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本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< 昭和元禄落語心中(アニメ) >

2024年10月31日 | ドラマ。
期間限定で全話やってくれてたので見た。ありがたいことです。

2018年の実写ドラマは見た。まあまあ印象はいい。
役者たちも落語がんばってたしね。
でもまあ、芸としての落語というか、語りはアニメの圧勝でしょうね。
比べるものではないですか。

本作は本当に声優さんの芸を味わえました。ここまでの作品はなかなかない。
関智一と石田彰はちゃんと作品を見たの初。
山寺宏一は銭形警部以外でじっくり聞いたの初。
林原めぐみも灰原以外初。多分。

今や押しも押されもせぬベテランたちですが、6、7年前は……まあ当時もベテランだが。
彼らが能力を存分に開放して、多分苦労して取り組んだ作品だと思う。

震えたのは、気が乗らない時の落語から、だんだん興がのってくる落語に移行するところ。
下手から上手になっていくところ。
ここの微妙な段階というか、グラデーションがねえ。
演者もすごいが、それを要求してジャッジした演出もすごいわ。訳わからなくなるよね。
すごい。



こういう話をアニメにしてくれた有難味は重々感じている。
クオリティも高かったと思う。

――が、それはそれとして、実写もそうだがアニメを見ても、
根本的な話のバランスの悪さは解消されなかったんだよなあ。
ここがすっごい気になる。

これは元々のマンガからそうなの?それともマンガは上手くいってるのに、
アニメ・実写の組み立て方が下手だったということなの?

せっかくいいものを描いてるのに、力の入れ処が中途半端というか。
要素としては、
1.助六と菊比古の愛憎と友情
2.みよ吉と菊比古の愛憎、助六を含めた三角関係
3.与太郎の話

このバランスがねえ……

うーん。与太郎→回想→与太郎って流れは変えようはないのかなあ。
与太郎はたしかに救いであり、ハッピーエンドに導いてくれる人物だが……
プロローグ、エピローグとするにはちょっと与太郎の比重が大きすぎるのよね。
与太郎パートを最後に固める方が自然だったのではないか。

回想で、誰が誰に語ってるのかってところが納得できないのよね。
まあ、誰ともつかない読者に当ててるんだろうけど。
これは回想として描かれるより、現在形の話の方が自然だったんじゃないかな。

菊比古が師匠の家に連れられてくるところから始まる。
助六との葛藤。
みよ吉との葛藤。
居なくなって、迎えに行って、心中。
小夏を連れ帰る。

……その後から与太郎が出て来ても仕方ないかなあ。
与太郎ってハッピーエンドに導く役柄ってだけで、特に重いエピソードがないから、
後から出すと感情移入出来る要素がないのよね。
そしたら与太郎をむしろ出さずに、小夏のエピソードを深めた方が、
話としては納得出来た気がする。小夏と八雲なんて作ろうと思えば
親子二代の因縁があるんだから、いろいろ創れたと思うよー。

むしろ小夏が話のなかでこの程度の扱いで終わってしまうのがやはり
バランスが悪いと感じる。

小夏が助六を継ぐという話でも良かったんだから。
まあ女性が大名跡を継いだ例はないだろうが、将来的には開放方向にいくだろうし、
フィクションでそっと後押しをするのはありだと思う。
まあそのためには女性声優さんにも落語をみっちりがんばってもらわねばならないけど。

もっと素直に一人息子を残したって話なら簡単なのよ。
そうなるとちょっと月並みすぎますね。助六と娘の組み合わせの方が絶対雰囲気あるしね。
しかも女の子を育てるのと男の子を育てる苦労は、
特に菊比古にとってはだいぶ差があるし。

与太郎の存在が無理くりだったね。話の中心がずれてしまった。


あと、みよ吉の心情をもっと深く描いてくれたらと思った。
みよ吉は、自分のために菊比古が迎えに来てくれたと思ったんだね。
それをずーっと待っていたんだね。そこにもっと焦点を当てて描いてくれてたら。
そうしたら3人の関係も美しく……なったかどうかはわからないが、
もっと切なくはなったと思う。現行のみよ吉ではあんまり共感出来ないんだよね。

与太郎の軽みや明るさは良いキャラクターではあるんだけど。
単なる弟弟子にとどめておいて、後半は小夏のストーリーを作ってあげて欲しかった。
与太郎ではなく。

とはいえ作品として面白かったし、なにより声優さんのすごさを感じたので、
今回期間限定の公開で見せてくれたことに大変感謝しています。
どうもありがとう。



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