吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

夢の裏側の異邦人

2010年11月05日 | 自分のこと
「3つの別れ」最終のさいたま公演に入ります。

舞台、照明、音声の調整を暗い舞台の袖で眺められるのは関係者特権です。
僕がよく関わるコンサートの場合、今回のようなダンスや演劇ほどには照明や音声は重要ではありません。
独特の黒装束のスタッフ達が舞台空間を作り上げていく様子はなかなかにエキサイティングです。
僕は舞台という夢の空間の裏側に存在するのですが、直接深く関わるわけではありません。
そう、僕は夢の裏側の異邦人なのです。
無関係ではないけれど部外者という位置関係かな。

思えば中学時代からそんな感覚を感じることはよくありました。
昔はわりと目立つ方だったので、学校でのイベントでは中心になることがありました、当初は。
やがて、皆が盛り上がると何となく離れた位置で冷めた目でそれを見ていたりして。
別に望んでそうしたつもりは無くていつの間にかそうなっていたような。
集団に入れぬ疎外感のようなもの、あの頃はそれが寂しかったものですが、今では心地良いです。
がんばっている人たちを見つつ僕は自分の領分のことだけを淡々とこなします。
僕らは大人でプロ同志ですからね。
互いに無関心なのではなく信頼して委ねているわけです。

僕は僕の仕事をしっかりしましょう。
ん、演奏者(ベルギー人)から楽器の不調の知らせが。
なにしろ100歳ほどになる楽器ですからね、ちょこちょこと調子を見てやらないとね。
金管楽器、木管楽器、弦楽器(ピアノを含む)、これらは発音体そのものが交換可能なのですが、ハーモニウムを含むオルガン族は発音体の交換は不可能ではないけれど、その楽器のアイデンティティーそのものなので交換は最大限回避すべきことなのです。
それゆえ修復は古い発音体をなだめすかして何とかバランスを取ることであって、安定性の不安、不確実性は避けられないのです。

「もし時間があったら調整を…」
ふっ…。何をおっしゃるお正月(翻訳不能)。私はそのためにここに居るのだよ!
まっかせなさい!(キリッ☆

最新の画像もっと見る

コメントを投稿