プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 恩田陸「月の裏側」

2012年06月22日 | ◇読んだ本の感想。
この話でどうしてこのタイトルなのか理解に苦しむ……
しかし恩田陸を理解するのはそもそも困難なので、それはそれでいいか。

得意の民俗的ホラーから始まって、着地点はSF?かなー。
途中はコワくて、ホラーが苦手なわたしはコワイよー、コワイよーと思っていた。
だがホラー好きがホラーとして読むには、最後がコワくないかな。
あまりにも結論がない終わり方なので。あれ?こうする?と肩すかし。
ま、いつもの……典型的な恩田陸的奇妙さではある。

彼女は場所に触発される人なんだろうなあ。
舞台は箭納倉という名前の柳川。桐山白秋と呼ばれる北原白秋もちょっとしたモチーフになっている。
ここまでするならいさぎよく「柳川」「北原白秋」とせいよ、と思わないこともないが、
書いてるもんがとことんファンタジーなので、それも本人としては気になるんだろうな。
堀、水路が重要な話なのでやはり水郷である必要があるし。


こういう話だと思いだすマンガがある。
那須雪絵の「ここはグリーン・ウッド」の番外編作品「ウはうふふのウ」。
これはタイトル的に「ウは宇宙船のウ」のパロディだろうから、
この2つの作品、元ネタはブラッドベリなのかな?
ブラッドベリは何作か読んでいるが、「ウは宇宙船のウ」は読んだことがないのだ。
融合物です。ジャンルとして融合物というのがあるかどうか知らんが。

しかし普通の書き手なら、融合されるかされないかという部分をサスペンスフルに書くのが普通だよね。
恩田陸はそこから……どっちやねん!というところまで書くからヘンだ。
まあ得体の知れなさが身上の人ですよ。
でも高安さんがあんな反応をし、藍子さんがあんな反応をする、
協一郎さんはどんな反応をしたのか今ひとつわからず、というのはあまりにもとりとめがないような。
多聞さんがああいう反応なのは、実に彼らしいけれども。

藍子さん部分が普通すぎてむしろ違和感があるんだよな。
そして全体からみて、最終盤の藍子さんの比重が大きすぎない?
彼女に急にクローズアップするから、バランスが崩れていると感じた。
まあ恩田さんにバランスを期待するのが間違ってるけどさ。
多聞さんのあっさりぶりで話を〆て欲しかった。協一郎さんの冷静さでもいい。



恩田陸を面白い!とはわたしは言えないのだが……
気になるという意味では相当気になる。何をしてくれるのか怖いもの見たさで見守っている。
ツブしている最中だが、……多作な作家なので先は大変に長い。
わたしが2、3冊くらい読む間に1冊出すのではないかと思うほどだ。
いや、冗談じゃないな。年に4冊くらいは平気で出しそうだもの。




月の裏側 (幻冬舎文庫)
恩田 陸
幻冬舎
売り上げランキング: 53035




そして文庫の表紙は藤田新策。ホラーといえばこの人、というのは何かの法律なのか?
まあいいけれども。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« < 日の名残り >(テレビ... | トップ | ◇ 小堀杏奴「不遇の人 森鴎... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◇読んだ本の感想。」カテゴリの最新記事