吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

パパと娘

2009年04月09日 | 家族
息子の次は娘の番

フテ寝していたりーちゃんも夕飯のために起きてきたので、話が出来ました。
今回は自ら頭を殴りながら泣き叫ぶというかなり激しいものだったそうです。
まだむくれているりーちゃんに話かけました。

「どうしたの?」
「にいにがイヤなこと言った」
「そう。なんて言ったの」
そこから娘の長い説明が始まります。
こちらはちゃんと家内から事前に注意事項を受けてあります。
それは、りーちゃんは典型的な女の子型、いわゆる共感型なので、とにかく相槌を打って話を聞くことが大事だということです。
他人の愚痴を聞くのが嫌いな僕はこういったタイプの女性とは深く関わらないことにしているのですが、我が娘となれば仕方ありません。
家内も、もちろんそういうタイプではないので、とりとめもない愚痴を語り合うのは嫌いです。

「りーちゃんがー、にいにがー、テーブル片しなさいってママが言ったのにー、してないからー、注意したのー…」

ああ、まとまりのない言い様、しかも最近の若い子口調になってるよ。学校じゃきっとそんなふうにしゃべってるんだろうね。
途中、突っ込みたいのをぐっと堪えて、
「ふ~ん、そうなんだ。それはにいにが悪いよね」
とひたすら相槌に徹します。

記憶を反芻した娘の目から涙が出ます。

まだまだ。

やがて彼女の語気が落ち着いてきたところで、切り返します。
「でもね、りーちゃんのその言い方はあんまりなんじゃない?自分がそう言われたらイヤでしょ」
「…うん」

「その言い方はちょっといじわるだとパパは思うぞ。ほんとはちょっとマズかったって思ってるでしょ」
「…うん」

「にいにのこと大好きなのに、ついいじわるなこといっちゃうんだよね」
「…うん」

よっしゃ!橋頭堡確保!ここを押さえればこちらのものです。

彼女が兄に絡むのは、かまって欲しいからです。
それで、しつこくいろいろ言うのですが、それは大抵、皮肉や意地悪な言葉として出てきます。
基本にあるのは、にいにが大好きと言う気持ちなのですが、一度こじれると自分でそれを認めることが出来なくなります。
なのでまずは、その基本的な気持ちを自覚させるのですが、手順とタイミングを間違うと
「そんなことない!大っきらい」
となってしまいます。まずは十分に気持ちを落ち着かせてから、慎重に踏み込みます。

「あのね、どうしてかよくわからないんだけど、大好きな人に意地悪したくなっちゃうことってあるんだよね。パパも昔そんなことがあったよ。りーちゃんもどうしてにいににいじわるしたくなっちゃったかわからないでしょ?」
「うん」

「だけどね、ついそうしたくなっちゃうけど、やっぱりね、好きなひとには優しくした方が良い。そう出来るようにちょっとがんばってください」
「うん」

「わかったね」
「うん」

なあに、わかっちゃいないさ。
好きなひとに素直に優しくするのはとても難しいことよ。
ヘタすりゃ大人だって出来ない。
僕らはこんなやりとりをまだまだ繰り返さなきゃいけないんだな。

素直とひとことで言っても、自分自身の何に対して素直なのかで、結果は全然違ってきます。
その場の自分の感情に素直なのか、自分の理想に対して素直なのか、激情のりーちゃんは苦労するだろうなあ。
自分で自分を殴るように、自分を傷つけて苦しめてしまうんだろうなあ。
せめてその傷の深くないことを。

子供達は何事も無かったかのように、風呂上りで裸で騒いでいます。
「ゴルァ!てめえらさっさと服着ろ!」

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