プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 宮部みゆき「孤宿の人」

2009年02月10日 | ◇読んだ本の感想。

いや、やっぱりすごいわ。宮部みゆき。
凄いとは言わないがすごい。


数年前に「ぼんくら」を読んだ時は本を置けなかった。最後まで夢中になって読んだ。
高校の時に「風とともに去りぬ」を読んだ時と同じくらいの夢中度。目が離せなかった。
こないだの「火車」は、巧いなあと思いながら読んだ。時々背筋がぞわっとするほど。
今回のこれは、夢中度は低かったはずなのだが……いつでも中断出来る気がしていたのに、
ついつい、あと1時間読もう、を繰り返し、結局上下巻一気読みになってしまった。

大筋のストーリーとしてはね、それほど「おおおっ!」って感じじゃない。
骨の部分は、ありがちとまでは言わないけれど……骨の鮮やかさで読ませる話じゃない。
やっぱりこの人の真骨頂は肉でしょう。旨味たっぶり。

要素の絡ませ方がなー。すごく巧いと思う。
まあ、モデルにした土地はあるそうだ。だからフィクションではあっても、
産業、藩医のシステム、土地の宗教感情、気象条件……その他色々、モデルの土地から
持ってきた部分はおそらく多いんだろう。どのくらいの割合かはわからないけれどね。
それでも巧い。この多くの要素を絡ませて、無理なく読ませる。なかなか出来ることではないぞ。


この人の力作には、つけたしの人がいないよね。それがすごい。
登場人物は、ページ数に対してみてもけっこう多めだと思うんだよ。が、たとえば八太郎の
お母さんのお菊でさえ、読後に存在を覚えていられるんだからすごい。
盛助だって、実は登場ページ数は、800ページ超の作品中せいぜい数ページなのに印象深い。
ううう。唸るしかない。

登場人物の造形自体には、そんなにそんなに突出した魅力はないんだけどさ。
最大公約数的。「この人好き!」というより「いい人だね」といいたい気持ち良さ。
……この部分もっと個性が欲しいという意見はアリだろうなー。
が、下手に突出しないのが宮部みゆきの良さでもある気がするので、わたしは別にかまわない。


売れ線の作家に偏見があるが、宮部みゆきには一目置かざるを得ないよ。
が、あえてモンクを言うなら、明石殿の「事情」にはもう少し驚かせてもらいたかった。
上巻の後半3分の1あたりはそれが最大の関心事なのに……どういう事情なんだ、と
ぞわぞわする感覚もあったのに。種明かしをされて、その部分はもうちょっと。
「こんなもんか」という肩すかし感はあった。

あとはアイツがなあ……
あんなことするヤツかなあ……
でもアレがないと話運びで崩れる部分もあるしなあ。
是か非かで言えば、非とまでは言えないけど、わたしとしては好きではないな。

それから一点、わたしがどうにも気に入らない部分がある。ここだけは残念だ。
これは非だと思う。こうする必要性はなかっただろう、宮部みゆきよ……。
はっきり言ってどっちでも良かったんだよ。ならば、ああはしない方が良かった。
お涙ちょうだい、と言われても仕方ないのではないか?



孤宿の人 上
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地元の市立図書館の一般文芸書の貸出ベスト30。実は、目下こうなってるんだよね。


東野圭吾 10
宮部みゆき 9(うち上下巻をそれぞれ1冊と数えたもの3)
伊坂幸太郎 4
桐野夏生 2
リリー・フランキー 1
横山秀夫 1
乃南アサ 1
劇団ひとり 1 
角田光代 1


こんな2巨頭体制はどーもキモチワルイ。



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2 コメント

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確かに (シーザー)
2009-05-14 15:01:21
その二人がいかにメジャーかという事になるんだろうけど…。
かえって借りたくなくなるのは私が逆ミーハーだからですかね。
孤宿の人、私はとても好きですわ。お涙ちょうだいと思えるのはやっぱりラスト近くのアレですよね。
私も泣いてしまいましたが。
しかし本当に巧い!
久々に、もうすぐ読み終えちゃう!と、終わるのが惜しい本でした。
あぁ、私にとって興味深い本を絶えず読んでいたいです。
返信する
Unknown (umeko)
2009-05-16 00:47:09
いらっしゃいませm(__)m。

しかし多数派の多作家が好きである分には、
色々シアワセなことが多いと思いますけどね。
新刊がコンスタントに読める。
周りに同好の士がいて盛り上がれる。
人気作家だからといって偏見を持ってはいかんと自戒しています。
……ちょっと成功していないところがあるけど。

わたしは7、8年くらい前から、課題図書リストを作り始めました。
それまでは図書館に行って、タイトルのみで選んでいたんですが、
そうすると借りたい本がなかなか出現せず、
とてもイライラするようになりまして。

ネット上(口コミでもいいですが)で、面白そうだと思ったものをメモしていって順番に読む。
そうするようになってから、多少は勝率が上がりました。
それまでは、初めて読む本に「まあまあ」以上の評価する確率は、
15%位(数字に根拠はナイ)だったのですが、
現在の所は55%(一応数字に根拠あり)まで上がってきました。
これくらいだと何とか徒労感なく新しい本に手が出せます。

わたしが最初の叩き台としたのはココ↓

http://www.webdoku.jp/

書評本だと大抵一人の書き手のお薦めなので偏りますが、
このサイトは色々な人がいるので、好みが一致する人に出会える可能性はあるかもしれません。

わたしは98年5月分までチェックした段階で課題図書が千冊超えたのでちょっとお休み(^_^;)。
早く追いつきたいんですけどね。

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