プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 高橋秀実「にせニッポン人探訪記 帰ってきた南米日系人たち」

2023年11月19日 | ◇読んだ本の感想。
この人は最初に読んだ「弱くても勝てます」という開成高校野球部のノンフィクションが
面白く、これで3冊目なのだが、2冊目と3冊目はユーモラスなんだけどテーマが重い。

2冊目は「TOKYO外国人裁判」。
これも面白かったが、出口の見えない現状を教えられることで、気が滅入ってしまう。
今回も滅入るんだよなー。

ニセ日本人とは何かというと、ペルーから来る日系人の人々の中の話。
何年か(何十年か?)前に入管法が変わって、日本人の血を引いていれば
日本への入国が楽になったらしい。
書類さえ揃っていれば認められるので、ペルーでは偽造や書類売買が横行しているとか。

そして、本当に日本人の血を引く人たちは偽書類で入国する人を憎悪しているらしい。
その辺のことをいろいろ書いているんだけど、日本人の戯画化にも思えて、読んでてツライ。

本当にペルー人たちと働いていたんだよね。著者は。
潜入取材。潜入取材というとすごくセンセーショナルな内容であるイメージだが、
そこまで派手なことは起こらない。
ただ、ひたすらに滅入る話。文章がユーモラスだから読めてるけど、
これが深刻な文章だったらわたしは読めませんよ。

意外だったのはブラジル移民とペルー移民では状況が違うということ。
わたしなんかは南米に知識がないものだから、そもそも国の違いからして
よくわからないんですけど。

一番大きな違いは、元々、ブラジル移民は家族じゃないと応募出来なかったのに対して
ペルー移民は単身のみだったこと。
そして取材対象の一人が言っていたことだが、ブラジル移民は大農園主になることを
夢見て渡った人が多かったが、ペルーの場合は商業的――第二次産業というのか?が
目的だったこと。

たしかに。それが違うだけでだいぶ違うだろうなあ。
あんまり深掘りしてはおらず、それを読んだわたしも細かい内容を忘れているので、
その違いがどういう結果を生むのかということは書いてあったのかなかったのか
忘れてしまったが、違うだろうなとは思う。


この人はテーマは――まあ大きいんだけど、まとめ方はあくまで個人レベル。
それはいい意味で、だな。こじんまりとまとめているので読むのにしんどさがない。
これで大上段に構えて論じられては読むの大変だもの。わたしは読まない。

が、この人の文章はほのぼのしたテーマでこそ活きるんじゃないかと思うので、
今後の著作はテーマを選んで読んでいきたい。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 89ers、11月12日の... | トップ | ◇ 森見登美彦「太陽と乙女」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◇読んだ本の感想。」カテゴリの最新記事