正式名称は、
「第四十二回賀茂別雷神社式年遷宮奉賛 世界遺産で舞い奏でる 葉加瀬太郎×梅若玄祥 JAKMAK」
らしい。
JAKMAKは“寂寞”らしい。
上賀茂神社でも式年遷宮ってやるんですね。
――で、その葉加瀬太郎と梅若玄祥のコラボを先日BS朝日で放映したんですよ。
これが良かったんだわ。
わたしは音楽をほとんど聴かない方なので、実際のところはよくわからないのだが、
異業種コラボで1+1が2以上になっていると感じるものはほとんどない。
即興演奏で、それがほんとに即興ならばまあさすがにプロだよね、と感じることは時々あっても、
作品としてそれが素晴らしいと感じることは少ない。
即興が即興であることのみに価値があるのではあまり意味がないと思う。
作品として優れている必要がある。
能とヴァイオリン。奇をてらった、無理な組み合わせだと思った。
わたしは葉加瀬が相当好きだが、そして能にも多少の興味を持っているが、
例によってその目新しさだけが売りってことになるんだろうな、と最初から諦めていた。
こういう斬新な組み合わせは、まあやってる本人たちは楽しいのかもしれないけどさ。
しかもそれに創作舞踊も組み合わせるっていうじゃない?
――わたしは創作舞踊をいいと思ったことはほとんどない。振付のための振付しか感じない。
ますます諦めていく。まー、葉加瀬も好みが俗だと言えば俗だしねー。
良く言えばポピュラー指向で、それが気取ってなくて美点ではあるのだが、
寂寞も幽玄もヤツには無縁だろうしさー。
能っぽくして形はまとまるかもしれないけど、そこにはヴァイオリンがなくても成り立つか、
あるいは能の舞がなくても成り立つか、そういうものしか出てこないだろうよ。
と、見る前の予想はどん底を走っていた。
そしたらなんで番組を見るのか、という疑問が湧くが、……まあ結局のところ葉加瀬太郎が好きなので。
作品には期待しないで、葉加瀬が楽しんでいるところ(つまりメイキング)を見ようかなあと。
そんなスタンスだった。
いつも葉加瀬のメイキング物はけっこう面白いんだけど、今回はいまいちだった。
葉加瀬と梅若、ダブル主役なので、どっちに近寄った取材もやりにくいんだろうね。
葉加瀬のアイディアで創作舞踊が加わり、ますます大崩壊の予感がひたひたと忍び寄る。
葉加瀬と梅若のどことないすれ違い、遠慮、ハードルがざわざわと画面に映し出される。
期待していたメイキングがつまらないのでは、本編はさらに見どころがないのではないか。
見るの止そうかなあ。
……と、思ったところ、これが!!
舞台は「翁」から始まった。これは普通の能。特に変わった演出はない。
それでも、梅若さんの声がとても心地よくて引きこまれたなあ。世界を引き連れた声というか。
倍音が多い。声の低さもちょうど。
2曲目がバッハの「シャコンヌ」。葉加瀬のソロのバイオリンと梅若さんの直面。
能は「隅田川」。梅若さんの真っ黒い笠と茶鼠色の衣装がなかなか素敵。
曲調と舞がとても合っている。お互い、どちらも脇役にならず主役にもならず……組み合わさった感があった。
コラボでちゃんと組み合わさった感があるステージが一体どれだけあるのか……
多分、実際はもう少し演目は多かったと思うのだが、テレビで放送した3曲目が「JAKMAK」。
葉加瀬作曲・演奏、梅若さんの舞に、島崎徹さん振付の創作舞踊。6人の女性ダンサーたち。
彼女たちの衣装は、神域で踊るのならばもう少し露出を少なくした方は良かったのではないか、と
微かに思うことを除けば、意外に曲にも梅若さんの衣装にもマッチしていた。
モチーフは腹巻のようですね。……腹巻というと普通は防寒用のものしか思い出さないと思うが、
この場合の腹巻は具足としての腹巻。色使いも超カラフル。舞台に違和感なく溶け込んでいた。
振付も良かったと感じた。無理やり感のない振付。
この舞台について、創作舞踊が果たした役割も相当に大きかったと思うので、
演出・振付をした島徹さんはちゃんとイベント記事に名前を出して上げて欲しい。
第一楽章は、繰り返しの多い、単調で地味な曲調。でもこういう音楽は踊りやすいと思う。
バイオリンの曲としてだけ聴いたとしたら多少退屈だろう。若干、葉加瀬にリスクあり。
いずれはCDなりになるんだろうから。
踊りも若い女性の露出多めの衣装でセクシーになるかと思いきや、むしろ力感を感じた。
