宮城県美術館で、5月13日まで。
見に行った。だが見応えがあったかというと、実はあんまりなかった。
ま、けちょんけちょんに貶すほどでもない。
展示品の――数は来ていたし、それなりに興味深くもあった。
ヴェネツィアの歴史的風俗としてのエキシビなので、
「海の都の物語」なんかを読んでいるヴェネツィア好きが懐かしむ、あるいは憧れるという類ですな。
……しかしそれを美術館でやるというのは微妙。むしろ博物館ならば。
わたしはヴェネツィア好きなので、楽しかったことは楽しかったんだけどね。
初っ端に出て来る何枚かの壁地図は、世界各地どこでもありがちなものだけど、
特にヴェネツィアはその形状から、今でも空撮されることが多い場所柄なのて楽しい。
この建物が何ということがすぐわかる。時代ごとの細部の変遷も面白い。
16世紀だか17世紀だかの地図で、上空500メートルからの鳥瞰図と書いてあったようだが、
どういう方法で描いたのだろうね?
モンゴルフィエの熱気球は18世紀末……。まあ「別に天井にはりつかなくても描ける」と
妹尾河童さんも言っているので、実際高度500メートルに人が行く必要はないのかもしれないが。
コインが面白かった。知識があったらもっと面白かったろう。
銀貨はどれも立派で……これがざくざくあったら、たしかに「お宝!」という感じだなあ。
それでも小さな金貨の輝きにはかなわないんだろうけど。
工芸品関係もまあまあ。
マジョルカ焼きとかイスラムデザインの香炉とか。
背丈くらいの高さのキャビネットがあり(南ドイツ辺りで作られたの可能性が高いそうだが)、
装飾につけられていた紫水晶製のギリシア柱には「おお」と思った。
20センチくらいのミニチュアな感じのが何対も。
これには貴石モザイクもあしらわれていたが、これは若干下手。
もう少し石の選択をちゃんとしないと、風景がに見えない。
男性衣装の刺繍がとてもきれいだった。女性のドレスよりインパクトがあった。
しかし絵画作品には全体的な不満があるなー。
もう少しがんばりましょう、と言いたい。そのレベルが山ほどあるので最後の方は飽きた。
これでエキシビの印象が2段階くらい落ちた。数を揃えりゃいいってものでもない。
ヴェネツィア展っていうくらいだから、マイナーどころにしてもティツィアーノの一枚くらいは
来ていないとダメでしょうよ。ティントレットやティエポロ、ヴェロネーゼあたりとか。
ほとんどお土産品並みに数があるカナレットでさえ1枚しか。工房作品は他に2枚あるにせよ。
その中で、じっと見る気になったのは、ニッコロ・カッサーナなる人の
「ジャンバッティスタ・ドナ(コンスタンティノポリスのバイロ)の肖像」。
功成り遂げた人の普通の(背景のアヤ・ソフィアが通俗的)肖像画ではあるのだろうが、
でも人物が伝わる肖像画だと感じた。衣装の表現も良かった。
それから、カノーヴァによる女性画があった。
タイトルが「驚き」で、「むしろアンタがこんな絵を描いていたことが驚きだよ!」と
内心でツッコんでいた。彼の彫刻は神秘的だが、絵はひたすら可愛い。
マリー・ローランサンとか東郷青児を思い出した。
絵柄が似ているというほどではないんだけど。時代が妙に新しく見える。
実は、15時半頃入場したところ、お客さんがえらく少なくて。人影まばら。
そのおかげで、実に久しぶりにエキシビの空間を堪能出来ました。
静寂を楽しむ。……というには、空調の音がうるさかったんだけどさ。
なので、エキシビの内容には不満を持ちつつ、満ち足りた気分にはなった。
ヨーロッパの香りを楽しんで来た。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます