2007年に発表された論文によると、思春期を迎えた子供は「ものをたくさん持つことこそが幸せである」とする物質主義的な志向を示す可能性が高くなるという。
また物質主義的な志向は思春期が過ぎると低下し、思春期の子供の自尊心を向上させる取り組みを行ったところ、同じく物質主義的な志向が低下したという。
このことは、人間は自尊心が低くなると物質主義的な志向になるという1つの証拠にもなりうる。
自尊心が低くなることで、自己正当化や比較による自己強化への欲が極端に強くなり、物品というわかりやすい指標を用いることで自尊心を埋めようとするのだそう。
ブランド物を「ブランドがついている商品だから」という理由で購入し周りに見せびらかす人は、まさしくその例だろう。彼らはブランド物という誰にでもわかるすごいものを買い、『すごいものを買った自分』を他人に評価してもらうことで自尊心を補っているのだ。
なお思春期に物質主義的な志向に傾倒しやすくなる理由は、思春期が『自尊心が著しく不安定になる』期間だからなのだそう。
また、物質主義的な志向には1つ弱点がある。
人間には『慣れ』という機能を備えており、たとえどれだけ素晴らしいものを手に入れたとしても、かなり早い段階でその素晴らしいものに慣れ幸福感を感じられなくなる。
そうすれば幸福感で埋めていた低い自尊心がまたむき出しになり、それを埋めるためにまた素晴らしいものを買って……と、売り手にとってはこれ以上ないくらい最高なループが発生してしまうところだ。
ーーー「俺はお前が持っていないような、すげぇものを持っている!」
そういって前見せてくれたのは高級時計だったな。
今日はあれとは違うものを持ってきたらしいが、あの時計はどうしたんだ?
まさか、あの時計に飽きたから売却して、そのお金で別のものを買った、とかじゃないだろうねぇ?
参考文献
Lan Nguyen Chaplin, Deborah Roedder John (2007)Growing up in a Material World: Age Differences in Materialism in Children and Adolescents.