地に足をつけた振付。能とバイオリンに対してちゃんと三角形を形成している。
バイオリンはともかく、能に対しては喧嘩をしないわけがないと思ったが……調和していた。
第二楽章は梅若さんも赤い衣装を着て登場。若々しく見えた。
ダンサーとの組み合わせも良くて、意外。
第三楽章はダンサーのみ。ちょっと激しいダンスになる。
第四楽章はメイン楽章らしい。
2人のダンサーと無彩色の衣装を着た梅若さん。面が……わからないが、痩男のような系統の。
ここは最初、音楽も無彩色な感じで、基調音だけが繰り返される。
現代語の謡が入る。これは多分創作で、内容は「生きるべきか死ぬべきか」のハムレット調。
……いや、それは違うか。“生は空しく、わが身をいかにせん”的な。
葉加瀬がしばらく経ってから、細い細いメロディを入れ始める。完全に即興だそうだ。
音同士じゃないから、雰囲気を掴んでしまえばそうそうびっくりするほどの失敗はないだろうが、
能と音楽がなかなかマッチしてましたよ。能の邪魔にならない、控えめな音楽。
こういうところは、ちゃんと目配りが利いた人じゃないと出来ない。
第五楽章は……女性の台詞(創作詩の朗読)が入るんだけど、
わたしはこれはどうしても蛇足だと感じたなあ。
途端に安っぽくなりませんか。第四楽章の謡は、大事なのは謡の雰囲気で、
言っている内容にはさほど重要性はないと思うが、
クリアな女性の声で「太陽が、花が、自然が……」というようなことを言われると
せっかくここまで来ているのに、とたんに中学校文化祭になってしまう。
他は大変良かったのだが。ここだけ。
最後の最後の少々コケた感があったのは残念だけれども、他は素晴らしかったです。
また葉加瀬のコンサート見たいなあ。……が、人気のある人のチケットは取り方がよくわからなくて……
見たいなーと願っているだけだろう。
「第四十二回賀茂別雷神社式年遷宮奉賛 世界遺産で舞い奏でる 葉加瀬太郎×梅若玄祥 JAKMAK」
らしい。
JAKMAKは“寂寞”らしい。
上賀茂神社でも式年遷宮ってやるんですね。
――で、その葉加瀬太郎と梅若玄祥のコラボを先日BS朝日で放映したんですよ。
これが良かったんだわ。
わたしは音楽をほとんど聴かない方なので、実際のところはよくわからないのだが、
異業種コラボで1+1が2以上になっていると感じるものはほとんどない。
即興演奏で、それがほんとに即興ならばまあさすがにプロだよね、と感じることは時々あっても、
作品としてそれが素晴らしいと感じることは少ない。
即興が即興であることのみに価値があるのではあまり意味がないと思う。
作品として優れている必要がある。
能とヴァイオリン。奇をてらった、無理な組み合わせだと思った。
わたしは葉加瀬が相当好きだが、そして能にも多少の興味を持っているが、
例によってその目新しさだけが売りってことになるんだろうな、と最初から諦めていた。
こういう斬新な組み合わせは、まあやってる本人たちは楽しいのかもしれないけどさ。
しかもそれに創作舞踊も組み合わせるっていうじゃない?
――わたしは創作舞踊をいいと思ったことはほとんどない。振付のための振付しか感じない。
ますます諦めていく。まー、葉加瀬も好みが俗だと言えば俗だしねー。
良く言えばポピュラー指向で、それが気取ってなくて美点ではあるのだが、
寂寞も幽玄もヤツには無縁だろうしさー。
能っぽくして形はまとまるかもしれないけど、そこにはヴァイオリンがなくても成り立つか、
あるいは能の舞がなくても成り立つか、そういうものしか出てこないだろうよ。
と、見る前の予想はどん底を走っていた。
そしたらなんで番組を見るのか、という疑問が湧くが、……まあ結局のところ葉加瀬太郎が好きなので。
作品には期待しないで、葉加瀬が楽しんでいるところ(つまりメイキング)を見ようかなあと。
そんなスタンスだった。
いつも葉加瀬のメイキング物はけっこう面白いんだけど、今回はいまいちだった。
葉加瀬と梅若、ダブル主役なので、どっちに近寄った取材もやりにくいんだろうね。
葉加瀬のアイディアで創作舞踊が加わり、ますます大崩壊の予感がひたひたと忍び寄る。
葉加瀬と梅若のどことないすれ違い、遠慮、ハードルがざわざわと画面に映し出される。
期待していたメイキングがつまらないのでは、本編はさらに見どころがないのではないか。
見るの止そうかなあ。
……と、思ったところ、これが!!
