい戸籍が取れるようになるまでは2〜3週間程度かかるとのこと。
 
手続きしてから❓と考えたのは、今後もし何か面倒くさいことが起きて戸籍を取らなきゃいけないときは、元の戸籍(除籍)と現戸籍の両方をとらなきゃならないと気がついたのだ、うへっ浅はか。
 
それに本籍を変更したら運転免許証も「記載事項の変更」ってやつをやっとかなきゃマズイだろうとさらに気がついた、うへっさらにめんどくせぇ。
 
しかし免許証の「記載事項変更」は近くの警察署で無料でヘロッとできるので、できたばかりの本籍記載の住民票を取って、なんらやましい事も賞罰も無いポンコツだから地元の千住警察署へ帰り道に寄ってみた。
 
 
千住警察にはこれまで何度か足を踏み入れていて、最初は昭和の良い子の頃、祖母や親戚からオモチャの刀や拳銃を買ってもらってたくさん持っていたのにもっと欲しいと駄々をこね、困った母親が「もっと買っていいかお巡りさんに聞いてみろ」と風呂敷に刀や拳銃を包んでこの良い子に背負わせて警察署まで連れて行かれたのだ。
 
母親としては「お巡りさん」といえばビビると思っていたらしいが、昭和の良い子はガンベルトに2丁拳銃をぶっさして母親に手を引かれ千住警察の門をくぐり、話しを聞いて呆れ顔の警官から「ボク、お巡りさんだって拳銃は1丁しか持ってないんだから、欲張っちゃあいけないよ」と諭されようやく納得して帰ってきたそうな、5、6歳の頃の出来事。
 
 
その次は18歳の時、当時千住市場の構内を休みの日に運転の練習場にしている人が多くいて、仮免の時にすでに免許を持っている人に隣に持ってもらい練習していたら前からパトカーが来て停められた。
 
市場の構内といえども道路だから無免許で運転しちゃアウトなので、そのままパトカーに乗せられて千住警察へ連れて行かれた。
 
当時の千住警察はポロっちい庁舎で、交通課も刑事課もおんなじ横並びのワンフロアにあって、強面の刑事たちがいる中でお説教をされて無罪放免になったのだが、その最中デカ部署の黒ずんだロッカーに拳銃がたくさん納められているのを見てたら、デカだか極道だかわからん顔つきの警官に「見ちゃダメだよ」と睨みつけられた。
 
 
それから数十年が経ち、実家で貸していた家に住んでいた身寄りのない年寄りが亡くなり、いつの頃からかそこに転がり込んで生活を共にしていた兄ちゃんもいなくなって、残った家財や僅かばかりの財産をどうしようかと親が悩んでいたらある日警察から電話があり、いなくなった兄ちゃんが近所のスーパーで万引きをして捕まったと連絡があった。
 
此れ幸いと弁護士同伴で留置所に面会に行くことになったのだが、不安だから一緒に来て欲しいと親に懇願され千住警察に出頭した。
 
弁護士同伴だから余裕をぶっこいていたら、2階の警務課の鉄扉が重々しく開いてガラスで仕切られた接見室と留置所の鉄格子が見え、扉と鉄格子がガッチャ〜ン‼️と閉められ、娑婆とお別れの感じが重々しく響き胸を打った。
項垂れた兄ちゃんは腰紐を打たれ、ガラス越しに弁護士との接見がはじまり、万引きは常習犯で親もなくあてにする誰もおらず、死んだ爺さんから引き継いだ家財一切は放棄し処分してもかまわないと書類にサインした。
 
場所も場所だしくら〜い雰囲気に息が詰まりそうで、場を明るくしようと空口を叩いたら、後ろを向いて接見に立ち会っていた警官の肩か震えて笑いを堪えているのが可笑しかった。
 
やっぱ人間、留置所とか拘置所とか刑務所なんかに入れられちゃうのはあまりにも切ないと、気が引き締まる出来事であった。
 
 
それから月日は流れ21世紀になる前、店をオープンしてしばらく経った頃、改装前の店舗は窓面が多くシャッターもなかったため、ある日窓を破られ泥棒に侵入された。
 
レジや引き出しが開けられ室内が荒らされた形跡があったが、金目のものは一切店に置いていなかったので侵入したヤツは何も取らずに出て行ったようで、すぐに110番したら千住警察から刑事や鑑識がやってきて、白粉みたいなのでポンポンはたいて指紋の検出を行ったりしてオヤジとかあちゃんの指紋もバッチリ取られた。
 
