プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ ピーター・メイル「南仏プロヴァンスの12か月」

2012年03月27日 | ◇読んだ本の感想。
言わずと知れた……と言っても発行は1993年だから、もうふた昔前ですなあ。
これが相当に流行ったことを知らない人も多いだろう。
流行ってたんです。しばらくの間本屋で平積みになっていた。
この本の人気に追従して、プロヴァンス関係の本も当時ずいぶん出てたな。

読むのは今回が初。面白かった。
……が、自分の偏見のありかを思い知ることにもなった。

途中までは、引退したイギリス人の大学教授というようなイメージで読んでいたんですよ。
少し偏屈で頑固、礼儀正しいが実は皮肉屋。
だが本の半ばくらいで、著者の前身がバリバリの広告マンで年齢も50歳前後であることを知る。
……そうすると正直、趣が30%くらい減りました。
がちがちのイギリス男が書いたと思うから味わいがあったのになあ。
広告業界の人間では……

わたしは、マスコミ出身の文筆家に偏見がある。
結局のところ、彼らは毒にも薬にもならないようなことしか書けないのではないかと。
もっとはっきり言えば軽薄。だって仕方ないでしょ、マスコミにあるのは現在だけだから。
今を追いかけていくことが仕事なんだから。そして大衆に迎合する必要性。

ま、言いがかりですけどね。読み手の読みたい物をちゃんと書くという意味で、
彼らはプロですよ。そういう書き手がいなかったら、世の中の文字の少なくとも半分は動かん。
(実際は多分9割くらいを商業的な書き手が占めていると思う。)
が、そういう文章はやはり旨味が少ないんですよね。何度も読もうという気にはならん。

でもこの本は、多分途中で作者についての余計な情報が入らなかったら、
最後まで気付かなかっただろうな。もっとも、訪ねてくる友人のタイプで「ん?」とは
思ったかもしれないが。
まあ公平に言えば、適度な諧謔と適度な礼讃、読んでいて楽しい本でした。


職人・隣人たちの部分が一番楽しい。
個性的な面々。未知なる人としてつきあっていくには少々癖がありすぎるのではないかと思うが、
著者が皮肉と共感をバランス良く盛り込んでいて、魅力的な人々になっている。
次に料理の部分が楽しい。
南フランスに行ったからといって同じものが食べられる保証はない
――それゆえ、食べたい!という心はそれほど盛り上がらないのだが――
まあ目の前にこういう料理が並んでいたら幸せかも、とは思うね。
値段も格安らしい。だが、この本はユーロではなく、当時流通のフラン単位で書かれているので、
……フランっていくらくらいだっけかね?たしかわたしが一度行った時は1フラン=20円
くらいだったかなあ……今ひとつその安さが実感出来ない。



南仏プロヴァンスの12か月 (河出文庫)
ピーター メイル
河出書房新社
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この人のプロヴァンス本は何冊も出ている。
飽きるまでは読んでみる。何冊も続くと、いずれは商業本になっていくんだろうな、
という懸念を捨てきれない。
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