プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 森見登美彦「恋文の技術」

2014年12月27日 | ◇読んだ本の感想。
これって「四畳半神話大系」と同じ世界の話だっけ?と思うほどキャラクターに既視感。
実際のところどうでしたっけ?まあどっちでもいいんですけどね。この人の話は、全部同じ世界の話でも。
売りはそこではない気がするし。

いや、なかなか面白かったですよ。
わたしはこの人の文章を高く評価するが、今回は作りも面白かった。
書簡体文学。――というほど文学ではないか。どっちかいうと芥川賞ジャンルだとは思うけどね。

書簡体文学というと、イメージとしては相手は一人という気がする。そうでもないのか?よくわからん。
この小説では相手は大勢。この相手の設定が絶妙だなあ。

腐れ縁的な親友(?)。
研究室の大姐御。
家庭教師の教え子の小学生。
作家・森見登美彦。(←主人公の研究室の先輩という設定)
妹。
片思いの相手。

12章あって、章ごとに相手が変わるので、概ね二回りくらいするのかな。
相手が違うので当然微妙に文体も変わり、同じ出来事を書いても光が当たる場所が違う。
まあ書く内容は同じものにならざるを得ないわけですよ。何しろ手紙だから。
代わり映えのしない日常生活の出来事をつづるわけで。主人公は地味な暮らしをしている人だし。
(いや、地味なわりにはハデなのか?おっぱい上映会とかね。)

だが、同じ出来事が何度も角度を変えて出てくることで、立体的になる。
――この人は、基本的に“何を書くか”の人じゃないからなあ。”どう書くか”の人なわけで。
素材はわりとどうでもいい(と言ったら、呻吟している本人に殴られるかもしれないが)。何を書いてもいい。
傾向としてパラレルワールド志向なんだろうねー。「四畳半」もそうだし、今回の作品でも、
同じ出来事を何通りにも書いてる。書きたいんだろう、本人。アレコレと。
「四畳半」では少々飽きたけれども、相手の違う書簡文学ということなら読みやすかった。
話をパラレルにする意味はあるわけだし。




恋文の技術 (ポプラ文庫)
森見 登美彦
ポプラ社 (2011-04-06)
売り上げランキング: 10,310




……ええっ!この人まだ35歳!?(驚愕)




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