その時に来た痩せ型の刑事は「ヤマさん」、ゴツイ刑事は「チョウさん」と呼び合っていて、オヤジの脳裏に「太陽にほえろ!」のテーマがガンガン流れたのだった。
 
その後書類にサインしたりとかなんとかで再び千住警察に出入りした。
 
 
その他にも、モグランポのお好み焼弁当を気に入ってくれたお巡りさんがいたときは、お昼に20、30個とオーダーを頂きバイクで配達に行ったり、数年、数十年に一度くらいで千住警察に足を踏み入れていた。
 
 
ってことで、勝手知ったる⁇ 千住警察に入り受付で免許証の記載事項の変更手続きをし、ついでだから「古物商」免許について聞いてみた。
 
20年以上前はメルカリなんてものはなかったから、不要なものを売ったりするのにたまにフリーマーケットに参加していたが、そこで素人ではない古物商の方と話す機会があってなんだか面白そうだなと思い、古道具屋さんをやるにはどうしたらいいかと尋ねたら、最寄りの警察署へ行って申請するのだと教えてもらった。
 
で千住警察へ行ったのだが、時はブルセラだの故買屋などがまだ暗躍していた時代で、防犯係のその筋の人みたいな顔つきのお巡りさんに今ではNGな物言いで鼻から疑われ、当時はまだおデブで見ようによってはその筋の人っぽく見えてしまったオヤジはちょっと喧嘩腰になって警察署を後にしたのだった。
 
そんなことがあったのでずいぶん「古物商」のことは忘れていたのだが、最近ラジオで「独立系書店」の話しを聞いて、本が売れない時代に新しい古書店のカタチだなぁと思ったり、本と一緒に雑貨を売っていたりコーヒーが飲めたりする店があったり、こうでなきゃイカンという古い概念でなく自分が好きだからやる、自分が好きなものを他の人も好きになって輪が広がるなんていうのも面白いなぁとラジオを聴き終わってからちょっと調べてみた。
 
そしてまあ頭で色々考えるのもいいけど、とりあえずどうすりゃ古書店ができるのかといえば「古物商」の許可申請書(古物営業法施行規則別記様式第1号)を警察署に出して審査を受けなきゃならんということをピンと思い出したのだ。
 
受付で来場者のカードをもらって首から下げ、4階の生活安全課までエレベーターで上がった。
 
エレベーターの脇にこんな表示が掲げてあったが、
まあまあエレベーターに乗ってくるたくましい署員の皆さんがいた。
 
4回に着くと生活安全課があり、ここがもし新宿署だったら「鮫島警部」がいるかもしれないのになぁと思いながら中に入った。

すると柔道で耳が潰れたスポンジみたいになっている防犯係の刑事が出てきて、こちらへどうぞと一室へ手招きした。

その部屋のプレートを見れば、なんと!(◎_◎;) 「取調室」じゃあないか‼️
 
さすがにそこでスマホでパチリはヤバそうだから大人しく座り、向かいに座った壁のような体の刑事から説明を聞いた。
 
物腰は柔らかいけれど眼光するどく、20年ほど前よりは疑いの目で見られなくなったとはいえ根掘り葉掘り事情を聞かれ、そして結局警視庁のホームページから古物商許可申請のページを開いて必要書類をダウンロードしてくださいとプリントしたペラ1枚をもらって部屋を出た。
 
う〜ん、やはり昨今はネットでいろんな悪事が行われているからそこんところをずいぶん気にしているようで、申請書の「別紙様式第1号その4」の「電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供する方法を用いるかどうかの別」という昭和のお役所言葉のところが面倒くさいよなぁ。
 
 
とりあえず今はいろんなことを知っておこうという段階で、将来的に(将来がどのくらいあるかどうか怪しいが)「古物商」の申請をやるかもしれないということなのだ。
 
ま、思いつきだったとはいえ取調室に入れたし、勉強になったぜよ。

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