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本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 桜庭一樹「私の男」

2019年07月07日 | ◇読んだ本の感想。
「赤朽葉家の伝説」が初桜庭一樹で、ダメだろうと思いながら読み始めて思いのほか良かった。
なので、本作はそのプラスのイメージから読み始め、……これはダメでした。

わたしはそもそも背徳的な話は受け付けない。
これ金新創刊の話でしょう。――って、なぜ「きんしんそうかん」と打ってこんな変換だ?
「きんしんそうかん」で近親相姦くらいは出して欲しいぞ。
それを延々と書いているので、その時点でもう読みたくないわけですよ。

まあ内容が嫌いということはおいといて――というより、内容が嫌いということも踏まえて。

まずは句点の打ち方が気になった。
この人、句点が多すぎませんか?わたし自身も、ともすると句点が多くなってしまう方だが、
句点が多い文章って下手くそに見える。

そして冒頭の描写もなんというか…たどたどしく感じる。
子どもが精いっぱい背伸びしてそれっぽく書こうと思った感じ。
直木賞ははるか昔に「王妃の離婚」で見限っているわけだが、これもねえ。

紋別の描写は、作者に縁もゆかりもない土地のことを書いたのであれば、お手柄。
思い入れたっぷり。この部分を評価するかどうか人それぞれだと思うが、実在の土地を
あのくらい美しく書けるのは美点だと思う。
ただ紋別の実際の住人が全くノレないのであるなら、それは単に美化だが。
それはわたしが紋別の人ではないのでわからない。

大塩のおじいちゃんも流氷に乗せられたままになっているかなあ。
ここは実際を知らないけど、流氷へ向かって突き飛ばして(本人にその意思がないのに)
届くほど、高校生の女の子に力があるかなあ。

田岡さんを殺して押し入れに入れといたら、近所の人が臭いに気づきますよね。安っぽい集合住宅。
一戸建てならまだしも。

何よりも全体的な問題点2つ。

現在から過去にさかのぼっていくのが新しい、とされたわけだけど、
それが効果的だとは感じない。だって最初の章と最後の章で、
二人の関係性も二人の性格も何も変わってないんだもの。

そりゃ、最初の章は結婚して淳悟とは離れたい。でも離れられない、とはなっている。
最後の章は結びついた頃の話だから絶対離れたくない。とはなっている。
でもそれって書いてあるだけでさ。離れたくないという主体(この場合「花」)が
成長なり変化しているからこそ考え方も変わってくるもんなのに、
25歳の花も9歳の花も、高校生の花もみんな同じだよね。そのまんま。
人間少しは変わるもんだと思うんだけど。

もっと致命的なのは、章ごとに視点人物が変わるのに、
小町さんと花の章、これもほとんど同一人物なんだよなあ……
小町さんと花は立場も違えば年齢も性格も違う筈なのに、小町さんが成り行き上、
状況解説のために説明的台詞がだいぶ多いにしても、口吻が一緒。
これはダメだろうと思った。

同じことを大江健三郎の何かを読んだ時にも思った気がする。
同じ人が書いているにせよ、登場人物が書き分けられなかったらダメですよね。

不愉快な内容にもかかわらず、殺人事件の方で追いつめられてどうにかなるんだろう、
と思ったので、とりあえず結末まで知りたくて読んだ。
しかしけっこう長い小説を、ほぼずーっと近親相姦しているだけだった。
こりゃダメだわ。

さて。次の3冊め、これで続けるか止めるか決めたいと思います。いや「製鉄天使」は読もうかな。
これは気に入った「赤朽葉家の伝説」のスピンオフだろうから、大丈夫だと思うんだけど。









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