舞台は「翁」から始まった。これは普通の能。特に変わった演出はない。
それでも、梅若さんの声がとても心地よくて引きこまれたなあ。世界を引き連れた声というか。
倍音が多い。声の低さもちょうど。
2曲目がバッハの「シャコンヌ」。葉加瀬のソロのバイオリンと梅若さんの直面。
能は「隅田川」。梅若さんの真っ黒い笠と茶鼠色の衣装がなかなか素敵。
曲調と舞がとても合っている。お互い、どちらも脇役にならず主役にもならず……組み合わさった感があった。
コラボでちゃんと組み合わさった感があるステージが一体どれだけあるのか……
多分、実際はもう少し演目は多かったと思うのだが、テレビで放送した3曲目が「JAKMAK」。
葉加瀬作曲・演奏、梅若さんの舞に、島崎徹さん振付の創作舞踊。6人の女性ダンサーたち。
彼女たちの衣装は、神域で踊るのならばもう少し露出を少なくした方は良かったのではないか、と
微かに思うことを除けば、意外に曲にも梅若さんの衣装にもマッチしていた。
モチーフは腹巻のようですね。……腹巻というと普通は防寒用のものしか思い出さないと思うが、
この場合の腹巻は具足としての腹巻。色使いも超カラフル。舞台に違和感なく溶け込んでいた。
振付も良かったと感じた。無理やり感のない振付。
この舞台について、創作舞踊が果たした役割も相当に大きかったと思うので、
演出・振付をした島徹さんはちゃんとイベント記事に名前を出して上げて欲しい。
第一楽章は、繰り返しの多い、単調で地味な曲調。でもこういう音楽は踊りやすいと思う。
バイオリンの曲としてだけ聴いたとしたら多少退屈だろう。若干、葉加瀬にリスクあり。
いずれはCDなりになるんだろうから。
踊りも若い女性の露出多めの衣装でセクシーになるかと思いきや、むしろ力感を感じた。
地に足をつけた振付。能とバイオリンに対してちゃんと三角形を形成している。
バイオリンはともかく、能に対しては喧嘩をしないわけがないと思ったが……調和していた。
第二楽章は梅若さんも赤い衣装を着て登場。若々しく見えた。
ダンサーとの組み合わせも良くて、意外。
第三楽章はダンサーのみ。ちょっと激しいダンスになる。
第四楽章はメイン楽章らしい。
2人のダンサーと無彩色の衣装を着た梅若さん。面が……わからないが、痩男のような系統の。
ここは最初、音楽も無彩色な感じで、基調音だけが繰り返される。
現代語の謡が入る。これは多分創作で、内容は「生きるべきか死ぬべきか」のハムレット調。
……いや、それは違うか。“生は空しく、わが身をいかにせん”的な。
葉加瀬がしばらく経ってから、細い細いメロディを入れ始める。完全に即興だそうだ。
音同士じゃないから、雰囲気を掴んでしまえばそうそうびっくりするほどの失敗はないだろうが、
能と音楽がなかなかマッチしてましたよ。能の邪魔にならない、控えめな音楽。
こういうところは、ちゃんと目配りが利いた人じゃないと出来ない。
第五楽章は……女性の台詞(創作詩の朗読)が入るんだけど、
わたしはこれはどうしても蛇足だと感じたなあ。
途端に安っぽくなりませんか。第四楽章の謡は、大事なのは謡の雰囲気で、
言っている内容にはさほど重要性はないと思うが、
クリアな女性の声で「太陽が、花が、自然が……」というようなことを言われると
せっかくここまで来ているのに、とたんに中学校文化祭になってしまう。
他は大変良かったのだが。ここだけ。
最後の最後の少々コケた感があったのは残念だけれども、他は素晴らしかったです。
また葉加瀬のコンサート見たいなあ。……が、人気のある人のチケットは取り方がよくわからなくて……
見たいなーと願っているだけだろう。
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