私は普段はビジネス書はほとんど読みませんが、ペイパル・マフィアのボス、ピーター・ティールが書いた「ゼロ・トゥ・ワン」は名著だと思っています。この本で彼はベンチャーキャピタルの「べき乗則」についてかなりの紙幅を割いて説明しています。
(引用)
・1906年、経済学者ヴィルフレド・パレートは「パレートの法則」、いわゆる「80−20の法則」を発見した。2割の国民がイタリア国土の8割を所有していることに気づいたのだ。自分の畑のえんどう豆のさやの2割から8割のえんどう豆が生産されているのと同じ現象だった。ひと握りのグループが、残りのライバルをはるかにしのぐというこのパターンは、自然界にも人間の社会にも見られる。
・ベンチャーのリターンは正規分布ではない。むしろベンチャーに当てはまるのはべき乗則だ。一握りのスタートアップがその他すべてを大幅に上回るリターンを叩き出す。だから、分散ばかりに気をかけて、圧倒的な価値を生み出す一握りの企業を必死に追いかけなければ、その稀少な機会をはじめから逃すことになる。
・僕たちが住んでいるのは正規分布の世界じゃない。僕たちはべき乗則のもとに生きているのだ。
ピーター・ティールはフェイスブックに投資したことで有名ですが、フェイスブックから得たリターンはその他の投資すべてを合計したリターンをはるかに上回ると彼は言っています。彼はこの本で「分散」や「平準化」をとことん嫌い、「特化」や「リスク」を好んでいます。
さて、ここからが本題です。この「べき乗則」はおそらく一口馬主にも当てはまるのだろうという感覚はあって、ピーター・ティールにならって「堅実に走りそうな馬」よりも「ホームラン狙い」をしてきましたが、実際に当てはまっているのかどうか確かめてみました。
<ソースデータ>
・キャロットクラブの2006年産〜2011年産のすべての馬、6世代分、合計497頭。
<検証結果>
・合計497頭で、賞金合計 1,474,219万円。
・賞金合計の8割(1,179,375万円)は、上位86頭(
17.3%!)で稼いでいました。
・賞金1位のエピファネイアの獲得賞金(68,858万円)は、賞金下位314頭分の獲得賞金に匹敵しました。
<獲得賞金の分布>
下表のとおり、まさしく「べき乗則」のグラフになりました。
<獲得賞金と募集金額の関係>
一定の関係性はやはりありますね。一昔前の金額なので少し低めですが、4,000万円くらいで急にジャンプするかんじがあります。
<結論>
「べき乗則」は一口馬主にも完全に当てはまります。一口馬主の楽しみ方は人それぞれで良いですが、ピーター・ティール的に言えば「分散すべきではなく、本当に走る馬を必死に見極めてそこに全力でつぎ込め」ということになるかなと思います。ちょっと楽しめるかもと思ってロードの安い馬につぎ込んでしまったことを早速反省しています・・。